諮問庁 消費者庁長官
諮問日 平成24年 3月 5日(平成24年(行情)諮問第78号)
答申日 平成26年 3月 5日(平成25年度(行情)答申第419号)
事件名 消費者政策課が保有する特定会社に関する消費者問題について消費者庁内で行った検討の内容が分かる文書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,異議申立人が開示すべきとする部分のうち,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,別表1の3欄に掲げる部分を開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
 異議申立ての趣旨
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,消費者庁長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が平成23年12月5日付け消政策第98号により行った一部開示決定(以下「原処分」という。)において不開示とされた部分のうち,別表1に掲げる不開示部分1ないし不開示部分14(以下,併せて「本件不開示部分」という。)の開示を求めるものである。

 異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)  異議申立書
 異議申立人の異議(総論)
(ア)  法の目的が処分庁にとって持つ意味
 法1条に定める法の目的に照らして考えると,特定会社の問題をめぐって,処分庁は,同会社の破たんが明らかになった最近になって不当景品類及び不当表示防止法に基づく調査と処分を行ったものの,これ以前の所轄官庁としての対応が十分なものであったのか否かが今問われている。
 特定会社の問題については,報道もされており,これらの報道は特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「預託法」という。)問題を中心としたものだが,同法の問題にとどまらず,処分庁はいつの時点で特定会社問題についてどのような情報をもち,被害防止のためにどのような対応をしたのか,また,どうすれば今回のような大量被害を防ぐことができたのかが問われている。
 正に処分庁が「その諸活動を国民に説明する責務を全うされる」よう行動すべきであり,可能な限り情報公開すべきである。

(イ)  不開示理由は一般的・抽象的
 処分庁は,特定会社問題について自らの「諸活動を国民に説明する責務」という観点から本件請求を検討するのではなく,「権利,競争上の地位その他正当な利益」(法5条2号イ)など異なる観点からの抽象的な理由付けで不開示を決定している。
 異議申立人が異議申立ての対象とした文書は,いずれも,消費者庁自らの「諸活動を国民に説明する責務」という観点から検討すれば開示決定すべき文書と考えられ,これを不開示とした点に異議申立人は不服である。

 異議申立人の異議(各論)
 処分庁の決定について,異議申立人が開示を求めている行政文書及びその不開示部分,異議の内容等は以下のとおりである。
(ア)  不開示部分1について
 PIO‐NET調査の結果は何らかの形で公になることを想定しているものであり,不開示部分1は,文書1の一部であるから,会見での質問への対応上必要があれば,その場で,内容が公になっていたものである。
 したがって,これを公にしても「調査・検討にあたっての当庁(消費者庁)の着目点や考え方が明らかとなり,違反事実の発覚を免れようとする者に対し,違反事実の発覚を免れるための対策を講じる余地を与えるなど,今後,同種事案において,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,その発見を困難にするおそれがある」とは言えない。よって,法5条6号イ該当性はない。

(イ)  不開示部分2について
 不開示部分2は,文書1の不開示部分1と同一のものであり,不開示理由は,不開示部分1の不開示理由と同様である。
 不開示部分2は,文書1の一部とされていたのであるから,上記イ(ア)と同様に法5条6号イ該当性はない。

(ウ)  不開示部分3について
 PIO‐NET調査の結果は何らかの形で公になることを想定しているものである。不開示部分1及び不開示部分2が文書1の一部であり,不開示部分3も不開示部分1及び不開示部分2の一部とされている。そうした場合,不開示部分1及び不開示部分2は,会見での質問への対応上必要があれば,その場で,内容が公になっていたものとして,公表を想定しているものである。
 このことからすれば,不開示部分3についても公表を想定し,これに堪えうる内容・体裁となっていたと考えられる。したがって,これを公にしても「調査・検討にあたっての当庁(消費者庁)の着目点や考え方が明らかとなり,違反事実の発覚を免れようとする者に対し,違反事実の発覚を免れるための対策を講じる余地を与えるなど,今後,同種事案において,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,その発見を困難にするおそれがある」とは言えない。よって,法5条6号イ該当性はない。

(エ)  不開示部分4について
 不開示部分4は,文書4の一部である。
 文書4の不開示部分4以外の開示された文書は,①特定政党Aの会合の開催案内,②処分庁が作成した「特定会社について」と題する資料,③国民生活センターの報道発表資料,④処分庁が作成した特定政党Aの会合出席に当たっての想定問答集等である。
 これらの開示された文書からすると,同会合においては,処分庁が特定会社問題について特定年月日時点でもっていた認識及び対応の予定,さらには,処分庁がいつの時点で問題を認識し,どのような対応をしたのか,あるいはしなかったのかに関わるやりとりがあったと考えられ,不開示部分4には,この点に関する記載があったと考えられる。
 この「概要」は,同時点での処分庁の認識を示す資料である。このような観点からすれば,「特定政党Aや発言者の確認及び了承を受けていない」ことは何ら問題とはならないし,不正確な情報を流布せしめる可能性もなく,法5条2号イ該当性はない。

(オ)  不開示部分5について
 不開示部分5は,文書5の一部である。
 文書5の開示された部分によれば,特定政党Bが開催した会合の案内通知において,「特定会社問題について,消費者庁,農林水産省よりヒアリング」が議題の一つとされており,不開示部分5は,同会合に出席に当たっての処分庁の「対応用メモ」の一部である。
 したがって,同会合の中で質問があれば,「行政の対応に係る検討内容の記載部分」に記載された内容を回答した筈である。すなわち,そもそも公にすることを想定していないものではない。また,処分庁としては,すでに「対応用メモ」としてまとめたものであるから,公になっても「行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」はなく,法5条5号には該当しない。

(カ)  不開示部分6について
 不開示部分6は,文書6の一部である。
 FAX発信元個人名,携帯電話番号,E-mailアドレスが不開示とされれば,「特定の報道機関に関する情報」とはいえず,文書6が開示されても「当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らか」にはならない。したがって,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」はなく,法5条2号イの該当性はない。
 他方,行政機関は報道機関からのインタビューの依頼を受けることによって時々の問題についての認識を持つことがあるのであるから,処分庁長官に対するインタビュー依頼の内容が開示されれば,依頼時点で,処分庁が,特定会社問題についてどのような認識をもったかも明らかになる。この意味で開示が必要な文書である。

(キ)  不開示部分7について
 不開示部分7は,文書7の一部である。
 その表題からして,文書の主題は,報道機関の質問に対する処分庁の対応(方針)である。したがって,「想定問答」などと同様,処分庁の「諸活動を国民に説明」する文書であって,特定の報道機関に関する情報ではない。また,報道機関に対する応答である以上は,公にされることを想定していたものである。
 したがって,「公にすることにより,当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らかとなり,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとはいえない。よって,法5条2号イの該当性はない。

(ク)  不開示部分8について
 不開示部分8は,文書8の一部である。
 FAX発信元個人名,携帯電話番号,E-mailアドレスが不開示とされれば,「特定の報道機関に関する情報」とはいえず,不開示部分8が開示されても「当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らか」にはならない。したがって,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」はなく,法5条2号イの該当性はない。
 他方,行政機関は報道機関からの問い合わせを受けることによって時々の問題についての認識を持つことがあるのであるから,農林水産省に対する問い合わせの内容が開示されれば,問い合わせ時点で,農林水産省が,特定会社問題についてどのような認識をもったか,ひいては処分庁が農林水産省からどのような認識を引き継いだのかも明らかになる。この意味で開示が必要な文書である。

(ケ)  不開示部分9について
 不開示部分9は,文書9のうちの記者個人名以外の全部である。
 その表題からして,文書の主題は,記者の取材に対する処分庁の対応(方針)である。
 したがって,「想定問答」などと同様,処分庁の「諸活動を国民に説明」する文書であって,特定の報道機関に関する情報ではない。まして,不開示部分9については,記者の個人名は不開示である。また,報道機関に対する応答である以上は,公にされることを想定していたものである。
 したがって,「公にすることにより,当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らかとなり,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとはいえない。よって,法5条2号イの該当性はない。

(コ)  不開示部分10について
 不開示部分10は,文書10のうちの記者個人名以外の全部である。
 「インタビュー概要」である以上,公になることを想定していたものであり,特定の報道機関に関する情報ではない。まして,文書10については,記者個人名は不開示である。
 したがって,「公にすることにより,当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らかとなり,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとはいえない。よって,法5条2号イの該当性はない。

