諮問庁 出入国在留管理庁長官
諮問日 令和 4年 3月22日(令和4年(行情)諮問第226号)
答申日 令和 4年12月 1日(令和4年度(行情)答申第353号)
事件名 行政文書ファイル「特異事案 令和元年度」に含まれる文書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙に掲げる文書1ないし文書3(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,諮問庁がなお不開示としている部分は,不開示とすることが妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和3年12月24日付け入管庁総第2921号により,出入国在留管理庁長官(以下「出入国在留管理庁長官」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,不開示部分の決定を取り消す,との裁決を求める。


2 審査請求の趣旨及び理由

審査請求人が主張する審査請求の理由は,審査請求書によると,おおむね以下のとおりである。

決定通知書第2項記載の不開示部分はいずれも,法5条各号に規定される不開示情報にあたらないと考える。

しかしながら仮に上記主張が認められないとしても,少なくとも以下に理由を述べる部分は法6条1項により部分開示されるべきである。

(1)決定通知書第2項記載の不開示部分のうち,法5条1号に該当することを理由として不開示とした部分については,そのうちの句点及び読点,並びに日本語の品詞たる助詞,助動詞又は接続詞にあたる単語は同号に該当するとはいえない。そうすると,法6条2項により同条1項の規定が適用される。また,前述の部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(2)決定通知書第2項記載の不開示部分のうち,法5条各号(1号を除く)のいずれかに該当することを理由として不開示とした部分については,そのうちの句点及び読点,並びに日本語の品詞たる助詞,助動詞又は接続詞にあたる単語は法5条各号(1号を除く)のいずれかに該当するとはいえない。また,前述の部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(3)処分庁は決定通知書第1項(1)記載の行政文書のうち,1枚目2行目中の文字「令和元年」と文字「月」の間および文字「月」と文字「日」の間の部分を不開示とした。処分庁がこれらの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としないが,その理由が決定通知書第2項(5)に記載されている可能性が高いものと考え,以降はそれを前提として記載する。これらの不開示とされた部分の同じ行には「令和元年」,「月」,「日」などと記載されていることからすれば,これらの不開示とされた部分には,当該行政文書が発出された日付が記載されているものと推測される。そうすると,これらの不開示とされた部分に記載されているのは出入国在留管理庁大村入国管理センター(以下「大村入国管理センター」という。)の庁舎内で被収容者が死亡した事案に関して,大村入国管理センター所長から出入国在留管理庁長官に対して報告が行われた日付であると考えられる。当該報告の日付を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,当該報告の日付を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(4)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,6枚目15行目中の文字「救急隊員」と文字「名が到着したため」の間の部分を不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。しかしながら,前記不開示部分には,その前後の記述からすると令和元年6月24日の13時29分に大村入国管理センターヘ到着した救急隊員の人数が記載されているものと推量される。このことから審査請求人は,前記不開示部分は決定通知書第2項(1)に記載された「被収容者の…死亡前後の詳細な状況等」に該当するとして法5条1号該当により不開示とされたものと理解し,以降はそれを前提として記載する。まず,前記不開示部分の2行下には「救急隊員の担架に載せ■■■を●号室からを●号室から救急車へ搬送」と記載されている。さらに,前記不開示部分の5行下には「13時40分,救急車が■■■病院に到着」と記載されている。そうすると,前記不開示部分に人数が記載された大村入国管理センターに同日13時29分に到着した救急隊員は,救急車に乗車して同センターに到着したことが明らかである。ところで,消防法施行令44条1項は「救急隊(次条1項に定めるものを除く。次項において同じ。)は,救急自動車1台及び救急隊員3人以上をもって…編成しなければならない。ただし,救急業務の実施に支障がないものとして総務省令で定める場合には,救急自動車1台及び救急隊員2人をもって編成することができる」と定める。よって,前記不開示部分に記載された救急隊員の人数は2以上であることは間違いがない。また,近年救急隊の繁忙が社会問題化していることからすれば,前記不開示部分に記載された救急隊員の人数が5以上であることは考え難い。以上のことから,前記不開示部分に記載された救急隊員の人数は,2,3又は4のいずれかである可能性が極めて高い。また,救急隊1隊が2人ないし4人から編成されることは,決定通知書第1項記載の行政文書に記載された被収容者死亡事案に関する救急出動に限らず,前記救急出動実施当時の消防実務に照らして一般的である。よって,前記不開示部分に記載された救急隊員の人数は法5条1号には該当しない。また,以上の主張は13時29分に大村入国管理センターに到着した救急隊が1隊のみであったことを前提としてなされているものであるが,仮に13時29分に同センターに救急隊1隊に加えて同時に1隊以上の救急隊又は消防隊が到着していたとしても,そもそも傷病者の搬送のために現場に到着した救急隊員の人数によって「特定の個人を識別することができる」か「他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなる」とは考えられないし,前記救急隊員の人数を「公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある」とも考えられない。よって,この場合でも結局,前記不開示部分に記載された救急隊員の人数は法5条1号には該当しない。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(5)処分庁は決定通知書第1項(1)記載の行政文書のうち,7枚目7行目中の文字「(3)」と文字「25日」の間の部分を不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。ところで,前記「25日」は死亡した被収容者の司法解剖が実施された日付を指すものであり,決定通知書第1項(1)記載の行政文書1枚目11行目の記述「同月25日,司法解剖を行い」から判断すると,具体的には令和元年6月25日のことを指しているものと認められる。さらに,被収容者が死亡したのは令和元年6月24日であること,および前記不開示部分の面積は高々全角1文字分にすぎないことからすれば,前記不開示部分には文字「同」または文字「翌」が記載されている可能性が極めて高い。このことを前提にすれば,前記不開示部分は法5条各号のいずれにも該当しない。また,前記不開示部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(6)処分庁は決定通知書第1項(1)記載の行政文書のうち,13枚目最終行全てを不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。しかしながら,前記不開示部分の1行上に「添付物」と記載されていること,および決定通知書第1項(1)記載の行政文書が大村入国管理センター所長から出入国在留管理庁長官への報告であることからすれば,前記不開示部分には同報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察される。このことから,審査請求人は前記不開示部分が決定通知書第2項(5)によって不開示とされたものと判断した。前記資料の名称を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,前記資料の名称を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(7)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,1枚目1行目中の文字「令和元年」と文字「月」の間および文字「月」と文字「日」の間の部分を不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としないが,その理由が決定通知書第2項(5)に記載されている可能性が高いものと考え,以降はそれを前提として記載する。これらの不開示とされた部分の同じ行には「令和元年」,「月」,「日」などと記載されていることからすれば,これらの不開示とされた部分には,当該行政文書が発出された日付が記載されているものと推測される。そうすると,これらの不開示とされた部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に関して,出入国在留管理庁出入国管理部警備課から出人国在留管理庁長官に対して報告が行われた日付であると考えられる。当該報告の日付を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,当該報告の日付を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(8)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,1枚目1項「被収容者身分事項」中の4行目の文字「日(」と文字「歳)」の間の部分を不開示とした。

