諮問庁 金融庁長官
諮問日 令和 5年 1月19日(令和5年(行情)諮問第31号)
答申日 令和 5年 7月 3日(令和5年度(行情)答申第173号)
事件名 行政文書ファイル「特定金融機関(決裁H30.3.13実施)」につづられた文書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,別表の5欄に掲げる部分を開示すべきである。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和4年7月26日付け金総政第4592号により金融庁長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。


2 審査請求の理由

審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである(なお,資料の内容は省略する。)。

 (1)審査請求書

    審査請求人は,令和4年5月27日,処分庁に対して行政文書開示請求(e-Gov文書管理検索結果における「新管理簿/特定金融機関(参考資料)H30.3.13実施」の全文書)申請を実施し,全575頁中200頁の開示と375頁の全部不開示の決定通知を受領した。

    開示が行われた200頁についても具体的な内容については殆どが黒塗りであり,要約することもできない程度の断片的な開示に留まった。また全部不開示の375頁については全く情報が無くブラックボックスの状態である。開示された内容は平成30年10月5日の行政処分「特定金融機関に対する行政処分について」にて公開されている内容と大差がなく,本件開示決定による開示は当該業務改善命令が発出された背景について国民が「知る権利」を行使したものであるにも関わらず,開示文書の内容が乏しく法1条に記載されている「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的」が十分に果たされたといえる状況に無い。

    更に,本件は単なる行政処分ではなく,①多数の自己破産者や自殺者を生み出した社会問題である点,②業務改善命令は発出されて既に4年超が経過したにも関わらず,未だ改善命令が解除されていない点も特筆すべき事項である。本件行政開示請求文書は,今もなお続く社会問題についての説明責任を問う請求であることを踏まえ,法7条も参照した上で特段の配慮をご検討賜りたくお願い申し上げます。


 (2)意見書

   ア 原処分及び金融庁の理由説明書(下記第3を指す。以下同じ。)に対する審査請求人の意見

金融庁は行政文書開示決定処分及び本件の理由説明書において法5条1号,2号イ,6号柱書き及びイを根拠として多くの文書を「不開示又は一部不開示(黒塗り)」とした。法5条には「行政機関の長は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない。」とされ,その1号は「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若しくは電磁的記録に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その他の方法を用いて表された一切の事項をいう。次条第二項においても同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。」とある。本条により開示文書から「個人名」及び「印影」が不開示となることについては妥当性があることについて審査請求人に特段の異論はない。

法5条2号は,「法人その他の団体(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報を除く。」とありそのイは「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とある。これにより金融機関の経営・内部管理等に係る情報,取引先情報等の記載の多くを全部または一部不開示としている。理由説明書においては「公にした場合金融機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため」としている。これに対し審査請求人は見解を異にする。本件は単なる「健全な金融機関に対して行われた検査」に対する開示請求ではなく「不健全な金融機関に対して行われた検査」であることは本件検査後に対象の金融機関に対して行政処分が行われたことからも明らかである。対象金融機関職員が不正を認識しながら業務を行い,多くの被害者(自死した者も含む)を生み出した社会問題である。既に対象金融機関は果たすべき健全な業務運営や適切な内部統制を機能させず,特定業法によって認可された金融機関としての責任を果たさないばかりか,不動産業者の不正を明確に認識,もしくは少なくとも相当の疑いを持ちながら業務を行ったと事実認定がなされている。(金融庁ホームページより抜粋)つまり,今回の不開示となった部分には,法によって守るべき金融機関の利益が含まれており,それは「不正行為を行った事実」に関するものが含まれるということとなる。既に開示がなされた文書を読むと具体的な不正に関する部分は多くが黒塗りの対象となっており,内容の把握が困難な程度に広い部分が「一部・全部不開示」とされている。審査請求人は黒塗りの部分に「真に守るべき(=不開示とすべき)情報」が含まれているかについては把握できないが,業務停止・業務改善命令が発出され,社会問題となり,多くの被害者を出した問題に対して行われた検査である特殊性を一切勘案せず法の文章を表面的に適用して非常に広い部分に対し不開示がなされたことは遺憾念(原文ママ)であると共に「金融庁が本件について必要以上に広い部分を不開示とすることは,特定金融機関の不正にかかる記述部分は金融庁が特定金融機関の権利・利益を守るべきものとして不開示としたもの」とも捉えることができるため,不開示部分の精査が必要になると審査請求人は考える。時間が限られており,個別の記載部分の指摘は実施しないものの,審査会が真摯に本件の問題をとらえ,時間を頂けるのであれば,個別具体的に精査が必要だと考える箇所について指摘することもやぶさかではないと審査請求人は考えている。審査請求人がこのように考える理由として,金融庁は特定金融機関に対し高い評価をしていたことが複数のマスコミの記述から明らかとなっている。金融庁は当時,間違った認識を広く一般に広げることで特定金融機関の不正は増長された可能性があると考えており,金融庁は本件について可能な限り文書を開示しないインセンティブが働く可能性を強く危惧している。当然,そのようなことは国家に仕える公務員の職務としてあり得ないとは考えているものの,本件の不開示となった部分については第三者の目が入ることに大きな意義と必要性があると審査請求人は考えている。

