諮問庁 | : | 内閣総理大臣 |
諮問日 | : | 令和 4年 7月13日(令和4年(行情)諮問第420号) |
答申日 | : | 令和 5年 5月18日(令和5年度(行情)答申第54号) |
事件名 | : | 特定の政府広報の実施業務に係る決裁文書の一部開示決定に関する件 |
第1 | 審査会の結論 |
別紙に掲げる文書(以下「文書1」及び「文書2」といい,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,審査請求人が開示すべきとする部分を不開示としたことは,妥当である。
第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 審査請求の趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和4年1月17日付け府広第8号により,内閣府大臣官房長(以下「処分庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)の「不開示とされた2名タレントの広報CM出演料においてのみの処分を取り消す。」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
審査請求人が主張する審査請求及び意見書の理由は,おおむね以下のとおりである(添付資料及びウェブサイトURLは省略する。)。
(1)審査請求書
まず本件は,本件見積書黒塗箇所の特定タレントAと特定タレントBの出演料の公開を求めるものである。然るに,その他の非開示箇所において争うつもりはない。
ポイントは,特定地方公共団体Aや特定地方公共団体Bのみならず,特定地方公共団体C,D,E等,あらゆる地方自治体では,事業活動の一環として,税金出演料を得ているタレント等の著名人においての出演料記載の見積もり等は,特定年から公開とされている。(当局は今回の件で初めてこの事実を知った。)しかし,当局は非公開とした。つまり,南北朝の動乱かのようなミスマッチが国と地方で割れている。
この矛盾点を現在も出演料の公開としている特定地方公共団体Bの事例から検証する。
そして,国の非公開が何故,違憲となるのかを検証する。
さて,行政文書開示決定通知書・項目3の内容から本件2名のタレントは事業活動の一貫(原文ママ)として出演しているだけに,本件出演料は通常の個人情報とは異なるだけに,これを事由とした当該出演料の非公開とはしていないと解される。ここは特定地方公共団体B情報公開審査会の答申理由と同じにする。
問題は,内閣府が非公開理由とした法5条2号の解釈理由が本件の争点となる。
法5条2号
法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて,公にしないとの条件で任意に提供されたものであって,法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
上記のものと特定地方公共団体B情報公開条例10条2号の内容とほぼ同じである。然るに,当時の特定地方公共団体B情報公開審査会(メンバー名は別紙・甲1号証表記)が何故,別紙・甲1号証2枚目以降標記の特定地方公共団体B主催イベント見積書写し次ページ表示の特定タレントCの出演料152万円の公開が適当と判断するに至ったのかは,上記審査会6名の委員が決議した下記の該当性についての説明の通りです。
特定地方公共団体B情報公開条例10条2号該当性について
ア 条例10条2号は,「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」については,原則として開示しないと規定している。ここでいう「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは,法人等又は事業を営む個人の生産技術,営業,販売上のノウハウ,経営方針,経理,人事等の情報で,開示することにより,法人等又は事業を営む個人の事業活動等が損なわれると認められるものその他開示することにより法人等及び事業を営む個人の名誉が侵害され,又は社会的信用若しくは社会的評価が低下するものを広く含むものと解される。そして,これに該当するか否かの具体的な判断については,当該情報の内容,性質をはじめとして,当該法人等又は事業を営む個人の事業活動における当該情報の位置づけ等により総合的に判断すべきであると考える。そこで,出演料等が条例10条2号に該当するか否かを検討すると,出演料等は,イベント会社が同団体主催のイベント開催業務の受託金額を見積る際にその内訳として用いたものである。そして,出演料等は,主催者や開催目的をはじめ,様々な要因・事情によって決められるものであるから,これが開示されたからといって,出演者に不当なランク付けがなされることにより,当該出演者の名誉が侵害され,又は社会的信用若しくは社会的評価が低下し,出演者の事業活動が害されるとまでは言えない。したがって,出演料等を開示することにより,出演者の「正当な利益」を害するおそれがあるとは認められない。
イ また,実施機関は説明書において,実際に出演者に支払われた金額は,イベント会社と出演者との契約に基づき決定されるものであり,イベント会社の取引内容に関する事項である旨主張している。しかし,出演料等を開示することにより,イベント会社の営業上のノウハウが明らかとなり,本件異議申立てに係るイベントだけではなく,他のイベントにおけるタレント等との出演交渉に影響を及ぼし,事業活動に支障をきたす等,イベント会社の「正当な利益」を害するおそれがあるとは認められない。
ウ 上記ア及びイにより,出演料等は条例10条2号には該当しないものと認められる。したがって,出演者の出演料及び出演料を特定し得る部分については,開示することが適当であると判断する。以上のことから,「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(注)以上の当審査会の結論内容は,下記・特定地方公共団体Bホームページでも参照可能です。
また,甲2号証・特定年特定地方公共団体A議選選挙啓発に係るテレビCM等企画制作費の内訳書の写しを参考資料として添付いたします。御覧の通り,特定タレントD氏の出演料800万円が明記されております。つまり,特定地方公共団体Aも特定地方公共団体Bに追従し,彼の出演料の公開決定をしております。
