諮問庁 法務大臣
諮問日 令和 5年 1月11日(令和5年(行情)諮問第5号)
答申日 令和 5年 4月13日(令和5年度(行情)答申第19号)
事件名 特定個人が特定刑事施設等に在所中に作った歌の歌手・タイトル別一覧表等の不開示決定(存否応答拒否)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙に掲げる5文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和4年2月28日付け○管発第996号により特定矯正管区長(以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)を取消すとの裁決を求めます


2 審査請求の理由

審査請求人の主張する審査請求の理由の趣旨は,審査請求書及び意見書によると,おおむね以下のとおりである。

(1)審査請求書

遺族に損害賠償の支払いのため。その他,収監中に音楽などの仕事の為に作成した物は私(審査請求人を指す。以下同じ。)の所有物なので返還してもらいたいし,閲覧など確認する権利も法律で規定されている為。そして現在は出所後の元受刑者という立場なので,刑事事件の裁判又は刑の執行に係る保有個人情報であることから,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項の適用除外規定に該当するため,という諮問庁の決定は矛盾しているし不合理なので審査請求します。

遺族へ損害賠償の支払いをして,残った金額などは私の財産ですので実家の片付け費用に充てて,それでも残った金額などがあった場合は音楽とその他の仕事の資金に運用していきたいと特定年当時に特定刑事施設Bを通じて法務省などに意見書のような書類を作成し提出し確認してもらってますので,諮問庁にも当時の報告書などを確認していただければ分かると思います。

※「審査請求」と併せて「不開示決定の執行停止」を求めます。理由は「不開示決定」ですと遺族へ損害賠償の支払いが全額出来ません。特定刑事施設Bなど施設に収監中の頃,施設の許可を得て作詞家などの作家活動をさせていただき音楽をはじめいろんな職業の企画立案等の仕事をして,その仕事で得られた収入をお遺族へお支払させていただくという趣旨で始めたのがはじまりです。そして私の更生を補助するためのものでもあると説明して下さった刑務官の先生達もいました。各社会社側が私に未払いの印税や給料などの報酬ですが,上記に記載の「遺族への損害賠償の支払に充てる為」なのは説明の通りですが,もしお金が余ってしまってもそのお金は音楽をはじめその他の真面目なお仕事の運転資金に充てていくのと,実家の整理費用や家族など私が迷惑をかけた人達への償いの為に使いたいです。

それと大事な話ですが,私はまだ印税などの報酬を受け取れていませんが,私がもらえるはずのお金はどの様に扱われているのか知りたいです。もし仮に横領など刑事事件的な事が起きてるなら,私は勇気をもって警察などに刑事告訴・告発をしたいです。諮問庁の権限でお金がどの様に扱われているのか捜査・調査をすることは出来るのでしょうか?遺族の皆様は現在,ご無事でいらっしゃるのか?知りたいですが文書で説明するのが無理なら仕方ありませんが,もし説明していただけるのなら上記2件,ご遺族様の現状と,印税などの扱われ方(刑事告訴告発が必要かどうか,民事請求も含め)を知りたいです。「不開示決定の執行停止」と「全部開示決定」をお願い致します。


(2)意見書

印税などの報酬受取の為に,法務省管理書類が必要。理由は音楽著作権など著作権手続き申請に証拠書類として必要とのこと。書類の中には音楽以外の仕事の事も記載されてるのでそれも必要。不開示決定だと,特定法務大臣と特定年当時の特定刑事施設B所長の二人は,私の書類などだけでなく,印税などの報酬や著作権などを騙し盗り続けてることになりますので。総務省の審査会でも不開示決定ならというよりも,もう警察などの法的機関に事件として訴えます(刑事・民事両方とも訴えたい)。情報開示請求関連については引き続きご対応をお願い致します。以上です。

※作詞家などの印税などが手に入り,作詞者著作権利者証明などを出来るようになれば何も問題はありません。

※開示の方法を検討すれば済むと思う。(略)


