諮問庁 法務大臣
諮問日 令和 4年10月 7日(令和4年(行情)諮問第571号)
答申日 令和 5年 7月20日(令和5年度(行情)答申第198号)
事件名 法制審議会家族法制部会資料の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙の2に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和4年3月18日付け法務省民制第31号により法務大臣(以下「法務大臣」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)を取り消し,全ての文書の公開をするとの裁決を求める。


2 審査請求の理由

審査請求人の主張する審査請求の理由の要旨は,審査請求書によると,おおむね以下のとおりである。なお,資料は省略する。

 (1)行政文書の開示請求

審査請求人は,令和4年1月2日,法に基づき処分庁に対し,「①第一回から第十回までの法制審議会家族法制部会(以下「家族法制部会」という。)において,委員から資料として提出された一切の資料。ただし法務省HP(URL略)で公開されているものは除外する。また委員が提出を撤回し,出し直した場合の当初提出された資料も含む。②1)家族法制部会において法務省が作成取得した一切の文書。ただし上記Webに公開されているものは除外する。2)家族法制部会のために,および家族法制部会に関して,法務省が作成取得した一切の文書。上記いずれもメモ,メール等を含む。」として開示請求を行った。


 (2)法務省の決定

これに対し法務省(以下,第2において「実施機関」という。)は,令和4年1月31日付け法務省秘公第23号にて「開示決定等の期限の延長について(通知)」を審査請求人に送付した。

令和4年2月24日過ぎ,法務省大臣官房秘書課公文書監理室情報公開係より,審査請求人に補正を求める文書が届いたので,差額収入印紙1,800円分とともに法務省に返送した。令和4年3月18日付け法務省司司第185号及び法務省民制第31号にて行政文書開示決定通知書が審査請求人に送付された。同月26日に2件まとめて返送し,令和4年4月中旬ころ,各開示決定に従い,行政文書がCD-ROMにて審査請求人に送付された。


 (3)本件決定についての違法事由,不当事由

しかし,次のとおり,上記「行政文書」に当たるべきものというべきであるから,本件文書の黒塗りは不当である。

ア 情報開示の対象となる行政文書の要件該当性について

情報開示の対象となる行政文書(以下「行政文書」という。)については,法律上,「実施機関が作成し,又は取得した文書,図画及び写真並びに電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)」であって,「当該実施機関が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの」と定義されている。(法2条2項)

したがって,文書,図画及び写真並びに電磁的記録の内容や性格等の事情を考慮して,「実施機関が作成し,又は取得した」ものであること,「当該実施機関が組織的に用いるもの」として「保有しているもの」であることにつき,個別具体的にそれらの該当性を判断すべきで,これらの要件該当性の解釈適用は厳格になされるべきではない。

また,「実施機関が作成し,又は取得した」については,文言上で作成又は取得の目的が限定されていないことや,上記説明責任に照らし,作成又は取得した目的を限定的に考えるべき理由はなく,この点の該当性の判断にあたっては,文書等の種別や作成,取得についての権限の有無が問われるべきではない。そこで,当該実施機関の業務に関係するものとして作成又は取得したものであれば,「実施機関が作成し,又は取得した」ものであるというべきである。

したがって文書等の内容において,職務の遂行の結果や過程を明らかにすべきではないものも行政文書になり得る。

当該実施機関が「組織的に用いるもの」については,実施機関が作成し,又は取得した文書のうち,組織との関わりがあるものが公文書に当たる。すなわち,当該実施機関において文書等が活用されているのは,文書等から知りえる情報をその業務に利用することを念頭に置いて情報の共有を図るためであるから,かかる組織共用の点の該当性の判断にあたっても,文書等の管理についての権限の有無,文書等に記録されている情報の価値やその利用状況,文書等に記録されている情報がいずれかの職員や部署で実際に利用された,あるいは現に利用されているものであるか否かが問われるべきではない。

よって,「実施機関が作成し,又は取得した」については,文言上で作成又は取得の目的が限定されていないこと,作成又は取得した目的を限定的に考えるべき理由はなく,この点の該当性の判断にあたっては,文書等の種別,作成,取得についての権限の有無が問われるべきではない。そこで,当該実施機関の業務に関係するものとして作成又は取得したものであれば,「実施機関が作成し,又は取得した」ものであるというべきである。