そして,特定検索サイトにて,「特定地方公共団体B出演者答申第6号」の文言を入力すれば,私が過去,二件の特定地方公共団体B主催イベントのタレント出演者の出演料情報公開請求において,公開された理由の解説が御覧になれる下記の特定地方公共団体Bサイトが上段にヒットしますので,クリック願います。
(インターネットサイトリンク)
同様に,「特定地方公共団体B出演者答申第7号」の文言を入力すれば,同種イベントの出演料公開に関する答申内容を確認できます。
情報公開に関する法律と各自治体の条例は,内容として,ほぼ同じとなれば,タレント等著名人個別の税金出演料に関しては,今回の案件も当然に公開と考えます。その他,私が運営する下記サイトもご査収願います。
(インターネットサイトリンク)
上記サイトから過去,私が提起した訴訟遍歴内容等を御覧いただけます。
本件に関係することは,当サイト3ページ目になりますので,上記アドレスを入力後,「3ページ目」をクリックすれば,最下段の方に記載される「タレント等著名人への高額な税金出演料問題」と,明記されているので,ここもクリック願います。以上の資料を確認しつつ,適切なご判断をお願います。
また,その他,追伸資料として,別紙の特定地方公共団体Bホームページでは掲載されていない当時の甲1号証・特定地方公共団体B情報公開審査会委員名簿の写しを添付します。
特定年当時,6名の委員が何故に,特定タレントC等タレント出演料の公開決定に踏み切ったのか,上記サイトの答申6号か7号のどちらかを詳細に熟読するようにお願いします。むろん,斜め読み,拾い読みは厳禁としたい。
この公開決定の契機により,特定タレントD800万円問題においても,特定地方公共団体A議会へ陳情できたのです。この写し2枚も甲2号証の二枚目以降に添付します。
また,憲法15条2項に抵触するか否かの判断を国民がするにあたって,本件は公開が当然である。一人のタレントに高額な国税出演料を支出するとなれば,その金額の大小によって,憲法に抵触するか否かの判断も不可欠となる。
つまり,もし非公開なら,その判断を広報CMのスポンサーたる国民にする権利がないとする決定を当局はすることとなる。
また,この先も,著名なタレント等を広報CMに出演させる際,出演料の上限を如何ほどの金額とするか。その金額の上限を如何ほどまでに抑えれば,憲法に抵触しないで済みそうか。ここは,内閣府大臣官房総務課法務担当は審議すべきである。
おそらく,著名タレントの広報CMの出演料が限りなくゼロでも,幾多のタレント事務所等からのCMオファーは引く手アマ手(原文ママ)であろう。何故なら,広報CMに出演する著名人となれば,国から,善良すぎる国民と認定されるお墨付きを貰ったようなものだけに,幾多の民間企業からのCMオファーは更に集中する相乗効果までも彼らタレントにもたらすこととなるだけに,そのギャラに関係なく,著名人CMランキングのSランクやAランク出演者からの広報CM出演協力の要請が来ても何ら不思議ではない。年金受給者のみに5千円の給付金を貰えるか否かで,紛糾する御時世にあって,以上の想像力を働かせられない官僚の存在とは何か。公僕の意識はあるのか大いに疑問は残る。
特定タレントAの件は,前年度,財務省からの概算要求で得た予算が年度末,相当に余ったためなのか,Aランク(5,500万円相当)の特定タレントA企画案へと移行したものと考える。想像力を働かせることなく,単に多大な予算を消化することに日夜明け暮れる役人の習性が招いた種とも言える。出す方も出す方だが,貰う方も貰う方である。
今回のこのケースだけを見ても,全体の奉仕者たる文科系官僚が結果的に絶大な一部の奉仕者になっていることは如何なものか。これこそが,正に憲法15条2項違反である。ここは相当,審議において議論を紛糾させるべきである。
一方,稼げるなら血税からもボッタくりたいと考えるタレントと関係事務所も後世の者からも相当に卑下されても不思議ではない。
こんな状況が国とのトライアングルで未来永劫続くなら,希望職に就けずに人生の成功者になれない国民は,まじめに働くことが馬鹿馬鹿しくなる。
それなれば,生活保護受給を正当に得ることで,この世を生き延びた方がましと言えよう。ここを関係者が反省するなら,まずは本件においては絶対に公開ありきとし,今後は国民の嫉妬心を駆り立てない有効な広報CMを模索すべきである。
以上の内容を整理すると,下記3点に集約される。
1,法5条2号と同種の特定地方公共団体B情報公開条例10条2号において,タレント等の出演料公開が条例違反となるか否かを平成14年に特定地方公共団体B情報公会審査会が審議した結果から,当税金出演料の公開は,当条例に該当しないため,公開が適当と判断した。ここに,特定地方公共団体A等,他の自治体も追従し,公開としている。この審議結果を当所管と当不服審査委員は,どう見るのか,ここの矛盾点を説明すべきである。
2,憲法の知る権利は,どうなるのか。広報CMの出演料は,スポンサーたる国民からの国税により成立している。本件CM製作費が民間企業等の協賛金によって製作されている入札方式であれば,非公開理由も理解するが,今回の製作費用は,すべて,国民スポンサーの血税によって成立されたもの。ましてや,入札方式とは異なるコンペ方式の詳細見積まで公文書として保管されるものである。つまり,今回のコンペ方式システムの場合,広報CMの出演者と広告代理店は,出演料においては,国民に公開されることを前提として,広報CM事業に参加しなければならない。出演料公開を不服とするタレントや関係事業者は,当初からコンペ方式の当事業に参加する資格はない。
然るに,国民たる人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報に該当するため,法5条2号には該当しないため,公開が当然となる。
3,本件,特定タレントAの出演料が推定通り,5,500万円相当の税金ギャラとすれば,明らかに逸脱している血税ギャラとなる。むろん当時,推定Cランククラスの800万円~900万円相当の国税ギャラを獲得している特定タレントBのケースも逸脱しているレベルとなる。この場合の逸脱とは,上記タレントギャラの相場から逸脱している意味ではなく,国が上記2名の高額相場タレントを公報CMに起用すること自体が逸脱した行為とする意味である。
