諮問庁 法務大臣
諮問日 令和 4年 1月17日(令和4年(行情)諮問第26号)
答申日 令和 4年 5月26日(令和4年度(行情)答申第37号)
事件名 特定日に特定個人が提出した3類集会菓子用マークシート等(特定刑事施設保有)の不開示決定(存否応答拒否)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

別紙の1に掲げる4文書(以下,順に「文書1」ないし「文書4」といい,併せて「本件対象文書」という。)につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和3年3月18日付け東管発第1353号により東京矯正管区長(以下「処分庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)のうち,不開示決定になった本件対象文書について,これを取り消し,開示する事を求める。


2 審査請求の理由

審査請求人の主張する審査請求の理由の要旨は,審査請求書及び意見書によると,おおむね以下のとおりである。

(1)審査請求書

 別紙の2のとおり。


(2)意見書

 別紙の3のとおり。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 本件審査請求は,審査請求人が処分庁に対し,令和2年12月28日受付行政文書開示請求書により,本件対象文書を含む複数の行政文書の開示請求を行い,これを受けた処分庁が,令和3年3月18日付けで,その存否を答えるだけで,法5条1号に規定される不開示とすべき情報(以下,第3において「本件存否情報」という。)が開示されるのと同様の結果が生じることから,法8条の規定により本件開示請求を拒否し,原処分を行ったことに対するものであり,審査請求人は,原処分を取り消し,本件対象文書の開示を求めていることから,以下,本件対象文書の同条該当性について検討する。


2 本件対象文書の法8条該当性について

(1)法8条の規定は,「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当該行政文書の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。」としている。

   また,法が定める開示請求制度は,何人に対しても,請求の目的のいかんを問わず開示請求を認めるものであることから,開示又は不開示の判断に当たっては,本人からの自己情報についての開示請求である場合も含め,開示請求者が誰であるか考慮せず,たとえ本人からの開示請求であっても,特定の個人が識別される情報については,不開示情報として取り扱うべきものである。


(2)本件対象文書については,その存否を答えるだけで,本件存否情報が開示されることとなる。


(3)本件存否情報は,法5条1号に規定される個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であると認められる。

次に,同号ただし書該当性について検討すると,本件存否情報を広く一般に公にする制度ないし実態があるものとは認められず,また,そのような性質を有するものとは考えられないことから,同号ただし書イに該当しないものと認められる。さらに,本件存否情報は,人の生命,健康,生活又は財産を保護するために,何人に対しても開示することが必要な情報であるとは考えられないことから,同号ただし書ロに該当する事情も認められず,同号ただし書ハに該当するとすべき事情も存しないものと認められる。


3 以上のことから,本件対象文書については,その存否を答えるだけで,法5条1号の規定により不開示とすべき特定の個人に関する情報を開示することとなるから,法8条の規定により本件開示請求を拒否し,不開示とした原処分は妥当である


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 令和4年1月17日  諮問の受理

   ② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同年2月17日    審査請求人から意見書を収受

   ④ 同年4月15日    審議

   ⑤ 同年5月20日    審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書を含む複数の文書の開示を求めるものであるところ,処分庁は,本件対象文書の存否を答えるだけで,法5条1号の規定により不開示とすべき情報が開示されるのと同様の結果が生じるため,法8条の規定に該当するとして不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,原処分の取消し等を求めているところ,諮問庁は,原処分は妥当であるとしていることから,以下,本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について検討する。


2 本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について

(1)本件対象文書は,特定の個人が特定刑事施設に収容されている又は収容されていたという事実を前提として作成されるものであると認められるから,本件対象文書の存否を答えることは,特定個人が特定刑事施設に収容されている又は収容されていたという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)が開示されるのと同様の結果を生じさせるものと認められる。


(2)そして,本件存否情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものと認められることから,法5条1号本文前段に該当する。

次に,法5条1号ただし書該当性について検討すると,本件存否情報は,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは認められないため,同号ただし書イには該当せず,同号ただし書ハに該当する事情も認められない。