法5条6号柱書きは「国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とされそのイには「監査,検査,取締り,試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれ」とある。金融庁は現在の金融機関の検査は金融機関の協力が必要,公にすることで当局と金融機関の信頼関係を損ない検査に支障をきたす可能性を挙げて非開示としているが,この点について審査請求人は疑念を呈する。仮に支障が生じるのであれば特定業法によって報告・資料の提出・立入検査を行い,不十分な協力しか得られなければ業務改善・業務停止・免許の取り消しを行えばよい。金融機関の協力が得られず,資料が得られないから適正な事務遂行が妨げられることが懸念と捉えられるが,ここで必要とされる「適正」な状態は「金融機関の適正な監督」であり「協力関係により容易に資料が金融機関から提出され,低コストで効率的に検査を行うことができる,容易に不正が発見できる」ことではない。監督官庁自身が「適正な遂行」に無意識のうちに効率性の観点を入れてはいないだろうか。多少の非効率であったとしても正しいことをルール通り行い,国民生活の維持向上を図ることが公務員に求められている役割ではないか。本号による不開示はその適用に慎重であるべきで安易に適用されるべきではない。金融庁の理由説明書には検査の手法や着眼点などの記載が公にされることを懸念する記載があるが,検査の手法・監査の手法自体は一般的に学ぶことができるものである為,金融機関個別に定める業務規則や取扱要領,事務マニュアルなどの具体的名称が公にされなければ済む話であり,そこから「何が判明したのか」という点まで黒塗りにする必要は無い。本号によって安易に広い範囲が不開示とすることは厳に慎むべきであると審査請求人は考える。

情報公開・個人情報保護審査会の委員の各位におきましては,法の条文を並べて安易に広い範囲の不開示がまかり通る可能性,本件の特殊性(特に金融庁に不開示範囲を増やすインセンティブがある点)など慎重な検討をお願いしたい。


   イ 法7条による裁量的開示の要否に対する金融庁の理由説明書に対する審査請求人の意見

     まず,細かい指摘となるが理由説明書の記載に「本件についてみると,審査請求人は,本件対象文書が特定金融機関に対して業務改善命令を出す直前に実施された検査に関する文書であるなどとし,開示の必要性を述べている」と記載がなされているが,客観的に観測される事実を見れば,本件は明らかに業務改善命令を発出する直前に実施された検査である。金融庁は本件請求が「通常の健全な経営をしている金融機関に対する一般的な検査に係る文書の開示請求」であると認識しているのであれば,本件に対する認識を改めていただく必要がある。本件は業務停止・業務改善命令が発出され「金融庁がよい金融機関と話していた特定金融機関が実は不正によって多額の利益を上げていた」実態を確認したものであり,明らかに業務改善命令直前の時期に行われた検査に係る文書である。審査請求人の認識が間違っているかのような記載がなされていることは遺憾であると共に,顧客目線の業務運営を金融機関に求める金融庁がこのような客観的事実を見失っていると思わせるかのような記載が出てきたことで,審査請求人は本件の全部・一部不開示の決定はやはり再考されるべきものであるとの確信を深めている。

     審査請求人が法7条の公益的観点による開示を敢えて求めているのは既に述べている通り,本件は「業務停止・改善命令に強く関連する文書」であること「金融庁に本件文書での全部・一部不開示部分を増やすインセンティブが働く状況であること」,既に多くの被害者を発生させ,その「被害は業務改善命令発出から4年以上を経過しても解決がされていない」ことなど社会に大きな影響を与え,多くの被害者を現在進行形で苦しめている問題である。本件の開示がこの社会問題の解決に資することは明らかであると審査請求人は確信をもっていえる。なぜならば,全部不開示・一部不開示の部分を精査することで「特定金融機関が不正を認識していた,容易に認識しうる状況であった,不正を自ら実行した,不正を認識して黙認した」などの具体的状況や検査担当官の「認識」,発見された「事実」などを明らかにすることができるためである。

     また,審査請求人は本件の開示が「(公に)開示と非開示」の2者択一の選択ではなく「守秘義務契約締結の上で,閲覧のみ」とするなどの開示方法も取りうると考えている。法に具体的な記載はなくとも,本条による開示としてそのような特段措置の上で開示することを検討することは金融庁側の懸念を払拭し,双方が納得性のある結論を得ることを探ることができる方策になりうると考える。


   ウ 最後に

     情報公開・個人情報保護審査会のご関係者の皆様におかれましては,本件は決して「通常の審査請求」ではない特殊性・重要性をご認識頂きたい。情報の非対称性がある以上,審査請求人が本件の当初開示の真の妥当性について判断は困難であるが,少なくとも,本件は金融庁自身の監督不足,金融庁による誤った認識によって被害が拡大した可能性があり,その実態が公になることを避けるインセンティブが働く事案であることを踏まえ,当初開示が本当に妥当であるかについては十分ご検討いただき,疑念がある場合は追加の議論を経て,可能な限りの柔軟な対応を頂けるよう強くご依頼をさせていただくものです。


第3  諮問庁の説明の要旨

   審査請求人が,令和4年5月26日付け(同月27日受付)で,処分庁に対して行った行政文書開示請求(以下「本件開示請求」という。なお,本件開示請求は法10条2項に基づき,開示決定等の期限が同年7月26日まで延長された。)に関し,処分庁が,原処分をしたところ,これに対し審査請求(以下「本件審査請求」という。)があったが,以下のとおり,原処分を維持すべきものと思料する。