仮に上記2名のタレントが相場の半額以下で出演したとしても,国は彼と彼女に対し,必要以上に途方もない支援をしたこととなる。人を見下すのが差別とするなら,人を必要以上に国が持ち上げていくことも差別となる。
多くの国民は,ノーギャラでもいいから,広報CMに出演させていただくことで,知名度アップを祈願している人たちが大多数いる。この希望を叶うことで,全国的な知名度アップとなり,タレント活動のみならず,地方議員選挙や参議院選挙も有利にすることも可能とする。ましてや,高額な国税ギャラも付く恩恵となれば笑いが止まらない。この特定のタレントを結果的に必要以上にヨイショする国の姿勢は明らかに憲法15条2項に抵触する。
そうなれば,せめてもの,国民の権利として,逸脱したギャラになっているか否かをチェックする知る権利が不可欠となる。
この憲法15条2項に抵触するか否かの判断を国民がするにあたって,本件は公開が当然である。国は一人のタレントに高額な国税出演料を支出するとなれば,その金額の大小によって,憲法に抵触するか否かの判断も不可欠となる。つまり,もし非公開なら,その判断を広報CMのスポンサーたる国民にする権利がないとする決定を当局はすることとなる。この大きな矛盾点をどうするかの説明責任も生じる。ノーギャラ出演でも,その後,広報CM出演者に多大な恩恵をもたらす利潤業務に結び付くだけに,内閣府たる国は今後,入札方式かコンペ方式に関わらずに当出演料の上限を決めるべきである。例外なく,200万円以下が妥当なのか,それとも100万円以下が妥当なのかを早急に審議すべきである。その上で,出演料の公開としていくことが理想となる。
参考までに,例年,法務省人権啓発活動地方委託事業の予算によって成立する各地方自治体の人権講演会やコンサートの出演ギャラは,平成26年度から一律20万円以下を上限とする規定にしている。つまり,特定タレントC等の上記事業予算の人権講演会も20万円以下のギャラとなる。(この証拠資料として,甲3号証を添付する)仮に彼女のようなタレントたちの逸脱した高額すぎる税金ギャラ152万円を認めていくことは,神聖な人権推進施策が遺憾な人権ビジネスとなるため,当事業において法務省も決断したものと思われる。国と地方の広報CMも神聖なものとなれば,断じてタレントたちの利潤追求の世界にすべきではない。各民間会社が定期的にオンエアーする高額ギャラタレント起用のCMを見るだけでも不愉快となる当方だけに,高額国税ギャラタレントを起用しての広報CMを何度も視聴させられるとなれば,異次元の怒りとなって,当方は今後も憤慨し続けるだろう。本件2名タレントのように,人生の超成功者に国が迎合するかのように,高額国税ギャラのオファーをすること自体,違憲であり,まともな行為ではない。有名タレント等著名人を広報CMに起用すれば,日本国家は国民が相当に歓喜し,マイナンバーカード加入に協力するだろうとする浅はかな考えと見る。日本国民も舐められたものだ。ここは,日本国のずるさなるものを痛感する。我国の売れっ子タレント起用の本件施策を世界に誇れるなら,時のロシア・プーチン政権によって迫害されるウクライナ難民にも,この施策の是非を岸田内閣は問うてみるべきである。
こう考えるのは,私だけでなく少なからず国民の中にもいるはずだ。
いつ,本件の問題点がSNS等で拡散しても何ら不思議ではない。
以上の神聖なテーマが税金出演料の非公開でタレントによる広報CMビジネスとして今後も継続していくなら,果たして国は中学生も納得させられるのか。むしろ,彼らの更なる学業減退へと移行しよう。全国の公民の先生は,税金出演料の公開是非問題とタレント広報CMビジネスの件は,社会科授業で採用すべきである。ただ,選挙に行け,と言うだけではナンセンス。以上の税金出演料情報公開請求を彼ら中,高,大学生に実施させることから,政治参画をさせるべきである。それには,税金出演料は原則公開ありきが当然となる。
なお,20万円の上減(原文ママ)規定の成立も手前味噌だが,長年の私の行動力が影響したものと思われる。(これら行動記録は当方の上記サイトで一部解説,詳細解説は当方の発刊特定書籍)
以上の上記1~3の視点から見ても,内閣府はギャラの上限も制定せずに非公開とすれば,未来永劫,正しい広報CMの在り方は改善されることなく,著名タレントと広告代理店からカモにされる広報CM事業で終始して行くだろう。むろん今後,本件を強く意識する国民が増えるほど,彼らタレントに私服を肥やさせるために,血税を収めるのもバカバカしくなるため,多くの国民は労働意欲の減退にも益々拍車をかけることとなろう。
むろん,特定タレントA関与の広報CMとなるマイナンバーカードには意地でも入らないとする国民を量産させる逆効果までも生むだろう。やはり,日本経済進展のためにも,国はタレント等への一部の奉仕者になることを改め,国民全体の奉仕とは何かを今一度,吟味して改善すべきである。
それには,まずもって本件の出演料を公開としなければ話にならない。
(2)意見書1
本題へ行く前に,本件事件は,あくまでも本件2名タレントの出演料の公開を申立人の私が求めているものであって,法人等の担当者名と担当者の連絡先,印影,FAX番号等,その他の公文書情報の公開は求めていないことを改めて確認する。また,本件2名タレントの出演料は個人情報には該当しない点は,双方コンセンサスが取れているものと解釈する。
以下,文体表記において,申立人を私か当方と表記し,相手方を内閣府もしくは,国か当局もしくは本件担当所管等と表記する。
まず,本件理由書項目3(2)のウの内容において反論する。まずもって相手方となる内閣府たる当局は,当方・申立書P6記載の以下内容を熟読していないためか理解していない。ここの箇所を再度,表記させていただくこととする。
「3,本件,特定タレントAの出演料が推定通り,5,500万円相当の税金ギャラとすれば,明らかに逸脱している血税ギャラとなる。むろん当時,推定Cランククラスの800万円~900万円相当の国税ギャラを獲得している特定タレントBのケースも逸脱しているレベルとなる。この場合,逸脱とは,上記タレントギャラの相場から逸脱している意味ではなく,国が上記二名の高額相場タレントを広報CMに起用すること自体が逸脱した行為とする意味である。仮に上記2名のタレントが相場の半額以下で出演したとしても,国は彼と彼女に対し,必要以上に途方もない支援をしたこととなる。…(以下省略)」