(サ)  不開示部分11について
 不開示部分11は,文書11の全部である。
 「国の機関の内部の協議に関する情報」であるとの抽象的な理由のみによって不開示とすることは許されない。むしろ,処分庁内部で特定会社問題について検討した記録であれば,処分庁がその「諸活動を国民に説明」するために開示が必要な文書である。また,開示により「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」利益は大きく「行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」があるとはいえない。
 したがって,法5条5号の該当性はない。

(シ)  不開示部分12について
 不開示部分12は,文書12のうちの記者個人名以外の全部である。
 「記者取材想定問答」である以上,公になることを想定していたものであり,特定の報道機関に関する情報ではない。まして,文書12については,記者の個人名は不開示である。したがって,「公にすることにより,当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らかとなり,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとはいえない。
 よって,法5条2号イの該当性はない。

(ス)  不開示部分13について
 不開示部分13は,文書13のうちの記者個人名以外の取材内容についての記載部分である。
 記者個人名が不開示とされれば,「特定の報道機関に関する情報」とはいえず,不開示部分13が開示されても「当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らか」にはならない。したがって,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」はなく,法5条2号イの該当性はない。
 他方,行政機関は報道機関からの取材依頼を受けることによって時々の問題についての認識を持つことがあるのであるから,処分庁に対する取材依頼の内容が開示されれば,依頼時点で,処分庁が特定会社問題についてどのような認識をもったかも明らかになる。この意味で開示が必要な文書である。

(セ)  不開示部分14について
 不開示部分14は,文書14のうちの記者個人名,E-mailアドレス以外の全部である。
 記者個人名とE-mailアドレスが不開示とされれば,「特定の報道機関に関する情報」とはいえず,不開示部分14が開示されても「当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らか」にはならない。
 したがって,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」はなく,法5条2号イの該当性はない。
 他方,行政機関は報道機関からの取材依頼を受けることによって時々の問題についての認識を持つことがあるのであるから,処分庁に対する取材依頼の内容が開示されれば,依頼時点で,処分庁が特定会社問題についてどのような認識をもったかも明らかになる。この意味で開示が必要な文書である。

 まとめ
 以上のことから,異議申立人は,原処分に対し異議を申し立て,処分庁が本件一部開示決定を取り消し,本件不開示部分を全面的に開示することを求める。

(2)  意見書
 「異議申立ての異議(総論)」についての検討であり,理由説明書は,「処分庁は,本件異議申立てにより開示を求められた各不開示部分について,開示することによってなしうる政府の諸活動を国民に説明する責務を十分踏まえた上で,各不開示部分が法5条各号により保護すべき利益を有しているか慎重に検討したものであり,決してその諸活動を国民に説明する責務を放棄したものではなく,その判断手法は,適法かつ妥当なものである。」,「原処分に記載された内容は,求められる理由付記として十分」などと述べる。
 しかし,既に異議申立人が異議申立書において主張したとおり,処分庁は本来開示すべき部分を不開示としており,「その判断手法は,適法かつ妥当なもの」とはいえない。
 詳細は,以下,各不開示部分についての検討の中で明らかにする。

 不開示部分1,不開示部分2及び不開示部分3について
 不開示部分1,不開示部分2及び不開示部分3は,特定会社による「6月以降の勧誘について(国センによるPIO-NET検索結果)」であり,「H23.8.31福嶋長官会見想定問答」に含まれるものである。そして,福嶋長官はこれに先立つ平成23年8月24日の会見で記者の質問に対して,「特定会社の件ですけれども,・・・詐欺的な問題があるのかどうかというようなことは,重要なポイントだと思いますので,それも含めて今後の経過を注視していきたいと思っています。」と回答している(消費者庁ホームページ)。本件のような投資被害について「詐欺的な問題があるのかどうか」を検討するのは当然のことである。
 そして,特定会社は遅くとも平成23年7月末日時点の配当ができなくなっていたのだから,仮に,「詐欺的な問題」を考えるのであれば,その直前期の「6月以降の勧誘」についてPIO-NETの登録情報を整理することもまた当然のことである。不開示部分1,不開示部分2及び不開示部分3を開示することによって,「調査・検討に当たっての当庁の着眼点や考え方が明らかとなる」というものではない。さらに,上述のように平成23年8月24日の記者会見で特定会社に関する質疑があり,同年8月31日の記者会見に備えて準備されたのが不開示部分1,不開示部分2及び不開示部分3なのだから,それは記者からの質問とそれに対する回答を前提に公表に堪えうるものとして整理されたと考えられる。「添付資料は手持ちとしての性質が強く,尚更公開が予定されていない。」という一般論として解消される問題ではない。
 これらの点で理由説明書には誤りがあり,不開示部分1,不開示部分2及び不開示部分3については,原処分が取り消されるべきである。

 不開示部分4について
 理由説明書では,不開示部分4のうち,「処分庁からの出席者以外の者の氏名及び発言以外の部分」は原処分を変更し開示し,その余の部分は,原処分を維持するということについて,一部を開示することとした決定は歓迎するが,不開示部分4は,「特定政党Aが開催した会合(2011.8.31)」中の「概要」であり,処分庁から出席した職員がまとめたものであるが,この会議の時点で処分庁がどのような情報に接し,どのような認識をもったのかという角度から捉えれば,「特定政党Aや発言者の確認及び了承を受けていない。」ことは何ら問題とはならないし,不正確な情報を流布せしめる可能性もなく,法5条2号イの該当性はない」という点にあった。
 しかし,理由説明書が述べるのは,不開示理由の繰り返しである。
 審査会において,異議申立人の主張が検討され,不開示決定が見直されるよう求める。

 不開示部分5について
 「意思統一を図るために行われた内部の協議に関連した情報」というが,どのような団体・機関の内部での意思統一なのかが不明である。したがって,それが「今後の国の機関の内部における協議」に関わるのか否か判断ができない。不開示の理由説明として不十分である。

 不開示部分6,8,13及び14について
 これら不開示部分は,インタビュー依頼や取材依頼,質問項目が文書となったものであって,取材の具体的手法として,公にされれば報道機関の利益が損なわれるものがあるわけではない。「報道機関が取材した内容がどの程度記事となり公にされるかは当該報道機関によって決められる。」とはいっても,公になれば自己の利益を害する質問を報道機関が用意することはない。
 さらに,異議申立人は,本件情報公開を通じて報道機関のノウハウ等を知ることに関心があるのではなく,当該取材依頼等の時点で,これを通じて処分庁が特定会社問題についてどのような認識を持っていたか,あるいは形成したかを知ることに関心がある。
 こうした観点からは,不開示部分6,8,13及び14は重要な情報であり,原処分は見直されるべきである。

 不開示部分7及び9について
 インタビュー依頼や取材依頼,質問項目及びこれに対する応答要領等について,取材の具体的手法として,公にされれば報道機関の利益が損なわれるものがあるわけではない。「報道機関が取材した内容がどの程度記事となり公にされるかは当該報道機関によって決められる」とはいっても,公になれば自己の利益を害する質問を報道機関が用意することはない。また,処分庁側でも公表を前提に応答要領を準備するはずである。対応する部署も,換言すればそれぞれの問題の担当部暑であろうから,報道されて当然の情報であり,不開示とする理由はない。
 さらに,異議申立人は,本件情報公開を通じて報道機関のノウハウ等を知ることに関心があるのではなく,当該取材依頼等の時点で,これを通じて処分庁が特定会社問題についてどのような認識を持っていたか,あるいは形成したかを知ることに関心がある。
 こうした観点からは,不開示部分7及び不開示部分9は重要な情報であり,原処分が見直されるべきである。

 不開示部分10について
 上述(2)オと同じ

 不開示部分11について
 不開示部分11は,それぞれの時点で処分庁がどのような情報・意見に接したのか,ひいてはそれらに対してどのような判断をしたのかを明らかにする重要な情報である。発言者等を不開示とすれば,一般の行政機関又は関係行政機関との議論における発言に制約がかかるなど,行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれもない。
 したがって,原処分は見直されるべきである。

 不開示部分12について
 上述(2)オと同じ

 結論
 異議申立人としては,処分庁の理由説明書には以上のとおり意見があり,改めて処分庁が原処分を維持するとした部分について原処分を取り消し,本件不開示部分を全面的に開示することを求める。