 1 本件開示請求に係る行政文書について

   本件開示請求に係る行政文書は,本件対象文書である。


 2 原処分について

 (1)原処分の概要

    処分庁は,本件対象文書の一部を開示するとともに一部を不開示とする旨の決定をした。


 (2)本件審査請求に係る不開示理由について

    原処分は,本件対象文書(合計575枚)のうち,法5条1号,2号イ,6号柱書き,6号イを根拠として,行政文書開示決定通知書別紙の「不開示とした部分」記載の部分につき,不開示とした(全面不開示375枚,一部不開示192枚,全部開示8枚)。具体的な不開示理由は次のとおりである。

   ア 法5条1号

     不開示とした部分には,検査官の印影,氏名,役職が記載されており,これは特定の個人を識別することができる情報であって,どの金融機関をどの検査官が検査を行ったかについての公表慣行はないため,不開示とした。


   イ 法5条2号イ

   (ア)不開示とした部分には,金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されており,これを公にした場合,金融機関の内部管理態勢等が明らかになるなど,当該金融機関等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため,不開示とした。


   (イ)不開示とした部分には,特定金融機関の代表者等又は法人の印影が記録されており,当該印影は認証的機能を有し,実社会において重要な役割を果たしている。これを公にした場合,偽造されること等により財産的損害等を及ぼし,特定金融機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから不開示とした。


   ウ 法5条6号イ

不開示とした部分には,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されており,これを公にすることにより,検査において違法若しくは不当な行為の発見を困難にして,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

また,検査は被検査金融機関の協力を得て,その経営の健全性及び業務の適切性の実態把握を行うものであるが,不開示とした部分には,金融機関の経営内容等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されており,これを公にすることになれば,検査当局と金融機関との信頼関係を損ない,今後,検査において金融機関の協力が得難くなり,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にして,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,不開示とした。


   エ 法5条6号柱書き及びイ

   (ア)不開示とした部分は,検査の着眼点や検査の手法等,検査手法を類推可能な情報であり,これを公にすることにより,検査当局による検査手法や検査の深度や範囲が明らかとなり,ひいては,検査対象となる金融機関において,問題点の発覚を不正に免れるための措置や対策を講じることが可能となるなど,検査当局の検査に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にするおそれその他検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,不開示とした。


   (イ)不開示とした部分には,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されており,これを公にすることにより,検査において違法若しくは不当な行為の発見を困難にするなど,検査事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

      また,検査は被検査金融機関の協力を得て,その経営の健全性及び業務の適切性の実態把握を行うものであるが,不開示とした部分には,金融機関の経営内容等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されており,これを公にすることになれば,検査当局と金融機関との信頼関係を損ない,今後,検査において金融機関の協力が得難くなり,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にして,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,不開示とした。


 3 審査請求人の主張について

 (1)審査請求の趣旨

    上記第2の1のとおり。


 (2)審査請求の理由

    上記第2の2(1)のとおり。


 4 原処分の妥当性について

 (1)立入検査について

    一般論として,金融機関に対する立入検査は,金融機関の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときに,金融機関の営業所その他の施設に立ち入らせ,その業務若しくは財産の状況に関し質問させ,又は帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとされている。

    また,特定業法は,金融機関に対する検査に関して,検査担当部局に対し,刑事手続における強制捜査のような書類の押収権限等を付与しておらず,かつ,正当な理由がなく検査拒否等をした者に対して罰則を設けることにより,間接的に検査の受忍を強制しようとしたにすぎない。

    この点,「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和4年12月)・別紙2「立入検査の基本的手続」においても,立入検査は,モニタリングを実施する上での一手段である一方,被検査金融機関に大きな負担等をもたらすおそれがあるので,被検査金融機関の理解と協力があって実施できるものとしているところである(上記監督指針184頁)。

    このような理解を前提として,被検査金融機関に対する検査及びこれに付随する事務の内容については,被検査金融機関の経営管理態勢等の検証の着眼点,手法及び結果のほか,検査で把握された経営上の機密・ノウハウ,被検査金融機関とその取引先との関係の程度など,検査及びこれに付随する事務の内容が公となれば,「①被検査金融機関やその取引先の権利,競争上の地位やその正当な利益を害するおそれがある。②将来の検査一般において,正確な事実の把握を困難にするなど,検査の実効性を損ねるおそれがある。③被検査金融機関に多大な影響を及ぼすのみならず,金融情勢全般に不測の影響を与えるおそれがあり,金融システム全体の安定性が確保されないおそれがある。」(上記監督指針189頁)として,原則不開示としている。


 (2)本件対象文書について

    本件対象文書は,平成30年3月13日を検査実施日として行われた特定金融機関に対する検査(以下「本件検査」という。)について,検査結果の検討や取りまとめに際して作成・取得された文書一式であって,概ね,企画審査課提出資料確認簿,決裁鑑,検査結果通知案,受領書,検査結果報告書,検査命令書,重要事項説明に係る承諾書,検査関係情報開示承諾申請書,検査関係情報開示承諾書(写),意見申出に関する確認書,検査報告書配付簿により構成されている。