以上の箇所を内閣府担当所管当局は熟読していないため,当局からの反論となる理由書の論点が相当にずれている,
然るに,当局が主張する「・・・当該タレントの出演に見合う適切な対価として支払われているものであり,・・・」の内容箇所は本件の争点にはならない。つまり,相場の出演料で当該タレントに支払われていようが,数百万はおろか数千万円レベルの高額相場タレントを広報CMに起用すること自体が問題と当方は主張している。相場云々(そうばうんぬん)よりも,出演料の上限を決めもせずに高額相場出演料タレントを起用すること自体が15条2項に抵触する違憲である。国民全体の奉仕者たる公僕の役目を見失っている内閣府が売れっ子タレントや著名人ばかりを優遇するエコひいき政策だ。結果,彼ら著名人と一般庶民の経済格差は,益々拡張される。
もう一度,確認すると,当該所管は,私の申立書を詳細に熟読していない。そもそも彼らタレントに相場通り,適切な対価を支払っていれば問題なしとする考察を私はしていない。適切対価であろうが,高額相場タレントを起用すること自体が違憲と主張している,この理由は,前回の申立書で,詳細に解説している。再度,熟読願いたい。
次に,本件理由書項目3(2)イの内容において反論する。二つの本件事案は何れもコンペ方式だが,仮に入札方式だとしても,当局は特に出演料においては本来,広告代理店から出演料記載の資料を取り寄せて,当局で公文書として保管しておくべきである。むろん,それも公開ありきである。今回の本件はコンペ方式として実施した広報CMにおいて,出演料記載の公文書があるため,尚更,公開すべきと当方は主張している。
次に,原処分の妥当性についての箇所において反論する。当局は本件出演料の公開そのものが,本件関係機関の広告代理店とタレント事務所に不利益を与える旨を主張する。そもそも,特定タレントAのCM出演料の5,500万円相場はネット上でも確認できる御時世である,仮に本件出演料の公開によって,広告代理店とタレント事務所に不利益が生じるとすれば,彼らタレント出演料が相場より,相当に安くオファーを受けたケースを懸念しての問題と考える。
この場合,各上場会社提供の商品CMに出演するタレント起用のCMの件を言うなら,営業上のノウハウが漏れるリスクは当方も理解できる。
しかし,広報CMの場合は,各法人が鎬を削る経済原理の世界とは異にする。ましてや,本件事業の原資はすべて国税である。しかも神聖な広報CM事業となれば,仮にボランティア精神に満ち溢れたタレント等著名人が相場よりも相当に値引きしての出演料で広報CMに出演し,このギャラが公開されたとしても,世間は「各企業利潤追求の商品CMと異なる血税原資の広報CM事業だから,特別に出演者は値引きに応じたものなのでしょう。」と,その他の各広告代理店等も理解しよう。
しかし,これでも本件関係者に何らかの不利益が生じるというなら,各タレント事務所等は広報CM事業には参入しないことだ。ましてや,内閣府も事前に出演料においては原則公開である旨を広く知らしめた上,少なくとも相場200万円以上のタレントは起用しないことだ。(年収200万円にも満たない国民が大多数を占める,このご時世,国民の嫉妬心を考慮するなら私は一人というか一組,100万円以下が妥当と思うが・・・)
やはり国民からの嫉妬心の伴う広報CMなら百害あって一利なしとなる逆効果の国費無駄使い政策だ。更に平たく言えば,内閣府の本件政策は弱者救済事業とは異にする,人生の成功者たる売れっ子タレント等著名人の人気と権限を国が益々拡張させる事実上の強者支援政策だ。これが違憲でなくて何なのか。
それだけに各省庁が例年実施する広報CM事業においては,ビール会社や化粧品会社等民間会社テレビスポットCMと新聞雑誌媒体の広告手法となる高額相場人気タレント等著名人起用の客寄せパンダ方式を控えた上でのアイデア重視の予算大幅縮小の広報CMに固執すべきである。
当方が前回考察している通り,出演料がタダでもいいから広報CMに出演したい売れないタレントや野心家の一般人は無尽蔵に存在する。
しかも,そこにタダで出演しても計り知れないメリットが広報CM出演者に多大な恩恵が得られることは,前回の申立書で考察した通りです。
最近,内閣府広報CMで起用された特定大学のスポーツ指導者の特定人Aは,次回の参院選に出馬すれば当確となろう。こういう事例こそ,国が結果的に極一部の国民となる著名人に大幅支援をしていることとなる。ましてや,高額国税出演料受託の恩恵まで付いてくる。
つまり,出演者の起用方法の取り扱いにおいて,憲法15条2項に抵触する危険性がある以上,商品購買策の高額相場出演料支出の客寄せパンダ方式の手法から脱却すべく,当局は今後,人気タレント等著名人は当事業に起用しないことを原則とすべきである。それでも当局がタレント起用に固執するのであれば,国民からの嫉妬心も視野にした出演料の上限設定と出演料の公開をせめてもの最低限実施することが憲法に抵触しにくい道となるだろう。
神聖な人権テーマを国税事業において,出演者が人権をビジネスにすることが大問題とするなら,やはり神聖な広報CMを出演者がビジネス化利用していくことも同様に違憲となる大問題となる。ましてや,格差社会の問題が益々叫ばれる今日,高額相場タレントを起用する本件広報CM事業を実施した内閣府等各省庁が結果的に一般人と著名人との格差を益々拡張させる結果となっている。
それだけに,せめてもの法務省人権啓発地方委託事業のように,国民の嫉妬心を駆り立てない出演料の上限を設置した上で,この枠に収まる出演者を起用することでの企画にすべきである。むろん,上限をオーバーしていないかのチェック義務の権利は,本件事業のスポンサーである国民にある。今後も当局が法務省人権啓発地方委託事業のように,広報CM出演料の上限を定めぬまま本件事業を継続していくとなれば,相場1億円の特定人Bを起用しての広報CMもいずれ御目見えすることとなるだろう。つまり,出演料の上限が無いなら尚更,公開しなければ話にならない。当局は出演料自体が,広告代理店とタレント事務所との間で決められることなので,出演料の上限を決められないとする論理のすり替えをする。しかも,概算要求で獲得した予算内であれば,相当な高額出演者を起用しようが,内閣府としては関係ないともとれる居直りを当理由書からも垣間見える。仮に出演料の上限を予め設定しておけば,この条件に合う出演者を広告代理店は用意し,企画も考えてくるものだ。実際,法務省から各地方へ例年ばら撒かれる法務省人権啓発地方委託事業は,一人ないし一組の出演料が最大で20万円以下とする上限があるため,各広告代理店は,この条件に見合った講演者や歌手を主催者の各自治体へ提示し,企画を進呈している。今回,本件2名のタレントにおいては,広告代理店から提示されたタレント相場出演料のリスト表から所管担当は選択している旨の説明を所管担当から私は受けている。