(3)  補充理由説明書に対する意見書
 不開示部分6,8及び14について
 不開示部分6の直通の電話番号及び不開示部分8の直通の電話番号,不開示部分14の電話番号,ウェブサイトのURLについては,これが個人識別情報であれば,異議申立人としては,その開示に固執しない。
 ただし,一般に公表が予定されているものは,「個人に関する情報であって特定個人が識別され,又は識別され得るもの」ではあるが,「実施機関が作成し,又は収受した情報で,公表を目的としているもの」に該当し不開示は違法とされるのが最高裁判例(平15.10.28) であるからすると,これに従い検討されるべきである。この判例により不開示が違法とされる情報であれば,「他の情報と組み合わせることで個人を識別できる」という追加不開示理由が働く余地はなく,すみやかに開示されるべきである。

 不開示部分11について
 「特定会社に関する取引対策課の関係」及び「対外厳秘」の部分について処分庁が「開示できるとの判断に至った」とされていることは歓迎すべきことである。
 しかし,それ以外の本文部分について,処分庁は,要するに開示によって処分庁の事業に支障がもたらされる(法5条6号柱書)との新たな理由を追加して「不開示を維持する」と述べている。しかし,処分庁の事業への支障ということについていえば,現在の重大な問題は,特定会社から処分庁に対して報告の申し出があったにも関わらず処分庁がこれに応じなかった経過があることが国会質疑等で明らかになり,こうした処分庁の対応によって特定会社に対する預託法上の措置が遅れ被害を拡大する結果となったのではないかという疑念を国民が抱いていることである。
 法は,その目的として,「この法律は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」(1条)と定めている。
 まさに,処分庁は,異議申立人が求める情報を開示することによって「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する。」ことが求められている。
 当該情報を公開することは,処分庁の事業に支障をもたらすのではなく,その活動を国民に説明することで国民の疑念を解消し,処分庁の事業を推進することになる。
 補充理由説明書が追加する不開示理由も成り立たず,当該情報は速やかに開示されるべきである。

第3  諮問庁の説明の要旨
 諮問庁の説明は,理由説明書及び補充理由説明書によると,おおむね以下のとおりである。
 理由説明書
(1)  概要
 当初記載の請求(「消費者庁が特定会社に関して保有する一切の文書」)については,「請求する行政文書の名称等」の補正がなされた。
 当該補正に伴い,処分庁は,法施行令13条2項本文の「1件の行政文書」とみなされる行政文書ごとに,受付番号を振り直した。

 処分庁は,当初及び補正後記載の請求のうち,平成23年9月14日受付第情27-2号に係る請求について,55文書を特定し,その一部が法5条1号,2号イ,4号,5号並びに6号柱書及びイに該当するとした一部開示決定(原処分)を行った。

 これに対して異議申立人は,特定された55文書のうちの14文書について,不開示部分の一部を開示する決定を求める旨の異議申立てを行った。

 上記の異議申立てを受け,諮問庁において原処分の適法性及び妥当性につき改めて慎重に検討した結果,不開示部分4以外については,処分庁が行った決定は適法かつ妥当なものと認められたが,不開示部分4については更に一部を開示すべきものと認めた。
 したがって,異議申立人の主張には,不開示部分4に関する範囲の一部に理由があるから,行政不服審査法47条3項に基づき,不開示部分4の一部を開示対象文書に加えるべく原処分を変更することとしたく,情報公開・個人情報保護審査会に諮問するものである。

(2)  異議申立人の主張についての検討
 異議申立人は,処分庁は,「その諸活動を国民に説明する責務が全うされる」よう行動すべきであり,処分庁としては情報公開を原則として可能な限り公開を追求すべきであったと主張する。
 確かに法は,国民主権の理念にのっとり,政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とするものであることから,行政情報は原則開示との考え方に立っている。
 しかしながら,一方で個人,法人等の権利利益や,国の安全,公共の利益等も適切に保護すべき必要があることから,法5条は開示しないことに合理的な理由がある情報を不開示情報として規定し,不開示とする具体的な理由については,同条各号に規定している。処分庁は,本件異議申立てにより開示を求められた各不開示部分について,開示することによってなしうる政府の諸活動を国民に説明する責務を十分踏まえた上で,各不開示部分が同条各号により保護すべき利益を有しているか慎重に検討したものであり,決してその諸活動を国民に説明する責務を放棄したものではなく,その判断手法は,適法かつ妥当なものである。

 異議申立人は,不開示部分1,2及び3に関し,まず,PIO-NET調査の結果は何らかの形で公になることを想定しているものである旨主張する。
 しかし,PIO-NETに登録される情報は,消費者個人が各地の消費生活センター等に対して相談した内容であるため,秘匿性の高いプライバシー情報であり,原則,公にされないことを前提に,行政機関等に対して提供されているものである。また,このような情報を利用して分析又は加工した調査結果であっても,様々な業務目的に応じて作成され,その内容に応じて公開の是非やあり方が判断されるべきものである。よって,一律公にすることを前提にしているという異議申立人の主張は妥当ではない。
 次に,異議申立人は,不開示部分1及び2は「福嶋長官会見想定問答」の一部であることから,会見での質問への対応上必要があれば,その場で内容が公になっていたものであるし,不開示部分3についても,その一部が「福嶋長官会見想定問答」の一部とされていることから,それ以外の部分も公表を想定し,これに堪えうる内容・体裁となっていたと考えられる旨主張する。
 確かに,想定問答はその多くが公表を想定している内容ではあるものの,必ずしも応答可能な情報のみが記載されているものではない。ましてや,想定問答の参考として使用するその添付資料は手控えとしての性質が強く,尚更公開が予定されていない。よって,文書が想定問答又はその添付資料であるという事実のみをもって,これらに記載されるすべての内容が公開を前提にしていると断じることは妥当ではない。実際,当該不開示部分は,公開した場合の国民の不利益を十分認識した者が使用することを前提に,あくまでも参考として添付した文書である。
 そして,不開示部分1,2及び3は,悪質事案に特化した相談情報であり,これらを公にすることにより調査・検討に当たっての当庁の着目点や考え方が明らかとなり,違反事実の発覚を免れようとする者に対し,違反事実の発覚を免れるための対策を講じる余地を与えるなど,今後,同種事案において,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,その発見を困難にするおそれがあるものである。
 したがって,第5条6号イに該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

 異議申立人は,不開示部分4には「処分庁が特定会社問題について特定年月日時点でもっていた認識及び対応の予定,さらには,処分庁がいつの時点で問題を認識し,どのような対応をしたのか,あるいはしなかったのかに関わるやりとり」に関する記載があると考えられ,このような観点から考えれば,当該政党や発言者の確認及び了承を受けていないことは何ら問題とはならないし,不正確な情報を流布せしめる可能性もない旨主張する。
 不開示部分4は,特定政党Aが開催した会議の議事概要である。そのうちの大部分は,処分庁からの出席者以外の者の氏名及び発言について,処分庁の担当者が内部での情報共有のための参考資料として記述したものに過ぎず,当該文書の作成にあたり,特定政党Aや発言者の確認又は了承等を受けていない未定稿のものである。よって,当該部分は,特定の政党等に関する情報であって,これを公にすることにより,不正確な情報を流布せしめる可能性が認められる等,当該政党の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であり,法5条2号イに該当する。
 もっとも,不開示部分4には,処分庁からの出席者以外の者の氏名及び発言のほか処分庁からの出席者の氏名,発言内容等も記載されている。本件異議申立てにおける異議申立人の主張を踏まえて再検討したところ,処分庁からの出席者以外の者の氏名及び発言以外の部分については,これを公にすることにより,処分庁以外からの出席者の発言を推認させる可能性を完全には否定できないものの,不正確な情報を流布せしめる可能性が認められる等,当該政党の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認め難い。すなわち,当該部分は,法第5条2号イに該当せず,また,その他の法5条各号に掲げる不開示理由にも該当しないと認められるため,原処分を変更し,これを開示することとする。

 異議申立人は,不開示部分5が,特定政党Bが開催した会合の中で質問があれば,その内容を回答した筈であり,公にすることを想定していないものではない旨主張する。
 公の場における対応用のメモは,想定問答同様,その内容の多くが公の場での質問に対して回答する際に利用することを想定している内容ではあるものの,必ずしも応答可能な情報のみが記載されているものではないのであるから,その事実のみをもって,公の場における対応用のメモに記載されるすべての内容が公開を前提にしていると断じることは妥当ではない。
 不開示部分5には,意思統一を図るために行われた内部の協議に関連した情報が記載されており,これを公にすることは,今後の国の機関の内部における協議において議論における発言に制約がかかるなど,率直な意見交換が不当に損なわれるおそれがある。したがって,法5条5号に該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

