答申本文
諮問庁 | : | 厚生労働大臣 |
諮問日 | : | 平成16年 7月29日 (平成16年(行情)諮問第504号)
平成16年 9月13日 (平成16年(行情)諮問第541号)
平成17年 4月26日 (平成17年(行情)諮問第227号)
|
答申日 | : | 平成17年6月21日(平成17年度(行情)答申第129号,第130号及び第133号) |
事件名 | : | 医師国家試験の問題用紙及び正答値表の一部開示決定に関する件(平成17年度(行情)答申第129号,第130号及び第133号) |
答 申 書
第95回から第99回までの医師国家試験の問題用紙及び正答値表(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,不開示とされた部分を開示すべきである。
本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成16年6月9日付け厚生労働省発医政第0609004号,平成16年7月16日付け厚生労働省発医政第0716009号,平成16年7月20日付け厚生労働省発医政第0720006号,平成16年7月20日付け厚生労働省発医政第0720007号及び平成17年3月23日付け厚生労働省発医政第0323001号により厚生労働大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った本件対象文書の一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。
異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
試験問題及びその解答の不開示について,法5条6号の「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」が不開示理由にされているのは,行政機関に広範な裁量権限を与えるためではない。試験問題及び解答を開示することは,試験の公平性を担保するという意味においても当然にされるべきことである。これは既に司法試験,公認会計士試験においても議論されており,現在では両方の試験においては試験問題の公開がされている。特段に,本件試験問題を秘匿する理由は見当たらない。よって,試験問題及び解答を開示すべきである。
処分庁の主張の要点は,医師国家試験において,試験問題を出題する前にあらかじめ蓄えておく制度(以下「プール制」という。)を導入するに当たり,試験問題と解答を開示すると過去の良質な問題の繰り返しによる利用により,正解率が相当程度高くなるという影響があり,プール制の早期の導入が阻まれるところにある。試験問題の回収は,多方面から種々の批判があるが,争点を明確化するため,以下,本件不開示部分の法5条6号の非該当性を指摘する。
ア |
「プール制の導入」と「問題の回収」は別の話であり,以前からプール問題として過去の問題が繰り返し出題されており,その時点においても試験事務の適正な遂行に支障を及ぼしていない。
また,大学入試センター試験においてプール制を導入しているが,問題を回収しておらず,問題の回収をしなくてもプール制を導入できることが理解できる。
|
イ |
良質な問題の繰り返し利用による影響については,複数の業者による問題の再現(復元)により,実質的目的を失っている。 |
ウ |
将来的には常時数万題の問題が作成できることを示唆しているが,これだけの問題があれば,年間500題程度の問題をプールすることの意味は薄い。
また,医学分野の日進月歩の激しさから,10年後の医学水準に照らし合わせれば,問題をプールする必要性は薄い。
|
エ |
良質な問題は知識として習得すべき事柄であり,その良質な問題を試験で正解することのどこが問題か。医療従事者の国家試験は,必要最低限の知識を身に付けているかどうかを判定する試験のはずである。 |
オ |
高知県公立学校教員採用候補者選考審査の問題及び解答については,非開示決定を取り消すという高松高裁の判決が出ている。 |
カ |
以上により,国家試験の問題用紙及び解答の開示が,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすとは言えず,本件不開示部分は法5条6号に該当せず,原処分は違法又は不当である。 |
ア |
歯科医師国家試験漏洩事件が起きているが,これらの事件は,問題が回収されていなかったからこそ発覚したのであり,問題が回収されてしまえば,不正が行われても証拠がないため問題とならず,不正の温床となる。不正事件の抑止という意味でも裁量的開示に値する。 |
イ |
医師国家試験の内容は,日本の医学水準を反映し医療水準のバロメータとなっており,受験者以外の医療関係者等が注目していることからも,処分庁は,医療行政及び医療水準を国民に説明すべく,公にすべきである。 |
ア |
諮問庁は,平成15年8月の「医療提供体制の改革のビジョン」をプール制の理由としているが,医師国家試験の問題回収が平成13年から行われていることをかんがみると,平成15年の「医療提供体制の改革のビジョン」より先に問題回収が行われており,理由としては失当である。 |
イ |
第98回医師国家試験において,採点可能な問題を意図的に採点除外したことがマスコミに取り上げられている。このことについて,諮問庁に問い合わせたが,説明を拒否された。