当該行の最も左には「生年月日」と記載されていることからすると,前記不開示部分には大村入国管理センターにおいて死亡した被収容者の年齢が記載されているものと推測される。そうすると,前記不開示部分は処分庁が決定通知書第2項(1)において法5条1号に該当すると主張して不開示とした部分の一部であろう。ところで,決定通知書第1項(1)記載の行政文書1枚目の1項「身分事項等」の4行目には「(4●歳)」と記載されている。また,決定通知書第1項(3)記載の行政文書の4枚目の「第2」中1項「身分事項等」の1行目には「死亡当時40歳代」と記載されている。さらに,決定通知書第1項(3)記載の行政文書の1枚目を除いた部分と同様の文書が,処分庁のWebサイト中の「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について|出入国在留管理庁」と題するページ(URL(略))に掲載されており,Webサイト掲載の文書中でも同様に「死亡当時40歳代」と記載されている。また,決定通知書第1項記載の行政文書に関連する被収容者の死亡事案とは異なる被収容者の死亡事案について,処分庁がそのWebサイト中にアップロードした「名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告について|出入国在留管理庁」と題するページ(URL(略))においては,同事案において死亡した被収容者について「被収容者(30歳代女性,スリランカ国籍)」と記載されている。以上のことから,出入国在留管理庁の庁舎において死亡した被収容者の年齢を示す数字の十の位は,慣行として公にされる情報であるといえ,法5条1号イに該当する。そうすると,処分庁が不開示とした,決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち1枚目1項「被収容者身分事項」中の4行目の文字「日(」と文字「歳)」の間の部分についてはそのうちの年齢を表す数字の十の位は法5条1号に規定される不開示情報に該当しない。ゆえに,法6条2項により同条1項の規定が適用される。また,前述の部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(9)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,2枚目6行目すべてを不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。しかしながら,前記不開示部分の1行上には「3 検証期間」と記載されていること,および同行政文書1枚目5行目ないし6行目に「大村入国管理センター被収容者死亡事案■■■の検証について」なる同行政文書のタイトルが記載されていることからすれば,前記不開示部分には大村入国管理センターにおいて発生した被収容者死亡事案について出入国在留管理庁が行った検証の始期および終期が記載されているものと推察される。このことから,審査請求人は前記不開示部分が決定通知書第2項(5)によって不開示とされたものと判断した。前記不開示部分には,「XXXX年XX月XX日~XXXX年XX月XX日」などと記載されていると推定されるが,このうち文字「年」,「月」および「日」は法5条5号および6号柱書きのいずれにも該当しない。また,前述の部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(10)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,2枚目10行目の文字『別添「』と文字『」のとおり』の間の部分を不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。しかしながら,前記不開示部分には,その前後の記述からすると,出入国在留管理庁出入国管理部警備課職員から出入国在留管理庁長官への報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察される。このことから,審査請求人は前記不開示部分が決定通知書第2項(5)によって不開示とされたものと判断した。前記資料の名称を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,前記資料の名称を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(11)処分庁は決定通知書第1項(2)記載の行政文書のうち,3枚目最終行の全てを不開示とした。処分庁がこの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としない。しかしながら,前記不開示部分の1行上に「添付物」と記載されていること,および決定通知書第1項(2)記載の行政文書が出入国在留管理庁出入国管理部警備課職員から出入国在留管理庁長官への報告であることからすれば,前記不開示部分には同報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察される。このことから,審査請求人は前記不開示部分が決定通知書第2項(5)によって不開示とされたものと判断した。前記資料の名称を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,前記資料の名称を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(12)処分庁は決定通知書第1項(3)記載の行政文書のうち,1枚目「起案」欄中の「起案日」欄中の文字「令和元年」と文字「月」の間および文字「月」と文字「日」の間の部分を不開示とした。処分庁がこれらの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記載からは判然としないが,その理由が決定通知書第2項(5)に記載されている可能性が高いものと考え,以降はそれを前提として記載する。これらの不開示とされた部分の同じ行には「令和元年」,「月」,「日」などと記載されていることからすれば,これらの不開示とされた部分には,当該行政文書が起案された日付が記載されているものと推測される。そうすると,これらの不開示とされた部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に関する報告書について,出入国在留管理庁の長官以下の幹部の決裁を得るために決裁内が起案された日付であると考えられる。当該起案の日付を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,当該起案の日付を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。


