諮問庁 内閣法制局長官
諮問日 令和 5年 2月 6日(令和5年(行情)諮問第161号)
答申日 令和 5年 7月27日(令和5年度(行情)答申第209号)
事件名 「3文書や防衛力の抜本的強化について」の議論に関し行政文書ファイル等につづられた文書の開示決定に関する件(文書の特定)

答 申 書

第1  審査会の結論

「「3文書や防衛力の抜本的強化について」(令和4年12月16日岸田内閣総理大臣記者会見)の議論に関して行政文書ファイル等に綴られた文書の全て」(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき,別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)を特定し,開示した決定については,本件対象文書を特定したことは,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和5年1月13日付け内閣法制局-第1号により,内閣法制局長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った開示決定(以下「原処分」という。)について,特定されるべき文書に漏れがないか確認を求める。


2 審査請求人の主張の要旨

審査請求人の主張する審査請求の理由の要旨は,審査請求書によると,おおむね以下のとおりである。

審査請求人は確認するすべを持たないので,特定されるべき文書に漏れがないか念のため確認を求める次第である。


第3  諮問庁の説明の要旨

審査請求人は,原処分について,令和5年1月17日付け(同月23日内閣法制局受付)で審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行い,原処分による開示文書のほかに行政文書がないか確認を求めている。

令和4年12月18日付けの審査請求人による開示請求(以下「本件開示請求」という。)は,本件請求文書の開示を求めるものであったところ,当局においては,本件開示請求で審査請求人が開示を求める文書は「国家安全保障戦略について」(令和4年12月16日閣議決定),「国家防衛戦略について」(令和4年12月16日閣議決定)及び「防衛力整備計画について」(令和4年12月16日閣議決定)(以下,第3において「国家安全保障戦略等」という。)が閣議決定に至るまでに政府内で行われた議論に関する行政文書を指しているものと思料したことから,その存否について確認を行った。当局は,国家安全保障戦略等の閣議決定に先立って内閣法制局設置法(昭和27年法律第252号)3条3号の規定に基づき意見事務を行い,内閣法制局行政文書管理規則(平成23年内閣法制局訓令第1号)に基づき国家安全保障戦略等の案文及び参考資料を保存しているところ,原処分によりこれらを全て開示したものである。なお,当局は,当該意見事務を実施する以前の政府内における議論には参画しないため,これに関する行政文書を保有していない。

以上のとおり,本件開示請求に係る行政文書を原処分による開示文書以外に保有していないことから,本件審査請求には理由がない。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 令和5年2月6日  諮問の受理

   ② 同日        諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同年6月23日   審議

   ④ 同年7月21日   審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件請求文書の開示を求めるものであるところ,処分庁は,本件対象文書を特定し,全部開示する原処分を行った。これに対し,審査請求人は,他の文書の特定を求めているが,諮問庁は,本件審査請求には理由がないとしていることから,以下,本件対象文書の特定の妥当性について検討する。


2 本件対象文書の特定の妥当性について

(1)本件対象文書の特定の妥当性について,諮問庁は上記第3のとおり説明し,当審査会事務局職員をして,更に確認させたところ,諮問庁は,おおむね以下のとおり補足して説明する。

ア 諮問庁は,本件開示請求は,開示請求書において,令和4年12月16日に行われた岸田内閣総理大臣の記者会見の発言内容が掲載されている首相官邸ウェブサイトのページの一部を印刷したものとみられる資料が添付されているとともに,首相官邸ウェブサイトの当該ページのURLが記載されていることから,請求文言にある「3文書」とは,同日に閣議決定された「国家安全保障戦略について」,「国家防衛戦略について」及び「防衛力整備計画について」(以下「3文書」という。)を指すものであると解し,これらが閣議決定に至るまでに政府内で行われた議論に関する文書がつづられている行政文書ファイル(以下「本件ファイル」という。)につづられた文書の全てを本件対象文書として特定した。


イ 本件対象文書は,3文書の閣議決定に先立ち,意見事務を行うに当たって作成し,又は取得した閣議決定前の3文書の案文及び関連資料並びに応接録の表紙である。


ウ 本件開示請求時点(令和4年12月18日受付)において,本件ファルには,本件対象文書のみがつづられており,本件対象文書の外に本件請求文書に該当する文書は作成又は取得しておらず,保有もしていない。


エ 処分庁において,本件審査請求を受け,本件開示請求を受けた際と同様に,行政文書ファイルが保存されている執務室,書棚,書庫,共有フォルダ等の探索を行ったが,本件対象文書の外に,本件請求文書に該当する文書は発見されなかった。


(2)検討

当審査会において,本件諮問書に添付された本件対象文書の写しを確認したところによれば,上記(1)ア及びイの諮問庁の説明に特段不自然,不合理な点はなく,これを覆すに足りる事情もない。

また,上記(1)エの探索の範囲等について不十分であるとはいえず,更に審査請求人において,本件対象文書の外に本件請求文書に該当する文書が存在するという具体的な根拠に関する主張等もなく,他に本件請求文書に該当する文書の存在をうかがわせる事情も認められないことからすると,処分庁において本件対象文書の外に本件請求文書に該当する文書を保有しているとは認められない。


3 本件開示決定の妥当性について

以上のことから,本件請求文書の開示請求につき,本件対象文書を特定し,開示した決定については,内閣法制局において,本件対象文書の外に開示請求の対象として特定すべき文書を保有しているとは認められないので,本件対象文書を特定したことは,妥当であると判断した。


(第1部会)

委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美





別紙 本件対象文書

令和4年度応接録のうち,「07「国家安全保障戦略」,「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」について」