    以下,原処分において不開示とした部分(以下「本件不開示部分」という。)に係る不開示事由該当性について,本件対象文書を構成する文書ごとに検討する(本件対象文書を構成する文書と,本件不開示部分の対応関係は別表のとおりである。)。なお,組織名や用語については,これらの文書が作成された時点のものを使用している。


 (3)不開示事由該当性について

   ア 企画審査課提出資料確認簿(別表の番号1及び番号2)

     企画審査課提出資料確認簿は,検査官が審査担当者に検査資料を引き継ぐ際に,資料に漏れがないかを双方で確認するために作成・記録するものである。

   (ア)別表の番号2固有部分

      不開示とした部分には,検査官の印影及び氏名が記載されている部分があるところ,これらは法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別できるものに該当する。そして,どの金融機関をどの検査官が検査したかについては,公表慣行がなく,また,これを公にすると,当該検査官に対して不当な圧力が掛かるおそれがあり,「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて(平成17年8月3日付け情報公開に関する連絡会議申合せ)」における「特段の支障が生ずるおそれがある場合」に該当するものと認められ,法5条1号ただし書イには該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当すると認めるべき事情も存しない。

      したがって,検査官の印影又は氏名は,法5条1号本文前段に該当する。


   (イ)別表の番号1及び番号2共通部分

      不開示とした部分には,検査の着眼点,検査の手法を類推できるほか,これを通じて検査当局内部の検討経過をも窺い知ることができる情報が記載されている部分があり,これらを公にすれば,今後金融庁から検査を受ける可能性のある金融機関に対して,問題点等の発覚を妨げる手段を与えることになりかねず,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条6号柱書き及びイに該当する。


   イ 決裁鑑(別表の番号3)

不開示とした部分には,検査官の印影が記録されており,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


   ウ 検査結果通知案(別表の番号4ないし番号6及び番号7の一部(本件対象文書267枚目ないし341枚目))

     検査結果通知とは,立入検査を通じて把握した事項や問題点等を検査当局内部で審査・分析・検証し,最終的に,金融庁総合政策局長名で検査結果として取りまとめられる文書で,立入検査終了後,検査当局の見解として,被検査金融機関に対し,交付されるものであり,検査結果通知案はその案である。

   (ア)別表の番号4及び番号5共通部分

      不開示とした部分には,検査官の氏名及び役職が記載されている部分があるところ,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


   (イ)別表の番号4及び番号6共通部分

      不開示とした部分には,検査の着眼点,把握した問題点及び検査当局の評価等,検査方法に係る情報とともに,検査を通じて把握した被検査金融機関の経営内容,経営管理態勢等の経営上の機密やノウハウ及び取引先に係る情報等,機微な情報が全体にわたり不可分一体のものとして詳細に記載されているものと認められる。

      これらの情報を公にすると,今後,金融庁から検査を受ける可能性のある金融機関において,当該情報の分析等をし,金融庁の検査方針や検査方法を把握することにより,問題点等の発覚を不正に免れるための措置や対策を講じることが可能となるなど,検査に係る事務に関し,検査当局による正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にするおそれがあり,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるといえるから,法5条6号イに該当する。

      また,これらの情報を公にすると,被検査金融機関において考案・蓄積されてきたノウハウ等が,第三者に有利に,又は,被検査金融機関に不利に利用されることなどによって,被検査金融機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イにも該当する。


(ウ)別表の番号5及び番号7の一部(本件対象文書267枚目ないし341枚目)共通部分

   不開示とした部分には,検査の着眼点,把握した問題点及び検査当局の評価等,検査方法に係る情報とともに,検査を通じて把握した被検査金融機関の経営内容,経営管理態勢等の経営上の機密やノウハウ及び取引先に係る情報等,機微な情報が全体にわたり不可分一体のものとして詳細に記載されているものと認められる。

   これらの情報を公にすると,今後,金融庁から検査を受ける可能性のある金融機関において,当該情報の分析等をし,金融庁の検査方針や検査方法を把握することにより,問題点等の発覚を不正に免れるための措置や対策を講じることが可能となるなど,検査に係る事務に関し,検査当局による正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にするおそれがあり,検査事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるといえるから,法5条6号柱書き及びイに該当する。

   また,これらの情報を公にすると,被検査金融機関において考案・蓄積されてきたノウハウ等が,第三者に有利に,又は,被検査金融機関に不利に利用されることなどによって,被検査金融機関の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イにも該当する。


エ 検査報告書(別表の番号7の一部(本件対象文書343枚目ないし449枚目,451枚目ないし542枚目)及び番号9)

  検査報告書は,立入検査終了後に,主任検査官において,検査を通じて把握した事項や問題点等を検査当局内部で報告するために検査結果を取りまとめた文書であり,最終的な検査結果通知書の原案となるものであるが,主任検査官の認識を表現した内容が不確定であって検討過程にあるものである。

(ア)別表の番号9固有部分

  a 不開示とした部分には,検査官の氏名が記載されている部分があり,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


  b 不開示とした部分には,検査の着眼点,検査の手法を類推できるほか,これを通じて検査当局内部の検討経過をも窺い知ることができる情報が記載されている部分があり,前記ア(イ)と同様に,法5条6号柱書き及びイに該当する。