家族法制部会は,法務大臣が諮問し,有識者等を委員として招集したもので,この資料は委員が提出したものである。上記要件該当性に照らせば行政文書に該当し,これをいわゆる黒塗りにより開示したことは,実質審査請求人は,その開示資料を一切見ることができないのであるから,これをもって開示したというのは非常に不誠実な行いであるという他ない。


イ 不開示理由の正当性

(ア)法務省民制第31号「2不開示とした部分とその理由(1)」について

「政党からの要望等が記載されているところ,公にすることにより,政党の権利その他正当な利益を害する恐れがあり,さらに,政党と法務省との信頼関係が損なわれ,法務省が行う事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」とある。

日本国憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。」と定めている。

この意味するところは,単に公務員は主権者たる国民の使用人として国民に奉仕する者(公僕)であるというだけでなく,公務員は国民全体の利益のために奉仕すべきであって,国民のなかの一部の者(一党派や一部の社会勢力など,すなわち政党も含む)の利益のために奉仕してはならないということを意味する。公務員が「全体の奉仕者」であることは,国会公務員法96条1項,82条1項3項にも公務員の各種の義務の根拠とされている。

家族法制部会は,離婚及びこれに関連する家族法制の見直しを検討する部会である。離婚に関連する家族制度なので,共同親権についてもかなりの時間を割いて議論されていることはこれまでの議事録からも把握している。

共同親権を公約に掲げる政党は現在ひとつしかないので,この不開示理由にある「政党」について凡その見当はつくが,一主権者たる審査請求人と一部の者としての政党とを天秤にかけ,その後の業務遂行等のため,信頼関係を盾に政党との信頼関係に重きを置いたことは「全体の奉仕者」として許容されることなのか大いに疑問が残るところである。

審査請求人からすれば,実施機関の置かれた心情や立場はわからなくもないが,主権者としての立場を蔑ろにされて腹立たしいのも正直なところである。


(イ)法務省民制第31号「2不開示とした部分とその理由(2)」について

「(2)(3)(5)の文書は公にしないことを前提とした議事内容に係る提出者の意見に関する情報が記載されているところ,公にすることにより,今後,家族法制部会において,同様の資料の提出を躊躇するなど,同部会における率直な意見交換が不当に損なわれる恐れがある」とある。

家族法制部会で話し合われている内容は,答申の内容次第で法案のたたき台となりその後国会に提出されるもので,まして変更がかかっている内容が国民生活に直結する民法なのであるから,話し合われている内容の全てを議事内容として広く国民に知らせるのは当然のことであり,個人のプライバシーにかかるものは別であろうが,団体が活動として支援したもの,調査した内容など「公にしないことが前提の議事録の内容」があるのはおかしい。

そもそも議事録とは,①録音や速記をほぼそのまま文字に書き起こしたもの(例として閣議の議事録)②録音等に基づき議事を整理してまとめたもの(例として議事要旨)があるこの①,②ともに「議事録の一部を公にしないことが前提」というものはないどころか,議事録が2つ(内部用と外部用)存在し,広く共有されるものが異なっているという前提からしていかがなものか。

法制審議会議事規則6条には,「議事録は,幹事が作成する。」ということ以外の記載はないが,だからといって記載がない以上何をやっても良いという判断は結び付かないのではないか。

令和2年頃より,共同親権を訴える団体の活動や国会議員の発信は,DVからの避難を含む子連れ別居があたかも未成年者略取誘拐罪に該当するものだというような過激なものや,DV被害を矮小化し,自分たちの置かれている状況こそがDVであると主張するものが散見されるようになった。

DV相談件数はただでさえ増加傾向にあったところ,コロナ禍において相談件数が急激に増えたことを考えると,共同親権を思い描いている個人・団体がどんな思想信条のもと活動しているのかを国民が知ることは,大変重要なことではないかと考える。

