諮問庁 経済産業大臣
諮問日 平成24年 9月11日(平成24年(行情)諮問第362号)
答申日 平成24年12月 4日(平成24年度(行情)答申第339号)
事件名 家電リサイクル法施行後の指定引取場所に対する立入調査実施報告書の不開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 特定家庭用機器再商品化法(以下「家電リサイクル法」という。)施行後の指定引取場所に対する立入調査実施報告書(以下「本件対象文書」という。)について,開示請求に形式上の不備があることを理由に不開示とした決定は,妥当である。

第2  審査請求人の主張の要旨
 審査請求の趣旨
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成24年6月14日付け平成24・05・15公開関東第1号により,関東経済産業局長(以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

 審査請求の理由
(1)  審査請求書
 審査請求人は,平成24年5月15日付けで,処分庁に対し,法に基づき「家電リサイクル法施行後の①指定引取場所の全リスト及び②指定引取場所に対する立入調査実施報告書」の開示を請求した。

 処分庁は平成24年6月14日付けで,家電リサイクル法施行後の同法に基づく中間引取所(指定引取場所)のリスト(以下「本件リスト」という。)を開示とする決定及び原処分をした。

 本件審査請求で争う処分(原処分)の理由として,以下の記載があった。「②家電リサイクル法施行後の指定引取場所に対する立入調査実施報告書」(本件対象文書)については,平成24年5月16日付け平成24・05・16公開関東第1号「行政文書開示請求書の補正依頼について」をもって,①所定額の収入印紙を納付する旨及び②請求される行政文書を特定する旨の補正を同月31日を期限として依頼したが,貴殿より同年6月1日付け文書により補正依頼を拒否する旨の回答があり,また,現に期限内に補正がなされなかったことから,不開示とした。

 これについては,以下のことから原処分は妥当ではない。
 本件対象文書は,家電リサイクル法施行後の指定引取場所に対する立入調査実施後の報告書であり,該当行政文書を年度別にファイル保存していても「相互に密接な関連を有する文書」であり,一行政文書とみなすべきである。
 さらに,平成24年4月9日付けで関東地方環境事務所長に対して,法に基づき今回と同様の行政文書開示請求を行い,同年5月8日付け行政文書開示決定通知書(環関地廃発第120508001号)をもって開示決定通知を受け,同月15日に開示を受けた。その時も今回と同様に,「家電リサイクル法施行後の指定引取場所に対する立入調査実施報告書の開示」と申請し,文書保存期間内の平成19年度以降の該当行政文書の開示決定を受けた。この時の行政文書開示請求手数料は300円であった。
 すなわち,「家電リサイクル法施行後の指定引取場所に対する立入調査実施報告書」は,関東地方環境事務所の係官と関東経済産業局の係官が複数同行し立入調査を実施し,その結果を各々の関係部署の長に報告書を提出されており,関東地方環境事務所長は「相互に密接な関連を有す行政文書で,一行政文書。」,一方,処分庁は「年度別にファイルされて保存してあるから相互に密接な関連を有す行政文書ではない。したがって一行政文書ではない。」と判断し補正の指示を行った。
 同じ行政文書が複数の行政機関に保存された場合,各々の行政の長の考えで行政文書開示決定が異なる判断が行われることは法の趣旨からすると大きな問題であり,判断基準がダブルスタンダードではないか。

 以上のとおり,原処分は法の解釈,運用を誤ったものである。よって,その取消しを求めるため,本件審査請求を行った。

 本件審査請求までに至る処分庁との補正指示に関する交渉の経過を示す文書を添付し,審査請求人の主張を添付する。(添付資料省略)

(2)  意見書
 審査請求人から,平成24年10月10日付けで,意見書が当審査会宛て提出された。
 (諮問庁の閲覧に供することは適当でない旨の意見が提出されており,上記の記載にとどめる。)

