答申本文
諮問庁財務大臣
諮問日平成18年 5月17日 (平成18年(行個)諮問第24号)
答申日平成18年11月 8日 (平成18年度(行個)答申第29号)
事件名本人に係る通関士試験答案用紙の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 平成17年第39回通関士試験における異議申立人本人の採点済み答案用紙に記載されている保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)の開示請求につき,その一部を不開示とした決定については,不開示とされた部分を開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨

 異議申立ての趣旨
 本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)12条1項の規定に基づく本件対象保有個人情報の開示請求に対し,平成18年2月6日付け財関第70号により財務大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った本件対象保有個人情報の一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。

 異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書によれば,おおむね次のとおりである。

(1)  各種試験においては,試験後に正解例や配点を公表している場合が多い。試験実施団体の内部で処理するのではなく,得点や,採点基準や採点結果を公表することによって第三者のチェック機能が働き,万が一の採点ミス等に対しての防御となるからである。受験者本人や第三者が試験をチェックすることで,より試験の公正さが増す。得点,採点基準や採点結果を公開することは,試験実施団体が公正な試験を行うための努力の現れにほかならない。昨今の民間における試験においては,解答や配点は勿論のこと,本人の請求によって,得点も開示している。
 受験者本人が納得するためにも,また,公正な試験が行われていると外部に証明するためにも,試験の採点や採点基準の公開及び本人請求による得点の開示は,より積極的に進められるべきであると考える。
 今回の請求に係る通関士試験は,語句埋め問題であるため,採点者の主観等が影響する余地は少なく,不開示とした理由の適正な試験業務の遂行に支障を来すおそれがあるとは考えられない。ましてや,請求者本人の得点を本人に開示した場合に,なぜ公正な試験や本来の試験趣旨が損なわれるのか理解できない。

(2)  諮問庁は,具体的な配点を開示することにより,受験者が配点の高いところを重点的に勉強することを助長し,そのため,通関士としての適正な能力を問うという本来の試験趣旨が損なわれると説明する。しかしながら,配点が高いということは重要度が高いということなので,その部分の知識能力を身につけているかどうかを問うのは,資格試験において本来最も重要なことではないか。重要なところを間接的(配点)に示すことにより重要な部分の知識を習得することを推進するべきである。

(3)  諮問庁は,具体的な採点基準が蓄積されたものを取得できる者とできない者との間で試験の公平性が損なわれ,ひいては,公平な試験の運営が損なわれると主張するが,情報を取得し,受験に役立てることも,取得せずに個人で努力することも,あくまでも,個人の判断・責任であり,一般に開放された情報を取得する,しないは自己責任の問題である。財務省は,むしろ積極的に情報開示を進め,もって試験の公正性を高めるべきである。

(4)  諮問庁の考えでは,今回開示することにより,今後質問・苦情の増加が予想されるため,他の業務の遂行に支障が生じることとなり,ひいては,試験業務の適正・円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため不開示としたと説明するが,試験事務局の体制が不十分であることをもって,不開示決定の理由であること自体,理解できない。

(5)  異議申立人は,通関士試験の7科目のうち,どの科目により不合格となったかを問い合わせたものである。しかるに財務省からは科目ではなく,短答式,記述式との回答が不開示として送られてきた。

第3  諮問庁の説明の要旨

 本件対象保有個人情報の特定等について

(1)  開示求書の記載内容によれば,本件対象保有個人情報は,平成17年第39回通関士試験の受験者である異議申立人について,処分庁が当該試験において作成又は取得した保有個人情報であるが,開示請求時に異議申立人からは,短答式問題か,記述式問題かで,どちらか不合格となった問題の採点済み答案用紙の開示請求とする旨の意思表示があった。
 異議申立人の短答式問題の得点は,各科目とも合格基準に達しているが,記述式問題の得点が合格基準に達していないため不合格となっていたことから,処分庁は,次の(2)に記載の本件対象保有個人情報を特定し,原処分において,当該各科目の総得点及び採点結果を不開示とした。

(2)  平成17年第39回通関士試験において財務省が作成又は取得をした、異議申立人を本人とする次の①から④までの行政文書に記録されている、保有個人情報。

 通関業法(記述式問題)の答案用紙

 関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(第6章に係る部分に限る。)(記述式問題)の答案用紙

 通関実務(記述式第1問)の答案用紙

 通関実務(記述式第2問)の答案用紙

 通関士制度について

(1)  通関業者及び通関士について
 通関業者とは,税関官署に対して行う輸出入申告等の手続を輸出入者に代わって行うことを事業とする者をいう。これらの手続が適正かつ迅速に行われるためには,通関業者が税関官署に提出する申告書類等の通関書類が適正であることが必要であり,このため通関業者は,通関業法により,通関業務に関する専門的知識を有する通関士を,原則として通関業務を行う営業所ごとに置かなければならないこととされている。
 通関士は,通関業者が税関官署に提出する通関書類の審査等,関税の申告納付その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保する上で重要な責務を担っている。