(13)処分庁は決定通知書第1項(3)記載の行政文書のうち,1枚目「決裁」欄中の「決裁日」欄中の文字「令和元年」と文字「月」の間および文字「月」と文字「日」の間の部分を不開示とした。処分庁がこれらの部分を不開示とした理由は決定通知書第2項の記戟からは判然としないが,その理由が決定通知書第2項(5)に記載されている可能性が高いものと考え,以降はそれを前提として記載する。これらの不開示とされた部分の同じ行には「令和元年」,「月」,「日」などと記載されていることからすれば,これらの不開示とされた部分には,当該行政文書が決裁された日付が記載されているものと推測される。そうすると,これらの不開示とされた部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に関する報告書について,出入国在留管理庁の長官以下の幹部の決裁が完了した日付であると考えられる。当該決裁の日付を「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条5号には該当しないと考える。さらに,当該決裁の日付を「公にすることにより,…当該事務…の性質上,当該事務…の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると処分庁が判断した理由は明らかではないが,審査請求人はこれらの不開示とされた部分は法5条6号柱書きには該当しないと考える。また,これらの不開示とされた部分以外の不開示情報が記録されている部分は容易に区分して除くことが出来るし,不開示情報が記録されている部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認めることも相当ではない。

また,決定通知書第2項記載の不開示部分のうち,少なくとも以下の部分については不開示とした理由の提示に不備があり,行政手続法8条に違背するものである。


(14)処分庁は,決定通知書第1項(1)記載の行政文書(片面印刷32枚相当)のうち,14枚目ないし32枚目のほぼ全ての部分を不開示とした。その理由について,前記不開示部分は決定通知書第2項(1),(2),(3)および(5)のいずれか1つ以上に該当すると処分庁が判断したことは,決定通知書から把握できる。しかしながら,A4用紙片面19枚に渡る前記不開示部分中の,どの部分をいかなる理由により不開示としたかは決定通知書からは全く明らかではない。