第3  諮問庁の説明の要旨
 事案の概要
 本件開示請求は,本件リスト及び本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,本件リストについては,開示とする決定を行ったが,本件対象文書については,開示請求書に形式上の不備があると認められたため,下記3のとおりその補正を求めた。しかし,審査請求人からこれを拒否する旨の回答があり,現に期限内に補正がなされなかったことから,不開示とする原処分を行ったところ,その取消しを求める審査請求が行われたものである。

 本件対象文書の概要
 本件対象文書は,特定家庭用機器の製造又は輸入を業として行う者(以下「製造業者等」という。)が家電リサイクル法17条に基づき指定する指定引取場所に対して,関東経済産業局が立入調査を実施した際に作成した立入調査実施報告書である。
(1)  指定引取場所
 家電リサイクル法では,消費者・事業者が排出した特定家庭用機器廃棄物(以下「廃家電」という。)を小売業者が収集・運搬し,製造業者等がリサイクルを行うこととしている。
 家電リサイクル法17条は,製造業者等の引取義務について定めているところ,製造業者等は引き取る場所としてあらかじめ指定した場所において廃家電を引き取らなければならないこととしている。当該場所を指定引取場所という。

(2)  指定引取場所に対する立入調査実施報告書
 経済産業大臣及び環境大臣は,製造業者等の事務所,工場,事業場又は倉庫について,家電リサイクル法53条に基づき立入検査をさせることができる。これに加えて,経済産業省及び環境省は,製造業者等の委託を受けた指定引取場所についても,家電リサイクル法の施行状況について調査するため立入調査をしている。当該調査は,経済産業省にあっては経済産業局が,環境省にあっては地方環境事務所が行い,その都度,双方が実施報告書を作成することとしている。

 原処分及びその理由
 本件開示請求の対象は,本件リスト及び本件対象文書であり,開示請求手数料として金額の表示が300円の収入印紙1枚を貼付して行われた。
 処分庁は,本件開示請求に係る行政文書のうち本件リストについて,納付済みの行政文書1件分の開示請求手数料を充当し,開示とする決定を行った。また,本件対象文書については,法4条2項に基づき平成24年5月16日付け平成24・05・16公開関東第1号「行政文書開示請求書の補正依頼について」をもって,①所定額の収入印紙を納付する旨及び②請求する行政文書を特定する旨の補正を,同月31日を期限として依頼したが,審査請求人より同年6月1日付け文書により補正依頼を拒否する旨の回答があり,また,現に期限内に補正がなされなかったことから,不開示とした。

 審査請求人の主張についての検討
(1)  一件の行政文書とみなすべき複数の行政文書該当性
 検討の必要性
 本件対象文書は複数の行政文書であるところ,審査請求人は,これら行政文書を一件の行政文書とみなして開示請求手数料を算定すべき旨を主張しており,一件の行政文書とみなすべき複数の行政文書該当性について検討が必要となる。

 法令の規定
 開示請求手数料の算定に当たって一件の行政文書とみなす複数の行政文書として,公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)の施行の前後にかかわらず,行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(以下「施行令」という。)13条2項はおおむね下記を定めている。
 1号 一の行政文書ファイルにまとめられたもの
 2号 上記に掲げるもののほか,相互に密接な関連を有するもの

 施行令13条2項2号該当性について
 本件対象文書である複数の行政文書「指定引取場所に対する立入調査実施報告書」は,当該調査について年度ごとに一定の方針により実施していることを踏まえ,作成年度が同じである複数の行政文書については,相互に密接な関連を有するものとして,一の行政文書ファイルにまとめることとしている。
 このため,作成年度を異にし,別個の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書について一件の行政文書とみなすに当たっては,施行令13条2項2号該当性を検討する必要がある。
 この点,複数の行政文書が「相互に密接な関連を有する」か否かについては,開示請求者の判断により決まるものではなく,当該行政文書の内容等により客観的に判断されるものであり,例えば,要請と応答に係るもの,訴訟,審判手続等における一事件に係わるもの等が考えられ(『改訂 逐条解説 公文書管理法・施行令』(ぎょうせい,平成23年),『詳解 情報公開法』(総務省行政管理局編,財務省印刷局,同13年)),作成年度を異にし,継続案件でないものは,一般的には相互に密接な関連を有しているものとは言えないと考えられる。
 これを本件対象文書について見るに,当該文書は,異なる指定引取場所に対して個別案件としての継続性を有せずにされた立入調査に係るものであることから,別途の行政文書ファイルにまとめられているものについてまで,相互に密接な関連を有しているものと解することは困難であり,施行令13条2項2号に該当しないものと解される。