何れにしろ,年度予算内の範疇で広報CM事業を実施できれば,中身の出演料が高かろうが,どうでもよいとする各省庁官僚の姿勢が各広告代理店からカモにされ,高額相場出演者中心の広報CM事業になりやすい構造がここにある。現状の非公開のままでも,ネット上の相場から,違憲だと言えるものの,できるなら,正式に出演料の数値を知りえた上で,「歳出削減と国民の嫉妬心を駆り立てないため,高額相場タレントを起用するな。」と主張したい。この権利が,現状,国民はおろか各国会議員にもないという大きな矛盾を残す。
以上のように,正当な流れから来る理論構築が担当大臣や所管担当官僚にできないとなれば,もはや公僕の自覚と想像力に欠ける,と言わざるを得ない。
それならば,内閣府が今後も出演料の非公開をしつつ,結果的にタレント等著名人を優遇する本件CM事業継続が果たして国民に誇れる政策なのか。
むしろ,彼らタレント等著名人の私腹を肥やすために国税を収めるのが馬鹿馬鹿しいと考える国民の労働意欲の減退につながるのではなかろうか。
やはり,申立人の指摘通り,悪評高い政策になっているか否かのアンケート調査を各高大学生に向け早急に実施すべきである。
次に,機密保持条項を含む契約の件は,あくまでも当該広告代理店と当該タレント事務所の間で締結されたものです。これは,各局テレビスポット民間法人CMを視野にしたものと考えられる。
つまり,この場合のスポンサーは,CM製作費用を支出する民間会社であるため,タレント出演のビール会社CMなら,ライバル同業者には特に出演料情報等はノウハウとして知られたくはないでしょう。
この場合,一般国民は明らかに第3者となるため,この出演料の知る権利は当然に私にも発生しない。ここを視野にした場合の機密保持条項と解される。
ましてや,本件において,内閣府と当該広告代理店との間で機密保持条項を含む契約が締結されていないことは,本件実施機関の所管担当からも既に確認済です。そうなると,原処分に当たって,任意的意見聴取時に,特定広告代理店Aが当該出演料の非公開を希望する旨の嘆願が仮にあったとしても,それは無視されて当然となる。
ちなみに,特定地方公共団体Fでは,各講演者の出演料は公開されて,関係タレント事務所か講演者本人に公開する旨をFAXで通知する慣習業務となる。
同じく公開される特定地方公共団体Aと特定地方公共団体Bは,特に関係者に通知することなく国民に公開している。仮に機密保持条項が内閣府と広告代理店等関係者にあった場合でも,その条項は無効であるばかりか非公開は違憲となる。何故なら,本件広報CM事業のスポンサーは,第3者とはなり得ない国民そのものだからです。
むろん,当事業の原資が国税ではなく,民間団体からの寄付や協賛金によって成立しているものなら,当方が出演料の公開を主張することは筋違いとなるのは,前回の申立書でも考察している。
最後に,3(2)アの内容について反論する。内閣府は特定地方公共団体の情報公開制度の下で,と言うが,内容は特定地方公共団体B,特定地方公共団体Aのみならず,各地方自治体の情報公開条例で法とは,全くと言っていいほど同じである。略して特定地方公共団体B情報公開条例においては,特定地方公共団体Bホームページ(前回,私の申立書で示すサイトからもリンクされる)から確認可能です。法とほぼ同内容の条例の下で出演料の公開となっている結果だけに問題はない。ましてや,全国自治体の中で予算規模第一位の特定地方公共団体Aが出演料の公開をしている。どこか決定的な内容の違いがあって問題とするなら,具体的に示していただきたい。
(3)意見書2
特定地方公共団体Aと特定地方公共団体B以外の他県自治体での出演料公開事例資料を甲4号証として添付する。特に例年,全国自治体にばら撒かれる法務省地方委託事業の予算によって成立する講演会やコンサートの出演ギャラが中心となる。特定地方公共団体D(特定タレントEの出演料),特定地方公共団体C(特定タレントF出演料),そして特定地方公共団体G(特定タレントG等の出演料)での見積書写し。また,平成22年2月2日付,法務省人権擁護局人権啓発課長から発行された法務権啓第80号の公文書によれば,当時,一回につき40万円を限度とする使用基準を相当にオーバーする事例が私の調査により発覚したため,当局は当公文書を発行する事態となった。然るに,甲3号証の特定タレントCの講演料152万円も遥かな基準オーバーであったことも判明した。激怒した法務省は,私の要請を受け入れたかのような更に厳しい20万円基準を平成26年度から全国地方自治体へ課すこととなった。この基準は一人一組20万円なら10人タレントの出演となるトータル200万円ならOKとするものではなく,一事業イベント20万円までの出演料の意味である。例えば,講演とコンサートの両方を開催したい際は,一人の講演者10万円と一人の歌手に10万円のトータル20万円ならOKとする内容である。また相場40万円ギャラのタレントも20万円ギャラに合わせてくるメリットまでも生む。逆に出演料の使用基準がなければ,各著名人ギャラが相場よりも相当に吊り上がる短所の危険性を生む。この新たな使用基準書も法務権啓第80号と共に甲5号証として添付する。この状況から言えることは,出演料の公開があったからこそ判明した点である。また,出演料の使用基準があったとしても,この基準をオーバーしているか否かのチェックは,出演料の公開なくしてあり得ない訳です。本件の場合,内閣府は出演料の使用基準を設置していないため,尚更,出演料は青天井ともなる高額相場タレントに頼り切る施策になりやすい。それ故,より多くの国民が納得する広報CM出演料の使用基準が無い時点で違憲(国民の知る権利と15条2項に抵触)となる。むろん,その基準がないなら尚更,出演料は国民スポンサーに公開するのが当然です。