(2)  通関士試験制度について
 通関士になろうとする者は,通関業法23条に基づき,通関士試験に合格しなければならない。通関士試験は,昭和42年から実施されている国家試験であり,通関士となるために必要な知識及び能力を有するか否かを判定することを目的として,同法27条に基づき,年1回以上(平成17年は10月2日に実施),次の3科目により各税関長が実施している。

 通関士試験科目

(ア)  関税法,関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)(以下「関税法等」という。)

(イ)  通関書類の作成要領その他通関手続の実務(以下「通関書類作成等」という。)

(ウ)  通関業法

 (注)各科目は,短答式問題と記述式問題により構成されている。

 採点等
 なお,通関士試験においては,試験問題への自己解答の転記及び持ち帰りを認めており,合格発表時においては,税関ホームページで次の情報を公開していることから,受験者は自己採点を行うことが可能となっている。

(ア)  模範解答(短答式問題は「正解」,記述式問題は「正解例」)

(イ)  各試験科目の問題ごとの配点

(ウ)  合格基準(短答式問題:各科目とも満点の60%以上,記述式問題:各科目とも満点の60%以上(通関書類の作成については,輸出申告書及び輸入申告書ごとに満点の60%以上))

 不開示情報該当性

(1)  通関業法(記述式問題)の答案用紙及び関税法等(記述式問題)の答案用紙の総得点及び採点結果について
 通関業法及び関税法等の記述式問題は,通関業法,関税法等に基づく制度及び手続について,当該関係条文を正しく理解しているか否かを判定するため,例文の空欄に当該法令用語を記入させる形式となっている。
 当該記述式問題は,合格者発表時に正解例を公表しているが,採点に当たっては,設問により,公表している正解例以外にも,正解例と同義語と認められるものについては正解とし,得点を与えている。
 受験者は,正解「例」として公表されていることから,これ以外にも正解とみなされる語句があることは合理的に推測できるが,その具体的な語句及びその得点の扱いまでは推測できない。このため,受験者は関係法令を正しく理解し,解答するよう勉強しており,試験の趣旨もその理解度を判定することにある。
 採点結果については,これを開示することにより,異議申立人は,正解とみなされる語句の例とその得点の扱いを知ることとなる。
 加えて,これらを開示した場合には同様の開示請求が続出することが容易に想定されることから,複数の開示請求者が情報交換すること等により,正解とみなされる語句の事例が積み重なる。
 その結果,具体的な採点基準(正解とみなされる語句の具体的な範囲及び得点の扱い)が明らかとなり,正確な法令用語の理解の妨げとなる可能性があるとともに,蓄積された事例を取得できた者と取得できない者との間で試験の公平性が損なわれることとなる。異議申立人は,次回の試験を受験することが当然に想定されることから,受験者間での公平な試験の運営が損なわれるおそれがある。以上により,採点結果は,法14条7号の不開示情報に該当する。
 また,通関業法及び関税法等の総得点についても,受験者は,自己採点をすれば,総得点と自己採点との差により,正解として扱われた同義語を特定できる可能性が極めて高くなるとともに,その得点の扱いを知ることとなり,前記の採点結果と同様の理由から,法14条7号の不開示情報に該当する。

(2)  通関実務(記述式第1問 輸出申告書)の答案用紙及び通関実務(記述式第2問 輸入申告書)の答案用紙の総得点及び採点結果について
 通関書類作成等のうち,輸出申告書及び輸入申告書の作成に関する記述式問題については,通関士として必要な実務能力である,各申告書全体について,正確に記載できる能力を有するか否かを判定することを目的としており,記載事項の難易度や重要度に応じて配点に差をつける等特殊なものとなっている。
 これらの問題は,模範解答及び各申告書全体の配点(輸出:40点、輸入:60点)が問題用紙に記載され,各記載欄の具体的な配点は記載されていない。
 採点結果については,これを開示することにより受験者は具体的な配点を知ることとなる。
 その結果,受験者が配点の高いところを重点的に勉強することを助長し,多くの受験者が拝点主義に走るおそれが高く,このような者が多数合格基準を満たすことは,通関士としての適正な申告書の作成能力を問うという本来の試験趣旨が損なわれるおそれがあることから,法14条7号の不開示情報に該当する。
 また,各申告書ごとの総得点についても,通常,受験者は持ち帰りが認められている問題用紙に自己の解答を転記しており,問題用紙に転記した自己の解答を,公表している正解に基づき自己採点をすれば,配点のウェイトを知ることとなることから,開示することにより,前記と同様の効果をもたらすこととなるため,法14条7号の不開示情報に該当する。