「率直な意見交換が不当に損なわれる」というが,委員によっては率直な意見交換どころか,共同親権に関してかなり率直な内容を記した資料を提示しているだろうことは,団体HPや共同親権を周知するHP等からも容易に推測されるところである。

彼らの思想信条をそのまま法制審議会に持ち込み,声高に子連れ別居は違法行為だ,誘拐だ,これを防ぐためには共同親権の法整備しかないという誤った情報を流布するのは,中間試案や答申がどうなるかも非常に重要であるが,刑事事件として立件できると主張する以上彼らからの誹謗予防として国民生活に直結する内容であり,きちんと国民に周知されるべきことである。

子どもの連れ去り防止や共同親権を訴える団体として,彼らの思想信条が世に知らしめられることが団体側としても本望であろうことは,彼らがHPやTwitter,ツイキャス等SNSの発信で「共同親権周知活動」としていることからも明らかである。

以上より,本件文書は行政文書であり,黒塗りとして開示されたことは不当であるから,これを全て取り,黒塗りされていない状態での開示をすべきである。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 原処分について

審査請求人は,処分庁に対し,「①第1回から第10回までの家族法制部会において,委員から資料として提出された一切の資料。ただし法務省HP(URL略)で公開されているものは除外する。また委員が提出を撤回し,出し直した場合の当初提出された資料も含む。②(1)家族法制部会において法務省が作成取得した一切の文書。ただし上記Webに公開されているものは除外する。(2)家族法制部会のために,および家族法制部会に関して,法務省が作成取得した一切の文書。上記いずれもメモ,メール等を含む。」につき,法4条1項の規定に基づき,行政文書の開示請求(令和4年1月4日受付第760号及び第761号)をした。

処分庁は,上記開示請求について,法5条2号イ及び6号柱書き並びに同条5号に該当するとして,令和4年3月18日付け法務省民制第31号で一部不開示決定(原処分。以下,第3において「本件決定」という。)を行った。


2 審査請求人の主張について

審査請求人は,家族法制部会の委員から提出された資料を黒塗りにより開示した本件決定は,開示資料を一切見ることができない不誠実な行いであり,不当であるから,法務大臣が令和4年3月18日付けでした行政文書の開示資料のいわゆる「黒塗り」を取り,全ての文書の公開をするとの裁決を求めている。


3 原処分の妥当性について

開示請求のあった文書のうち,一部不開示とした文書は,家族法制部会第2回会議の資料,家族法制部会第3回会議の資料及び家族法制部会第5回会議の資料である。

家族法制部会第2回会議の資料のうち,①政党からの要望等が記載されている文書については,公にすることにより,政党の権利その他正当な利益を害するおそれがあるから,法5条2号イに該当し,さらに,政党と法務省との間の信頼関係が損なわれ,法務省が行う事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,同条6号柱書きに該当する。また,②ヒアリング参考人から提出された文書については,公にしないことを前提とした議事内容に係るヒアリング参考人の意見に関する情報が記載されており,公にすることにより,家族法制部会における率直な意見交換が不当に損なわれるおそれがあることから,同条5号に該当する。

家族法制部会第3回会議の資料のうち,委員から提出された資料について,公にしないことを前提とした議事内容に係る委員の意見に関する情報が記載されており,公にすることにより,家族法制部会における率直な意見交換が不当に損なわれるおそれがあることから,同条5号に該当する。

家族法制部会第5回会議の資料のうち,委員又はヒアリング参考人から提出された資料について,公にしないことを前提とした議事内容に係る委員又はヒアリング参考人の意見に関する情報が記載されており,公にすることにより,家族法制部会における率直な意見交換が不当に損なわれるおそれがあることから,同条5号に該当する。

加えて,今回,諮問庁において不開示理由について再検討した結果,家族法制部会第2回会議の資料及び家族法制部会第5回会議の資料には,委員又はヒアリング参考人の氏名の記載やヒアリング参考人の写真の掲載があり,これらの情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であることから,同条1号に該当するので,当該部分については理由を追加するのが相当と考えている。

以上によれば,原処分は相当であるから,審査請求人の主張には理由がなく,原処分を維持することが相当である。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 令和4年10月7日   諮問の受理

