「最高検察庁において特定日付けの訴訟費用調定票の決裁を行った職員(特定職員Aを除く。)の人事記録」(以下「本件対象文書」という。)について,開示請求に形式上の不備があることを理由に不開示とした決定は,妥当である。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成24年3月5日付け法務省人記第25号により法務大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。
本件は補正する必要がない事案であり,よって,形式上の不備はない。
よって,異議申立人が求めている行政文書は,全て開示されなければならない。
本件異議申立てに係る行政処分(原処分)は,「最高検察庁が作成した別紙(特定日付け訴訟費用調定票)の決裁を行った職員の氏名と経歴が分かる行政文書(略履歴)」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対する不開示決定である。
本件開示請求の対象となる行政文書として,当時,最高検察庁に在籍した検察事務官3名分の人事記録が該当するところ,行政文書3件分の開示請求手数料の納付が必要であるにもかかわらず,当該開示請求手数料の追加納付を求める補正を行ったが,異議申立人から手数料の追加納付がなかったため,2名分の人事記録(本件対象文書)については,開示請求手数料未納による形式上の不備により法9条2項に基づき原処分を行ったものである。
なお,既に納付されていた開示請求手数料1件分については,法9条1項の規定に基づき,当時,最高検察庁総務部検務課長であった特定職員Aの人事記録について別に開示決定を行っている。
異議申立人は,原処分を取り消し,行政文書の開示を求めている。しかしながら,本件異議申立書には何ら具体的な理由が記載されておらず,そもそも主張自体失当である。
以下,念のため,原処分が適法な理由を説明する。
(1) |
本件開示請求の対象となる文書は,当時の最高検察庁職員3名の人事記録3件であり,職員の氏名と経歴が記載されている。 |
(2) |
法務省本省では,任命権者が法務大臣若しくは同省大臣官房人事課長である職員の人事記録を保有している。そのため,当該3名のうち1名については,任命権者が法務大臣若しくは同課長でないことから,同省本省において人事記録を保有していない。 |
(3) |
人事記録は,各職員ごとに作成されるものであり,人事記録として一つの行政文書ファイルにまとめられた行政文書ではなく,また,別の職員の当該文書と相互に密接な関連を有する行政文書でもないため,各職員の人事記録ごとに開示請求に係る行政文書1件として取り扱われることになる。 |
(4) |
ところが,本件開示請求については1件分の手数料300円しか納付されていなかったことから,異議申立人に対し,上記人事記録3件が本件開示請求の対象文書に該当すること,法務省本省においては,3名のうち1名分の人事記録については保有しておらず,2名分の人事記録のみを保有していること,仮に,同省本省で保有する当該2件の開示を求めるのであれば,開示請求手数料として600円が必要なため,更に300円分の収入印紙を追加納付するよう補正を求めた。
同時に,異議申立人に対し,上記追加納付がない場合には対象文書である人事記録のうちいずれか1件のみの開示を求めるものと取り扱わざるを得ないので,既に納付している開示請求手数料をいずれの職員の人事記録に充当させるのか明確にされたい旨補正を求めるとともに,いずれでも構わないのであれば,特定職員Aの人事記録について開示決定する旨告知した。 |
(5) |
これに対し,異議申立人は,上記補正には回答せず,また,特定職員Aの人事記録について開示決定することに異議を申し立てなかったことから,本件開示請求の対象となる文書を特定職員Aの人事記録と特定し,別に開示決定を行った。 |
(6) |
他の職員の人事記録2件(本件対象文書)については,開示請求手数料として,600円分の収入印紙が追加納付されなかったことから,開示請求手数料未納による形式上の不備により原処分を行ったものである。 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① |
平成24年3月30日 |
諮問の受理 |
② |
同日 |
諮問庁から理由説明書を収受 |
③ |
同年4月24日 |
異議申立人から意見書を収受 |
④ |
同年8月9日 |
審議 |
本件開示請求は,「最高検察庁が作成した別紙(特定日付け訴訟費用調定票)の決裁を行った職員の氏名と経歴が分かる行政文書(略履歴)」の開示を求めるものであり,開示手数料として1件分300円が納付されていた。
