諮問庁 独立行政法人都市再生機構
諮問日 平成24年 2月 9日(平成24年(独情)諮問第3号)
答申日 平成24年11月22日(平成24年度(独情)答申第39号)
事件名 特定学校法人との間で締結された土地譲渡契約に基づく協議内容の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 別紙の1に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,別紙の2のⅡないしⅣに掲げられる文書につき,改めて開示決定等をすべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
 異議申立ての趣旨
 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成23年12月26日付け「に907-97」により,独立行政法人都市再生機構(以下「機構」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

 異議申立ての理由
(1)  異議申立書
 機構が特定学校法人と交わした土地譲渡契約(以下「本件契約」という。)には,譲渡対象である土地(以下「本件土地」という。)の所有権移転及び土地引渡しの時期について,特定都道府県と同法人との間での学校設置認可の手続に関する事前協議の結果を踏まえ,機構が同法人と協議の上決定することとされており,機構は,当該協議についての協議録を作成すべきである。
 また,機構は特定学校法人との間で本件土地の所有権移転及び引渡しの時期に関し確認を行った際に,機構の特定職員が作成したとされる会議メモ(以下「個人メモ」という。)の存在を明らかにしており,正式な協議録がないのであれば,個人メモを開示すべきである。

(2)  意見書
 活動の記録を残し,公開することにより,機構は,国民に対する説明責任を全うできるのであって,「口頭により確認を行った」ことについても,その経過を記録保存すべきである。
 機構が特定都道府県と特定学校法人との間での学校設置認可の手続に関する事前協議が完了したと判断し,本件土地の所有権移転及び引渡しの時期について決定するまでの過程を示す協議録や決定書等について,個人の作成した備忘録(個人メモ)しか存在しないとの諮問庁の説明は,法の趣旨からしても是認し難い。
 また,個人メモが,機構において,後の文書作成や協議に用いられるのであれば,同メモは,組織的に用いるものとして機構が保有する法人文書に該当する。

第3  諮問庁の説明の要旨
 経緯
 本件開示請求は,機構が特定学校法人と交わした土地譲渡契約(本件契約)に基づき,譲渡対象である土地(本件土地)の所有権移転及び土地引渡しの時期について,機構と同法人とが行った全ての協議内容が分かる文書(本件対象文書)の開示を求めるものである。
 処分庁は,本件土地の所有権移転及び引渡しの時期については,現地での境界確認作業,譲渡代金残金の支払手続,所有権移転登記に係る事務手続に要する期間について,随時口頭により具体の時期を確認し,決定したもので,本件対象文書は存在しないとして不開示決定(原処分)を行った。

 原処分の妥当性について
 本件契約において,本件土地の所有権移転及び土地引渡しの時期については,特定都道府県と特定学校法人との間での学校設置認可の手続に関する事前協議結果を踏まえ,機構が同法人と協議の上決定することとされ,また機構が本件土地の取得募集を行った際公にされた募集要領にも,行政の許認可(届出)等が必要な施設については,土地引渡し時期等について別途協議の上決定することとされている。
 異議申立人は,機構が特定学校法人と行った協議について協議録を作成すべきと主張するが,当該協議の内容は,現地での境界確認作業,譲渡代金残金の支払手続,所有権移転登記に係る事務手続に要する期間についてのものであり,随時口頭により確認できる事項であり,協議録の作成は行われていない。
 また,機構の特定職員が作成したとされる会議メモ(個人メモ)の存在が確認できたものの,個人メモは職務上作成されたものではなく,組織的に用いられるものではないため,法人文書に該当せず,本件対象文書は存在しないとして不開示とした原処分は妥当である。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
平成24年2月9日 諮問の受理
同日 諮問庁から理由説明書を収受
同年3月28日 異議申立人から意見書を収受
同年5月23日 審議
同年10月9日 審議
同年11月12日 審議
同月20日 審議

第5  審査会の判断の理由
 本件対象文書について
 本件開示請求は,別紙の1に掲げる文書(本件対象文書)の開示を求めるものである。
 処分庁は,機構が特定学校法人と交わした土地譲渡契約(本件契約)に基づき,譲渡対象である土地(本件土地)の所有権移転及び土地引渡しの時期について,機構と同法人とが行った全ての協議内容が分かる文書(本件対象文書)の開示を求めるものであると理解し,本件土地の所有権移転及び引渡しの時期については,現地での境界確認作業,譲渡代金残金の支払手続,所有権移転登記に係る事務手続に要する期間について,随時口頭により具体の時期を確認し,決定したもので,本件開示請求の対象となる文書は存在しないとして,不開示とする原処分を行った。
 これに対し異議申立人は,機構は特定学校法人との間で本件土地の所有権移転及び引渡しの時期に関し確認を行った際に,機構の特定職員が作成したとされる会議メモ(個人メモ)の存在を明らかにしており,正式な協議録がないのであれば,個人メモを開示すべきであるとして異議申立てを行った。
 諮問庁は,個人メモは職務上作成されたものではなく,組織的に用いられるものではないため,法人文書に該当せず,本件対象文書について,存在しないとして不開示とした原処分は妥当である旨説明する。
 そこで,本件対象文書の存否について,諮問庁から聴取した説明を踏まえ,以下検討する。