(15)処分庁は,決定通知書第1項(2)記載の行政文書(片面印刷12枚)のうち,4枚目ないし12枚目の全てを不開示とした。その理由について,前記不開示部分は決定通知書第2項(1)および(4)のいずれか1つ以上に該当すると処分庁が判断したことは,決定通知書から把握できる。しかしながら,A4用紙片面9枚に渡る前記不開示部分中の,どの部分をいかなる理由により不開示としたかは決定通知書からは全く明らかではない。

※ 上記第2においては,両面印刷の行政文書も全て片面印刷に換算して,「~枚目」などと行政文書中の部分を特定した。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 本件経緯

審査請求人は,令和3年11月7日付け(同月9日受理),処分庁に対し,法の規定に基づき,請求する対象を

「Webサイト「e-GOV」で公開されている行政文書ファイル管理簿に登載されている文書の内,「特異事案令和元年度」と題する文書。(府省名が出入国在留管理庁,作成・取得年度等が2019年度,大分類が出入国管理(退去強制),中分類が警備処遇,作成・取得者が法務省出入国在留管理庁出入国管理部警備課長,起算日が2020年4月1日,保存期間が10年,保存期間満了日が2030年3月31日,媒体の種別が紙,保存場所が事務室,管理者が法務省出入国在留管理庁出入国管理部警備課長,保存期間満了時の措置が廃棄,備考が2冊であるもの)」

とする行政文書開示請求を行った。

処分庁は,本件開示請求に対し,対象文書として文書1ないし文書3を特定の上,その一部が法5条1号,2号イ,3号,4号,5号及び6号柱書きに該当するとして部分開示決定(原処分)をし,その余の部分については,その全てが法5条1号,4号及び6号柱書きに該当するとして不開示決定(令和3年12月24日付け入管庁総第2922号)をした。

本件は,この原処分について,令和4年1月18日,諮問庁に対して審査請求がなされたものである。


2 審査請求人の主張の要旨

審査請求人は,概ね以下のとおり主張し,原処分の取消しを求めている。

(1)開示決定通知書第2項記載の不開示部分はいずれも,法5条各号に規定される不開示情報に当たらない。


(2)仮に上記主張が認められないとしても,少なくとも以下に理由を述べる部分は法6条1項により部分開示されるべきである。

ア 法5条各号に該当することを理由として不開示とした部分については,そのうちの句点及び読点,並びに日本語の品詞たる助詞,助動詞又は接続詞にあたる単語は法5条各号に該当するとは言えない。


イ 処分庁は文書1の1枚目2行目中の「令和元年」と「月」の間及び「月」と「日」の間の部分を不開示としているが,これらの不開示とされた部分には,当該文書が発出された日付が記載されているものと推測される。そうすると,当該不開示部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に対して,大村入国管理センター所長から出入国在留管理庁長官に対して報告が行われた日付であると考えられることから,法5条5号及び6号に該当しない。


ウ 処分庁は文書1の6枚目15行目中の「救急隊員」と「名が到着したため」の間の部分を不開示としているが,不開示とされた部分には,大村入国管理センターに到着した救急隊員の人数が記載されているものと推量され,傷病者の搬送のために現場に到着した救急隊員の人数は,法5条1号に該当しない。


エ 処分庁は文書1の7枚目7行目中の「(3)」と「25日」の間の部分を不開示としているが,被収容者が死亡したのは令和元年6月24日であること,当該不開示部分の面積が1文字分であることから,「同」または「翌」が記載されている可能性が極めて高く,法5条各号のいずれにも該当しない。


オ 処分庁は文書1の13枚目最終行を不開示としているが,1行上に「添付物」と記載されていること,当該文書が大村入国管理センター所長から出入国在留管理庁長官への報告であることからすれば,当該不開示部分には同報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察され,法5条5号及び6号に該当しない。


カ 処分庁は文書2の1枚目1行目中の「令和元年」と「月」の間及び「月」と「日」の間の部分を不開示としているが,これらの不開示とされた部分には,当該文書が発出された日付が記載されているものと推測される。そうすると,当該不開示部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に対して,出入国在留管理庁出入国管理部警備課から出入国在留管理庁長官に対して報告が行われた日付であると考えられることから,法5条5号及び6号に該当しない。