(3)  本件不開示情報に関する共通事項について
 合格者発表以降,受験者(不合格者)から採点に対する苦情・問い合わせが,通関士試験の事務局である財務省関税局業務課通関業係(係長,係員の2名体制。以下「通関業係」という。)に多く寄せられ,また,インターネットの通関士試験関係のサイトにも試験結果に対しての書き込みが多くなされており,受験者間の情報交換が盛んに行われている。
 また,通関士試験は,多数の受験者(平成17年は9,953名,うち記述式の採点対象者4,177名)が受験していることから,答案のすべてを同一の採点者が網羅的に採点することは現実的に不可能であるため,円滑・効率的な採点を行うために複数の採点者が分担して採点を行っている。そして,その採点における採点基準は,記述式という問題の性質上,あらかじめ,すべての受験者の解答を予想し,網羅して作成することは不可能であるため,受験者間で採点の公平性は確保しつつ,一定程度採点者の裁量に委ねている。
 このような状況の中,仮に,総得点及び採点結果を開示した場合には,同様の開示請求が続出し,開示請求者の主観的な判断に基づく自己採点と開示した採点結果との差異等についての質問・苦情が大幅に増加することが容易に想定される。
 通関業係においては,開示した採点結果に係る質問・苦情に対応するための時間が増大し,所掌する他の業務の遂行に支障が生じることとなり,ひいては,試験業務の適正・円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,総得点及び採点結果は,法14条7号の不開示情報に該当する。

 結論
 以上のことから,本件保有個人情報の開示請求について,処分庁が行った原処分は妥当であり,本件異議申立ては,棄却すべきものと考える。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

 平成18年5月17日  諮問の受理
 同日  諮問庁から理由説明書を収受
 同年6月1日  異議申立人から意見書を収受
 同年7月3日  本件対象保有個人情報の見分及び審議
 同年8月28日  諮問庁の職員(財務省関税局業務課長ほか)からの口頭説明の聴取
 同年10月2日  審議
 同年11月6日  審議

第5  審査会の判断の理由

 本件対象保有個人情報について
 本件開示請求は,「平成17年第39回通関士試験を受験した際の本人に係る採点済み答案用紙(異議申立人が通関士試験においてどの様な間違いをし,得点はどうなったかが判断できるもの)」に記載された保有個人情報について開示を求めるものである。
 処分庁は,本件対象保有個人情報として,平成17年第39回通関士試験を受験した際の本人に係る,通関業法(記述式問題)答案用紙(以下「文書1」という。),関税法,関税定率法その他に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(記述式問題)答案用紙(以下「文書2」という。),通関実務(記述式第1問)答案用紙(以下「文書3」という。)及び通関実務(記述式第2問)答案用紙(以下「文書4」という。)の各答案用紙に記載された保有個人情報を特定し,当該各答案用紙に記載された総得点,採点,正解数及び得点が法14条7号に該当するとして,当該部分を不開示とする一部開示決定を行っている。
 このため,文書1から文書4までの文書の不開示部分の不開示情報該当性について検討する。

 不開示情報該当性について
 当審査会において本件対象保有個人情報が記載された文書1ないし文書4を見分したところ,文書1及び文書2については,解答欄に解答及び採点(正誤どちらかの採点マーク。以下同じ。)が,欄外に正解数が,総得点欄に総得点が記載されており,文書3及び文書4については,解答欄に解答及び採点が,総得点欄に総得点が記載されており,また,文書4については,左右に設問ごとの得点が記載されている。
 そして,各文書の開示部分は解答欄の解答,不開示部分は採点,正解数,得点及び総得点であることが認められる。

(1)  文書1及び文書2について(総得点を除く。)
 諮問庁は,採点及び正解数について,これらを開示した場合には,公表されている正解例以外の法令用語と同義語の正解とみなされる語句の例及びその得点の扱いが知られることとなり,複数の開示請求者が情報交換すること等により,正解とみなされる語句の事例が積み重なり,正解とみなされる語句の具体的な範囲及び得点の扱いが明らかとなり,正確な法令用語の理解の妨げとなる可能性があるとともに,蓄積された事例を取得できた者と取得できない者との間で試験の公平性が損なわれるおそれがあることから,法14条7号の不開示情報に該当すると説明する。
 文書1及び文書2の問題は,関税法等の理解度を判断するため,毎年,関税法等の条文を問題文として,重要な用語を空欄にして当該用語を記述するという形式で作成されているものであり,勉強方法としては,受験者は関税法等の条文の内容の理解に加え条文そのものを暗記するということが考えられるが,その際,正解とみなされる語句が開示されたからといって,わざわざそちらを暗記するような勉強方法をとる者が出るとは,通常,考えられないことである。
 このため,諮問庁の採点及び正解数を開示すると正確な法令用語の理解の妨げとなるという説明は説得力に乏しく,加えて,諮問庁自ら模範解答を開示していること,また,答案用紙を持ち帰ることも可能となっているため,解答用紙に記載した解答を答案用紙に転記し,後で模範解答と比べることにより,事実上,受験者は自己採点をすることが可能となっているといったことを勘案すれば,試験の公平性が損なわれ,事務支障が生ずるとまでは言えず,当該不開示部分は,法14条7号に該当せず,開示すべきである。