   ② 同日          諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同月28日       審議

   ④ 令和5年6月9日    本件対象文書の見分及び審議

   ⑤ 同年7月14日     審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,その一部を法5条2号イ,5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,不開示部分の開示を求めているところ,諮問庁は,上記第3の3のとおり,本件対象文書のうち,家族法制部会第2回会議の資料及び家族法制部会第5回会議の資料を不開示とした理由について,法5条1号を新たに追加した上で,原処分を維持することが相当であるとしていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,不開示部分の不開示情報該当性について検討する。


2 不開示部分の不開示情報該当性について

(1)当審査会事務局職員をして諮問庁に対し,本件対象文書の構成について確認させたところ,諮問庁は,本件対象文書のうち,①政党からの要望等に係る文書は,家族法制部会第2回会議用資料の1頁ないし88頁,②ヒアリング参考人からの提出文書は,同第2回会議用資料の89頁ないし105頁,同第3回会議用資料の106頁から109頁,同第5回会議用資料の110頁から455頁,③家族法制部会委員からの提出文書は,同第5回会議用資料の456頁ないし550頁である旨説明する。

   当審査会において,本件対象文書を見分したところ,上記①及び②の文書については記載内容部分の全部が,上記③については,提出委員名等を除く記載内容部分が不開示とされていることが認められる。


(2)政党からの要望等が記載された文書(上記①)について

  ア 諮問庁の説明

    標記文書の全部を不開示とした理由について,諮問庁は,上記第3の3のとおり説明し,当審査会事務局職員をして確認させたところ,おおむね以下のとおり補足して説明する。

  (ア)標記文書は,政党の委員会や議員連盟の提言書等であるところ,各文書の対象となっている家族法制(父母の離婚後等の子の養育の在り方に関するもの)については,国民の関心が極めて高い上,特定の方向性の世論が形成されているものではなく,多種多様な意見があるため,国会議員の立場が明らかとなることで生じ得る国民からの評価や誤解に基づく不利益は,特に大きいと考えられる。


(イ)標記文書は,いずれも,政党や各委員会等に所属する国会議員から,公開を前提とせずに法務省が取得したものであり,不開示部分についてその一端でも公にした場合,当該議員の関心事項・問題意識等が明らかとなり,仮に当該議員の特定につながらなくとも,一定の範囲の議員に対しての国民からの一方的な評価や誤解を招きかねず,当該議員の不利益となるおそれがある。

そうすると,これらを法務省が一方的に公にした場合,政党や国会議員との信頼関係が損なわれ,今後の国会質問対応等の行政事務に必要な情報の入手が困難となるなど,行政事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。


  イ 検討

  (ア)標記文書の不開示部分には,家族法制部会第2回会議の議題に係る制度や仕組みに関して,政党の委員会や議員連盟が行った要望や提言に関する情報が記載されており,それらは国の機関が行う事務に関する情報に該当するものと認められる。


(イ)標記文書は,いずれも国会議員から公開を前提とせずに取得したものであるところ,これを法務省が一方的に公にした場合,政党や国会議員との信頼関係が損なわれ,今後の行政事務に必要な情報の入手が困難となるなどとする上記アの諮問庁の説明は,これを否定することまではできず,当該部分を公にすることにより,法務省の行政事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。


(ウ)したがって,当該部分は,法5条6号柱書きに該当し,同条2号イについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


(3)家族法制部会のヒアリング参考人又は委員(以下「参考人等」という。)から取得した文書(上記②及び③)について

  ア 諮問庁の説明

    標記文書の全部又は一部を不開示とした理由について,諮問庁は,上記第3の3のとおり説明し,当審査会事務局職員をして確認させたところ,おおむね以下のとおり補足して説明する。

  (ア)法制審議会総会及び各部会の会議用資料の公開について,法制審議会議事規則(昭和24年8月13日)に特段の規定はないが,平成18年11月の法制審議会第151回会議において,審議に直接関係する会議用資料については,審議資料に準じて原則公開とし,そうでないものについては,会長あるいは各部会長の判断で法務省ウェブサイトへの掲載・非掲載を決定することとされた。