キ 処分庁は文書2の1枚目1項「被収容者身分事項」中の4行目中の「日(」と「歳)」の間の部分を不開示としているが,不開示とされた部分には,大村入国管理センターにおいて死亡した被収容者の年齢が記載されているものと推測される。文書1には「(4●歳)」と記載されている部分があり,文書3には「死亡当時40歳代」と記載されている部分があるほか,Webサイト記載の文書中でも同様に「死亡当時40歳代」と記載されている。そうすると,死亡した被収容者の年齢を示す数字の十の位は,慣行として公にされる情報と言え,法5条1号イに該当することから,当該不開示部分は法5条1号に該当しない。


ク 処分庁は文書2の2枚目6行目を不開示としているが,1行上に「3 検証期間」と記載されていること等からすれば,当該不開示部分には大村入国管理センターにおいて発生した被収容者死亡事案について出入国在留管理庁が行った検証の始期及び終期が記載されているものと推察され,このうち「年」「月」「日」の部分は法5条5号及び6号に該当しない。


ケ 処分庁は文書2の2枚目10行目中の「別添「」と「」のとおり」の間の部分を不開示としているが,その前後の記述からすると,当該不開示部分には出入国在留管理庁出入国管理部警備課職員から出入国在留管理庁長官への報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察され,法5条5号及び6号に該当しない。


コ 処分庁は文書2の3枚目最終行を不開示としているが,1行上に「添付物」と記載されていること,当該文書が出入国在留管理庁出入国管理部警備課職員から出入国在留管理庁長官への報告であることからすれば,当該不開示部分には同報告に添付された資料の名称が記載されているものと推察され,法5条5号及び6号に該当しない。


サ 処分庁は文書3の1枚目「起案」欄中「起案日」欄中の文字「令和元年」と「月」の間及び「月」と「日」の間の部分を不開示としているが,これらの不開示とされた部分には,当該文書が起案された日付が記載されているものと推測される。そうすると,当該不開示部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に関する報告書について,出入国在留管理庁長官以下の幹部の決裁を得るために決裁書が起案された日付であると考えられることから,法5条5号及び6号に該当しない。


シ 処分庁は文書3の1枚目「決裁」欄中「決裁日」欄中の文字「令和元年」と「月」の間及び「月」と「日」の間の部分を不開示としているが,これらの不開示とされた部分には,当該文書が決裁された日付が記載されているものと推測される。そうすると,当該不開示部分に記載されているのは大村入国管理センターの庁舎内で被収容者が死亡した事案に関する報告書について,出入国在留管理庁長官以下の幹部の決裁が完了した日付であると考えられることから,法5条5号及び6号に該当しない。


(3)開示決定通知書に記載されている不開示部分のうち,少なくとも以下の部分については不開示とした理由の提示に不備があり,行政手続法8条に違背する。

ア 処分庁は,文書1のうち14枚目ないし32枚目のほぼ全ての部分を不開示としたが,不開示部分中のどの部分をいかなる理由により不開示としたかは開示決定通知書からは全く明らかではない。


イ 処分庁は,文書2のうち4枚目ないし12枚目のほぼ全ての部分を不開示としたが,不開示部分中のどの部分をいかなる理由により不開示としたかは開示決定通知書からは全く明らかではない。


3 諮問庁の考え方

(1)本件対象文書について

本件対象文書は,被収容者死亡に関し作成した報告書及び決裁文書であり,処分庁は,当該対象文書の一部が法5条1号,2号イ,3号,4号,5号及び6号柱書きに該当するとして原処分をした。


(2)不開示情報該当性について

ア 死亡した被収容者,関係者,職員の氏名等(法5条1号該当)

文書1及び2には,死亡した被収容者の氏名,生年月日,同人の退去強制手続に関する情報,関係者の氏名,国籍,生年月日,住所等の情報が記録されている。

死亡した被収容者の氏名,関係者の氏名等は,個人に関する情報であり,法5条1号ただし書イからハに該当しないことから,公にすることにより,当該個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められる。

また,入国警備官及び入国審査官の氏名は,独立行政法人国立印刷局編「職員録」に掲載された統括入国警備官及び統括審査官以上(一部上席審査官を含む。)の職位にある職員の氏名を除いて,「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて(平成17年8月3日付け情報公開に関する連絡会議申合せ)」において,公にするものから除外している「氏名を公にすることにより,個人の権利利益を害することとなるような場合」に該当する。

当庁職員は,退去強制手続や在留審査等の許認可行為を行う事務等に従事しており,氏名を公にすることにより,職員個人がひぼう中傷又は攻撃の対象となるおそれがある。

したがって,これらの情報は,法5条1号ただし書イに係る部分を除いて不開示を維持することが相当である。


イ 法人の名称,住所等(法5条2号イ該当)

