諮問庁 | : | 資源エネルギー庁長官 |
諮問日 | : | 令和 3年10月26日(令和3年(行情)諮問第456号) |
答申日 | : | 令和 5年 2月13日(令和4年度(行情)答申第515号) |
事件名 | : | 電気事業者の新エネルギー等利用における電子管理システム運用等業務に関する契約書の一部開示決定に関する件 |
第1 | 審査会の結論 |
別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,審査請求人が開示すべきとする部分を不開示としたことは,妥当である。
第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 審査請求の趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和3年6月4日付け20210405公開資第3号により資源エネルギー庁長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,支出計画書及び履行体制図に係る不開示部分(以下「本件不開示部分」という。)の開示を求める。
2 審査請求の理由
処分庁は,支出計画書の各区分の内訳,金額等,および履行体制図の事業者名,契約金額,業務範囲について「公にすることにより,同業他社等が対抗措置を講ずるおそれがある等,同社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当する」ことを不開示の理由に挙げる。
だが,添付①(省略)の通り,当該契約は平成29年以来,排他的権利の保護や互換性を理由に随意契約が続いている。同業他社等が対抗措置を講ずるおそれはなく,同社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはほぼないため,法5条2号イには該当しないはずである。
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 事案の概要
(1)審査請求人は,令和3年4月2日付けで,法4条1項の規定に基づき,処分庁に対し,「平成23年法律第108号・電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく「再生可能エネルギー電子申請システム」の平成28年度及び令和2年度の①発注契約書。」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行い,処分庁は,同月5日付けでこれを受け付けた。
(2)本件開示請求に対し,処分庁は,法10条2項の規定に基づき開示決定等の期限の延長をして,本件対象文書を特定し,法13条1項の規定に基づき第三者に対する意見提出機会の付与を行った上で,法9条1項の規定に基づき,令和3年6月4日付け20210405公開資第3号をもって,下記2のとおり,法5条2号イに該当する部分を除いて開示する原処分を行った。
(3)原処分に対し,開示請求者である審査請求人は,行政不服審査法(平成26年法律第68号)4条1号の規定に基づき,令和3年7月29日付けで,諮問庁に対し,原処分で法5条2号イに該当するため不開示とした下記3に掲げる本件不開示部分を開示することを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
(4)本件審査請求を受け,諮問庁において,原処分の妥当性につき改めで慎重に精査したところ,本件審査請求には理由がないと認められたため,諮問庁による裁決で本件審査請求を棄却することにつき,情報公開・個人情報保護審査会に諮問するものである。
2 原処分における処分庁の決定及びその理由
処分庁は,本件対象文書のうち,法人の代表者の印影,支出計画書の一部及び履行体制図の一部については法5条2号イに該当するため不開示とし,その他の部分を開示する決定を行った。
原処分において,本件不開示部分の不開示とした理由は,以下のとおりである。
(原処分における本件不開示部分の不開示理由)
(1)本件対象文書中,別添支出計画書の各区分の内訳,金額(合計額を除く),積算内訳の部分については,特定会社が一般には公にしていない同社の経営・財務状況及び当該事業の具体的な価格設定に関する情報であって,公にすることにより,同業他社等が対抗措置を講ずるおそれがある等,同社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため,不開示とした。
(2)本件対象文書中,別紙2履行体制図の事業者名,住所,契約金額,業務の範囲については,特定会社が一般には公にしていない同社の経営・財務状況及び当該事業の具体的な取引先に関する情報であって,公にすることにより,同業他社等が対抗措置を講ずるおそれがある等,同社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため,不開示とした。
3 本件不開示部分
(1)本件対象文書中,別添支出計画書の各区分の内訳,金額(合計額を除く),積算内訳の部分
(2)本件対象文書中,別紙2履行体制図の事業者名,住所,契約金額,業務の範囲
4 審査請求人の主張についての検討
(1)審査請求人は,処分庁が法5条2号イに該当するため不開示とした本件不開示部分を開示することを求めているので,以下,本件不開示部分の法5条2号イの該当性について,具体的に検討する。
(2)上記3に掲げる本件不開示部分のうち,(1)については,一般には公にしていない同社の経営・財務状況及び当該事業の価格決定に関する情報であって,特定会社が当該委託事業の実施に当たり過去の実績や多大なコストをかけて取得したノウハウ等に基づき独自に設定したものであり,公にすることにより,当該情報から競合他社等が同社の経営・財務状況及び単価等の価格決定過程を類推し,又は類似事業の価格決定の参考にし,当該事業のみならず他の類似事業の競争参加に当たっても対抗措置を講ずる等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため不開示としたことは妥当である。
(3)上記3に掲げる本件不開示部分のうち,(2)については,一般には公にしていない同社の経営・財務状況,取引状況及び事業実施体制等の内部管理情報であって,特定会社が当該委託事業の実施に当たり過去の実績や多大なコストをかけて取得したノウハウ等に基づき独自に設定したものであり,公にすることにより,当該情報から競合他社等が同社の取引状況から価格決定過程を類推し,又は類似事業の実施体制構築の参考にし,当該事業のみならず他の類似事業の競争参加に当たっても対抗措置を講ずる等,当該法人の権利,競争所の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため不開示としたことは妥当である。
5 結論
以上により,本件審査請求については何ら理由がなく,原処分の正当性を覆すものではない。
したがって,本件審査請求については,棄却することとしたい。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 令和3年10月26日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年11月16日 審議