審査請求人は,意見書(別紙の3を指す。以下同じ。)(5)イにおいて,「「報奨金」は,私の「財産」に他ならない。その「財産」を返却,「保護」するため,本件対象文書を開示の上で閲覧することは,必要不可欠であり,これを「不開示」とするなら,私の「財産」を「保護」する方法はなくなる」などとして,法5条1号ただし書ロに該当する旨主張しているが,本件対象文書について,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,何人に対しても公にすることが必要な情報であるとする特段の事情があるとは認められず,他に同号ただし書ロに該当する事情も認められない。


(3)以上によれば,本件対象文書の存否を答えるだけで,法5条1号の不開示情報を開示することとなるため,法8条の規定により,本件対象文書の存否を明らかにしないで,本件開示請求を拒否すべきものと認められる。


3 審査請求人のその他の主張について

(1)審査請求人は,審査請求書(別紙の2を指す。以下同じ。)において,本件対象文書に記載されている個人情報が審査請求人本人のものであるとして「今更,「不開示」としても「守られるべき個人情報」はない」などと主張しているが,法は,何人にも等しく情報の開示請求権を認めるものであり,開示・不開示の判断に当たっては,請求の目的及び開示請求者が誰であるかは考慮されないものであるから,審査請求人の上記主張を採用することはできない。


(2)また,審査請求人は,審査請求書及び意見書において,法7条に基づく裁量的開示を求めていると解されるが,本件対象文書につき,その存否を明らかにしないで本件開示請求を拒否すべきものと認められる本件においては,同条は適用できない。


(3)審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 本件一部開示決定の妥当性について

  以上のことから,本件対象文書につき,その存否を答えるだけで開示することとなる情報は法5条1号に該当するとして,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号に該当すると認められるので,妥当であると判断した。


(第1部会)

  委員 合田悦三,委員 木村琢麿,委員 中村真由美





別紙

1(本件対象文書)

文書1 特定年月日Aに請求者(開示請求者を指す。以下同じ。)が提出した3類集会菓子用マークシート

文書2 特定年月Aから特定年月Bまでに請求者が提出した領置金・報奨金による日用品購入用マークシート

文書3 特定年月Aから本件請求日(令和2年12月28日)現在までの請求者の報奨金の出納記録

文書4 特定年月日Aの特定刑事施設特定棟特定階職務日報等職務内容(いつ,誰が,どこで請求者に菓子を交付したのか)が記録された文書


2(審査請求書)

最初に請求に至る経緯について。

私(審査請求人を指す。以下同じ。)は,現在,特定刑事施設に収容されております。特定年月A,私は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)89条及び同規則(以下「刑事収容施設規則」という。)53条,54条に定める優遇区分第三類」に指定されていました。

そこで,私は,この法令の定めのとおり,特定年月A分の「嗜好品」(菓子約○円分)を購入する機会を求めたにもかかわらず特定刑事施設は,法令に反し,これを認めなかった。

特定年月日B,私は,職員に対し,上記扱いは,法令に反する扱いであり「法令に基づき不服申立を行う」,「日弁連に人権救済申立を行う」と訴え出た所,同日,私が「特定年月A分の嗜好品を購入,交付した事になっている」と職員に言われた。(約○円分)

しかも,この金額は,既に私の「報奨金」(刑務作業の対価として,支給される出所後の準備金)より,勝手に差し引かれているとの事。

私は「購入」も,「交付」もされていない物品の為なぜ,勝手に預けてある金銭が差し引かれているのか,その事実関係を明らかにするべく,間違いゆえ,返金願うべく,職員に相談したが,「特定年月A分嗜好品用購入品マークシート」の申込欄(特定年月日Cとの事)と受領欄(特定年月日Aとの事)には,私自身の指印による「印」があるとの事。

そこで,私はその購入用マークシートの「原本」も見せるよう求めた。(コピーでは「加工・改ざん」可能ゆえ)

しかし,施設側からは,法に基づき「情報公開」するよう言われた為,令和2年12月29日付で情報公開請求するに至った。(東京矯正管区情報公開窓口あて)

