諮問庁 | : | 国税庁長官 |
諮問日 | : | 平成24年 9月20日(平成24年(行個)諮問第107号) |
答申日 | : | 平成25年 6月 3日(平成25年度(行個)答申第16号) |
事件名 | : | 特定被相続人に係る所得税の確定申告書等の不開示決定(存否応答拒否)に関する件 |
第1 | 審査会の結論 被相続人である特定個人に係る平成17年ないし同22年分の所得税の確定申告書(第一表・第二表)及び青色申告決算書に記載された保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,取り消すべきである。 |
第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 | 審査請求の趣旨 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)12条1項の規定に基づく開示請求に対し,平成24年6月19日付け武中総総第170号ないし175号により武蔵府中税務署長(以下「処分庁」という。)が行った本件対象保有個人情報の不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。 |
2 | 審査請求の理由 審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書,意見書1及び意見書2の記載によると,おおむね以下のとおりである。 |
(1) | 審査請求書 |
ア | 被相続人特定個人は成年被後見人であり,平成17年から同22年までの所得税確定申告は,成年後見人が行っていたはずである。 |
イ | 成年被後見人と成年後見人は,民法869条及び644条により委任関係にあり,確定申告書の提出は義務で,提出しなければ債務不履行ないし不法行為に当たる。 |
ウ | 不開示理由として法14条2項が示されているが,成年後見人は登記されているので,氏名その他特定個人識別情報として保護の対象ではない。 |
エ | 法14条2項には,開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)とあり,青色申告書は開示されるべきである。 |
オ | 法14条2号のただし書で除くとある。同号ロにも該当していると考える。(平成24年1月13日に提出した上申書(以下「上申書」という。)で示した) |
(2) | 意見書1 |
ア | 平成21年1月22日最高裁判決により死者の預金開示請求が相続人単独でも認められるようになった。 この判決で「委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが,これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。」また,「取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」と述べられている。 相続人は本人(成年被後見人)が委任契約した受任者(成年後見人)の事務処理状況を把握する権利を有する。 相続人による開示請求は,本人の求めと同様に扱われるべきである。 税務署の窓口での対応は,他の共同相続人全員の同意があれば応じるとのことであり,窓口での対応に上記最高裁の判決の考え方は反映されていない。 |
イ | 成年後見人は,登記されており,当然の職務として成年被後見人の確定申告をするものであり,法14条2号にいう不開示情報で特定個人を識別できる情報として確定申告の有無さえ開示することができないならば,社会正義は消えてしまう。 審査請求人は,開示された確定申告書によって,委任者の事務処理状況を把握でき,権利が侵害されたかどうか判断でき,権利が侵害されたならば,証拠として戦える。 「権利の侵害と戦うことは,正義につながる。そうすることにより不正義を正すことができる」と言われている。法治国家において侵害された権利を取り戻すためには証拠が必要である。 行政は,究極的には国民の生存(個人の権利すなわち生命,身体,財産に対する侵害行為)と福祉を守るために存在する。そのため,国民は,納税の義務を負い国家維持に協力している。 国家は国民の生存と福祉を守るために存在し,権利侵害に対し個人が追及すべき民事上の権利闘争に国家の司法が配備されている。個人の権利者が自分の権利を守ることにより法律が守られ,国家の秩序が守られる。究極的には,一個人の利益ではなく,国家の利益となる。 国民の知る権利と法14条2号にいう不開示情報とを秤にかければ,国民の権利がはるかに重い。 |
ウ | 上記の理由により,諮問庁の判断は納得できない。 |
(3) | 意見書2 |
ア | 前書き 国家は,国民主権の基に国民の生存権(憲法25条)を保持するため努力しなければならない。 国民は,健康で文化的な生活を維持していくための行政費用は税金として納めねばならない。また,業務を執行する公務員は,国民全体の奉仕者である。成年後見人による成年被後見人の財産に関する不祥事はしばしば報道されており,税務調査をお願いしたのは社会正義のためである。成年後見人の財産管理については,以下の条文がある。 |
