諮問庁 大学共同利用機関法人人間文化研究機構
諮問日 令和5年 7月 6日(令和5年(独情)諮問第90号)
答申日 令和5年12月 7日(令和5年度(独情)答申第82号)
事件名 特定文書番号の「審査請求に対する決定通知書」に記載された文書の不開示決定(存否応答拒否)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

「特定日付け特定文書番号「審査請求に対する決定通知書」の特定番号Aから特定番号Bの各法人文書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,取り消すべきである。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,大学共同利用機関法人人間文化研究機構(以下「機構」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った令和5年3月2日付け人文機総第101号による不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

審査請求人が主張する審査請求の理由は,審査請求書の記載によると,以下のとおりである。

本件開示請求は,法8条の規定に該当しない。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 本件審査請求の経緯

本件開示請求は,機構が開示請求者に特定日付けで通知した「審査請求に対する決定通知書」に記載されている26の法人文書(本件対象文書)の開示を求めるものである。

これに対し,機構は,法8条に該当するとし,開示請求を拒否する原処分を行ったところ,審査請求人はこれを不服として,令和5年5月28日付け(同年5月31日受付)で原処分を取り消すことを求める審査請求が行われた。

2 開示請求者の主張に対する見解

本件対象文書については,開示請求を拒否した原処分を維持することが適当であると考える。

3 理由

本件開示請求は,特定の個人の氏名を明示し,当該個人が懲戒処分を受けたことを前提として行われた別件開示請求に係る「審査請求に対する決定通知書」(特定日付け特定文書番号)において,不開示決定を維持するとした対象文書の開示を求めるものである。

別件開示請求では,対象文書について,法5条1号及び3号に該当するとして,その全部を不開示とする原処分を行ったところ,これを不服とし,原処分の取消を求める審査請求が行われた。

機構は,原処分の維持を妥当とし,総務省情報公開・個人情報保護審査会に諮問したところ,特定事件番号答申において,対象文書に係る開示請求については「その存否を答えるだけで法5条1号の不開示情報を開示することとなるため,本来,法8条の規定により開示請求を拒否すべきものであったと認められる」との答申を受けた。加えて,原処分を取り消して,改めて法8条の規定を適用する意味はなく,法5条1号及び3号に該当するとして不開示とした原処分を結論において妥当とせざるを得ないとの答申を受け,機構は,「審査請求に対する決定通知書」(特定日付け特定文書番号)により,原処分を維持する決定を行ったものである。

本件開示請求では,特定個人の氏名や懲戒処分について明示していないものの,上記の「審査請求に対する決定通知書」において不開示決定を維持した法人文書の開示を求めており,当該審査請求に係る開示請求書及び不開示決定通知書に記載の情報と組み合わせることにより,別件開示請求における存否情報(特定の個人が懲戒処分を受けた事実の有無)を明らかにすることとなる。

特定個人が懲戒処分を受けたという事実は,法5条1号本文前段の個人に関する情報に該当し,不開示情報である。加えて,本件存否情報については,慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報ではなく,法5条1号ただし書きイに該当しない。また,同号ただし書きロ及びハに該当する事情もないと考える。

したがって,本件対象文書の存否を答えることは,法5条1号の不開示情報を開示することになるため,法8条の規定により,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した原処分は,妥当であると考える。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 令和5年7月6日   諮問の受理

② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年10月19日   審議

④ 同年11月30日   審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定(原処分)を行った。

審査請求人は,原処分の取消しを求めているところ,諮問庁は,原処分は妥当である旨説明することから,以下,本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について検討する。

2 本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について

(1)当審査会において本件開示請求書を確認したところ,「請求する法人文書の名称等」欄には「特定日付け特定文書番号「審査請求に対する決定通知書」の(特定番号A)から(特定番号B)の各法人文書」とのみ記載されており,その余の情報は記載されていないことが認められる。

このような開示請求において該当する文書の存否を答えるだけで明らかになるのは,特定日付け特定文書番号により審査請求事案に対し決定通知書が発出され,当該決定通知書において特定番号Aから特定番号Bと表示された文書があったという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)のみであると認められる。

(2)諮問庁は,本件対象文書及び上記審査請求に係る開示請求書並びに不開示決定通知書に記載の情報を組み合わせることにより,特定個人が懲戒処分を受けた事実の有無が明らかとなり,当該情報は法5条1号本文前段の個人に関する情報に該当することから,法8条の規定により存否応答拒否による不開示とした旨説明する。

しかしながら,本件存否情報は,上記(1)のとおりであって,それ自体に特定個人が懲戒処分を受けたという事実に係る情報は含まれていない。また,本件開示請求書において示された文書発出日,文書番号及び件名等に該当する法人文書が存在したとしても,それが直ちに個人の特定や推測につながるとすべき事情は認め難い。

(3)したがって,本件存否情報は,法5条1号の不開示情報に該当せず,本件対象文書の存在を答えるだけで不開示情報を開示することになるとは認められないので,本件開示請求については,本件対象文書の存否を明らかにして開示決定等をすることが相当であり,原処分は取り消すべきである。

3 本件不開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その存否を答えるだけで開示することとなる情報は法5条1号に該当するとして,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号に該当せず,本件対象文書の存否を明らかにして改めて開示決定等をすべきであることから,取り消すべきであると判断した。


(第5部会)

委員 藤谷俊之,委員 石川千晶,委員 磯部 哲