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 本件審査請求の趣旨及び理由について
(1)審査請求の趣旨
本件は,審査請求人が行った開示請求に対して,処分庁において原処分を行ったところ,審査請求人から,本件の政府広報テレビCMへのタレント2名の出演料は法5条2号イに規定する不開示情報に該当しないなどとして,当該出演料に係る部分に限り原処分の取消しを求める審査請求が提起されたものである。
(2)審査請求の理由
審査請求書に記載された本件審査請求の理由は,次のとおりである。
ア 国の場合と同様に,広報へのタレントの出演料が税金から支払われている地方自治体においては,特定地方公共団体B情報公開審査会が,タレントの出演料は特定地方公共団体B情報公開条例で規定する不開示情報には該当しないと判断した事例がある。この判断と同様に,特定年以降,特定地方公共団体A等の地方自治体において,タレントの出演料が記載された見積書等は公開されており,原処分と齟齬が生じている。
イ 国の広報において,タレントの出演料が税金から支払われている以上,その出演料は「憲法の知る権利」の対象となるはずである。さらには,本件のタレント2名の出演する広報はコンペ方式(企画競争)により実施されており,広告代理店から見積書が提出されているのであるから,出演料は公開されるのが前提と考えるべきである。
ウ 政府広報テレビCMに出演するタレントに一定額以上の高額の出演料を支払うことは,当該タレントを不当に利する行為であり,憲法15条2項に反するものである。こうしたタレントの出演料には上限額を定めるべきであり,その上で憲法に違反しないか国民がチェックできるよう,出演料は開示されるべきである。
2 本件開示請求及び原処分について
(1)本件開示請求について
本件開示請求は,令和2年度キャンペーンテーマ「マイナンバーカードの取得促進(健康保険証利用と安全性)」及び「DV・児童虐待」に係る政府広報の実施業務に関する文書のうち,行政文書開示請求書に列挙されたものの開示を求めるものである。
(2)令和2年度キャンペーンテーマに係る調達について
内閣府大臣官房政府広報室(以下「担当室」という。)では,政府一体となって重点的に広報を実施する必要があるテーマ(以下「キャンペーンテーマ」という。)については,広告代理店が有する企画力や知見をいかし,新たな広報媒体を含め様々な媒体を用いた戦略的・効果的な広報を実施するため,キャンペーンテーマ毎に担当する広告代理店を一社選定することとしている。担当する広告代理店の選定に当たっては,調達に参加する広告代理店に,担当室が提示する企画提案要領を踏まえて概算経費上限額の範囲内で企画案(見積書(概算経費とその積算内訳)を含む。)を作成させ,内容や業務遂行能力が最も優れた企画案を採用する企画競争により実施している。具体的には,各広告代理店は,当該キャンペーンテーマの広報に当たりどういった広報戦略を練り,どういった広報媒体に重点を置き,経費を配分するかについて,各社のノウハウをいかして企画案を作成し,担当室ではその内容を評価して実施事業者の選定を行っている。
一方で,テレビスポットCMの放送枠や新聞記事下広告の掲載枠等については,年間を通じて一定の枠を確保した方が経済的であるため,年間広報媒体の調達業務として,一般競争入札により実施事業者を選定している。このため,各キャンペーンテーマの広報においても,テレビスポットCMや新聞記事下広告を実施する際は,原則,年間広報媒体の調達業務で確保した枠を使用することとしている。
令和2年度キャンペーンテーマ「マイナンバーカードの取得促進(健康保険証利用と安全性)」に係る政府広報の実施業務については,企画競争の結果,特定広告代理店Aが実施事業者となった。また,令和2年度の年間広報媒体の調達業務については,一般競争入札の結果,特定広告代理店Bが実施事業者となったため,当該キャンペーンでテレビスポットCMを放送した際は,年間広報媒体の調達業務により特定広告代理店Bが確保した放送枠を使用した。
(3)原処分について
処分庁においては,審査請求人からの本件開示請求に対し,以下のとおり,対象となる文書を特定し,原処分を行った。
まず,キャンペーンテーマ「マイナンバーカードの取得促進(健康保険証利用と安全性)」に係る政府広報の実施業務については,「テレビスポットCM等企画制作業務の見積書もしくは内訳書を含む決済文書」として当該キャンペーンテーマの実施決裁である別表通番1を,「契約書」として当該キャンペーンテーマの契約書である別表通番2を,「テレビスポットCMの放送料のわかる書類一式」として,年間広報媒体の調達業務に関する発注確認表である別表通番3,検査調書である別表通番4,請求書である別表通番5を,それぞれ本件開示請求の対象文書として特定した。
また,キャンペーンテーマ「DV・児童虐待」に係る政府広報の実施業務については,「テレビスポットCM等企画制作業務の見積書もしくは内訳書を含む決済文書」として当該キャンペーンテーマの実施決裁である別表通番6,WEB動画のテレビCM用動画への変換業務の実施決裁である別表通番7を,本件開示請求の対象文書として特定した。
原処分においては,①決裁文書に記載された担当者の内線番号については,これを公にすることにより,いたずらや偽計等に使用され,緊急の連絡や外部との連絡に支障を来すなど,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号柱書きに該当するため,②契約書,請求書及び見積書の法人等の印影は,業務上必要な関係者以外には知られていない非公表の情報であり,また,見積書,発注確認表,検査調書及び請求書に記載されている法人等の単価又は単価が推察される情報は,当該法人等の独自のノウハウから算出されたものであり営業秘密に該当し,これらを公にすることにより当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため,③見積書に記載されている法人等の担当者名については,公にされていない個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であること,