(2)  判断の二重性について
 本件審査請求の理由においては,「同じ行政文書」が複数の行政機関に保存された場合において,関東地方環境事務所長と処分庁との間で,開示請求に係る異なる判断が行われることは問題とされている。
 この点,行政文書は,各行政機関において作成・保有されるものであり(公文書管理法2条4項,法2条2項),法に基づく開示請求は各行政機関の長に対して行われ,当該請求に対する決定も同様に当該行政機関の長が行うものである。
 これを本件について見るに,家電リサイクル法における主務大臣が経済産業大臣及び環境大臣とされ(同法55条1項),両省において立入調査を実施し,それぞれが「立入調査実施報告書」を作成・保有する以上,開示請求に対する判断を一致させることまでが法の要請であるとは必ずしも言えず,判断がされた結果,その内容が異なることになったとしても,それが著しく不合理なものとまでは言えないものと考えられる。

 結論
 以上のことから,処分庁から発出された補正依頼を審査請求人が拒否したことを理由とする不開示決定(原処分)は,何ら違法又は不当であるものとは言えないことから,原処分はこれを維持することが相当と解する。
 したがって,本件審査請求については,棄却することとしたい。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
平成24年9月11日 諮問の受理
同日 諮問庁から理由説明書を収受
同年10月11日 審査請求人から意見書を収受
同年11月9日 審議
同月30日 審議

第5  審査会の判断の理由
 本件開示請求について
 本件開示請求は,家電リサイクル法施行後の①中間引取所の全リスト及び②上記リストに対する立入検査実施報告書の開示を求めるものであり,開示請求手数料として一件分300円が納付されていた。
 処分庁は,上記①については,本件リストを開示とする決定を行うとともに,上記②については,本件対象文書を特定した上,所定の手数料を納付する旨及び請求文書を特定する旨の補正依頼に対し,審査請求人からこれを拒否する旨の回答があり,また,期限内に補正がなされなかったとして,不開示とする原処分を行った。

 本件開示請求の補正の求めについて
 本件審査請求書に添付されている処分庁の補正依頼,これに対する審査請求人の回答等の文書によると,次の事実が認められる。
(1)  処分庁は,審査請求人に対し,平成24年5月16日付けで相当の補正期間(同月31日まで)を定めて,本件開示請求書の①開示請求手数料及び②請求する行政文書の名称等の形式上の不備につき補正を求め,①については,所定額の収入印紙が貼付されていないので,請求する行政文書(年度)分×300円の収入印紙を貼付すること,②については,請求する行政文書の年度が記載されていないので,年度を記載することを依頼した。

(2)  審査請求人から,本件開示請求書に300円の収入印紙を貼付しているので手数料の不足はないこと,家電リサイクル法施行後に作成された文書は全て一行政文書と判断できる旨の回答があったことから,関東経済産業局の担当課において,審査請求人宛てに,本件対象文書については,年度ごとに一の行政文書ファイルとして管理しており,年度をまたぐ継続案件でもないため,相互に密接な関連を有する行政文書に該当せず,請求する行政文書の年度を特定することが必要である旨の文書を送付したが,平成24年6月1日付けで審査請求人から補正依頼を拒否する旨の回答があった。