 本件対象文書の存否について
 当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,本件契約の締結以降,本件土地の引渡しの日までに,機構と特定学校法人との間で交わされた文書等として,別紙の2のⅠないしⅥの存在が確認できた旨説明する。
 当審査会事務局職員をして諮問庁に,上記以外に,本件契約の締結以降,本件土地の引渡しの日までに,本件契約に基づき機構と特定学校法人との間で交わされた文書等の有無について確認させたところ,機構において新たな文書等の存在を確認することはできなかった旨説明する。
 上記諮問庁の説明に特段,不自然不合理な点は認められないことから,以下,別紙の2のⅠないしⅥについて検討する。
(1)  別紙の2のⅠについて
 当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,別紙の2のⅠは特定都道府県と特定学校法人との間での学校設置認可の手続に関する事前協議が終了した旨を同法人から機構に対し通知する文書であり,異議申立人が求める機構と同法人との間で行った本件土地の所有権移転及び引渡し時期についての協議内容が記載されたものではない旨説明する。
 当審査会において,諮問庁から別紙の2のⅠの提示を受け確認したところ,特定学校法人から機構に対し,同法人と特定都道府県との事前協議が完了し学校設置認可の申請が受理された旨の記載は認められるものの,当該協議の具体的な内容の記載は認められず,また,本件土地の所有権移転及び引渡しの時期についての記載も認められないことから,別紙の2のⅠについては,本件対象文書として特定すべき文書とは認められない。

(2)  別紙の2のⅡについて
 当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,別紙の2のⅡは,機構の特定職員が作成したとされる会議メモ(個人メモ)であり,機構から同職員に貸与されたパソコンに保存されているものであるが,同メモは職務上作成されたものではなく,組織的に用いられるものではないため,機構が保有する法人文書には該当しない旨説明する。
 当審査会において,諮問庁から別紙の2のⅡの提示を受け確認したところ,別紙の2のⅡは,機構の特定職員が特定年月日に特定学校法人の担当者と行った打ち合わせの内容が記載されたものであり,本件土地の引渡しの時期及び現地での境界確認作業についての記載が認められる。
 したがって,別紙の2のⅡは,職務遂行上,特定職員により作成されたものと見ることができる。
 また,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,上記の打ち合わせに機構側として参加したのは特定職員のみであり,同職員は,本件土地の引渡し日を確認できる文書の作成について組織として当然期待されていたと見ることができ,個人メモ以外にそれに該当する文書は存在せず,さらに,同メモの記載内容を基に本件契約に係る後述の別紙の2のⅢないしⅥの作成等が,同職員によって行われたと見るほかない状況から判断すると,別紙の2のⅡについて法人文書としての組織共用性が認められるので,これを本件対象文書として特定すべきである。

(3)  別紙の2のⅢ及びⅣについて
 当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,別紙のⅢ及びⅣのいずれの文書も本件土地の引渡日が決定されたことを受けて作成等が行われたものであることから,異議申立人が求める機構と同法人との間で行った本件土地の所有権移転及び引渡し時期についての協議内容が記載されたものではない旨説明する。
 当審査会において,別紙の2のⅢ及びⅣについて諮問庁から提示を受け確認したところ,別紙の2のⅢには,機構から特定学校法人に対し本件土地を引渡す旨並びに本件土地の所在地及び引渡し日についての記載が認められる。
 また,別紙の2のⅣには,特定学校法人から機構に対し本件土地を受領した旨並びに本件土地の所在地及び引渡し日についての記載が認められる。
 本件対象文書は,機構と特定学校法人とが行った本件土地の所有権移転及び土地の引渡しについて全ての協議内容の分かる文書であるところ,別紙の2のⅢ及びⅣは当該協議の結果について協議の当事者間でやりとりされた文書であることから,本件対象文書として特定すべきである。

(4)  別紙の2のⅤ及びⅥについて
 当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,別紙の2のⅤの土地譲渡代金等請求書は機構が特定学校法人に対し本件土地に係る土地譲渡代金等を請求する旨の文書であり,別紙の2のⅥの土地譲渡代金等領収書は機構が上記請求額について領収したことを証する文書であって,いずれの文書も本件土地の引渡日が決定されたことを受けて作成等が行われたものであり,異議申立人が求める機構と同法人との間で行った本件土地の所有権移転及び引渡し時期についての協議内容が記載されたものではない旨説明する。
 上記諮問庁の説明について特段,不自然不合理な点は認められず,そうであれば,別紙の2のⅤ及びⅥについては,本件対象文書として特定すべき文書とは認められない。

 異議申立人のその他の主張について
 異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

 本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,都市再生機構において別紙の2のⅡないしⅣに掲げられた文書を保有していると認められるので,これにつき改めて開示決定等をすべきであると判断した。









(第5部会)
委員 戸澤和彦,委員 椿 愼美,委員 山田 洋





別紙

 本件対象文書
 特定学校法人と都市再生機構との間で交わされた土地譲渡契約書で「甲(機構)は所有権移転及び土地引渡しの時期を第23条に規定する特定都道府県との事前協議の結果を踏まえて乙(特定学校法人)と協議の上決定するものとする」の全ての協議内容が分かる文書
 本件土地の取得希望者の募集要領で「行政の許認可(届出)等が必要な施設については契約締結時期及び土地引渡し時期等について別途協議の上決定するものとします」の全ての協議内容が分かる文書

 本件契約の締結以降,本件土地の引渡しの日までに,機構と特定学校法人との間で交わされた文書等
Ⅰ 学校設置認可の手続に関する事前協議完了通知書
Ⅱ 機構の特定職員が作成したとされる会議メモ(個人メモ)
Ⅲ 土地引渡書
Ⅳ 土地受領書
Ⅴ 土地譲渡代金等請求書
Ⅵ 土地譲渡代金等領収書