さらに,同見積書内に記載されている担当者の連絡先,FAX番号は,業務上必要な関係者以外には知られていない非公表の情報であって,これらを公にすることにより当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条1号及び法5条2号イに該当するため,④契約書における支出負担行為担当官の印影は,これを公にすると,偽造による悪用等,国が行う契約の業務に関し,国の財産上の利益を不当に害するおそれがあり,法5条6号ロに該当するため,⑤キャンペーンテーマ「DV・児童虐待」に係る政府広報の実施業務におけるCM絵コンテ資料のうち,タレントが描写されている画像は,法人等が他の法人等との契約に基づき作成した著作物であって,公にすることにより,著作物の利用に関する契約上の禁止事項に抵触し,他の法人等との信頼関係が損なわれるなど,法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため,それぞれ不開示とした。
なお,原処分に当たっては,法13条1項の規定に基づき,「第三者」である特定広告代理店Aに対し,任意的意見聴取を行っている。
3 原処分の妥当性について
(1)不開示情報該当性について
審査請求人は,本件のタレント2名の出演料は法5条2号イに規定する不開示情報に該当しないため,出演料は開示されるべきであると主張する。
しかしながら,一般的にタレントの出演料は,広告代理店とタレント事務所等との間において,テレビ,ラジオ,新聞等媒体への露出量,出演条件,タレントの市場価値等を総合的に勘案した上で決定され,通常1年間単位で契約が締結されているところであり,この内容について他の広告代理店等は知り得ないものである。本件のタレントの出演料が他の広告代理店等に明らかになった場合,見積書を作成した広告代理店(以下「当該広告代理店」という。)の価格交渉,当該広告代理店が保有する過去・現在のタレント情報(タレントの市場価値に関する分析等),当該広告代理店と当該タレントの所属する事務所(以下「当該タレント事務所」という。)との契約形態等,当該広告代理店の営業ノウハウが明らかとなり,今後,企業やタレント事務所等との取引において,競合する他の広告代理店等との関係で著しく不利な立場に置かれ,営業活動等に多大な支障が生じた結果,当該広告代理店の経営上,著しい不利益を被るおそれがある。
また,当該タレント事務所は,当該タレントと雇用契約等を結び,一企業として経済活動を実施しているため,当該タレントの出演料が明らかになった場合,他の広告代理店等は当該タレントの出演料の金額を推測しながら出演・価格交渉に臨むことが可能となり,当該タレント事務所が価格交渉等において著しく不利な立場に置かれた結果,経営上著しい不利益を被るおそれがある。
このように,本件のタレントの出演料については,当該広告代理店及び当該タレント事務所双方にとって,経営上,重要な企業情報であるため,当該広告代理店においては,当該タレント事務所との契約において,「本契約の締結および履行に伴い知り得た相手方の営業上・技術上の機密および本契約の内容を,本契約期間中および本契約終了後においても第三者に漏洩しない」などとする機密保持条項を含む契約を締結しており,これにより当該タレントの出演料の金額を公表しないこととしている。
したがって,本件のタレントの出演料が明らかになった場合には,当該広告代理店は,当該タレント事務所の信用を失い,今後,当該タレント事務所との取引が停止されるおそれがあり,営業活動等に多大な支障が生じるおそれがあるだけでなく,契約義務違反により損害賠償請求を要求されれば,具体の経済的損失を被るおそれがある。
さらに,これは当該広告代理店と当該タレント事務所との間だけにとどまらず,他のタレント事務所等との取引にも波及する可能性があり,社会的信用を失ったことで他のタレント事務所等との取引が困難になるなど当該広告代理店の営業活動等に多大な支障が生じるおそれがある。
以上のことから,本件のタレントの出演料を開示することは,当該広告代理店及び当該タレント事務所の法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため,法5条2号イに規定する不開示情報に該当するものである。
(2)審査請求人の各主張に対する反論について
ア 地方自治体における取扱いとの齟齬を指摘する主張について
審査請求人は,国の場合と同様に,広報へのタレントの出演料が税金から支払われている地方自治体においては,特定地方公共団体B情報公開審査会が,タレントの出演料は特定地方公共団体B情報公開条例で規定する不開示情報には該当しないと判断した事例があるとし,さらに,この判断と同様に,特定年以降,特定地方公共団体A等の地方自治体で,タレントの出演料が記載された見積書等は公開されており,よって本件において国の場合も開示すべきであると主張している。
しかしながら,審査請求人が示す特定地方公共団体Bの事例は,特定地方公共団体Bの情報公開制度の下で,同団体主催のイベントの司会者,講師等としてのタレントの出演料が開示されたというものであり,これをもって出演形態の異なる本件のテレビCMへのタレントの出演料を開示すべきとは言えず,また特定地方公共団体Aの事例も,特定地方公共団体の情報公開制度の下で特定のタレントの出演料を開示したというものであり,これをもって本件のタレントの出演料を法に基づき開示すべきとは言えない。このほか,タレントの出演料があらゆる地方自治体において公開されているとの主張の根拠も示されておらず,審査請求人の主張に理由はないと考える。
イ 政府広報テレビCMに出演したタレントに高額の出演料を支払うことが憲法15条2項に反するなどとの主張について
審査請求人は,政府広報テレビCMに出演するタレントに一定額以上の高額の出演料を支払うことは,当該タレントを不当に利する行為であり,憲法15条2項に反すると主張している。しかしながら,一般的にタレントの出演料は,広告代理店とタレント事務所等との間において,テレビ,ラジオ,新聞等媒体への露出量,出演条件,タレントの市場価値等を総合的に勘案した上で決定されるものであり,当該タレントの出演に見合う適切な対価として支払われているものであるため,こうした出演料を支払うことは当該タレントを不当に利するとは言えず,審査請求人の主張に理由はないと考える。