 施行令13条2項該当性について
(1)  施行令13条2項は,①一の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書(同項1号)又は②相互に密接な関連を有する複数の行政文書(同項2号)について,開示請求を一の開示請求書によって行うときは,開示実施手数料については当該複数の行政文書を一件の行政文書ファイルとみなすと規定しているところ,②に該当する文書とは,申請書と処分通知書のように要請と応答に係るもの,一事件に係る判決,裁決等と裁判所,審判機関への提出資料のように訴訟,審判手続における一事件に係るものというような文書を指すものと解される。

(2)  そこで,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,次のとおりであった。
 本件リストは,家電リサイクル法17条に基づく指定引取場所(廃家電を引き取る場所としてあらかじめ製造業者等が指定した場所)のリストであり,同法に関する問合せ業務等の参考に資する行政文書とともに,平成24年度家電リサイクル法関連資料と題する行政文書ファイルにつづられている。

 本件対象文書は,平成20年度分以降が年度ごとに該当年度を記した「家電リサイクル法施行状況に係る調査報告書関係書類」と題する行政文書ファイルにそれぞれつづられている。
 なお,平成19年度分以前の調査報告書は,保存期間(3年間)満了により廃棄されている。

 上記のとおり,本件リストと本件対象文書とは,異なる行政文書ファイルにつづられている上,相互に密接な関連を有する行政文書とは言えず,また,本件対象文書も年度ごとに異なる行政文書ファイルにつづられており,立入調査について年度をまたがった継続案件もないことから,本件対象文書についても,年度ごとの行政文書ファイルが相互に密接な関連を有する行政文書とは言えない。

 本件開示請求は開示請求手数料として1件分が納付されていただけであったので,開示請求手数料と請求文書の特定について補正を求めたが,審査請求人が補正を拒否したため,納付されていた開示請求手数料を本件リストの開示請求に充当し,本件対象文書については形式上の不備により不開示とする原処分を行った。

(3)  当審査会事務局職員をして公表されている経済産業省の行政文書ファイル管理簿を確認させたところ,本件対象文書がつづられている行政文書ファイルは平成20年度ないし同23年度のものが年度ごとに別々の行政文書ファイルとされていることが認められ,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,本件リストがつづられている行政文書ファイル及び本件対象文書のうちの同24年度分がつづられている行政文書ファイルについては,いずれも同年に作成されたもので,年度末に行政文書ファイル管理簿に登録することから,現在は公表されていないとのことであった。
 上記の確認結果に照らすと,諮問庁の上記(2)の説明に不自然,不合理な点はなく,本件リストと本件対象文書は一の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書に該当するとは認められず,また,本件対象文書も年度ごとに異なる行政文書ファイルにつづられており,一の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書に該当するとは認められない。
 また,本件リストと本件対象文書とは,指定引取場所のリストと指定引取場所に対する立入調査の報告書であるから,相互に密接な関連を有する複数の行政文書とは認められない。さらに,本件対象文書については,上記のとおり,年度ごとに異なる行政文書ファイルにつづられており,年度をまたがった継続案件がないことを考慮すると,年度ごとの行政文書ファイルが相互に密接な関連を有する複数の行政文書とは認められない。

(4)  上記2のとおり,処分庁が,開示請求手数料を追加納付すること及び本件対象文書につき年度を特定することにつき相当期間を定めて補正を求めたのに対し,審査請求人が補正を拒否したことから,開示請求手数料の未納及び請求文書の不特定という形式上の不備は補正されなかったことになる。
 したがって,本件開示請求のうち,本件対象文書に係る分につき,形式上の不備を理由として不開示とした原処分は妥当である。

 審査請求人のその他の主張について
 審査請求人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。

 本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,処分庁が,本件開示請求に対し,相当の期間を定めて補正を求めたところ,審査請求人である開示請求者がその補正に応じなかったことにより,本件開示請求のうち本件対象文書に係る分に形式上の不備があることを理由として不開示とした決定は,妥当であると判断した。














(第2部会)
委員 遠藤みどり,委員 池田綾子,委員 橋本博之