「購入用マークシート」は,「嗜好品」のみならず,「日用品」等にも使用されている事から,仮に「原本」に指印(私の指印とは確認不可だが)ある場合,私が「実際に購入した日用品用のマークシート」と「購入機会の無かった嗜好品用マークシート」と「誤認」の上で印をした可能性も否定出来ない事から,以下文書の開示請求を行った。

①特定年月日A交付の嗜好品用(菓子)マークシート(原本)

②特定年月A以後,特定年月Bまでに交付を受けた日用品マークシート(原本)

③特定年月Aから,請求日までの私の報奨金出納記録

④特定年月日A,私が収容されている特定棟特定階の職員日報等の記録。(いつ誰がどこで私に菓子を交付したのか)

 上記①ないし④以外に事実を明らかにすべく,3点(合計7点を開示請求)開示請求したが,3点については,「一部」の開示決定とされた。

 令和2年12月24日付,請求に対し,東京矯正管区情報公開窓口は,同月28日付及び令和3年2月22日付「求補正書」を私あてに送付し,その書面上で「上記①ないし④の書面は,法8条及び5条より,不開示になる」との見解を記していた。

一方,私は,令和2年12月31日付け及び令和3年3月1日付「補正書」,「補正書(2)」において,「法8条(グローマー拒否)」は,通常,存否不明な文書について,行政がその存在を明らかにする事が,文書開示(5条の不開示情報)につながる場合(「同様の効果」をもたらす場合)に適用されるのであり(「特定書籍」),本件では「開示請求文書」(特に「購入用マークシート」は,自身で申込印,受領印を押印する建前上)の「存在」は既に明らかである以上,法8条適用の「前提」を欠くと記載した。

今更,「不開示」としても「守られるべき個人情報」は無いのである。

更に,法5条には,「不開示情報」とともに「例外的開示事由」(法5条1号イないしハ等)が列挙されており,本件,文書開示請求は,不当に侵害された私の「財産」を保護するべく請求している事から見ても明らかに例外的開示事由に該当するから,これを開示するように求めたが,法8条及び5条を理由に「不開示決定」された。

 この「不開示」は,法解釈の適用を誤っており,本件の一連の特定刑事施設の対応は場合により,虚偽公文書作成,同行使,横領,証拠隠滅,犯人隠避罪等の刑法犯に該当する可能性は否定出来ず,その場合,私は,特定地検に刑事告訴をする予定である。(「補正書」にも記載)

この点から,「公益上の理由」もある。

本件は,施設全体の収容者の金銭管理にかかわる「重大な」問題であるから開示を求める。


3(意見書)

(1)開示請求に至る経緯(本件開示請求書)

私は,現在特定刑事施設に収容されておりますところ,特定年月A,「優遇区分第三類」に指定されていたにも拘わらず「刑事収容施設規則54条3項2号」に定める1か月に1回以上の嗜好品を購入する機会を与えられなかった。「嗜好品は約○円分の菓子」となる。私達収容者にとって,1か月に1回の菓子を購入する機会は「貴重」であり,私が生活する居室の担当職員に「購入の機会はないのか?」と問い合わせたが,「どうなっているんだろうな」等,「うやむや」のまま特定年月Aは過ぎた。

私が収容された居室は,基本的に「移送者」が生活する部門であった事から,私は移送措置との関係で,「ここに収容されている時は,購入出来ないのだろう」と考え,約半年が過ぎた。

特定年月Bに入り,私の居室近くで,購入した菓子を交付されている者がおり,それを知った私は,居室担当職員に対し,「なぜ,私は,特定年月Aに購入出来なかったのか」,「刑事収容施設法89条及び同規則54条3項2号に反する処遇ではないか」を訴えた。(特定年月日B)

職員は最初「記憶にない,こっちのミスかも」と言い,頭をかしげていたが,20分程後に再度,私の居室に来た職員は,「特定年月日Aに実施された集会で菓子を購入,交付している事になっている」と言った。

収容者が使用出来る金銭は,2種類あり,①預置金と②報奨金がある。①は,入所時所持していたもの,差し入れによるものであり,②は刑務作業により,施設側より収容者に支払われる金銭であり,今回は②から支払われているとの事。