文書1には,法人の名称,所在地,電話番号,法人が請け負った業務の内容等が記録されており,公にすることにより,当該法人の競争上の地位及び正当な利益を害することとなるため,法5条2号イに該当すると認められる。

また,当該法人の情報は,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要と認められる情報ではないため,法5条2号ただし書に該当するとは認められない。

したがって,これらの情報は法5条2号イに該当することから,不開示を維持することが相当である。


ウ 外交に関する情報(法5条3号該当)

文書1には,被収容者の死亡に関する親族への連絡及び事後の手続について,関係機関との間の交渉,協力,依頼及び入手した情報が記録されており,これらを公にすることにより,今後,当庁が業務上必要とする関係機関からの協力を得られなくなる,又は交渉上の不利益を被るおそれがある。

当庁が行う入国・在留審査業務,退去強制手続業務等の各種業務を適正に遂行するためには,他国や国際機関の協力関係が必要不可欠であり,どのような交渉,協力及び依頼がなされているかを公にすることは,被収容者の死亡事案か否かにかかわらず,当該他国や国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は交渉上の不利益を被るおそれがあると認められる。

したがって,これらの情報は法5条3号に該当することから,不開示を維持することが相当である。


エ 収容施設の設備・構造及び保安・警備体制(法5条4号及び6号柱書き該当)

文書2には,大村入国管理センターの設備・構造及び保安・警備体制が記録されている。

これらの情報を公にすることにより,大村入国管理センターにおける詳細な警備体制等が明らかとなり,被収容者が脱走等の遵守事項違反を企て,収容施設内の安全・秩序維持に支障を及ぼすおそれがあるほか,結果として,被収容者の処遇に係る事務への適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

したがって,これらの情報は法5条4号及び6号柱書きに該当することから,不開示を維持することが相当である。


オ 本件死亡事案に関する調査内容等(法5条5号及び6号柱書き該当)

本件対象文書には,被収容者死亡事案に関しての詳細な調査内容,内部における意見,検討状況等が記録されている。

これらの情報を公にすることにより,当庁職員が,どの程度の手段や方法を講じて死亡事案に関する調査を行ったか,どのような意見が述べられたか等の事実が明らかとなり,それらを不十分と考える者からの不当なひぼう中傷を受けるおそれがある。そうすると,当庁職員が,かかる事態を恐れることにより,率直な意見交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるほか,結果として,被収容者の処遇に係る事務への適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

したがって,これらの情報は法5条5号及び6号柱書きに該当することから,不開示を維持することが相当である。


カ 当庁の非公開の内線番号(法5条6号柱書き該当)

本件対象文書には,一般に公表していない処分庁の内線番号が記録されており,公にすることにより,なりすまし又は業務の妨害を目的とした電話がなされるなど,業務に必要な連絡に支障を来し,業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

したがって,法5条6号柱書きに該当することから,不開示を維持することが相当である。


(3)不開示情報に該当しない部分について

上記2(2)クで審査請求人が主張する部分については,慣行により公にされている情報と認められるため,法5条1号ただし書イに該当し,開示すべきである。


(4)開示決定通知書における不開示理由の提示について

原処分時の開示決定通知書に記載した不開示理由について,不開示とした部分とその理由を具体的に示した上で,法5条各号に該当する旨を明確に示していることから,記載に不備があるとは認められない。


4 結論

以上のとおり,上記2(2)クで審査請求人が主張する部分については,不開示情報に該当しないことから開示すべきであるが,その他の部分については,原処分を維持することが相当である。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 令和4年3月22日 諮問の受理

② 同日        諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年4月15日   審議

④ 同年10月28日  本件対象文書の見分及び審議

⑤ 同年11月25日  審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件対象文書は,別紙に掲げる3文書であり,処分庁は,その一部を法5条1号,2号イ,3号,4号,5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,理由提示不備を主張するとともに,原処分を取り消し,不開示部分の開示を求めるものと解されるところ,下記のとおり,諮問庁は,別表1に掲げる不開示部分のうち,別表2に掲げる部分を新たに開示することとし,これらを除く部分(以下「本件不開示維持部分」という。)については,なお不開示とすべきとしていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,理由の提示の妥当性及び本件不開示維持部分の不開示情報該当性について検討する。