(イ)別表の番号7の一部(本件対象文書343枚目ないし449枚目及び451枚目ないし542枚目)固有部分

   不開示とした部分には,検査の着眼点,把握した問題点及び検査当局の評価,検査の手法等,検査当局内部の検討経過を窺い知ることができる情報とともに,検査を通じて把握した被検査金融機関の経営内容,経営管理態勢等の経営上の機密やノウハウ及び取引先に係る情報等,機微な情報が全体にわたり不可分一体のものとして詳細に記載されているものと認められ,前記ウ(ウ)と同様に法5条2号イ並びに6号柱書き及びイに該当する。


オ 検査命令書(別表の番号10)

検査命令書は,金融庁長官から主任検査官に対し,特定業法に基づく検査の実施を命ずる旨が記載されている書面である。

不開示とした部分には,検査官の氏名が記載されており,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


   カ 受領書,重要事項説明に係る承諾書,検査関係情報開示承諾申請書,検査関係情報開示承諾書(写),意見申出に関する確認書(別表の番号8及び番号11ないし番号14)

     金融検査では,立入検査の開始前や終了時において,主任検査官から被検査金融機関や検査対象となった関係会社に対して,検査関係情報の取扱いといった重要事項の説明や検査結果通知書の交付を行い,説明内容を承諾した旨や検査結果通知書を受領した旨の書面を被検査金融機関や関係会社から徴することとしており,また,被検査金融機関から第三者への検査結果情報の開示の申出があった場合には,当該被検査金融機関から書面による申請を求めるものとしている。

     標記の各文書は,立入検査に関し,被検査金融機関から提出を受けた承諾書や申請書(申請書の添付資料含む)等又は被検査金融機関からの申請を受けて金融庁から被検査金融機関へ交付された承諾書である。

   (ア)別表の番号11及び番号14共通部分

      不開示とした部分のうち,別表の番号11には検査官の氏名が,同番号14には検査官の氏名及び印影が記載されている部分があり,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


   (イ)別表の番号11及び番号13共通部分

      不開示とした部分には,特定金融機関や特定金融機関に関係する法人又は団体の代表者の印影が記録されている部分があるところ,金融機関及び法人又は団体の代表者の印影は,認証的機能を有し,実社会において重要な役割を果たしており,これを公にした場合,偽造される等により財産的損害等を及ぼし,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは明らかである。

      また,不開示とした部分には,金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されており,これを公にすることにより,当該関係会社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれと認められるため,法5条2号イに該当する。


   (ウ)別表の番号8固有部分

      不開示とした部分には,特定金融機関の代表者等の印影が記録されている部分があるところ,金融機関の代表者等の印影は,認証的機能を有し,実社会において重要な役割を果たしており,これを公にした場合,偽造される等により財産的損害等を及ぼし,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは明らかであるから,法5条2号イに該当する。


   (エ)別表の番号12固有部分

      不開示とした部分には,金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されており,これを公にすることにより,当該関係会社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれと認められるため,法5条2号イに該当する。


   キ 検査報告書配付簿(別表の番号15)

検査報告書配付簿は,検査当局において,配付先や配付時期等を記録したものである。

   (ア)不開示とした部分には,検査官の氏名が記載されている部分があり,前記ア(ア)と同様に法5条1号本文前段に該当する。


   (イ)不開示とした部分には,検査報告書の配付を受けた職員の氏名及び役職名,検査報告書の配付時期のほか,検査報告書を基に行われる協議の種別や議題を窺わせる項目等が記載されている部分があり,これらの情報から検査の着眼点,検査の手法を類推される可能性があると認められ,これらの情報を公にすれば,金融庁から検査を受ける可能性のある金融機関に対して,問題点等の発覚を妨げる手段を与えることとなりかねず,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条6号柱書き及びイに該当する。

      原処分の理由のほか,これらの情報は,検査結果通知に至るまでの協議過程に係る情報でもあり,当該部分を公にすれば,各協議における関係者や協議過程が推認され,今後の金融検査において率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあると認められ,法5条5号にも該当する。


 (4)法7条に基づく裁量的開示の要否について

審査請求人は審査請求書において,「法7条も参照した上で特段の配慮をご検討賜りたくお願い申し上げます。」などと記載していることから,公益上の必要性による裁量的開示を求めているものと解される。

法7条に基づく裁量的開示は,開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても,行政機関の長が公益上特に必要と認めるときは,これを開示することができるとするものである。その判断は,当該不開示情報を公にすることに,不開示とすることにより保護される利益を上回る公益上の必要性があると認められるかどうかによって行われる。

本件についてみると,審査請求人は,本件対象文書が特定金融機関に対して業務改善命令を出す直前に実施された検査に関する文書であるなどとし,開示の必要性を述べている。しかしながら,本件不開示部分の不開示事由該当性及びこれらを公にした場合の影響については前記(3)に記載のとおりであり,また,審査請求人が述べる特定金融機関に対する業務改善命令については,当局が必要と認める範囲で金融庁ウェブサイトにおいて公開されており,既に社会に対して広く情報提供がなされていると考えられる。

したがって,本件不開示部分を開示することに,これを不開示とすることにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとは認められない。