第3  諮問庁の説明の要旨

1 本件審査請求は,審査請求人が処分庁に対し,令和4年1月17日受付行政文書開示請求書により,本件対象文書の開示請求を行い,これを受けた処分庁が,本件対象文書の存否を答えるだけで,法5条1号に規定される不開示とすべき情報が開示されるのと同様の結果が生じることから,法8条の規定により本件開示請求を拒否し,不開示決定(原処分)を行ったことに対するものであり,審査請求人は,原処分を取消し,本件対象文書の開示を求めていることから,以下,本件対象文書の同条該当性について検討する。


2 本件対象文書の法8条該当性について

(1)法8条の規定は,「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否か答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当該行政文書の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。」と定めている。

   また,法が定める開示請求制度は,何人に対しても,請求の目的のいかんを問わず開示請求を認めるものであることから,開示又は不開示の判断に当たっては,本人からの自己情報についての開示請求である場合も含め,開示請求者が誰であるか考慮せず,たとえ本人からの開示請求であっても,特定の個人が識別される情報については,不開示情報として取り扱うべきものである。


(2)本件対象文書は,総じて特定個人が特定の刑事施設に収容されていた又は収容されていることを前提とするものであることから,本件対象文書の存否を答えることは,特定個人が特定刑事施設への収容歴という,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報(法5条1号該当)を明らかにするのと同じ結果を生じさせるものと認められる。


(3)次に,同号ただし書該当性について検討すると,本件対象文書は,広く一般に公にする制度ないし実態があるものとは認められず,また,そのような性質を有するものとは考えられないことから,同号イに該当しないものと認められる。さらに,これらの情報は,人の生命,健康,生活又は財産を保護するために,何人に対しても開示することが必要な情報であるとは考えられないことから,同号ロに該当する事情も認められず,同号ハに該当するとすべき事情も存しないものと認められる。


3 以上のことから,本件対象文書については,いずれもその存否を答えるだけで,法5条1号の規定により不開示とすべき特定の個人に関する情報を開示することとなるから,法8条の規定により本件開示請求を拒否し,不開示とした原処分は妥当である。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 令和5年1月11日  諮問の受理

   ② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同年2月13日    審査請求人から意見書を収受

   ④ 同年4月7日     審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであるところ,処分庁は,本件開示請求に係る行政文書の存否を答えるだけで法5条1号の不開示情報を開示することと同様の結果となるため,法8条により不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,原処分の取消しを求めているところ,諮問庁は,原処分は妥当であるとしていることから,以下,本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について検討する。


2 本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について

(1)本件対象文書は,特定個人が特定刑事施設に収容されている又は収容されていたという事実を前提にして作成されるものであると認められることから,本件対象文書の存否を答えることは,特定個人が特定刑事施設に収容されている又は収容されていたという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)が開示されるのと同様の結果を生じさせるものと認められる。


(2)そして,本件存否情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものと認められることから,法5条1号本文前段に該当する。

次に,法5条1号ただし書該当性について検討すると,本件存否情報は,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは認められないため,同号ただし書イには該当せず,同号ただし書ハに該当する事情も認められない。また,本件存否情報は,人の生命,健康,生活又は財産を保護するために,何人にも開示することが必要であるとは考えられないことから,同号ただし書ロに該当する事情も認められない。


(3)以上によれば,本件対象文書の存否を答えるだけで,法5条1号の不開示情報を開示することとなるため,法8条の規定により,本件対象文書の存否を明らかにしないで,本件開示請求を拒否すべきものと認められる。


3 審査請求人のその他の主張について

審査請求人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 本件不開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その存否を答えるだけで開示することとなる情報は法5条1号に該当するとして,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号に該当すると認められるので,妥当であると判断した。


(第1部会)

  委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美





別紙(本件対象文書)

1 審査請求人が特定刑事施設A,特定刑事施設B及び特定刑事施設C在所中に作った歌の歌手・タイトル別一覧表

2 審査請求人が特定刑事施設A,特定刑事施設B及び特定刑事施設C在所中に作った歌をレコード会社に届けていた,審査請求人の家族以外の代理人の氏名,住所,電話番号及びアドレスが記録された文書

3 審査請求書が特定刑事施設B在所中にレコード会社から届いた雇用契約書などの契約書類

4 審査請求人が特定刑事施設A,特定刑事施設B及び特定刑事施設C在所中に作詞家活動をしていた証拠書類

5 審査請求人が特定年当時,特定刑事施設B在所中に許可を得て作成した音楽,その他仕事の書類