これに対し,私は特定年月日D付「相談願」という所定の用紙を施設に提出し,事実関係を調べるように求めた。

当日に,担当主任より対応があり,その際,今回開示請求している「3類集会菓子用マークシート」(文書1)の「写し」を見せられたところ,「申込日」とされる「特定年月日C」に,更に「交付日」とされる「特定年月日A」に指印が押されていた。

これに対し,私は,「写し」では加工・改ざん可能ゆえ,「原本」の閲覧,更に,菓子用と日用品用マークシートは別々であり,私が「誤認」の上,押した可能性もあり,その場合,印が無い日用品用マークシートの存在が考えられるから,「特定年月Aから開示請求日までの日用品用マークシート全て」(報奨金購入・預置金購入)その他,本件事実関係を明らかにする上で必要不可欠と思われる公文書原本の閲覧を求めたが,特定年月日Eに主任より,「開示不可」と対応された為,令和2年12月24日付で「開示請求書」を所管の東京矯正管区情報公開窓口に送付するに至った。

尚,日用品,菓子購入用マークシートについて,以下,説明します。

当施設のみならず,上記物品を購入する際は,所定の購入用マークシートに自身で記入(日付・氏名等),商品コードをマークの上で施設に提出する。

提出する際,申込欄に指印,購入品を受領する時に受領欄に,その日付と指印を押す。

以上の様に,「購入用マークシート」は存否不明の文書でなく,自身で作成・提出するものであり,文書の存在は自ずから明らかである。

(2)開示の必要性

ア なぜ購入・交付されていない物品金額が私の報奨金から引かれているのか,その経緯を知り,間違いを明らかにし,「財産」である金銭を返してもらう為。

イ 意図的に物品を窃盗,横領あるいは公文書を「改ざん」していた場合,窃盗,横領,虚偽公文書作成,公用文書毀棄罪等の刑法犯に該当し,その場合,「告訴」を検討しており,本件開示請求公文書は,犯罪事実を特定する上で,必要不可欠である。

ウ 報奨金から金銭が引かれ,その事実確認をする為の公文書の不開示について,私は,日本弁護士連合会に「財産権の侵害」として人権救済申立を行い,これが受理され,現在,審査を担当している特定弁護士会に事実関係を,追って説明する必要がある為。

(3)情報公開制度について

この制度は「知る権利」の実現手段として位置付けられ,「知る権利」は「表現の自由」(憲法21条)を情報の受け手側からとらえた憲法上の権利である。

これを具体的請求権として法制化したのが法である。

民主主義国家である以上,「表現の自由」の言わば「核心」である「自己統治」が認められる為には,行政が国民に,その説明責任を果たす事が必要不可欠な前提なのであり,それゆえ法は制定されるに至った。(法1条)

判例も「法は,文書が存在しないか,文書の中に不開示情報がある場合を除き,行政機関の長は開示決定を行わなければならない」(最判平成19年4月17日及び東京高判平成23年9月29日など)と判旨している。

以上,法制度の趣旨を踏まえ,以下各条文について検討,意見を申立てる。

(4)法8条

   同条はいわゆる「グローマー拒否」を認めた条文である。

  同条の趣旨は,開示請求公文書の存否が開示請求者側に不明の場合,行政機関の長がその存否を明らかにする事が5条の「不開示情報」を開示するのと同様の効果となる場合において,公文書の存否を明らかにさせるならば,5条の存在が無意味,骨抜きとなる事から,例外的に文書不開示を認めたものである。

諮問庁作成の「理由説明書」(本文の第3を指す。以下同じ。)の「文書1」~「文書4」(本件対象文書)が,これに該当するのか。

「文書1」及び「文書2」については,上記(1)のとおり,「購入用マークシート」は,自身で記入(「商品コードのマーク」「日付」,「氏名」,「配役工場」,「称呼番号」,「指印」)の上,提出するものであり,既にその文書の存在は,自ずから明らかである。(それゆえ文書を「特定」)