① | 民法644条(善管注意義務)「委任者は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。」 |
② | 民法859条1項(財産の管理及び代表)「後見人は,被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。」 |
③ | 民法709条(不法行為)「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護されるべき利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 (最高裁)「成年後見人の事務は公的性格があり,成年被後見人のため誠実に財産管理をする義務を負っている。」 |
イ | 要旨 法14条2号ただし書イ及びロに該当し,成年後見人による所得税確定申告書は開示されるべきである。 |
ウ | 理由 |
(ア) | 成年後見人業務に対する一般的見解 |
ⅰ | 参考 |
① | 日税連「税理士のための成年後見ガイドブック」より 成年後見人は法定代理人なので本人に代わって税務申告をします。 |
② | 新井誠他「成年後見制度-法の理論と実務」 「納税等も成年後見人の職務となる。」と述べている。 |
③ | 額田洋一「Q&A 成年後見の財産管理」 「Q26 被後見人の税金処理は誰がするのですか?」 「A 成年後見人が代理して申告,納税をする。」 |
ⅱ | このように税理士会ほか多数の通説も税務代理は成年後見人の職務とされる財産管理に含むと解している。 また,財産管理責任者である成年後見人に納税義務違反があれば,後見事務の善管注意義務違反に問われる。 前記の理由により,成年後見人は当然に確定申告をしなければならない。確定申告をしていなければ善管注意義務違反の不法行為であり,委任業務を果たさない債務不履行である。 それゆえ,法14条2項ただし書イに該当する。 |
ⅲ | 法14条2項ただし書ロについて 改めて,上申書と添付書類を提出し説明する。 |
(ⅰ) | 上申書の趣旨及び理由について 成年後見人は,アパート管理口座として,成年被後見人以外の口座を相続財産として計上した。しかし,この口座は,残高証明書も取れない状態であり,遺産分割協議書があっても引き出せないと銀行は言っている。そのため,この口座については遺産ではないと上申した。 準確定申告書から,この口座は事業用の口座として申告されているが,相続人の一人である名義の普通預金は,その者の所有であり,その者の収入であり,支出であり,成年被後見人の青色決算書から除外されるべきである。 成年被後見人の収入は,借入金返済口座である商工中金に入金された約35万円のみで,建物を維持するための固定資産税・損害保険料・申告するために要した税理士報酬は別の口座から支払われ,成年被後見人名義外の管理口座から入金はほとんどなく(一回のみ約40万円),成年後見人による虚偽申告であり,成年後見人と相続人の一人の名義人によって横領が行われていた疑いが濃い。 成年後見人と相続人の一人の名義人間には,アパート管理料について合意書が取り交わされていたようだが,その金額(10%超)は世間相場(家賃の3~5%)に比べ著しく高い。親族にアパート管理をさせるならば,世間相場より低価格で契約するのが成年後見人の業務本来の姿である。弁護士である成年後見人は,判例にも税法にも専門家として注意を払わなければならない。 横領の疑いが濃厚であり,成年被後見人財産権の侵害が高い。申告書の開示により明瞭に判断ができる。 相続人の財産保護に必要な情報である。 家庭裁判所に再三,財産目録と成年後見人報酬の開示を求めているが,いまだ開示されない。家庭裁判所と弁護士との関係は不明だが,裁判官の判断事項と言われ,何もできない状態になっている。 |
(ⅱ) | 最高裁平成21年1月22日の判決について 裁判が,金融機関相手としても下記の理由が変わるわけではない。 「委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが,これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。」 税務申告において,委任者が委任事務等の処理状況を把握し,適切性を判断するのに必要なのは,提出された申告書の控えである。国税通則法2条6号における署名・押印義務は本人(成年後見人)の責任を明らかにする趣旨である。提出された申告書の控えのみが,証明する。 法によって成年後見人の責任が保護されるのは,法律・判決・条理にかなわない。 |
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 | 理由説明書 |