  (イ)家族法制部会で検討されている課題(とりわけ父母の離婚後の親権制度)は,国民からの関心が極めて高い上,意見対立が峻烈なものであるところ,これらに関し,SNSや報道などを通じて,連日にわたり様々な意見が多数示されており,対立する立場の意見に対して誹謗中傷とも受け取れる批判等がなされていることも少なくない。

そうした中,様々な立場を代表する参考人等から,資料の提出や自由な発言をしてもらうことで,充実した調査審議が実現できている。資料によっては,非公開を前提に提出を受ける場合があるが,そうした資料には必然的に秘匿性の高い情報が含まれており,非公開という前提があるからこそ,提出可能となるものも多く存在すると考えられる。


(ウ)標記文書は,いずれも,参考人等から,調査審議の参考資料として非公開を前提に提出を受けたものであって,家族法制部会としても,ウェブサイトへの掲載も含め,非公開資料として取り扱うこととしたものである。

当該文書を,法務省が,資料提出者の意向を無視して公開するとすれば,それがSNSなどを通じて不特定多数の者に発信され,資料提出者の立場と対立する立場の者など,外部から不当な圧力や干渉が行われるおそれがあることは想像に難くない。そうすると,今後も家族法制部会の会議に出席し,自らの立場に基づいて自由に意見を述べることが期待される参考人等が,上記圧力等が加えられることを懸念し,自由な意見表明をちゅうちょするおそれがある。

また,非公開を前提に資料を提出し,調査審議が行われたとしても,後に資料を公開される可能性が内包されることとなり,参考人等が,資料提出を含め自由な意見提出をちゅうちょし,同部会内の自由かったつな議論に支障を来すおそれがあるほか,新たな参考人等の協力を得られにくくなり,同部会における率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあると考えられる。


  イ 検討

  (ア)標記文書の不開示部分には,家族法制部会第2回,第3回及び第5回の各議題に即した内容の情報が記載されており,それらは国の機関の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報に該当するものと認められる。

     なお,当審査会事務局職員をして,法務省ウェブサイトを確認させたところ,標記文書は,いずれも当該ウェブサイトに掲載されていないものと認められた。


(イ)当審査会が見分した標記文書の性質を踏まえると,当該部分を公にすることにより,参考人等が資料を含め自由な意見提出をちゅうちょし,家族法制部会内の自由かったつな議論に支障を来すおそれがあるなどとする上記アの諮問庁の説明は,これを否定することまではできず,当該部分を公にすることにより,同部会における率直な意見交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあると認められる。


(ウ)したがって,当該部分は,法5条5号に該当し,同条1号について判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条2号イ,5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とした決定について,諮問庁が,不開示とされた部分は同条1号,2号イ,5号及び6号柱書きに該当することから不開示とすべきとしていることについては,不開示とされた部分は,同条5号及び6号柱書きに該当すると認められるので,同条1号及び2号イについて判断するまでもなく,妥当であると判断した。


(第1部会)

  委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美





別紙


1 原処分で開示するとされた行政文書

(1)家族法制部会第1回会議の資料

(2)家族法制部会第2回会議の資料

(3)家族法制部会第3回会議の資料

(4)家族法制部会第4回会議の資料

(5)家族法制部会第5回会議の資料

(6)家族法制部会第6回会議の資料

(7)家族法制部会第7回会議の資料

(8)家族法制部会第8回会議の資料

(9)家族法制部会第9回会議の資料

(10)家族法制部会第10回会議の資料

(11)法制審議会部会の臨時委員等の任命手続等について

(12)家族法制部会の臨時委員等の任命手続について

(13)法制審議会部会民法(親子法制)部会,民事訴訟法(IT化関係)部会,仲裁法制部会,家族法制部会及び担保法制部会の臨時委員等の任命手続について(依頼)


2 上記1のうち,その一部を不開示とされた行政文書(本件対象文書)

(1)家族法制部会第2回会議の資料(上記1(2))

(2)家族法制部会第3回会議の資料(上記1(3))

(3)家族法制部会第5回会議の資料(上記1(5))