本来果たすべき行政機関の責務である諸活動の説明をせず,国民の批判を避けていると解されるが,このような事案解決こそ,法の目的とするところである。
|
ウ |
諮問庁の提出資料に,米国の医師国家試験が取り上げられているが,これを実施しているのは国家機関ではない。そのため,復元が禁じられているのは,著作権法等によって保護されているからである。 |
本件異議申立ては,当初,第95回から99回までの医師国家試験の試験問題用紙及び正答値表,第95回から97回までの歯科医師国家試験の問題用紙及び正答値表,第90回及び91回保健師国家試験の問題用紙及び正答値表,第87回及び88回助産師国家試験の問題用紙及び正答値表並びに第93回及び94回看護師国家試験の問題用紙及び正答値表の一部開示決定並びに第98回医師国家試験及び第97回歯科医師国家試験の採点にかかわる医道審議会の議事録の不開示決定を不服として提起されたものである。
諮問後,異議申立人から,第95回から97回までの歯科医師国家試験の問題用紙及び正答値表,第90回及び91回保健師国家試験の問題用紙及び正答値表,第87回及び88回助産師国家試験の問題用紙及び正答値表並びに第93回及び94回看護師国家試験の問題用紙及び正答値表の一部開示決定の不開示決定についての異議申立てを取り下げる旨の文書が提出され,また,第98回医師国家試験及び第97回歯科医師国家試験の採点にかかわる医道審議会の議事録の不開示決定については異議申立人から提出された意見書において争わないこととされたことから,これらの諮問を取り下げる。
したがって,本件異議申立ての対象文書は,第95回から99回までの医師国家試験の試験問題用紙及び正答値表である。
より質の高い効率的な医療サービスを提供するための改革を推進することが課題となっていることから,厚生労働省は,平成15年8月に「医療提供体制の改革のビジョン」を公表しているが,このビジョンでは,いくつかの分野での改革の実現に向けての施策が掲げられ,その一つとして「医師,歯科医師,保健師,助産師,看護師の国家試験」の質の向上を図るため,問題の公募,公募された問題の修正・評価等を通じて良質な問題を蓄積し,平成17年の試験からプール制に移行することとした。
試験の更なる質の向上が求められる中で,従来からの問題作成方法には限界があることから,平成11年4月15日の医師国家試験改善検討委員会報告書での指摘を踏まえ,平成13年の試験から,全国の大学医学部等に対して試験問題の公募を実施し,公募問題は採点対象として十分可能であると評価を受け,今後公募範囲を拡大し,公募問題数の増加を行い,試験問題を蓄積することとしている。
また,過去の試験問題の繰り返し利用による影響については,これまでの試験結果から正解率が相当程度高くなることが明らかになっていることから,良質な試験問題を繰り返し出題するために平成13年の試験から試験問題の回収を行っているところである。
平成15年4月17日の医師国家試験改善検討委員会報告書においても,こうした取組を引き続き行うよう指摘されている。
なお,国家試験の施行に当たり,試験問題の持ち帰りを認めないことを官報公告している。
上記(1)のとおり,医師国家試験については,今後,プール制を導入することを予定している。
早期にプール制を導入するためには,新たに作られた問題とともに,過去に出題された試験問題も併せて蓄積することが必要である。このため,使用された問題を平成13年から回収することとしている。
試験問題及び解答については,これが開示されればプール制の早期の導入が阻まれることとなり,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,法5条6号に該当するものとして,当該情報が記載されている部分を不開示としたところである。
また, 試験問題及び解答について開示されることとなると,試験問題を回収している意味がないものであり,過去の問題の繰り返し利用による影響が出ることとなる。
なお,試験問題を回収するようになる前の試験問題及び解答についての開示請求に対しては,全部開示したところである。
異議申立人は「「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」が不開示理由にされているのは,行政機関に広範な裁量権限を与えるためではない。試験問題及び解答を開示することは,試験の公平性を担保するという意味においても当然にされるべきことである。これは既に司法試験,公認会計士試験においても議論されており,現在では両方の試験においては試験問題の公開がされている。特段に,本件試験問題を秘匿する理由は見当たらない。」と主張しているが,上記のとおり法5条6号に該当することから,異議申立人の主張は認められない。
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,平成16年(行情)諮問第504号及び第541号並びに平成17年(行情)諮問第227号を併合し,調査審議を行った。
① |
平成16年7月29日
|
諮問の受理(第504号)
|
② |
同日
|
諮問庁から理由説明書を収受(第504号)
|
③ |
同年8月16日
|
異議申立人から意見書及び資料を収受(第504号)
|
④ |
同月23日
|
異議申立人から補充意見書を収受(第504号)
|
⑥ |
同日
|
諮問庁から理由説明書を収受(第541号)
|
⑦ |
同月28日
|
異議申立人から意見書を収受(第541号)
|
⑧ |