(1) | 本件開示請求について 本件開示請求は,処分庁に対して「特定個人に係る平成17,18,19,20,21,22年分所得税の確定申告書(第1表・2表・青色決算書)」に記載された保有個人情報(本件対象保有個人情報)の開示を求めるものである。 処分庁は,本件開示請求に対し,本件対象保有個人情報が存在しているか否かを答えることにより,審査請求人以外の(被相続人である)特定個人が(平成17年分ないし同22年分の)所得税の確定申告書を提出した事実の有無(以下「本件存否情報」という。)という法14条2号の不開示情報が明らかとなるため,平成24年6月19日付け武中総総第170号ないし175号により,法17条に基づき,その存否を明らかにせずに開示請求を拒否する旨の不開示決定(原処分)を行っている。 これに対して審査請求人は,原処分の取消しを求めていることから,以下,本件存否情報の不開示情報該当性について検討する。 |
(2) | 本件存否情報の不開示情報該当性について 本件対象保有個人情報は,被相続人である特定個人が生前に処分庁に対して提出したとされる平成17年分から同22年分までの所得税の確定申告書第一表・第二表及び同17年分から同22年分までの所得税青色申告決算書であり,死者である特定個人に関する情報である。 法14条2号は,開示請求者以外の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により,開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものについては,不開示情報とする旨を規定している。 さらに,法17条は,開示請求に対し,当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当該保有個人情報の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる旨を規定している。 本件存否情報は,法14条2号にいう特定の個人を識別することができる情報であり,同号の不開示情報に該当することは明らかである。 審査請求人は,法14条2号ただし書ロの該当性を主張するが,同号ただし書ロに規定する「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要であると認められる情報」には,本件のような一個人の利益にとどまるものは該当しない(平成15年度(行情)答申第139号)と考えられていることから,同号ただし書ロには該当せず,同号ただし書イ及びハに掲げる情報にも該当しないものと認められる。 したがって,本件対象保有個人情報の存否を明らかにすることは,開示請求者以外の特定個人について法14条2号の不開示情報を開示することとなるため,法17条の規定により存否応答拒否すべきものと認められる。 |
(3) | 審査請求人のその他の主張について 審査請求人は,被相続人は成年被後見人であり,平成17年から同22年までの所得税の確定申告は成年後見人が行っていた旨主張する。 また,当該成年後見人は登記されているので,氏名その他特定個人識別情報として保護の対象ではないとも主張する。 しかしながら,審査請求人の申出の事実によって,法14条2号にいう特定の個人の確定申告の有無という不開示情報を明らかにすることができるものではないことから,この点に関する審査請求人の主張には理由がない。 審査請求人は,その他種々主張するが,これらの主張は原処分の決定を左右するものではない。 |
(4) | 結論 以上のことから,本件開示請求については,保有個人情報の存否を答えるだけで,特定個人の所得税の申告書提出の事実の有無という法14条2号の不開示情報を開示することになることから,法17条に基づき,当該保有個人情報の存否を明らかにすることなく,開示請求を拒否した原処分は妥当であると判断する。 |
2 | 補充理由説明書 上記1の理由説明書を以下のとおり補充する。 |
(1) | 事案の概要 上記1(1)のとおりである。 |
(2) | 不開示情報該当性等に係る諮問庁の主張について |
ア | 要旨 諮問庁は,本件存否情報が法14条2号ただし書イないしハに該当しないものであることを,補充して説明する。 |
イ | 法14条2号ただし書イ |
(ア) | 法14条2号ただし書イは,同号本文前段に該当する不開示情報のうち,法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報は除くとしている。 |
(イ) | 諮問庁において,審査請求書,上申書,意見書等(以下「審査請求書等」という。)を確認したところ,審査請求人の住所と被相続人の住所が同一であり,両者は親子関係であることが記載されている。 |
(ウ) | また,審査請求人は,審査請求書等において,次のとおり主張する |
A | 平成23年7月19日提出の被相続人準確定申告書は私文書偽造行為により勝手に提出されたものである。 |
B | 平成15年所得税確定申告から平成22年までの所得税確定申告の内容は成年後見人と法定相続人である特定個人による申告であり,申告内容について信頼できないため税務調査をして欲しい。 |
(エ) | 確定申告書の提出については,所得税法等(以下「法等」という。)によれば,一般に,各種の所得金額の合計額から基礎控除その他の所得控除を差し引き,その金額に基づいて計算した税額から配当控除額を差し引いて残額のある者で,自営業者や給与の収入金額が2000万円を超える者等は,同法120条等に基づき,税務署長に対し,総所得金額,控除の額等を記載した確定申告書及び所要の書類(添付書類)を提出しなければならないものとされている。 |