 異議申立人は,不開示部分6,8,13及び14が,各行政文書に記載されている個人情報が不開示とされれば,「特定の報道機関に関する情報」とはいえず,各不開示部分が開示されたとしても「当該報道機関の取材の具体的方法や内容が明らか」にはならず,「当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」はない旨主張する。
 これら不開示部分に関する不開示理由の趣旨は,ある報道機関が行った取材の具体的方法や内容を公にすることで,当該報道機関のノウハウが他者に知られるところとなり,その結果,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることにある。また,取材自体は非公開で行われる上,報道機関が取材した内容がどの程度記事となり公にされるかは当該報道機関によって決められるため,必ずしも全ての取材内容が公になるとはいえない。
 すると,報道機関が特定できない状態にあっても,開示すれば当該報道機関のノウハウが他者に知られることに変わりなく,異議申立人の主張は失当であり,法5条2号イに該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

 異議申立人は,不開示部分7及び9が,その表題からして,文書の主題は,報道機関の質問に対する処分庁の対応(方針)であり,「想定問答」などと同様,特定の報道機関に関する情報ではない。また,記者個人名が不開示であるから報道機関が特定されず,不開示理由には当たらない旨主張する。
 各不開示部分は,事前の報道機関からの質問に基づいて,消費者庁長官への取材に対する準備として処分庁が作成した応答要領及び質問に対する回答部署の割り振りに係る文書であり,これらの情報は報道機関の取材の具体的方法や内容と相当程度一致するものであって,上記(2)オの各不開示部分と性質は同じといえる。
 したがって,上記(2)オと同様に法5条2号イに該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

 異議申立人は,不開示部分10が,「インタビュー概要」である以上,公になることを想定していたものであり,特定の報道機関に関する情報ではないし,記者個人名が不開示であるから報道機関が特定されず,不開示理由には当たらない旨主張する。
 不開示部分10には,報道機関の具体的な取材活動の状況や当該報道機関が処分庁に事前に伝えた質問内容等が記載されている。これらの情報は報道機関が行った取材の具体的方法や内容に当たるものであり,上記オの各不開示部分と性質は同じといえる。
 したがって,上記オと同様に法5条2号イに該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

 異議申立人は,不開示部分11について,「法5条5号が同条3号及び4号と異なり「不当に損なわれる」との要件を付しているのは,審議,検討又は協議に関する情報であることを理由とした不開示の濫用を防ぐ趣旨」であり,「「国の機関の内部の協議に関する情報」であるとの抽象的な理由のみによって不開示とすることは許されない」旨主張した上,不開示部分11を開示することによる「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」利益は大きく,「行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがある」とはいえないと主張する。
 この点,不開示部分11には,行政機関としての最終的な意思決定に至るまでの過程における,意思決定の前段階の自由討議,一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ,決裁を前提とした説明や検討など,各段階において行われた審議,検討に関連して作成された情報が記載され,又は利用された情報が記載されている。
 これらの記載されている情報には,担当者の個人的意見等に基づく協議や打合せ等に関する情報が記載されており,当該文書に記載された意見等は,その時点での限られた情報に基づく意見であるため,正確性及び確定性が十分に吟味されたものではない。これらの情報は公にすることにより,本件のみならず,一般の行政庁内又は関係行政機関との議論における発言に制約がかかるなど,行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあり,法5条5号に該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。
 異議申立人は,不開示部分11を「開示することによる「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」利益は大きいとも主張するが,上記(1)アのとおり,処分庁は,開示することによってなしうる政府の諸活動を国民に説明する責務を十分踏まえた上で,不開示部分が法5条5号により保護すべき利益を有しているか慎重に検討した結果,やはり法5条5号に該当するとして不開示を決定したものであり,その判断に不当なところはない。

 異議申立人は,不開示部分12が,「「記者取材想定問答」である以上,公になることを想定していたものであり,特定の報道機関に関する情報ではない」し,記者個人名が不開示であるから報道機関が特定されず,不開示理由には当たらない旨主張する。
 不開示部分12は,事前の報道機関からの質問に基づいて,消費者庁長官への取材に対する準備として処分庁が作成した想定問答であり,これらの情報は報道機関の取材の具体的方法や内容に相当程度一致するものであり,上記(2)オの各不開示部分と性質は同じといえる。したがって,上記(2)オと同様に,法5条2号イに該当するとして不開示とした処分庁の判断は,適法かつ妥当である。

(3)  結論
 以上のとおり,本件異議申立てを受け,処分庁において,原処分の適法性及び妥当性について改めて慎重に検討した結果,不開示部分4以外の文書については,処分庁が行った決定は適法かつ妥当なものと認められたが,不開示部分4については,更に一部を開示すべきものと認めた。したがって,本件異議申立てについては,不開示部分4に関する範囲の一部に理由があるから,行政不服審査法47条3項に基づき,不開示部分4の一部を開示対象文書に加えるべく原処分を変更することとしたい。

 補充理由説明書
(1)  文書2について
 「件名」欄のうち,消費者からの相談内容における具体的な契約期間,契約金額等各契約者固有の個別具体的な部分については,法5条第6号イに該当しない場合であっても,他の情報と組み合わさることにより個人が識別されるおそれがあり,法5条第1号にも該当する。すなわち,当該情報が明らかになれば一般人が通常入手しうる情報を駆使して特定の個人を識別しうる可能性がある。また,法第5条第1号における他の情報とは,一般人が通常入手しうる情報に限られず当該個人の近親者,地域住民等であれば保有しているか,又は入手可能であると通常考えられる情報を含むと解され,具体的な契約期間,契約金額等の各契約者固有の個別具体的な情報が明らかになれば近親者や事業者等により個人が識別されるおそれがあると考えられる。仮に個人が識別されないとしても,PIO-NETに登録された情報は,地方公共団体が自治事務として消費生活センター等において相談者から非公表を前提として受けた相談内容であり,相談内容のうち具体的な契約期間,契約金額等の各契約者固有の情報については極めて機微な情報であり,個人の権利利益を害されるおそれがあると考えられる。また,これらの機微な情報が開示されるのであれば,相談の具体的内容を公にされたくない消費者が消費生活センター等へ相談を敬遠することにもなりかねず,ひいては地方公共団体の相談業務の信頼性が損なわれる可能性があり,その結果,地方公共団体の相談業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号柱書にも該当する。

(2)  文書6,文書8及び文書14について
 文書6の直通の電話番号,その他の情報と組み合わせることで個人を識別できる部局名などの部分,文書8の直通の電話番号,文書14の電話番号,ウェブサイトのURL,その他の情報と組み合わせることで個人を識別できる取材内容の詳細や記事の掲載先などの部分については,仮に法5条2号イに該当しない場合であっても,既に原処分で法5条1号に該当し不開示としている文書6及び文書8のFAX発信元個人名,携帯電話番号及びE-mailアドレス,文書14の記者個人名及びE-mailアドレスと同様,個人を識別できる情報であり,法5条1号に該当する。

(3)  文書11
 不開示部分については,当初,法5条5号に該当することから不開示としたが,改めて検討したところ,「特定会社に関する取引対策課の関係」及び「対外厳秘」の部分については,当該部分を独立の情報と捉えるのであれば,不開示事由に該当せず,開示できるとの判断に至った。
 もっとも,それ以外の本文部分には具体的な案件に係る特定会社からの連絡内容及びそれを受けた処分庁の対応状況が記載されており,当該部分を開示することとした場合には,預託法を所管して行う業務に支障があるおそれがあると考えられ,法5条6号柱書に該当することから不開示を維持する。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
平成24年3月5日 諮問の受理
同日 諮問庁から理由説明書を収受
同月19日 審議
同年4月11日 異議申立人から意見書を収受
同年5月16日 本件対象文書の見分及び審議
同年8月1日 審議
同年9月24日 審議
平成25年2月12日 審議
同年3月18日 諮問庁から補充理由説明書を収受
同年4月1日 異議申立人から補充理由説明書に対する意見書を収受
同年10月7日 審議
同年12月16日 諮問庁の職員(消費者庁消費者政策課長ほか)から口頭説明聴取及び審議
平成26年1月21日 審議
同年2月17日 審議
同年3月3日 審議

