諮問庁 警察庁長官
諮問日 令和 4年 7月26日(令和4年(行情)諮問第438号)
答申日 令和 5年 6月12日(令和5年度(行情)答申第117号)
事件名 行政文書ファイル「児童虐待対策(平成31年度)(紙)」につづられた文書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙に掲げる7文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和4年5月11日付け令4警察庁甲情公発第81-1号により,警察庁長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。


2 審査請求の理由

原処分の不開示部分はいずれも,法5条各号に規定される不開示情報にあたらないと考える。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 本件審査請求に係る行政文書開示請求について

原処分に係る行政文書開示請求(以下「本件開示請求」という。)において,審査請求人は,「Webサイト「e-GOV」で公開されている行政文書ファイル管理簿に登載されている文書の内,「児童虐待対策(平成31年度)(紙)」と題する行政文書ファイル(府省名が警察庁,作成・取得年度等が2019年度,大分類が児童虐待対策,中分類が児童虐待,作成・取得者が警察庁生活安全局少年課長,起算日が2020年4月1日,保存期間が3年,保存期間満了日が2023年3月31日,媒体の種別が紙,保存場所が執務室,管理者が警察庁生活安全局少年課長,保存期間満了時の措置が廃棄であるもの)」に編綴された行政文書すべての開示を求めている。


2 原処分について

処分庁は,本件開示請求に係る対象文書として,20文書を特定した。

本件対象文書の中で,慣行として公にされていない警察職員の氏名及び印影については,法5条1号及び4号に,特定一般財団法人及び特定特定非営利活動法人の公にされていない職員の氏名が記載された部分については,同条1号に,それぞれ該当することから,当該部分を不開示とする原処分を行い,行政文書開示決定通知書(令和4年5月11日付け令4警察庁甲情公発第81-1号)により,審査請求人に通知した。


3 審査請求人の主張について

審査請求人は,不開示部分について,「いずれも,法5条各号に規定される不開示情報にあたらないと考える」旨を主張し,原処分の取消しを求めている。


4 原処分の妥当性について

(1)不開示情報該当性について

法5条1号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもので,同号イからハまでに掲げる情報を除いたもの」を,法5条4号は,「公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を,それぞれ不開示情報と規定している。

審査請求人は,審査請求書において,「不開示部分はいずれも,法5条各号に規定される不開示情報にあたらないと考える」旨の主張をしていることから,原処分における不開示情報該当性について以下のとおり述べる。


(2)本件対象文書に記載されている「慣行として公にされていない警察職員の氏名及び印影」の不開示とした部分

本件対象文書のうち,原処分において不開示とした「慣行として公にされていない警察職員の氏名及び印影」は,特定の個人を識別することができる情報であり,同号イからハまでに掲げる情報のいずれにも該当しないことから,法5条1号に該当する。

また,当該職員の氏名が公になると,これを手掛かりとして,犯罪等を企図する集団等の反社会勢力が,何らかの有益な情報を得ようとする,あるいは犯罪組織等にとって都合の悪い施策や法案の企画・立案を妨害しようと接近,懐柔しようとすることが考えられるほか,当該職員がこれを拒絶すれば,当該職員本人への攻撃はもちろん,その家族への攻撃や報復が予想されるなど,個人の権利利益が侵害されるとともに,警察業務に支障を及ぼすおそれがあり,犯罪の予防鎮圧又は捜査,その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められるため,法5条4号に該当する。


(3)本件対象文書に記載されている「特定一般財団法人及び特定特定非営利活動法人の公にされていない職員の氏名」の不開示とした部分

本件対象文書のうち,原処分において不開示とした「特定一般財団法人及び特定特定非営利活動法人の公にされていない職員の氏名」は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であることから,法5条1号に該当するため不開示とした。


5 結語

以上のとおり,原処分は妥当なものであると認められることから,諮問庁としては,本件について原処分維持が適当と考える。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 令和4年7月26日  諮問の受理

② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年9月1日     審議

④ 令和5年5月10日  本件対象文書の見分及び審議

⑤ 同年6月6日     審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件対象文書は,別紙に掲げる7文書である。

審査請求人は,原処分の取消しを求めており,諮問庁は,本件対象文書の一部が法5条1号及び4号に該当するとして不開示とした原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果に基づき,不開示部分の不開示情報該当性について検討する。


2 不開示部分の不開示情報該当性について

本件対象文書の不開示部分は,警察庁職員の氏名及び印影,並びに特定一般財団法人及び特定特定非営利活動法人担当者の氏名であることが認められる。

(1)警察庁職員の氏名及び印影について

文書1ないし文書6には警察庁職員の氏名及び印影が記載されていることが認められる。

ア 当該部分を不開示とした理由について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,諮問庁から次のとおり説明があった。

警察庁においては,警部及び同相当職以下の職にある職員の氏名は慣行として公とされていない。当該部分に記載されている職員は,いずれも警部及び同相当職以下の職にあるため,公表慣行がない。

また,当該部分に記載されている職員は,これまでに様々な警察業務に従事した経験を有し,今後も様々な警察業務に従事する可能性があることから,その職員の氏名や印影が公になると,これを手掛かりとして,反社会勢力等が,何らかの有益な情報を得ようとする,又は都合の悪い施策や法案の企画・立案を妨害する目的で職員に接近又は職員を懐柔しようとすることが考えられるほか,当該職員やその家族への攻撃等も予想される。

よって,警察業務に支障が生じるおそれや個人の権利利益が侵害されるおそれがあるため,警察庁職員の氏名及び印影を不開示した。


イ 警察業務の特殊性に鑑みれば,公表慣行がない警部及び同相当職以下の職にある警察庁職員の氏名及び印影を公にすることにより,警察活動に対する妨害,当該職員本人及び家族に対する攻撃等が予想されるなどの上記アの諮問庁の説明は,特段不自然,不合理とはいえず,これを否定することはできない。

したがって,当該部分は,これを公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められるので,法5条4号に該当し,同条1号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。


(2)法人担当者の氏名について

文書1ないし文書4及び文書7には,特定一般財団法人及び特定特定非営利活動法人の担当者の氏名が記載されていることが認められる。

当該部分は,法5条1号本文前段の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものに該当し,同号ただし書イないしハに該当する事情も認められない。また,個人識別部分に該当すると認められることから,法6条2項による部分開示の余地はなく,同号に該当し,不開示とすることが妥当である。


3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号及び4号に該当するとして不開示とした決定については,不開示とされた部分は,同条1号及び4号に該当すると認められるので,妥当であると判断した。


(第2部会)

委員 白井玲子,委員 太田匡彦,委員 佐藤郁美





別紙(本件対象文書)


1 依頼書(令和元年度内閣府「女性に対する暴力被害者支援のための官官・官民連携促進ワークショップ事業」講師の派遣について)

2 依頼書(令和元年度内閣府「女性に対する暴力被害者支援のための官官・官民連携促進ワークショップ事業」(行政職員ワークショップ)の講師について)

3 依頼書(令和元年度内閣府「女性に対する暴力被害者支援のための官官・官民連携促進ワークショップ事業」(支援センター長ワークショップ)の講師について)

4 依頼書(令和元年度内閣府「女性に対する暴力被害者支援のための官官・官民連携促進ワークショップ事業」(相談員ワークショップ)(北海道・東北・関東・甲信越ブロック)の講師について)

5 資料(警察における児童虐待への対応について,令和元年8月1日付け)

6 起案用紙(「第22回子ども虐待防止シンポジウム」における警察庁後援名義の使用承認申請(継続案件)について)

7 送付書(後援名義使用承認申請関連書類の提出)