(オ) | すなわち,本件において特定個人が確定申告書を提出したか否かという情報は,上記(エ)に掲げるような当人に係る機微な事実であることから,税務署等の窓口で一般的に当該情報を当人以外の者に対して明らかにする取扱いをしておらず,そのような取扱いをするように定めた法令もない。また,このような取扱いは特定個人の相続人であっても異なるものではない。 |
(カ) | また,民法は成年被後見人の財産は成年後見人が管理する旨定めているところ,本件において,上記(イ)に掲げる事情があるとしても,成年後見人ではない審査請求人が,成年被後見人(又は成年後見人)が法等に基づき確定申告書を提出した事実の有無を慣行として知ることができたとは認められない。 |
(キ) | さらに,審査請求人は,審査請求書等において上記(ウ)のとおり主張するが,審査請求人が主張するような個人間(民事上)の紛争に関する事実関係を処分庁又は諮問庁において確認し,その主張が正しいものかを判断することは事実上不可能であり,審査請求人の主張のみをもって,審査請求人が確定申告を提出した事実の有無を知っているか否かを判断することはできない。 |
(ク) | 以上のことから,本件存否情報は,法令の規定により又は慣行として審査請求人が知ることができ,又は知ることが予定されている情報に当たるとは認められず,法14条2号ただし書イに該当しない。 |
ウ | 法14条2号ただし書ロ |
(ア) | 法14条2号ただし書ロは,同号本文前段に該当する不開示情報のうち,人の生命,健康,生活又は財産を保護するために開示することが必要であると認められる情報は除くとしており,これは,開示請求者以外の個人に関する情報について,不開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益よりも,開示請求者を含む人の生命,健康等の利益を保護することの必要性が上回るときには,当該情報を開示しなければならないこととするものである(行政機関等個人情報保護法の解説(ぎょうせい))。 |
(イ) | 一般に,開示請求者以外の第三者が確定申告書を提出したという事実の有無は,特定の個人を識別することができる情報であり,法14条2号本文前段の不開示情報に該当するものと認められる。 確定申告書を提出したという事実の有無は,特定個人に係る機微な情報であり,これは死者に関する情報であっても異なるものではない。 |
(ウ) | そこで検討するに,本件において,審査請求書等の記載内容から,審査請求人は本件被相続人の法定相続人であると思料され,相続財産を承継する余地があると考えられるが,仮に確定申告書が提出されていたとした場合であっても,本件対象保有個人情報は,あくまで被相続人が生前の収入金額,所得金額,税額等を税務署に申告したものにすぎず,開示請求者が法定相続人であるからといって,被相続人の個人情報が法定相続人の個人情報となるものではなく,また相続人の財産の保護に必要な情報であるとの確証もない。 |
(エ) | 以上のことから,本件において特定の個人の機微な情報を開示する必要性あるいは特殊な事情があるとまでは言えず,不開示により保護される被相続人の権利利益が,開示により保護される審査請求人の財産上の権利利益を上回るとまでは言えないことから,本件存否情報は法14条2号ただし書ロに該当しない。 |
エ | 法14条2号ただし書ハ |
(ア) | 法14条2号ただし書ハは,同号本文前段に該当する不開示情報のうち,公務員等の職務の遂行に係る情報は除くとしている。 |
(イ) | 本件存否情報は法14条2号ただし書ハ該当性を検討したが,同規定に該当する情報とは認められない。 |
オ | 審査請求人のその他の主張について |
(ア) | 審査請求人は,審査請求書等において共同相続人全員の同意があれば開示ができるとする処分庁の対応は,平成21年1月22日付け最高裁判決の考え方を反映していない旨主張する。 |
(イ) | しかしながら,審査請求人の上記主張は,国税庁において行政サービスとして実施している申告書等の閲覧に関する申請手続について言及しているものと考えられ,さらに,審査請求人の主張する最高裁判所判決は,金融機関における預金契約に基づく取引経過の開示請求権について争われたものであることから,いずれにしても,本件の法に基づく開示請求とは異なるものである。 |
(ウ) | したがって,審査請求人の上記主張には理由がなく,その他の主張についても,原処分の決定を左右するものではない。 |
カ | 結論 以上のことから,本件存否情報は,法14条2号本文前段に該当し,同号ただし書イないしハには当たらないことから,法17条に基づき,その存否を明らかにせずに開示請求を拒否するとして行った不開示決定は妥当である。 |
第4 | 調査審議の経過 |
① | 諮問の受理 | |
② | 諮問庁から理由説明書を収受 | |
③ | 審査請求人から意見書1を収受 | |