第5  審査会の判断の理由
 本件開示請求について
 本件開示請求は,「消費者政策課が保有する,特定会社に関する消費者問題について,消費者庁内で行った検討の内容が分かる文書(特定会社(代理人を含む)から消費者庁が入手した文書を含む)及び消費者庁が特定会社(代理人を含む)に対して発出した文書(消費者庁発足時から開示請求の日までのもの)」であり,当初,「貴庁が,特定会社に関して保有する一切の文書」とされていたものが,「①特定会社に対して農林水産省が実施した調査及び指導に関する文書」並びに「特定会社に関する消費者問題について,消費者庁内で行った検討の内容が分かる文書(特定会社(代理人を含む)から消費者庁が入手した文書を含む)及び消費者庁が特定会社(代理人を含む)に対して発出した文書(消費者庁発足時から開示請求の日までのもの)」について「②消費者政策課が保有する」もの,③「取引対策課が保有する」もの及び「④表示対策課が保有する」ものに補正されたうちの②に係るものである。なお,上記①,③及び④の請求部分については,別途,開示決定等が行われている。
 処分庁は,原処分において,55文書を特定し,法5条1号,2号イ,4号,5号並びに6号柱書及びイに該当する部分を不開示とする一部開示決定を行った。
 これに対して,異議申立人は,当該55文書のうちの別紙に掲げる14文書(本件対象文書)に係る別表1の1欄に掲げる部分(本件不開示部分)について開示を求めている。
 諮問庁は,本件不開示部分のうち,文書4に記載されている消費者庁出席者の氏名及び発言内容並びに文書11に記載されている標題及び右肩の記載部分については,理由説明書及び補充理由説明書で開示するとしているが,その余の部分については原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果及び諮問庁の職員からの口頭説明の聴取結果を踏まえて,本件不開示部分のうち諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分(以下「不開示維持部分」という。)の不開示情報該当性について検討する。

 不開示維持部分の不開示情報該当性について
(1)  文書1ないし文書3について
 文書1は,消費者庁長官の記者会見に係る想定問答とその添付資料であり,文書2及び文書3は,当該添付資料の基となった内部検討資料であり,異議申立人は,不開示部分1ないし不開示部分3について開示を求めている。

 不開示部分1(文書1,通し頁3)及び不開示部分2の前半(文書2,通し頁4ないし6)について
(ア)  当審査会において,文書1及び文書2を見分したところ,不開示部分1及び不開示部分2の前半には,特定会社に係る相談件数等についてPIO-NETにより検索した結果をキーワードや受付時期等により集計等した結果が記載されていることが認められる。

(イ)  諮問庁は,これらの情報を公にすると,消費者庁における特定会社に対する対応方針等の検討に当たっての着眼点が明らかとなり,違反事実の発覚を免れるための対策を講じる余地を与えるなど,今後,同種の事案において,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあることから,法5条6号イに該当すると説明し,諮問庁口頭説明においても,特定会社に限らず,経営破たんの間際にある事業者は,強引な勧誘等を行うため,これらの情報を公にすると,悪質な事業者が手口をまねするおそれがあり,消費者保護の観点から,これらの情報は不開示とすべきとしている。

(ウ)  しかし,記載されている内容をみると,その集計やとりまとめ方法等は通常想定し得る一般的な観点によるものであって,それぞれに該当する件数が統計的に記載されているのみであり,特段,特定会社に対する対応方針等の検討に当たっての着眼点が明らかになると言えるものとは認められず,これらの情報を公にしたとしても,監督官庁として正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあるとは認められない。
 したがって,当該部分は法5条6号イに該当するとは認められないので,開示すべきである。

 不開示部分2の後半(文書2,通し頁7ないし10)及び不開示部分3(文書3,通し頁11ないし16)
(ア)  不開示部分2の後半には,「相談受付年月」,「件名」及び「購入契約者名」の各欄により,不開示部分3には,「相談受付年月日」,「契約月」,「件名」,「相談の概要」及び「国セン調」の各欄により,それぞれPIO-NETにより検索された相談事案の概要が適宜標題等を付した一覧表形式で,整理されている。

(イ)  諮問庁は,これらの情報を公にすると,当該消費者(個人)の近親者,地域住民等が保有する情報等と組み合わせることにより,消費者(個人)が特定されるおそれがあり,また,相談の具体的内容を公にされたくないとする消費者(個人)が消費生活センター等に相談することを敬遠するなど,地方公共団体の相談業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,法5条1号及び6号柱書に該当するとしている。
 また,これらの情報を公にすると,調査・検討に当たっての消費者庁の着眼点等が明らかとなり,違反事実の発覚を免れるための対策を講じる余地を与えるなど,今後,同種事案において,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,その発覚を困難にするおそれがあることから,法5条6号イに該当するとしている。
 さらに,諮問庁口頭説明において以下のとおり説明する。
 特定会社の事件については,既に顧客名簿が流出しており,特定会社の二次被害に関する相談が一定数寄せられていることから,消費者庁では,ホームページ等において二次被害の注意喚起をしているところである。

 顧客名簿に記載されている具体的な事項は不明ではあるが,上記不開示情報を公にすると,顧客名簿やその他の情報と組み合わせることにより,個人が識別されるおそれがあり,また,消費生活センターへの相談をちゅうちょする事態が生じるおそれがある。

 また,消費者生活相談情報は,電話による消費者側の主張や苦情をまとめたものであり,ほとんどが内容の真偽まで確認されておらず,不正確さ,あるいは虚偽を伴う可能性は排除できず,これらの情報を公にすると,真偽不明なことが客観的な事実であるかのような誤解につながり,適正な事務又は事業の遂行に重大な支障を及ぼすおそれがある。

(ウ)  当審査会において文書2及び文書3を見分すると,相談者個人の氏名は記載されてはいないものの,相談内容として契約上のコース名,契約期間,契約金額,家族構成,特定会社と契約者とのやり取りの具体的内容等相談者固有の情報も含まれている。このうち,別表2及び別表3に掲げる部分に記載された情報は,相談者個人が識別されるおそれがあり,消費者被害にあったことなど他人に知られたくない機微な情報であることから,相談者の秘密保持や個人情報保護を前提とする消費者相談において,これが公になると,相談した内容が他人に知られることとなり,相談者が相談することを敬遠するなど,PIO-NETによる情報の提供を行っている国民生活センターや消費者センターの相談業務に支障が生じ,消費者庁の消費者行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする諮問庁の説明は,首肯し得る。
 したがって,別表2及び別表3に掲げる部分に記載された情報は,法5条6号柱書きに該当し,同条1号及び6号イについて判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
 しかしながら,上記部分を除けば,その余の記載は,具体性が捨象された相談内容の概略であって,当該記載からは相談者等特定の個人を識別することができるとは認められず,これを公にしても,個人の権利利益を害するおそれがあるとは認められず,また,相談業務に支障を及ぼし,消費者庁の消費者行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとも認められない。
 したがって,別表1の3欄に掲げる部分に記載された情報は,法5条1号並びに同条6号柱書き及びイのいずれにも該当するとは認められないので,開示すべきである。

(2)  文書4及び文書5について
 文書4及び文書5は,特定会社に係る消費者問題について特定政党A及びBが開催した会合の開催案内及び当該会合に消費者庁が提出した資料等であり,異議申立人は,不開示部分4(文書4,通し頁28)及び不開示部分5(文書5,通し頁37の最終行)について開示を求めている。

 不開示部分4について
(ア)  不開示部分4は,特定政党Aの会合の記録であって,開催日時,場所,主な出席者(党側),消費者庁出席者とともに,議員等と消費者庁及び農林水産省職員との質疑等の概要が記載されている。
 諮問庁は,当該文書は,特定政党Aの確認を受けていない,消費者庁独自でまとめた未定稿の文書であるとしている。

(イ)  不開示部分4について,諮問庁は,理由説明書において,消費者庁出席者の氏名及び発言内容は開示するとしているが,党側の出席者の氏名及び発言内容等並びに農林水産省の出席者の発言内容については,これを開示すると,不正確な内容を流布せしめる可能性があるなど,特定政党Aの権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法第5条2号イに該当するとして不開示を維持するとしている。