処分庁は,対象となるのは3名分の人事記録(なお,うち1名分については法務省において保有していない。)であり,3件分の手数料の納付が必要であるとして,手数料が1件分しか納付されていなかったことから,特定職員A分につき開示決定(別件決定)をし,その余につき,手数料未納により不開示とする原処分を行った。以下,原処分の妥当性につき検討する。
諮問と同時に諮問庁から収受した経過文書によれば,次の事実が認められる。
(1) |
処分庁は,本件開示請求に係る行政文書は,人事記録として職員ごとに作成されるものであり,全職員分が一つの行政文書ファイルにまとめられた行政文書ではなく,また,別の職員の当該文書と相互に密接な関連を有する行政文書でもないため,各職員の人事記録ごとに開示請求に係る行政文書1件として取り扱われていることから,人事記録を保有していない職員1名の人事記録を除いたとしても,2名の人事記録につき,2件分の開示請求手数料が必要であると判断した。
そこで,処分庁は,平成24年2月2日付け求補正書により,異議申立人に対し,請求対象の職員3名の人事記録のうち,1名分については法務省において保有していないことを通知すると同時に,同月20日を期限として,2名分の人事記録について開示を求める場合は,既に納付した1件分の開示請求手数料300円のほかに,1件分300円の開示手数料の追加納付が必要であるとして,これを求め,また,追加納付をしないときは,納付済みの1件分の開示手数料を保有するいずれの行政文書の開示請求に充当するかを回答するように求め,さらに,この回答がないときは,特定職員Aの人事記録に充て,その余については,形式上の不備(開示請求手数料の未納)により不開示決定がなされることになると告げた。
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(2) |
これに対し,異議申立人は,その期限までに,開示請求手数料を追加納付せず,また,何らの回答も行わなかった。
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(1) |
本件開示請求の対象文書は,職員3名の人事記録(実際に保有しているのは,そのうち職員2名の人事記録)であり,それぞれ別の行政文書ファイルにまとめられているとの説明に,不自然・不合理な点は認められず,また,相互に密接な関連を有する行政文書でもないから,これを前提とすると,法務省において保有していない職員に係るものを除いたとしても,それらの開示手数料は2件分600円になり,異議申立人は,開示手数料として300円しか納付していなかったのであるから,開示請求手数料が不足していたことになる。
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(2) |
上記2のとおり,処分庁は,職員3名の人事記録のうち,1名分については保有していないことを通知すると同時に,2名分の人事記録について開示を求めるなら,不足する開示手数料を納付するように,相当期間(17日)を定めて補正を求めたにもかかわらず,異議申立人は,その期間内にこれを納付しなかったのであり,また,既に納付した開示手数料300円をどの文書の開示請求に充当するかの回答をしなければ,特定職員A分に充当し,その余については形式上の不備(開示請求手数料の未納)により不開示決定がなされることになると告知したのに,異議申立人は,その回答もせず,法務省において保有されていない職員1名分の人事記録についても,請求を取り下げるなど何らの意思表示もしなかったものである。
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(3) |
以上によれば,納付済みの開示手数料は,特定職員A分に充当されたことになり,他方,その余の人事記録の開示請求については,適正な求補正を受けながら,開示請求手数料未納という形式上の不備が補正されなかったことになる。
したがって,本件開示請求のうち,本件対象文書に係る分につき,形式不備(開示請求手数料の未納)を理由として,不開示とした原処分は妥当である。
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異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
以上のことから,処分庁が,本件開示請求に形式上の不備があるとして相当期間を定めて補正を求めたところ,異議申立人である開示請求者が,その期間内に補正に応じなかったことにより,本件開示請求のうち,本件対象文書に係る分に形式上の不備があることを理由として不開示とした決定は,妥当であると判断した。
委員 小林克已,委員 中村晶子,委員 村上裕章