2 理由の提示の妥当性について

(1)法9条1項及び2項に基づき,開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しない決定をした旨の通知を行う際には,行政手続法8条1項に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示事由のいずれに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならない。


(2)当審査会において,諮問書に添付された本件開示請求に係る「行政文書開示決定通知書」の写し(以下「本件開示決定通知書」という。)を確認したところ,本件開示決定通知書の「2 不開示とした部分とその理由」において,処分庁が不開示が相当と判断した記載の具体的な内容と理由が記載されており,法の根拠条文の内容も具体的に記載されていることが認められる。


(3)本件対象文書の見分結果を踏まえ検討すると,このような本件開示決定通知書の「不開示とした部分とその理由」の記載内容を総合すれば,本件では,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示事由のいずれに該当するのかを,その根拠とともに了知し得る程度に理由が示されているものと認められる。


(4)よって,原処分における理由の提示に不備があるとまでは認められない。


3 本件不開示維持部分の不開示情報該当性について

(1)文書1ないし文書3は,大村入国管理センターで発生した被収容者死亡事案(以下「本件事案」という。)に係る文書であり,当審査会において本件不開示維持部分を見分したところ,本件不開示維持部分には,死亡した被収容者,関係者,職員の姓及び役職名,法人の名称,外交に関する情報,収容施設の設備等,本件事案に関する調査内容等及び出入国在留管理庁の内線番号が記載されていることが認められる。


(2)不開示情報該当性について

ア 法5条各号の不開示情報該当性について

(ア)別表1の番号1欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号1欄に掲げる不開示部分には,被収容者及び関係者の氏名,生年月日等の特定の個人を識別することができる情報が記載されていることが認められる。

当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報に該当し,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは認められないから,同号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も認められない。

 次に,法6条2項による部分開示の可否について検討すると,氏名,生年月日等の不開示部分は,被収容者及び関係者に係る個人識別部分に該当することから,部分開示の余地はない。

また,その余の部分についても,これを公にすると,被収容者及び関係者を特定する手掛かりとなり,被収容者及び関係者の権利利益を害するおそれがないとは認められないことから,部分開示をすることはできない。

したがって,本件不開示維持部分は法5条1号に該当し,不開示としたことは妥当である。


(イ)別表1の番号2欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号2欄に掲げる不開示部分には,特定の法人の名称等や当該法人の活動の情報が記載されていることが認められる。

当該部分は,法人等に関する情報であって,公にすることにより,当該法人の個別具体的な活動が明らかになることや本件に関する当該法人への問合せ等に対応せざるをえなくなり,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められ,法5条2号イに該当し,不開示としたことは妥当である。


(ウ)別表1の番号3欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号3欄に掲げる不開示部分には,被収容者の国籍国である外国との事務の情報が記載されていることが認められる。

当該部分は,公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められるので,法5条3号に該当し,不開示としたことは妥当である。


(エ)別表1の番号4欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号4欄に掲げる不開示部分には,収容施設の設備や当該施設の管理に関する具体的な情報及び警備処遇業務に従事する職員数等を含む看守勤務の体制に関する情報が不開示とされていると認められる。

当該部分は,入国者収容所である大村入国管理センターの設備や警備処遇業務に従事する看守勤務の日誌等の情報であって,公にすることにより,公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められるので,法5条4号に該当し,同条6号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


(オ)別表1の番号5欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号5欄に掲げる不開示部分には,本件事案の詳細な調査内容及び内部検討事項に関する情報が記載されていることが認められる。

当該部分は,国の機関における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあると認められるので,法5条5号に該当し,同条6号柱書きについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。


(カ)別表1の番号6欄に掲げる不開示部分について

別表1の番号6欄に掲げる不開示部分には,行政機関担当者の内線番号が記載されていることが認められる。

当該部分は,これを公にすることにより,いたずらや偽計等に使用され,国の機関が必要とする際の緊急の連絡や部外との連絡に支障を来すなど,国の機関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められるので,法5条6号柱書きに該当し,不開示としたことは妥当である。


イ 上記第2の2において,審査請求人が部分開示されるべきであると主張する本件不開示維持部分について,当審査会事務局職員をして,諮問庁に更に確認させたところ,諮問庁は以下のように説明する。

(ア)句点及び読点,並びに日本語の品詞たる助詞,助動詞又は接続詞に当たる単語

これらの部分に「有意の情報が記録されていない」ことは明らかであり,法6条1項ただし書に該当するため,不開示としている。


(イ)文書3の1頁の調査報告書の決裁の起案日,決裁日

決裁鑑の起案日及び決裁日は,当庁の内部的な協議・検討期間に係る情報であり,当該部分を公にすることで,処遇業務に係る当庁内部における協議・検討を行った期間の一端が明らかとなる。