(ウ)  当審査会において文書4を見分すると,不開示部分4のうち,党側出席者の氏名と発言内容等には,特定会社に係る消費者問題に関する発言者の問題意識や行政の対応方針に対する考え方など,当時の特定政党Aとしての認識状況等が推測され得る情報が含まれており,特定政党A側において当該会合の結果等について公表等がされていればともかく,諮問庁が説明するとおり,当該発言者又は政党にその内容を確認したものでなく,党側の同意が得られていないままにこれを公にすれば,不正確な内容を流布せしめる可能性があるなど,特定政党Aの権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとする諮問庁の説明は否定し難く,法5条2号イに該当し,不開示とすることが妥当と言わざるを得ない。
 しかし,その余の部分については,①文書の表題,会合の開催日時及び場所は,これを公にしたとしても,上記のようなおそれがあるとは認められず,また,②農林水産省の出席者の発言内容は,公党への説明の場において行政機関として発言されたものであり,細部の表現ぶり等はともかく,これを公にしても,不正確な内容を流布せしめるなどのおそれがあるとは認められず,もとより法5条2号イの不開示情報が適用されるものではなく,仮に法5条6号柱書き(事務事業支障)を主張していると解したとしても,同号に該当するとは認められない。
 したがって,不開示部分4の不開示維持部分については,①文書の表題,会合の開催日時及び場所並びに②農林水産省の出席者の発言内容,すなわち別表1の3欄に掲げる部分を開示すべきである。

 不開示部分5について
(ア)  不開示部分5は,特定政党Bとの会合に消費者庁職員が出席するに当たって作成した対応用メモの最終行である。

(イ)  諮問庁は,当該部分を公にすると,行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあることから,法5条5号に該当するとしている。

(ウ)  当審査会において,文書5の通し頁37(対応用メモ)を見分すると,当該メモには,想定される質問とそれに対する応答内容が記載されており,最後の行の記載が不開示部分5として不開示とされていることが認められる。
 そこに記載されている内容は,説明する場合の注意事項・対応方針に係るものと認められるが,当該記載は,諮問庁が説明する,これを明らかにすることにより,行政機関の内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあるようなものとは認められない。
 したがって,不開示部分5は,法5条5号に該当するとは認められず,開示すべきである。

(3)  文書6ないし文書10及び文書12ないし文書14について
 文書6ないし文書10及び文書12ないし文書14は,特定会社に係る消費者問題に係る報道機関からの取材対応に関する文書であり,異議申立人は,不開示部分6ないし10及び12ないし14の開示を求めている。

 不開示部分6,8,13及び14について
(ア)  文書6,文書8,文書13及び文書14は,取材申込みのFAX等であり,不開示部分6,8,13及び14は,取材申込みのFAX等における取材記者の質問内容等が記載された部分である。

(イ)  諮問庁は,これを公にすると,当該報道機関のノウハウが他者に知られるところとなり,その結果,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イに該当し,また,補充理由説明書において,不開示部分6,8及び14については,記者個人に関する情報(法5条1号)にも該当するとしている。

(ウ)  当審査会において,文書6,文書8,文書13及び文書14を見分すると,不開示部分には,取材を申し込んだ記者の取材に係る質問事項が記載されていることが認められる。
 このうち,不開示部分13については,総括的な題材を提示しているに過ぎない一般的な質問であって,個別具体的な論点等を含むものとは言えず,諮問庁の言う当該報道機関のノウハウが他者に知られるところとなり,その結果,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,法5条2号イに該当しないことから,開示すべきである。
 しかし,不開示部分6,8及び14に記載されている質問事項は,各記者の特定会社に係る消費者問題に対する問題意識,これに対する行政庁の対応に係る考え方,質問の根拠として把握している情報の程度等に基づく個別具体の質問事項となっており,当該質問における問題のとらえ方,切り口,提示の順番・方法等において,当該取材記者の取材のノウハウが含まれていることもあり得ると認められ,こういった記者自らが提示した個別具体の質問事項が行政機関側から公にされることとなると,当該ノウハウが知られることを懸念して,取材申込みの段階での質問の提示は一般的・抽象的なものに留めておくようになることも考えられ,取材当日,取材される側の必要な準備が十分できず,結果として,取材する側・される側双方に支障が生ずるようなおそれがあることは否定し難い。
 したがって,不開示部分6,8及び14に記載されている質問事項は,これを開示すると,当該報道機関の取材の利益等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると言わざるを得ず,法5条2号イに該当し,同条1号について判断するまでもなく,不開示とすることは妥当である。

 不開示部分7,9及び12について
(ア)  文書7及び文書12は,報道機関からの取材申込みを受けて作成された想定問答とその添付書類であり,また,文書9は,想定される質問の関係各課への割り振りを記載したものであり,不開示部分7,9及び12はその全部である。

(イ)  諮問庁は,上記イと同様に,これらの情報を公にすると,当該記者のノウハウが明らかとなり,報道機関又は記者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イに該当するとしている。

(ウ)  当審査会において,文書7,文書9及び文書12を見分すると,文書7及び文書12の前半(通し頁51ないし60)は,報道機関の取材に対して想定される「問」とそれに対する「答」が記載されており,文書9は,記者からの取材において想定される「問」と当該「問」に対する「答」を作成する関係課名が記載されていることが認められ,また,文書12の後半(通し頁61ないし65)は想定問答に添付された関係資料であると認められる。
 文書7及び文書12の前半並びに文書9に記載された「問」及び「答」並びに当該「問」が割り振られた関係課名は,特定会社に係る消費者問題について消費者庁として聞かれたら答えることができる内容について作成されたものであって,「問」に係る部分については,特定の報道機関からの取材申込みにおける質問事項を基に作成されているとはいえ,消費者庁における方針等を踏まえて整理されたものであり,取材記者のノウハウに係るものは捨象されたものとみなされ,上記イとは異なり,記者自身が記載した質問のように,これが明らかにされることを懸念して取材申込みの段階での質問の提示を一般的・抽象的なものに留めるようになるなどのおそれも考えにくい。また,「答」に係る部分については,報道機関からの取材に対して,消費者庁の組織として,記事になるなど公にされることを前提として回答する内容を記載しているものであり,これを公にしても報道機関や記者に支障があるはずもなく,消費者庁においても特段の支障が生ずるとも認められない。
 さらに,想定される質問の関係課への割り振りを記載した部分については,各「問」に対する「答」を作成する担当課を明らかにしているものにすぎず,これを公にしても報道機関や記者に支障があるはずもなく,消費者庁においても特段の支障が生ずるとも認められない。
 したがって,不開示部分7,9及び12の前半については,既に特定会社に係る消費者問題が社会問題としていろいろと取り上げられ,多くの情報が周知の事実となっていた原処分時において,これを公にしても,諮問庁の言うような報道機関又は記者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,法5条2号イに該当しないので,開示すべきである。
 また,不開示部分12の後半の想定問答に添付された関係資料についてみると,既に公にされた情報であると認められ,これを公にしても,報道機関又は記者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,法5条2号イに該当しないので,開示すべきである。

 文書10について
(ア)  文書10は,消費者庁長官が特定の記者によるインタビューを受けた際の概要をまとめた文書であり,不開示部分10はその全部である。

(イ)  諮問庁は,文書10についても,上記イと同様に,これらの情報を公にすると,当該記者のノウハウが明らかとなり,報道機関又は記者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イに該当するとしている。

(ウ)  当審査会において文書10を見分すると,冒頭に,文書の標題,日時,場所,報道機関名・記者名,対応した長官と同席した消費者庁職員の氏名が記載され,その下に,<概要>として消費者庁長官と記者とのやりとりした内容が具体的に記載されている。
ⅰ)  このうち,インタビューした記者の氏名については,特定の個人が識別することができるものであり,法5条1号本文前段の情報であって,だれが(どの記者が)インタビューを行ったかということを公にすべき法令の規定や慣行として公にすることが予定されているとする事情も認められないので,同号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当するとも認められない。また,法6条2項による部分開示の余地もない。
 したがって,記者の氏名を不開示としたことは妥当である。

ⅱ)  次に,文書の標題(記者の氏名が含まれている部分を除く。),日時,場所及び報道機関名については,当該報道機関(又はその記者)が消費者庁長官にインタビューを行ったという情報が公になったとしても,当該報道機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,法5条2号イに該当しないことから,開示すべきである。

ⅲ)  対応した長官と同席した消費者庁職員の氏名は,特定の個人を識別することができるものであり,法5条1号本文前段の情報に該当するが,消費者庁の職務遂行の内容に係る情報であって,平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議申合せ(各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて)により,公にすることが予定されている情報(同号ただし書イ)に該当するため,同号の不開示情報に該当せず,開示すべきである。

ⅳ)  一方,消費者庁長官と記者との応答内容が具体的に記載されている部分については,その場においてどのような情報を基にどのような切り口で,どういう情報をどうやって引き出していったかといった,まさに記者の取材のノウハウが明らかになり得るものであり,その結果は,当該記者が記事にする等によって明らかにされるものであって,行政機関側が一方的に明らかにすることがあるとすると,記事内容に影響を与えることがないとも言えず,報道機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できないことから,法5条2号イに該当すると言わざるを得ず,不開示とすることは妥当である。