 5 審査請求人の主張に対する反論について

   審査請求人は,前記第2の2(1)のとおり原処分に対する不服を述べるが,本件対象文書が不開示事由に該当し,また,法7条による裁量的開示の必要性も認められないことについては,前記4(3)及び(4)に記載のとおりであるから,審査請求人の主張は結論を左右するものではない。


 6 結語

   よって,原処分は妥当であるから,諮問庁は,これを維持するのが相当であると思料する。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 令和5年1月19日  諮問の受理

② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年2月9日     審議

④ 同月24日      審査請求人から意見書及び資料を収受

⑤ 同年6月19日    委員の交代に伴う所要の手続の実施,本件対象文書の見分及び審議

⑥ 同月28日      審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

  処分庁は,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,2号イ並びに6号柱書き及びイに該当するとして不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,不開示部分の開示を求めているところ,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,不開示部分の不開示情報該当性について検討する。

なお,審査請求人は,上記第2の2(2)アにおいて,法5条1号により「開示文書から『個人名』及び『印影』が不開示となることについては妥当性があることについて審査請求人に特段の異論はない」と主張する。

本件対象文書には,法5条1号により不開示とされた部分以外にも数多くの「個人名」及び「印影」が記載されており,審査請求人のいう「個人名」及び「印影」の範囲が不明確であることから,本件不開示部分全てについて,不開示情報該当性を判断する。


2 不開示部分の不開示情報該当性について

(1)別表の番号1の不開示部分について

当該部分には,検査項目及び検査資料の冊数が記載されていることが認められる。

当該部分を公にすると,検査の着眼点,検査の手法や収集した資料の分量を類推できるほか,これを通じて検査当局内部の検討経過をも窺い知ることができるなど,検査当局の検査に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にするおそれその他検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


(2)別表の番号2の不開示部分について

   ア 検査官の氏名及び印影が記載されている部分について

     当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報に該当する。また,金融庁における検査官の氏名及び印影について,公表慣行をうかがわせる事情はないことから同号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も認められない。さらに,当該不開示部分は,個人識別部分に該当するため,法6条2項に基づく部分開示の余地はない。

したがって,当該部分は,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


   イ その余の部分について

     当該部分には,検査班から企画審査課へ引き継ぐ資料名,引継ぎの有無,その冊数及び備考が記載されていることが認められる。

    当該部分を公にすることにより,検査の着眼点,検査の手法や収集した資料の分量を類推されるなど,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする上記第3の4(3)ア(イ)の諮問庁の説明は否定し難い。

    したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


(3)別表の番号3の不開示部分について

当該部分には検査官の印影が記載されていると認められ,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


 (4)別表の番号4の不開示部分について

   ア 別表の番号4の5欄に掲げる部分について

     当該部分には検査の概要が記載されていると認められるものの,金融庁のウェブサイトにおいて公表している情報及び本件対象文書において既に開示されている部分と同旨の情報又は当該情報から容易に推測できる情報であると認められ,法5条1号,2号イ及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきである。


イ 検査官の氏名が記載されている部分について

  当該部分は,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


ウ その余の部分について

     当該部分には,検査官の人数,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されていることが認められ,当該部分を公にすることにより,検査の着眼点,検査の手法を類推されるなど,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

     したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同条2号イについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


 (5)別表の番号5の不開示部分について

ア 別表の番号5の5欄に掲げる部分について

     当該部分には検査の概要が記載されていると認められるものの,上記(4)アと同様の理由により,法5条1号,2号イ及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきである。


イ 検査官の氏名が記載されている部分について

  当該部分は,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


ウ その余の部分について

     当該部分には,非公表の検査の日程,検査官の人数,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されていることが認められ,上記(4)ウと同様の理由により,法5条6号イに該当し,同条2号イ及び6号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


 (6)別表の番号6の不開示部分について

当該部分には,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されていることが認められ,上記(4)ウと同様の理由により,法5条6号イに該当し,同条2号イについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


 (7)別表の番号7の不開示部分について

   ア 別表の番号7の5欄に掲げる部分について

     当該部分には,当該ページのタイトルが記載されていると認められるものの,本件対象文書において既に開示されている部分と同旨の情報であり,その内容は一般的な記載にとどまることから,法5条2号イ並びに6号柱書き及びイのいずれにも該当せず,開示すべきである。


   イ その余の部分について

当該部分には,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法に係る情報が記載されていることが認められ,上記(4)ウと同様の理由により,法5条6号イに該当し,同条2号イ及び6号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


 (8)別表の番号8の不開示部分について

    当該部分には,特定金融機関の代表者等の印影が記載されていることが認められる。

    当該印影は,特定金融機関の代表者等を表象したものであると認められるところ,当該印影は,これが押された書類等の記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであるとともに,これにふさわしい形状のものであって,特定金融機関において,これを公にしていることをうかがわせる事情もない。

    そうすると,これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されるおそれがあることは否定できず,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれがあると認められることから,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


 (9)別表の番号9の不開示部分について

   ア 別表の番号9の5欄に掲げる部分について

     当該部分には文書のタイトルが記載されていることが認められるものの,本件対象文書において既に開示されている部分と同旨の情報又は当該部分から容易に推測できる情報であると認められることから,法5条6号柱書き及びイのいずれにも該当せず,開示すべきである。