(2)  文書3及び文書4について(総得点を除く。)
 諮問庁は,採点及び得点について,これらを開示した場合には,具体的な配点が知られることとなるため,受験者が配点の高いところを重点的に勉強することを助長し,多くの受験者が拝点主義に走るおそれが高く,このような者が多数合格基準を満たすことになると,通関士としての適正な申告書の作成能力を問うという本来の試験趣旨が損なわれるおそれがあることから,法14条7号の不開示情報に該当すると説明する。
 文書3及び文書4の問題は,通関士として必要な実務能力である輸出申告書及び輸入申告書の全体について,自らの手で正確に記載する能力を有するかどうかを判定することを目的として,毎年,輸出及び輸入する品目をそれぞれ指定して1枚様式の輸出申告書及び輸入申告書を作成させるという出題形式で実施されているものであり,計2枚の答案は別個の採点である。
 出題の方法・形式がこのようなものであることから,試験に合格後,通関士として直ちに通関業務に携わることを意図して受験していると想定される受験者が,各申告書の記載欄の配点が高いところのみを,専らあるいは重点的に勉強してすませるといった,客観的に不合格のリスクを高めるような行動をとることは想定し難い。
 また,諮問庁は,受験者が配点の高いところを重点的に勉強することについて,拝点主義を助長し,本来の試験趣旨を損うと説明するが,通常,配点というものは重要度の程度に従って設定されるものであるから,受験者が,仮に,配点の高いところを重点的に勉強するとしても,それは,むしろ諮問庁にとって望ましいことであり,諮問庁の説明は,不自然の感を免れない。
 さらに,諮問庁は,受験者が持ち帰りが認められている問題用紙に自己の解答を転記して,公表している正解例に基づき自己採点をすれば,おおよその配点のウェイトを知ることになることを承知の上で,受験者による問題用紙の持ち帰りを認めてきている。
 以上の点を総合的に勘案すると,採点及び得点を開示しても,拝点主義を助長し,本来の試験趣旨が損われて事務の適正な遂行に支障が生ずるとまでは言えず,当該不開示部分は,法14条7号に該当せず,開示すべきである。

(3)  各文書共通事項について

 各文書の総得点について
 諮問庁は,受験者に試験問題の持ち帰りを認めるとともに,模範解答を示していることもあり,各総得点を開示すると,「採点基準が明らかになることによって、いわゆる受験テクニックのみを習得した合格者が増加することで、通関士として必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するという試験の趣旨が損なわれる」旨説明する。
 しかし,各総得点については,各採点結果の合計点であり,上記2(1)及び(2)のとおり,各採点結果等を開示することが妥当と認められることから,これらを開示しても,特段の支障があるとは認められず,開示が妥当である。

 事務支障について
 諮問庁は,本件対象文書の不開示部分を開示した場合には,新たな開示請求が続出し,開示請求者の主観的な判断に基づく自己採点と開示した採点結果との差異等についての質問・苦情が大幅に増加し,それらに対応するための時間が増大し,所掌する他の業務の遂行に支障が生ずることとなり,ひいては,試験業務の適正・円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,法14条7号の不開示情報に該当すると説明する。
 本件対象文書の不開示部分を開示した場合に,これまでよりも質問・苦情が増加することになるかどうかは,開示により不合格者にはその理由が判明することから質問・苦情が減少することも考えられ,いずれとも予測し難いことである。
 また,通関士試験に関しては,特に,法令等で苦情等について諮問庁に格別な応対を義務付けていることはなく,受験案内の冊子には,「試験の結果に関する照会には応じられない」との記述も認められることから,仮に質問・苦情の大幅な増加が見込まれるのであれば,そのような対応をする旨のより一層の周知徹底を図るなどの対応措置も考えられ,諮問庁の説明するような試験業務の適正・円滑な遂行に支障が生ずるおそれがあるとまでは言えないものと考えられる。

 本件一部開示決定の妥当性
 以上のことから,本件対象保有個人情報につき,その一部を法14条7号に該当するとして不開示とした決定については,不開示とされた部分は同条7号に該当せず,開示すべきであると判断した。

 (第5部会)

 委員 上村直子,委員 稲葉 馨,委員 新美育文