(4)  文書11について
 文書11は,特定会社に係る消費者問題に関する取引対策課の内部検討資料とみられるものであり,異議申立人はその全部である不開示部分11の開示を求めている。

 諮問庁は,補充理由説明書において,文書の標題及び右肩の記載については開示するとしているが,その余の部分は,これを公にすると,行政機関内部の率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあることから,法5条5号に該当し,また,今後,事業者等からの報告がされなくなるなど,預託法を所管する消費者庁の事務又は事業に支障を及ぼすおそれがあることから,同条6号柱書きにも該当するとして,不開示を維持するとしている。

 当審査会で文書11を見分したところ,特定会社からの報告を受けた際の対応等について記載したものと認められるが,当該文書の記載年月日や作成者等に関する記載は見られない。
 当審査会において,当該文書の作成の経緯,保管状況,文書の性格等について諮問庁から口頭説明を聴取したところ,諮問庁は,当該文書は,特定会社に係る消費者問題が発生した際に,消費者政策課が主体となって関係各課から関連文書を収集するなど取りまとめた際に含まれていたものであり,特定会社の経営破たんが明らかとなった特定年月ごろに,預託法の所管課である取引対策課の担当者が,約1年前に特定会社の担当者からの連絡を受け,当時の取引・物価対策課(現在の取引対策課)内で特定会社に対する対応方針等を検討した内容を,当時の状況を思い出しながら,事後的に整理した紙(整理紙)と推測されるとしているものの,実際に,誰がいつ作成し,どのような経緯で消費者政策課が当該文書を保有するに至ったのか,また,同課以外の課においても,どのような経緯でこれと同一の文書を保有するに至ったのか,さらには,どの課のどの文書が原本に当たるのかなどは一切不明であり,全体の判断内容や事実関係の真意性についても疑義があるとしている。

 確かに,当該文書に記載された内容が,特定会社とのやり取りの状況,その後の対応や判断状況等について,組織的な意思決定を通して記録されたものか否か疑義がないわけではないが,特定会社に係る消費者庁の初期対応に係る状況等について記録されたものとして現に組織的に保有されているものであって,行政機関における経緯も含めた意思決定の過程を跡付け,又は検証することができるよう作成された文書と認められること,記載された内容の大要については,既に国会議員からの質問主意書に対する答弁や予算委員会における大臣答弁等において公にされている内容と同様であることを踏まえると,諮問庁のいうような率直な意見交換が不当に損なわれるおそれや,適正な事務又は事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,法5条5号及び6号に該当するとは認められないので,開示すべきである。

 なお,特定会社の社員の氏名については,特定の個人を識別することができる情報(法5条1号本文前段)であって,当該文書に記載された者が消費者庁と連絡を取ったか否かといった情報を公にする法令の規定や慣行は存在しないことから,同号ただし書イには該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当するとすべき事情もなく,法6条2項の部分開示の余地もないので,不開示とすることは妥当である。

 異議申立人のその他の主張について
 異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

 本件一部開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,2号イ,4号,5号並びに6号柱書き及びイに該当するとして不開示とした決定につき,異議申立人が開示すべきとする部分(本件不開示部分)のうち,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分(不開示維持部分)については,別表1の3欄に掲げる部分は,法5条1号,2号イ,5号並びに6号柱書き及びイのいずれにも該当せず開示すべきであるが,その余の部分は,法5条1号,2号イ及び6号柱書きに該当すると認められるので,同条5号及び6号イについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当であると判断した。

(第5部会)
委員 戸澤和彦,委員 椿 愼美,委員 山田 洋




別紙(本件対象文書)

文書番号 文書の名称等 通し頁
文書1 特定年月日○福嶋長官会見想定問答 1~3
文書2 国センによるPIO-NET調査 4~10
文書3 PIO-NET検索結果一覧 11~16
文書4 特定政党Aの会合のご案内 17~28
文書5 特定政党Bの会合のご案内 29~37
文書6 インタビュー依頼のFAX受信票 38
文書7 「特定年月日○応答要領」 39~40
文書8 問い合わせのFAX受信票 41
文書9 「記者からの取材対応について」 42~46
文書10 長官インタビュー概要 47~49
文書11 「特定会社に関する取引対策課の関係」 50
文書12 特定年月日○取材想定問答 51~65
文書13 記者からの取材依頼の受信メール 66~67
文書14 記者からの質問FAX 68




別表1
1 
本件不開示部分
  2 
不開示維持部分
3 
開示すべき部分
該当箇所
不開示部分1 文書1中,3頁の全て 左記の全て 全て
不開示部分2 文書2の全て 左記の全て ・4頁ないし6頁の全て
・別表2に掲げる部分を除く部分
不開示部分3 文書3の全て 左記の全て 別表3に掲げる部分を除く部分
不開示部分4 文書4中,28頁の全て 消費者庁の出席者の氏名及び発言内容を除く,左記の全て 1行目1文字目から5行目6文字目まで,8行目,23行目から26行目まで
不開示部分5 文書5中,37頁の最終行 左記の全て 全て
不開示部分6 文書6中,記者の質問内容 左記の全て なし
不開示部分7 文書7の全て 左記の全て 全て
不開示部分8 文書8中,記者の質問内容 左記の全て なし
不開示部分9 文書9の全て(記者の氏名は除く。) 左記の全て 全て
不開示部分10 文書10の全て(記者の氏名は除く。) 左記の全て 47頁の1行目から6行目まで
不開示部分11 文書11の全て 文書の標題及び右肩の記載を除く,左記の全て 全て(特定会社の社員の氏名を除く。)
不開示部分12 文書12の全て 左記の全て 全て
不開示部分13 文書13中,66頁の記者の質問内容 左記の全て 全て
不開示部分14 文書14中,記者の質問内容 左記の全て なし
 (注)表中の頁数は,本件対象文書の通し頁による。




別表2 不開示部分2の後半(文書2,通し頁7ないし10)のうち,不開示とすることが妥当である部分
該当頁 不開示部分
 表中,最左欄が「1」の行の「件名」欄のうち,1行目46文字目から2行目8文字目まで,2行目34文字目から37文字目まで,3行目22文字目から31文字目まで,4行目10文字目から17文字目まで,5行目3文字目から9文字目まで
 表中,最左欄が「2」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から3文字目まで,1行目24文字目から30文字目まで,2行目11文字目から14文字目まで,2行目27文字目から30文字目まで,2行目33文字目から37文字目まで
 表中,最左欄が「1」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から6文字目まで
 表中,最左欄が「2」の行の「件名」欄のうち,3行目5文字目から6文字目まで
 表中,最左欄が「4」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から14文字目まで,2行目38文字目から43文字目まで,3行目6文字目から38文字目まで,4行目26文字目から30文字目まで
表中,最左欄が「5」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から2行目32文字目まで
 表中,最左欄が「6」の行の「件名」欄のうち,2行目52文字目から54文字目まで,3行目9文字目から17文字目まで
 表中,最左欄が「7」の行の「件名」欄のうち,1行目23文字目から27文字目まで
 表中,最左欄が「8」の行の「件名」欄のうち,1行目8文字目から17文字目まで
 表中,最左欄が「9」の行の「件名」欄のうち,2行目の17文字目から19文字目まで
10  表中,最左欄が「1」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から2行目11文字目まで
 表中,最左欄が「2」の行の「件名」欄のうち,2行目29文字目から4行目6文字目まで
 表中,最左欄が「3」の行の「件名」欄のうち,1行目1文字目から5文字目まで,2行目22文字目から35文字目まで
 表中,最左欄が「4」の行の「件名」欄のうち,2行目3文字目から4文字目まで,3行目33文字目から4行目3文字目まで
 表中,最左欄が「5」の行の「件名」欄のうち,1行目8文字目から13文字目まで,1行目19文字目から2行目19文字目まで