イ 検査官の氏名が記載されている部分について

  当該部分は,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


ウ その余の部分

当該部分には,非公表の検査日程,検査の着眼点や検査の手法等,検査方法を類推可能な情報が記載されていることが認められ,上記(4)ウと同様の理由により,法5条6号イに該当し,同号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


 (10)別表の番号10の不開示部分について

当該部分には検査官の氏名が記載されていると認められ,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


 (11)別表の番号11の不開示部分について

   ア 別表の番号11の5欄に掲げる部分について

     当該部分には,特定金融機関から第三者への検査結果情報の開示に係る承諾を求める旨の文言が記載されているものの,その内容は一般的な記載や特定金融機関のウェブサイトにおいて自ら公表している情報から推認できる情報であると認められ,これを公にしても,特定金融機関や取引先の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。

     したがって,当該部分は,法5条2号イに該当せず,開示すべきである。


イ 検査官の氏名が記載されている部分について

  当該部分は,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


ウ 特定金融機関の印影が記載されている部分について

  当該部分は,上記(8)と同様の理由により,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


エ その余の部分について

  当該部分には,特定金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されていると認められ,これを公にした場合,特定金融機関の内部管理態勢等が明らかになるなど,特定金融機関等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。

  したがって,当該部分は,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


 (12)別表の番号12の不開示部分について

   ア 別表の番号12の5欄に掲げる部分について

当該部分には,特定金融機関から第三者への検査結果情報の開示に係る承諾を求める旨の文言が記載されているものの,その内容は特定金融機関のウェブサイトにおいて自ら公表している情報から推認できる情報であると認められ,これを公にしても,特定金融機関や取引先の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。

したがって,当該部分は,法5条2号イに該当せず,開示すべきである。


   イ その余の部分について

     当該部分には,特定金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されていると認められ,上記(11)エと同様の理由により,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


 (13)別表の番号13の不開示部分について

    当該部分には,特定金融機関の経営・内部管理等に係る情報及びその取引先に係る情報が記載されていると認められ,上記(11)エと同様の理由により,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


 (14)別表の番号14の不開示部分について

    当該部分には検査官の氏名及び印影が記載されていると認められ,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


 (15)別表の番号15の不開示部分について

   ア 検査官の氏名が記載されている部分について

  当該部分は,上記(2)アと同様の理由により,法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


イ その余の部分について

当該部分には,検査報告書の配付を受けた職員の氏名及び役職名,検査報告書の配付時期等が記載されていると認められる。

当該部分を公にすることにより,どの部署が検査に関係しているのかが明らかとなり,検査の着眼点,検査の手法を類推されるなど,検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


3 審査請求人のその他の主張について

(1)審査請求人は,本件不開示部分について,法7条の規定による裁量的開示を主張するが,上記2において法5条1号,2号イ及び6号イに該当するとして不開示とすべきとした部分については,これらを公にすることに,当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があるとまでは認められないので,この点についての審査請求人の主張は容れることができない。


(2)審査請求人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,2号イ並びに6号柱書き及びイに該当するとして不開示とした決定については,別表の5欄に掲げる部分を除く部分は,同条1号,2号イ及び6号イに該当すると認められるので,同号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当であるが,別表の5欄に掲げる部分は,同条1号,2号イ並びに6号柱書き及びイのいずれにも該当せず,開示すべきであると判断した。


(第4部会)

  委員 小林昭彦,委員 常岡孝好,委員 野田 崇





別紙(本件対象文書)


「特定金融機関(決裁H30.3.13実施)」に編綴された全文書



別表


1 番号

2 不開示とした部分

3 根拠条文

4 文書名等

5 開示すべき部分

1枚目の全部

法5条6号柱書き及びイ

企画審査課提出資料確認簿の補足資料

3枚目の一部

法5条1号

法5条6号柱書き及びイ

企画審査課提出資料確認簿

4枚目の一部

263枚目の一部

法5条1号

決裁鑑

決裁鑑(廃案)

7枚目の一部

92枚目の一部

178枚目の一部

法5条1号

法5条2号イ

法5条6号イ

検査結果通知(案)

7枚目,92枚目及び178枚目の4行目3文字目ないし11文字目及び23文字目ないし35文字目並びに5行目及び6行目

266枚目の一部

法5条1号

法5条2号イ

法5条6号柱書き及びイ

検査結果通知(案)(廃案)