④ 令和5年1月18日 委員の交代に伴う所要の手続の実施,本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年2月7日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件対象文書について
本件対象文書は,別紙に掲げる2文書である。
審査請求人は,本件不開示部分の開示を求めており,諮問庁は原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果に基づき,本件不開示部分の不開示情報該当性について検討する。
2 本件不開示部分の不開示情報該当性について
(1)本件不開示部分のうち支出計画書には,契約に関する人件費,事業費,再委託費等の各区分の内訳金額等が記載されていると認められる。また,本件不開示部分のうち履行体制図には,再委託先等に関する情報が詳細に記載されていると認められる。
(2)本件不開示部分の不開示情報該当性について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,諮問庁から以下のとおり説明があった。
ア 電気事業者の新エネルギー等利用における電子管理システム(以下「再生可能エネルギー電子申請システム」という。)とは,一般家庭や事業者が,再生可能エネルギーの固定価格買取制度における支援を受けるための認定申請や定期報告等を簡易に行ったり,国が数百万件にもわたる申請情報を効率的に管理し,効率的に支援を行うためのシステムであり,平成28年度に開発され,平成29年度から運用されている。
イ 再生可能エネルギー電子申請システムに関する政府調達方法について,平成28年度は,当該システムを新しく開発するに当たり,より適した法人に開発を委託する必要があった。そのため,契約の内容,入札の条件等を公告して,一定の資格要件を満たす不特定多数の者を競争に参加させ,そのうち国にとって最も有利な条件で申込みした者を選定し,契約を締結する方式である一般競争入札を採用した。
一方,平成29年度以降は,前年度開発されたシステムの運用及び保守並びに追加の開発を委託する必要があり,システムを開発した法人でなければ,委託業務を効率的かつ確実に遂行することが困難である。そのため,競争の方法によらずに随意に特定の者を選定して契約を締結する方式である随意契約を行っている。
ウ ところで,政府調達手続は,「政府調達に関する協定」及び「政府調達に関する協定を改正する議定書」により,「政府調達に関する協定」に基づく特定調達(以下「WTO政府調達」という。)に関する手続が国際的なルールとして定められている。我が国では,国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(昭和55年政令第300号。以下「政令」という。)及び国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める省令(昭和55年大蔵省令第45号。以下「省令」という。)により,WTO政府調達上の調達手続を国内法令上定めているとともに,運用上の自主的措置として,「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月31日関係省庁申合せ。以下「申合せ」という。)により運用指針を定めている。
本件の場合,平成28年度の一般競争入札も平成29年度以降の随意契約も,契約予定金額が一定の基準額以上であったため,WTO政府調達に該当する。
一般競争入札がWTO政府調達に該当する場合,政令13条,省令7条の2及び「経済産業省所管の契約に係る競争参加者資格審査事務取扱要領の特例を定める要領」(昭和56年1月23日55会第543号。以下「要領」という。)9条の規定に基づき,必要な事項を官報で公示しなければならないが,本件対象文書の文書1の不開示部分に記載された情報は,いずれも公示しなければならない情報に該当せず,官報には記載されていない。
また,随意契約がWTO政府調達に該当する場合,申合せの別紙1(政府調達手続に関する運用指針)の「8.随意契約締結前の情報の公表」の規定に基づき,必要な事項を官報で公示しなければならないが,本件対象文書の文書2の不開示部分に記載された情報は,いずれも公示しなければならない情報に該当せず,官報には記載されていない。
エ さらに,我が国の政府調達全般に係る取扱い及び情報の公表等については,「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日財計第2017号。以下「通達」という。)により規定されており,WTO政府調達か否かにかかわらず,政府調達には通達が適用されるところ,本件不開示部分に記載された情報は,いずれも通達で公表すべきとされている情報に該当せず,資源エネルギー庁ウェブサイトに掲載されていない。
また,特定会社のウェブサイトを確認したところ,本件不開示部分に記載された情報は公表されていなかった。
オ 上記ウ及びエを踏まえると,本件不開示部分に記載された情報は,公にしていない特定会社の当該事業における応札価格の詳細及び取引先に関する情報であるといえる。
そうすると,これを公にすることにより,競合他社が,特定会社の当該事業における応札価格の設定に関する情報及び事業実施体制を推測することが可能となるため,今後,資源エネルギー庁を含む経済産業省が行うシステム調達の入札において,競合他社が,推測した情報を基に特定会社の応札価格を予想し,より低価格な応札価格を設定したり,特定会社の取引先や再委託先に働きかけを行ったりといった対抗措置を講ずるおそれがあり,ひいては,特定会社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるので,法5条2号イに該当し,不開示とすべきである。
(3)当審査会において,官報,資源エネルギー庁ウェブサイト及び特定会社ウェブサイトを確認したところ,本件不開示部分に記載された情報は,政令,省令,申合せ,要領及び通達に基づき公表しなければならない情報に該当せず,実際に公表されていない旨の諮問庁の説明は首肯できる。
そうすると,本件不開示部分を公にすることにより,今後,同業他社等が,資源エネルギー庁を含む経済産業省が行うシステム調達等の類似事業の競争参加に当たり対抗措置を講ずるおそれがある等,特定会社の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるので,法5条2号イに該当し,不開示とすることは妥当である。
3 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条2号イに該当するとして不開示とした決定については,審査請求人が開示すべきとする部分は,同号イに該当すると認められるので,不開示としたことは妥当であると判断した。
(第2部会) |
委員 白井玲子,委員 太田匡彦,委員 佐藤郁美
別紙(本件対象文書)
文書1 平成28年度電気事業者の新エネルギー等利用における電子管理システム運用等業務(再生可能エネルギー事業管理システム構築・運用保守業務)に関する委託契約書(20169829財資第7号)
文書2 契約書(令和2年度電気事業者の新エネルギー等利用における電子管理システム運用等業務(再生可能エネルギー事業管理システム運用業務))(20200311財資第2号)