別表3 不開示部分3の後半(文書3,通し頁11ないし16)のうち,不開示とすることが妥当である部分
該当欄 該当頁 不開示部分
受付年月日 11~14  年月日の日に該当する部分
件名 11 上から2事例目
・1行目1文字目から3文字目まで 
上から3事例目
・2行目4文字目から6文字目まで
・3行目2文字目から5文字目まで 
上から4事例目
・3行目14文字目から4行目2文字目まで 
12 上から1事例目
・3行目8文字目から12文字目まで
上から2事例目
・1行目1文字目から6文字目まで
上から3事例目
・2行目12文字目から4行目末尾まで
上から5事例目
・1行目1文字目から5文字目まで
上から6事例目
・2行目7文字目から10文字目まで
上から7事例目
・1行目1文字目から2行目14文字目まで
・3行目2文字目から5文字目まで
上から10事例目
・1行目11文字目から3行目末尾まで
13 上から1事例目
・1行目1文字目から2文字目まで
上から2事例目
・1行目1文字目から5文字目まで
上から5事例目
・3行目5文字目から11文字目まで
上から6事例目
・2行目8文字目から17文字目まで
上から7事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
・2行目4文字目から8文字目まで
上から8事例目
・1行目1文字目から4文字目まで
・2行目2文字目から6文字目まで
14 上から1事例目
・3行目8文字目から15文字目まで
上から3事例目
・3行目8文字目から12文字目まで
上から4事例目
・1行目12文字目から末尾まで
・2行目2文字目から5文字目まで
上から5事例目
・1行目1文字目から2文字目まで
上から8事例目
・1行目1文字目から6文字目まで
上から9事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
上から10事例目
・1行目1文字目から2文字目まで
・2行目3文字目から7文字目まで
・3行目5文字目から8文字目まで
相談概要 11 上から1事例目
・2行目4文字目から5文字目まで
・2行目18文字目から21文字目まで
・2行目29文字目から4行目10文字目まで
・4行目62文字目から5行目16文字目まで
上から2事例目
・1行目43文字目から2行目7文字目まで
・2行目31文字目から36文字目まで
上から3事例目
・1行目1文字目から2文字目まで
・1行目5文字目から9文字目まで
・2行目49文字目から3行目16文字目まで
・3行目22文字目から25文字目まで
・5行目22文字目から24文字目まで
上から4事例目
・1行目1文字目から14文字目まで
・1行目46文字目から49文字目まで
・2行目11文字目から4行目2文字目まで
上から5事例目
・1行目6文字目から28文字目まで
・1行目54文字目から3行目4文字目まで
上から6事例目
・1行目1文字目から2文字目まで
・1行目63文字目から66文字目まで
・2行目7文字目から13文字目まで
・2行目24文字目から28文字目まで
・3行目10文字目から5行目3文字目まで
・5行目8文字目から5行目62文字目まで
上から7事例目
・1行目1文字目から20文字目まで
・2行目24文字目から30文字目まで
・4行目23文字目から29文字目まで
・4行目69文字目から6行目23文字目まで
上から8事例目
・1行目25文字目から29文字目まで
・1行目65文字目から3行目53文字目まで
・4行目13文字目から17文字目まで
・5行目38文字目から42文字目まで
上から9事例目
・1行目1文字目から4文字目まで
・1行目24文字目から34文字目まで
・1行目51文字目から55文字目まで
・2行目21文字目から4行目17文字目まで
・4行目56文字目から5行目30文字目まで
12 上から1事例目
・1行目1文字目から3行目34文字目まで
上から2事例目
・1行目1文字目から8文字目まで
・1行目65文字目から末尾まで
・2行目12文字目から3行目24文字目まで
・3行目48文字目から4行目9文字目まで
上から3事例目
・1行目18文字目から22文字目まで
・1行目31文字目から35文字目まで
・1行目61文字目から2行目12文字目まで
上から4事例目
・1行目15文字目から36文字目まで
・1行目48文字目から52文字目まで
・1行目66文字目から末尾まで
・2行目29文字目から3行目17文字目まで
上から5事例目
・1行目14文字目から17文字目まで
・2行目34文字目から3行目末尾まで
上から6事例目
・2行目40文字目から3行目末尾まで
上から7事例目
・1行目1文字目から3行目51文字目まで
上から8事例目
・1行目25文字目から28文字目まで
・1行目47文字目から63文字目まで
・2行目18文字目から3行目6文字目まで
上から9事例目
・1行目8文字目から13文字目まで
・1行目19文字目から29文字目まで
・2行目6文字目から末尾まで
上から10事例目
・1行目12文字目から38文字目まで
・2行目63文字目から4行目19文字目まで
13 上から1事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
・2行目54文字目から3行目48文字目まで
・3行目56文字目から57文字目まで
・3行目64文字目から4行目24文字目まで
・4行目32文字目から36文字目まで
・5行目51文字目から6行目9文字目まで
・7行目10文字目から末尾まで
上から2事例目
・1行目3文字目から18文字目まで
上から3事例目
・2行目45文字目から3行目41文字目まで
・4行目14文字目から64文字目まで
・6行目1文字目から4文字目まで
上から4事例目
・2行目27文字目から42文字目まで
・2行目68文字目から71文字目まで
・3行目7文字目から9文字目まで
・3行目21文字目から28文字目まで
上から5事例目
・1行目13文字目から17文字目まで
・1行目45文字目から58文字目まで
・2行目13文字目から16文字目まで
・2行目52文字目から61文字目まで
・3行目21文字目から28文字目まで
・4行目59文字目から5行目1文字目まで
・5行目17文字目から末尾まで
上から6事例目
・1行目9文字目から16文字目まで
・1行目18文字目から27文字目まで
・1行目31文字目から40文字目まで
・1行目51文字目から55文字目まで
・1行目61文字目から63文字目まで
・2行目58文字目から67文字目まで
・3行目8文字目から末尾まで
上から7事例目
・1行目17文字目から20文字目まで
・1行目24文字目から31文字目まで
・3行目41文字目から45文字目まで
上から8事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
・1行目20文字目から24文字目まで
・3行目4文字目から9文字目まで
14 上から1事例目
・2行目50文字目から68文字目
上から2事例目
・1行目1文字目から2文字目
・1行目9文字目から14文字目まで
・2行目31文字目から35文字目まで
・4行目64文字目から68文字目まで
上から3事例目
・1行目1文字目から3行目34文字目まで
上から4事例目
・1行目24文字目から68文字目まで
上から5事例目
・1行目46文字目から47文字目まで
・1行目50文字目から54文字目まで
・1行目66文字目から70文字目まで
・3行目48文字目から4行目4文字目まで
上から6事例目
・1行目14文字目から25文字目まで
・2行目13文字目から16文字目まで
上から7事例目
・1行目15文字目から16文字目まで
・1行目30文字目から33文字目まで
・3行目9文字目から14文字目まで
上から8事例目
・1行目1文字目から8文字目まで
・1行目65文字目から末尾まで
・2行目12文字目から3行目24文字目まで
・3行目48文字目から4行目9文字目まで
上から9事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
・2行目3文字目から7文字目まで
上から10事例目
・1行目6文字目から9文字目まで
・1行目15文字目から22文字目まで
・1行目52文字目から59文字目まで
・1行目64文字目から71文字目まで
・3行目1文字目から29文字目まで
・4行目38文字目から42文字目まで
・5行目3文字目から7文字目まで
件名 15 上から1事例目
・1行目46文字目から末尾まで
・2行目26文字目から29文字目まで
・3行目6文字目から15文字目まで
・3行目45文字目から52文字目まで
・4行目30文字目から36文字目まで
上から2事例目
・1行目1文字目から3文字目まで
・1行目24文字目から30文字目まで
・2行目3文字目から6文字目まで
・2行目19文字目から22文字目まで
・2行目25文字目から29文字目まで
上から3事例目
・1行目1文字目から5文字目まで
上から4事例目
・3行目1文字目から2文字目まで
上から6事例目
・1行目1文字目から14文字目まで
・2行目36文字目から41文字目まで
・3行目3文字目から35文字目まで
・4行目21文字目から25文字目まで
上から7事例目
・1行目1文字目から2行目32文字目まで
上から8事例目
・2行目50文字目から52文字目まで
・3行目5文字目から13文字目まで
上から9事例目
・1行目23文字目から27文字目まで
上から10事例目
・1行目8文字目から17文字目まで
上から11事例目
・2行目15文字目から17文字目
16 上から1事例目
・1行目1文字目から49文字目まで
上から2事例目
・2行目8文字目から3行目8文字目まで
上から3事例目
・1行目1文字目から4文字目まで
・2行目1文字目から14文字目まで
上から4事例目
・1行目41文字目から42文字目まで
・2行目50文字目から58文字目まで
上から5事例目
・1行目8文字目から13文字目まで
・1行目19文字目から57文字目まで
 (注)表中の頁数は,本件対象文書の通し頁による。