4行目9文字目ないし17文字目及び29文字目ないし36文字目並びに5行目

8枚目及び9枚目の一部

10枚目ないし18枚目の全部

19枚目及び20枚目の一部

21枚目ないし23枚目の全部

24枚目ないし32枚目の一部

33枚目の全部

34枚目及び35枚目の一部

36枚目の全部

37枚目の一部

38枚目ないし41枚目の全部

42枚目の一部

43枚目の全部

44枚目の一部

45枚目ないし49枚目の全部

50枚目ないし52枚目の一部

53枚目の全部

54枚目ないし56枚目の一部

57枚目ないし63枚目の全部

64枚目の一部

65枚目及び66枚目の全部

67枚目ないし71枚目の一部

72枚目及び73枚目の全部

74枚目及び75枚目の一部

76枚目ないし90枚目の全部

93枚目及び94枚目の一部

95枚目ないし103枚目の全部

104枚目及び105枚目の一部

106枚目ないし108枚目の全部

109枚目ないし117枚目の一部

118枚目の全部

119枚目及び120枚目の一部

121枚目の全部

122枚目の一部

123枚目ないし126枚目の全部

127枚目の一部

128枚目の全部

129枚目の一部

130枚目ないし134枚目の全部

135枚目ないし137枚目の一部

138枚目の全部

139枚目ないし141枚目の一部

142枚目ないし148枚目の全部

149枚目の一部

150枚目及び151枚目の全部

152枚目ないし156枚目の一部

157枚目及び158枚目の全部

159枚目及び160枚目の一部

161枚目ないし175枚目の全部

179枚目及び180枚目の一部

181枚目ないし189枚目の全部

190枚目及び191枚目の一部

192枚目ないし194枚目の全部

195枚目ないし203枚目の一部

204枚目の全部

205枚目及び206枚目の一部

207枚目の全部

208枚目の一部

209枚目ないし212枚目の全部

213枚目の一部

214枚目の全部

215枚目の一部

216枚目ないし220枚目の全部

221枚目ないし223枚目の一部

224枚目の全部

225枚目ないし227枚目の一部

228枚目ないし234枚目の全部

235枚目の一部

236枚目及び237枚目の全部

238枚目ないし242枚目の一部

243枚目及び244枚目の全部

245枚目及び246枚目の一部

247枚目ないし261枚目の全部

法5条2号イ

法5条6号イ

検査結果通知(案)

267枚目及び268枚目の一部

269枚目ないし277枚目の全部

278枚目及び279枚目の一部

280枚目ないし282枚目の全部

283枚目の一部

284枚目の全部

285枚目及び286枚目の一部

287枚目の全部

288枚目ないし291枚目の一部

292枚目及び293枚目の全部

294枚目の一部

295枚目の全部

296枚目の一部

297枚目ないし300枚目の全部

301枚目の一部

302枚目の全部

303枚目の一部

304枚目ないし308枚目の全部

309枚目及び310枚目の一部

311枚目ないし317枚目の全部

318枚目の一部

319枚目及び320枚目の全部

321枚目ないし324枚目の一部

325枚目及び326枚目の全部

327枚目の一部

328枚目ないし341枚目の全部

343枚目及び344枚目の一部

345枚目及び346枚目の全部

347枚目及び348枚目の一部

349枚目ないし358枚目の全部

359枚目及び360枚目の一部

361枚目ないし365枚目の全部

366枚目の一部

367枚目及び368枚目の全部

369枚目及び370枚目の一部

371枚目及び372枚目の全部

373枚目の一部

374枚目の全部

375枚目ないし377枚目の一部

378枚目ないし382枚目の全部

383枚目及び384枚目の一部

385枚目ないし389枚目の全部

390枚目の一部

391枚目及び392枚目の全部

393枚目及び394枚目の一部

395枚目ないし399枚目の全部

400枚目ないし406枚目の一部

407枚目ないし413枚目の全部

414枚目の一部

415枚目及び416枚目の全部

417枚目ないし420枚目の一部

421枚目ないし423枚目の全部

424枚目の一部

425枚目ないし449枚目の全部

451枚目及び452枚目の一部

453枚目及び454枚目の全部

455枚目及び456枚目の一部

457枚目ないし464枚目の全部

465枚目及び466枚目の一部

467枚目ないし471枚目の全部

472枚目の一部

473枚目の全部

474枚目及び475枚目の一部

476枚目及び477枚目の全部

478枚目ないし481枚目の一部

482枚目の全部

483枚目の一部

484枚目ないし487枚目の全部

488枚目及び489枚目の一部

490枚目ないし493枚目の全部

494枚目及び495枚目の一部

496枚目及び497枚目の全部

498枚目の一部

499枚目ないし503枚目の全部

504枚目ないし506枚目の一部

507枚目ないし514枚目の全部

515枚目の一部

516枚目及び517枚目の全部

518枚目の一部

519枚目ないし542枚目の全部

法5条2号イ

法5条6号柱書き及びイ

検査結果通知(案)(廃案)

検査報告書

451枚目の1行目

262枚目の一部

544枚目の一部

572枚目の全部

574枚目の一部

法5条2号イ

受領書

重要事項承諾書

検査関係情報開示承諾申請書

意見申出に関する確認書

342枚目の一部

450枚目の一部

法5条1号

法5条6号柱書き及びイ

検査結果報告書

450枚目の2行目及び3行目

10

543枚目の一部

法5条1号

検査命令書

11

545枚目の一部

554枚目の一部

法5条1号

法5条2号イ

検査関係情報開示承諾申請書

545枚目の7行目ないし20行目

554枚目の7行目ないし12行目

12

546枚目の全部

548枚目ないし552枚目の全部

555枚目の全部

557枚目ないし571枚目の全部

法5条2号イ

検査関係情報開示承諾申請書

546枚目全て

13

547枚目の全部

556枚目の全部

法5条2号イ

検査関係情報開示承諾申請書

14

553枚目の一部

573枚目の一部

法5条1号

検査関係情報開示承諾書

15

575枚目の一部

法5条1号

法5条6号柱書き及びイ

検査報告書配付簿

(注)行数の数え方については,空白の行及び表の枠線は数えない。

文字数の数え方については,句読点,記号及び半角文字も1文字と数え,空白部分を数えない。