4 結論
以上のとおり,原処分は妥当であり,審査請求人の主張には理由がないことから,本件審査請求は,これを棄却することが妥当であると考える。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 令和4年7月13日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月29日 審議
④ 同年9月5日 審査請求人から意見書を収受
⑤ 同年10月3日 審査請求人から意見書(2)及び資料を収受
⑥ 令和5年4月7日 本件対象文書の見分及び審議
⑦ 同年5月12日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件開示請求について
本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであるところ,処分庁は,その一部を法5条1号,2号イ並びに6号柱書き及びロに該当するとして不開示とする原処分を行った。
これに対し,審査請求人は,本件対象文書のうち特定タレントA及び特定タレントBの出演料の不開示部分(以下「本件不開示部分」という。)の開示を求めているところ,諮問庁は,本件不開示部分について,原処分は妥当であるとしていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,本件不開示部分の不開示情報該当性について検討する。
2 本件不開示部分の不開示情報該当性について
(1)本件不開示部分について
本件対象文書は,特定広告代理店Aが作成し,内閣府に提出した令和2年度キャンペーンテーマに係る政府広報の実施業務に係る見積書であり,文書1には,新聞広告,雑誌広告,テレビCM等の9種類の媒体等ごとに作成された明細及びそれに付帯する業務の明細,文書2にはWEB動画,WEB広告等の8種類の媒体等ごとに作成された明細及びそれに付帯する業務の明細が記載されており,処分庁は,上記の明細に記載されている法人等の単価又は単価が推察される情報は,法5条2号イに該当するとして,不開示としている。
本件不開示部分は,そのうち特定タレントA及びBの出演料に関する部分であると認められる。
(2)本件不開示部分の不開示情報該当性について
諮問庁は,特定のタレントの出演料が開示された場合,①特定の広告代理店の価格交渉,当該タレントの所属事務所との契約形態等の「営業ノウハウ」が明らかとなり,今後,企業やタレント事務所等との取引において,競合する他の広告代理店等との関係で著しく不利な立場に置かれ,営業活動等に多大な支障が生じる結果,特定の広告代理店の経営上,著しい不利益を被るおそれがあり,また②当該タレントの所属事務所にとっても,他の広告代理店等が当該タレントの出演費の金額を推測しながら出演・価格交渉に臨むことが可能となり,価格交渉等において著しく不利な立場に置かれる結果,経営上著しい不利益を被るおそれがあることなどから,特定のタレントの出演料は,法5条2号イの不開示情報に該当すると説明する。
特定のタレントの出演料は,特定の広告代理店及び当該タレントの所属事務所双方にとって重要な経営上の企業情報であり,競合関係にある他の広告代理店やタレント事務所は,当然に知り得ない情報である。
これが開示されれば,諮問庁が説明するように,特定の広告代理店及び当該タレントの所属事務所の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
したがって,本件不開示部分は,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。
3 審査請求人のその他の主張について
(1)審査請求人は,特定地方公共団体Bの情報公開審査会において,タレント等の出演料について公開が適当と判断したとしていることから,本件不開示部分についても開示すべきである旨主張する。
しかし,特定地方公共団体Bの情報公開制度の下で,同団体主催のイベントの司会者,講師等としてのタレントの出演料が開示されていることをもって,出演形態が異なる本件のテレビCM等への特定のタレントの出演料が,法に基づき開示されるべきであるとは認められず,審査請求人の主張は採用できない。
(2)審査請求人はその他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
4 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,2号イ並びに6号柱書き及びロに該当するとして不開示とした決定については,審査請求人が開示すべきとしている部分は,同条2号イに該当すると認められるので,不開示としたことは妥当であると判断した。
(第1部会) |
委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美
別紙
文書1 政府広報オンライン表記特定日A掲載
マイナンバーカード国に聞いた篇に係るテレビスポットCM等企画制作業務の見積書もしくは内訳書を含む決済文書。
特に特定タレントAの出演料等が表示されるもの。
契約書及びテレビスポットCMの放送料のわかる書類一式。
文書2 政府広報オンライン表記特定日B掲載
DV・児童虐待対策に係るテレビスポットCM等企画制作業務の見積書もしくは内訳書を含む決済文書。
特に特定タレントBの出演料等が表示されるもの。
別表
通番 |
開示決定した文書 |
1 |
令和2年度キャンペーンテーマに係る政府広報の実施業務 広報テーマ「マイナンバーカードの取得促進(健康保険証利用と安全性)」 決裁文書 |
2 |
令和2年度キャンペーンテーマに係る政府広報の実施業務 広報テーマ「マイナンバーカードの取得促進(健康保険証利用と安全性)」 契約書 |
3 |
令和2年度年間広報媒体の調達業務 発注確認表 |
4 |
令和2年度年間広報媒体の調達業務 検査調書 |
5 |
年間広報媒体の調達業務 テレビスポットの放送 請求書 |
6 |
令和2年度キャンペーンテーマに係る政府広報の実施業務 広報テーマ「DV・児童虐待」 決裁文書 |
7 |
WEB動画のテレビCM用動画への変換業務 決裁文書 |