そうすると,今後同種の事案において,検討期間を推測されることで,影響力を行使しようとする外部から圧力や干渉等を受け,意思形成過程にある事案に対し,公正であるべき意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。


(ウ)文書1の13頁:報告書の添付物情報

当該不開示部分は,本件事案に関する調査内容についての情報であって,退去強制手続の具体的な調査内容に係る資料が添付されているところ,公にすることで,今後の同種の調査の際に不当なひぼう中傷がなされることを懸念し,適切な調査がなされないなどの当庁内部における率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。


(エ)文書2の2頁:「3 検証期間」の「年」「月」「日」の文字

仮に審査請求人が主張するとおり「XXXX年XX月XX日~XXXX年XX月XX日」などと記載されていた場合であっても,「年」「月」「日」部分を開示すると,数字部分の桁数から検証に要した期間が明らかとなる。

そうすると,今後同種の事案において,当該期間を推測されることで,影響力を行使しようとする外部からの圧力や干渉等を受け,意思形成過程にある事案に対し,公正であるべき意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。


(オ)文書2の2頁:「5 検証状況」の別添「 」内の文字及び文書2の3頁,報告書の添付物情報

 死亡事案に対する調査の内容が記載されており,公にすることで,今後の同種の調査の際に不当なひぼう中傷がなされることを懸念し,意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。


ウ 上記イの諮問庁の説明のうち(ア)については,首肯できる。また,(イ)ないし(オ)については,上記ア(オ)において法5条5号の不開示情報に該当すると判断した不開示部分のうち,審査請求人がその一部を開示されるべきであると主張する点についての補足説明であるところ,本件においては,これを否定することまではできず,これを覆すに足りる事情も認められない。したがって,審査請求人の主張を採用することはできない。


3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,2号イ,3号,4号,5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とした決定については,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分は,同条1号,2号イ,3号,4号,5号及び6号柱書きに該当すると認められるので,不開示とすることが妥当であると判断した。


(第1部会)

委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美





別紙(本件対象文書)


文書1 令和元年付け大セ警処第6号「ナイジェリア人被収容者死亡事案について(報告)

文書2 令和元年付け出入国在留管理庁出入国管理部警備課作成文書

文書3 令和元年付け出入国在留管理庁出入国管理部警備課起案文書「大村入国管理センターにおける被収容者死亡事案に関する調査結果報告書及び同概要資料の作成について」



別表1

番号

不開示とした部分

不開示とした理由

文書1

1頁ないし13頁,19頁,20頁,22頁ないし25頁,28頁,30頁,31頁のそれぞれ一部

個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであり,法5条1号に該当するため不開示とした。

文書2

1頁ないし3頁のそれぞれ一部

文書1

8頁の一部

法人に関する情報であって,公にすることにより,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当するため不開示とした。

文書1

7頁,8頁のそれぞれ一部

外交に関する情報であって,公にすることにより,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とした。

文書2

1頁ないし12頁のそれぞれ一部

収容施設の設備,構造及び当局の保安・警備体制等が記録されており,公にすることにより,当該体制等が明らかとなり,公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることに加え,退去強制事務に関する事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条4号及び6号柱書きに該当するため不開示とした。

文書1

全ての頁のそれぞれ一部

本件事案に関する調査内容及び内部で検討した事項が記録されており,これは国の機関が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるおそれに加え,退去強制手続に係る事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条5号及び6号柱書きに該当するため不開示とした。

文書2

全ての頁のそれぞれ一部

文書3

1頁の一部

文書3

1頁の一部

出入国在留管理庁の非公開の内線番号が記録されており,これらは国の機関が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,なりすましによる照会のほか,いたずらや偽計等に使用されることで,国の機関が必要とする際の緊急の連絡に支障を来すなど,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条6号柱書きに該当するため不開示とした。



別表2(諮問庁が新たに開示する部分)


該当文書

該当箇所

開示する部分

文書1

1頁 2行目

「年」と「月」の間及び「月」と「日」の間

6頁 15行目

「隊員」と「名」の間

7頁 7行目

(3)の1文字目

文書2

1頁 1行目

「年」と「月」の間及び「月」と「日」の間

1頁 1項4行目

「日(」と「歳)」の間の1文字目