同日
|
異議申立人から追加意見書及び資料を収受(第504号)
|
⑨ |
同年12月2日
|
本件対象文書の見分及び審議(第504号及び第541号)
|
⑩ |
同年12月17日
|
異議申立人から口頭意見陳述の聴取及び審議(第504号及び第541号)
|
⑪ |
平成17年1月20日
|
諮問庁の職員(厚生労働省医政局医事課試験免許室長ほか)からの口頭説明の聴取及び審議(第504号及び第541号)
|
⑫ |
同月24日
|
諮問庁から追加資料を収受(第504号及び第541号)
|
⑬ |
同月28日
|
異議申立人から追加意見書を収受(第504号及び第541号)
|
⑭ |
同年3月24日
|
参考人からの口頭意見陳述の聴取及び審議(第504号及び第541号)
|
⑯ |
同日
|
諮問庁から理由説明書を収受(第227号)
|
⑰ |
同年5月19日
|
審議(第504号及び第541号)
|
⑱ |
同年6月8日
|
諮問の一部取下げの受理(第504号,第541号及び227号)
|
⑲ |
同月9日
|
第504号,第541号及び第227号の併合,本件対象文書の見分(第227号)並びに審議
|
本件対象文書は,第95回から第99回までの医師国家試験の問題用紙及び正答値表であり,以下,その不開示部分である各回の医師国家試験問題用紙の試験問題(別冊を含む。以下「本件試験問題」という。)並びに解答である正答値表の正答1及び正答2の欄の記載(以下「本件正答」という。)について,諮問庁の説明する法5条6号柱書き該当性を検討する。
諮問庁は,平成11年4月15日の医師国家試験改善検討委員会報告書での指摘を踏まえ,プール制を導入するため,平成13年の試験から,全国の大学医学部等に対して試験問題の公募を実施して試験問題を蓄積することとし,過去の試験問題の繰り返し利用は正解率が相当程度高くなることから,同年から試験問題を回収しているものであり,平成15年4月17日の医師国家試験改善検討委員会報告書においても,こうした取組を引き続き行うよう指摘されているところであって,本件試験問題は,これを公にすることにより,プール制の早期の導入が阻まれることとなり,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号柱書きの不開示情報に該当し,不開示とすべきであると説明する。
これに対し,異議申立人は,プール制の導入と試験問題の回収は別の話であり,以前からプール問題として過去の問題が繰り返し出題されており,その時点においても試験事務の適正な遂行に支障を及ぼしておらず,また,受験者からの情報提供を受けた複数の業者による問題の復元により,問題回収の実質的目的を失っていると主張する。
諮問庁からの提示資料等によると,平成11年4月15日の医師国家試験改善検討委員会報告書では,試験問題の公募やプール制の導入が望まれるとした上で,過去の試験問題を出題すると正解率が相当程度高くなることなどから,今後は試験問題を回収することとするとされており,平成15年4月17日の医師国家試験改善検討委員会報告書においても,プール制への移行を図り,試験問題の回収を引き続き行うことが望ましいとされていることが確認でき,また,実際に平成13年の試験から試験問題の回収が行われ,これらの問題を含めたプール制の導入への準備が既に進められているものと認められる。
諮問庁の説明は,本件試験問題を公にすることにより,①今後同一又は類似の試験問題は,正解率が向上することから,医師国家試験の問題としては妥当ではなくなること,したがって,②本件試験問題(今後医師国家試験が行われた場合は,それらの問題を含む。)と異なる試験問題を作成しなければならず,試験問題作成が困難となり,プール制の導入の妨げになること,また,③本件試験問題が事実上も明らかにされていないことが前提となっていると考える。
ア |
本件試験問題と同一又は類似の試験問題の正解率の向上について |
過去の試験問題が明らかになっている場合に,それと同一又は類似の問題が出題されれば正解率が多少とも高くなるであろうことは,一般的には否定し得ないところであるが,医師国家試験に実際に出題される問題のうち過去の問題と同一又は類似の問題が多数を占めるようなことは,現実の事態として想定し難く,諮問庁の説明のとおり正解率が向上する傾向があるとしても,試験制度を維持できなくなるほど正解率が向上することになるとは考えられない。
諮問庁は,試験問題の回収を始めた後の試験問題が再度出題された場合の正解率と,回収を行っていない試験問題が再度出題された場合の正解率の変化をみると,後者が相当高くなっていると一部のデータにより説明するが,当審査会に示されたサンプルはわずかであり,逆の結果が出ているものもあることからすると,当審査会としては,諮問庁の説明が十分なものであるとは認めることができない。
なお,正解率が向上する傾向をもって,今後,本件試験問題と同一又は類似の試験問題は,医師として具有すべき知識及び技能について行う医師国家試験の問題としては妥当ではなくなるとする諮問庁の論理は,過去の良質な試験問題を通じて,必要な知識を習得し,同一又は類似の試験問題に対して正解を答えることができるようになることに問題があるとは言えず,にわかに賛同し難いものである。
イ |
本件試験問題を公にすることとプール制導入の関係について |
諮問庁は,早期にプール制を導入するためには,新たに作られた問題とともに,過去に出題された試験問題も併せて蓄積することが必要であることから,使用された問題を平成13年から回収することとしており,本件試験問題は開示できない旨説明する。