④ | 審議 | |
⑤ | 諮問庁から補充理由説明書を収受 | |
⑥ | 審査請求人から意見書2を収受 | |
⑦ | 審議 | |
⑧ | 審議 |
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 | 本件対象保有個人情報について 本件開示請求は,被相続人である特定個人に係る平成17年ないし同22年分の所得税の確定申告書(第一表・第二表)及び青色申告決算書に記載された保有個人情報(本件対象保有個人情報)の開示を求めるものである。 処分庁は,本件対象保有個人情報の存否を答えることは,審査請求人以外の(被相続人である)特定個人が(平成17年分ないし同22年分の)所得税の確定申告書を提出した事実の有無(本件存否情報)を明らかにすることとなり,法14条2号に規定する不開示情報を開示することになるとして,法17条の規定に基づき,本件対象保有個人情報の存否を明らかにせず,開示請求を拒否する決定(原処分)を行ったところ,諮問庁も原処分を妥当としている。 審査請求人は,原処分の取消しを求めていることから,以下,本件対象保有個人情報の存否応答拒否の妥当性について検討する。 |
2 | 本件対象保有個人情報の存否応答拒否の適否について 本件対象保有個人情報の存否について答えることは,被相続人である特定個人が平成17年分ないし同22年分の所得税の確定申告書を提出した事実の有無(本件存否情報)を明らかにする結果を生じさせることとなるものと認められる。 本件存否情報は,法14条2号本文前段に規定する開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報であると認められることから,以下,同号ただし書該当性について検討する。 |
(1) | 審査請求人は,被相続人である特定個人は成年被後見人であり,平成17年分ないし同22年分の所得税の確定申告は成年後見人が行っていたはずであると主張するとともに,意見書1及び意見書2の提出に際して様々な資料を添付し本件対象保有個人情報を開示すべきと主張している。 そのため,当該添付資料について,当審査会事務局職員をして確認させたところ,意見書2の添付資料の中に成年後見人が特定個人の財産管理をするために開設した2つの預金口座(成年後見人が途中で変更されたことにより2つの預金口座になった)の取引明細表が存在し,当該取引明細表には,①平成18年3月中旬には「コクゼイカンプキン」と表示された入金,②同19年及び同20年4月中旬,同21年7月上旬及び10月上旬,同22年5月中旬並びに同23年4月下旬には「ムサシフチュウゼイムショ」と表示された入金がそれぞれ認められた。 |
(2) | そこで,この点について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,所得税の確定申告を行い還付される税金がある場合には,一般に,所得税の確定申告書が提出されてからおおむね1か月から1か月半程度で還付金を預金口座に振り込んでいるとのことであった。 一般に,所得税の確定申告の申告期間は,申告をする年分の翌年の2月16日から3月15日までの期間であること及び前記取引明細表の各表示を踏まえると,上記(1)の各口座の入金は,被相続人である特定個人が所得税の確定申告を行った結果,還付金が発生し,それが振り込まれたものであると解することができる。 |
(3) | さらに,審査請求人が意見書2の提出に際して添付した資料のうち,①東京国税局長及び武蔵府中税務署長宛て提出した上申書には,審査請求人は,被相続人である特定個人の子かつ相続人であるとともに税理士であり,当該特定個人の所得税の確定申告書の提出に係る委任を受けていた時期もあったとの記載,②被相続人である特定個人の平成23年分の所得税の準確定申告書及び青色申告決算書(不動産所得用)には,特定個人が同4年12月から貸マンションを保有していた旨の記載がそれぞれ認められる。 |
(4) | 以上のことからすると,審査請求人は,被相続人である特定個人との関係から,当該特定個人が平成17年分ないし同22年分の所得税の確定申告を行っていたことを知っていたと言うべきであるから,本件存否情報は,法14条2号ただし書イの慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報に該当するものと認められる。 したがって,法17条に基づき,本件対象保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,本件存否情報が法14条2号の不開示情報に該当しないことから,これを取り消すべきである。 |
3 | 本件不開示決定の妥当性について 以上のことから,本件対象保有個人情報につき,その存否を答えるだけで開示することとなる情報は法14条2号に該当するとして,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号に該当せず,本件対象保有個人情報の存否を明らかにして改めて開示決定等をすべきであることから,取り消すべきであると判断した。 |
(第4部会) |