平成11年4月15日の医師国家試験改善検討委員会報告書等によれば,プール制の目的は,医療が高度化・専門化したことにより,医師が具有すべき基本的な知識量が増加したことなどから,出題数を増加することとしたが,毎年試験委員が作成・修正する従来の作成方法では,試験問題の質や難易度を一定に保ち,かつ出題数を増やすことに対応することは難しいことから,あらかじめ良質な試験問題を常時数万題備えておくというものであると解される。
プール制において重要なことは,良質な試験問題を備えておくことであるが,ある問題が過去に出題され,公にされていたかどうかは,その問題が良質かどうかとは本来かかわりないものである。当該問題が過去に出題され,公にされていたことにより,良質ではないと判断するならば,過去,出題され,公にされている平成12年以前の医師国家試験の問題と同一又は類似の問題は,プールする問題としてふさわしくないということになるが,医師国家試験が具有すべき基本的な知識を問う以上,そのようなことは言えない。
つまり,本来,プール制を導入することにより本件試験問題を公にできないという必然性があるとは言えない。この点は,医師国家試験改善検討委員会の審議において,一人の委員からも試験問題の回収とプール制の導入との関係で,同様な指摘がされているところである。
諮問庁が試験問題の回収をプール制の導入と結び付けて説明するのは,過去の試験問題が明らかになっている状態で同一又は類似の問題が出題されると,正解率が向上し,試験問題としてふさわしくないものになることに配慮したものと考えられるが,この点については,上記アにおいて判断したとおりである。
なお,本件試験問題は,これを公にすることにより,試験委員の当該問題を選定・修正するに当たっての心理的負担が加重され,プール制の導入の妨げになるとの考えもあるが,そのような負担は,医師国家試験問題についてのみ生じるものではなく,その職責から受忍すべきものである。
異議申立人は,受験者からの情報提供を受けた複数の業者による問題の復元により,問題回収の実質的目的を失っていると主張する。
当審査会において,本件試験問題を見分し,一般に販売されている復元問題と比較したところ,問題の本文については相当程度に復元されていることが認められた。
また,レントゲン写真等の視覚素材を用いた試験問題については,諮問庁は,復元は不可能であり,精度の高い復元問題は存在しないと説明し,当審査会においてもこの点を否定するものではないが,上記見分,比較の結果によると,本質的内容を復元することは相当程度されていると認めることができる。
以上のとおり,本件試験問題については,相当程度復元されたものが一般に販売されていると認められ,実質的に本件試験問題のかなりの部分が事実上明らかにされていると認められる。
したがって,本件試験問題は,これを公にすることにより,プール制の早期の導入が阻まれることとなり,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとの諮問庁の説明は,上記アないしウのとおり,その前提が合理性を欠くものと言わざるを得ず,本件試験問題は法5条6号柱書きの不開示情報には該当せず,開示すべきである。
諮問庁は,本件正答は,これを公にすることにより,プール制の早期の導入が阻まれることとなり,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号柱書きの不開示情報に該当し,不開示とすべきであると説明する。
当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件試験問題は選択式であり,本件正答は,正解肢である記号をもって記述されていることが認められる。
上記(1)のとおり,本件試験問題については開示すべきであると判断したため,本件正解を開示することと諮問庁のプール制の導入とを結びつける上記説明は,その前提を欠くことになり,また,諮問庁は従来,試験問題及び解答を公にしていたことからしても,本件正答を公にすることにより,国家試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
したがって,本件正答は,法5条6号柱書きの不開示情報には該当せず,開示すべきである。
医師国家試験改善検討委員会においては,人の生命を預かるという医師の重要な職責にかんがみ,その資格を付与するための医師国家試験制度がそれにふさわしいものとして機能するように,良質の試験問題を作成するという観点から,試験問題のプール制が最も有効とされ,これと併せて試験問題の回収を行うとされたものであり,極めて真摯かつ意欲的に審議を重ね,多面的な検討を経て,当該報告書の結論に至ったものであることがうかがわれる。このうち,試験問題の回収については,直接,本件不開示部分についての法の解釈に結び付くものであるので,同委員会の結論ないし意見を尊重しつつ慎重に調査審議を進めたが,当審査会が法に定める要件に従って判断した結果,上記(1)及び(2)の結論に達したものである。
以上のことから,本件対象文書につき,法5条6号柱書きに該当するとして,その一部を不開示とした決定については,不開示とされた部分は,同号柱書きに該当せず,開示すべきであると判断した。
(第4部会)
委員 新村正人,委員 園マリ,委員 藤原静雄