元々が私自身による記入である以上,これを開示した所で,法8条が想定する「不開示情報」(法5条)を開示するのと同様の効果が生じることにはならない。

つまり,法8条適用の「前提」を欠いている。この様に解さなければ,「購入用マークシート」のごく一部に「名前」(個人識別情報)があるだけで「全面不開示」を認める事になり,法6条(部分開示)の適用場面すら奪う事も可能になる。

「文書3」及び「文書4」についても,その存在は以下のとおり,既に明らかゆえ,開示請求した。

特定年月日D付及び特定年月日F付け「相談願」に対応した,担当主任との面接時,会話の中で当該書面存在をうかがい知る事ができたからこそ,私は,開示請求文書と「特定」できたのである。

以上から,文書の内容そのものを知っている「文書1」及び「文書2」に法8条を適用する事,又「文書3」及び「文書4」についても,通常,「公文書」は行政機関が保有しており,開示請求者にとって,文書の「特定」は,困難である事,まして,内容を知っている事はありえない。(知っていれば「文書1」及び「文書2」と同様,法8条適用の前提が無い)

にも拘わらず,文書の一部に「不開示情報」(5条)が記載されているとの理由で法8条を適用の上,全面不開示を認めるならば,部分開示(6条)の機会すら奪う事につながり,行政の恣意的運用も可能になり,ひいては上記「情報公開制度の趣旨」すら骨抜きとなる。

従って,本件に8条の適用は不当である。

(5)法5条1号

ア 但書イ

   「文書1」及び「文書2」については,前記のとおり購入用マークシートが購入希望者に配布され,収容者自身が記入,押印の上,提出するものであり,その限りにおいて,「公」にされている情報と言える。

そもそも,但書イが個人情報にも拘わらず例外的に開示すべき規定がされたのは,開示情報が1号(個人情報)に該当する場合であっても,個別・具体的状況下において,その情報が,但書イに該当する場合であれば,なお,個人の権利利益を害するおそれが認められない為,情報公開制度趣旨から「原則どおり」に開示すべき事を定めた事に他ならない。

この点からも,「文書1」及び「文書2」を但書イに該当しないと不開示にするのは不当であり,更に,諮問庁「理由説明書」2(3)のごとく「本件存否情報を広く一般に」などと,勝手に「要件」をつけ加え,但書イを限定的に解釈するのは,情報公開制度趣旨から解しても妥当でなく,一行政機関にすぎない法務省が法律上認められた制度に「限定」を加える事は,国会の立法権を侵害するものであり,この点からも不当,不法,ひいては三権分立の否定であり,違憲である。(憲法41条)

イ 但書ロ

そもそも,本件文書開示請求の目的は,前記のとおり,受領していない物品金額を返却する事にある。

「報奨金」は,私の「財産」に他ならない。その「財産」を返却,「保護」する為,本件対象文書(文書1ないし文書4)を開示の上で閲覧する事は,必要不可欠であり,これを「不開示」とするなら,私の「財産」を「保護」する方法は無くなる。

この点,「理由説明書」2(3)は,但書ロについて「何人に対しても開示することが必要な情報であるとは考えられない」と記すが,「何人に対しても」などと,勝手に「要件」を付け加え,限定的解釈をするのは,上記但書イ同様,「情報公開制度趣旨」及び「国会の立法権侵害」の観点から,不当である。

更に,「必要な情報」か否かの判断は,「客観的見地」からなされるべきであり,本件のごとく,その判断を全て公文書保有機関に委ねるならば,公文書開示の可否判断を事実上,公文書保有機関の恣意的判断に委ねる事と同様になり,情報公開制度の趣旨からも不当である。

以上から,本件対象文書は,但書ロに該当する事は明らかであり,不開示は不当である。

ウ 但書ハ

「文書3」,とりわけ,「文書4」については,「一義的に」職務遂行情報である事は明らかである。

エ 以上のとおり,本件対象文書について,法5条1号但書に該当するにも拘わらず,全面不開示とするのは不当である。

(6)法6条

  私は,令和2年12月31日付「補正書」において,「全面開示」出来ない場合,法6条により,「部分開示」を求めている。

  「文書1」及び「文書2」については,「氏名」等,「個人情報」のみ除外して開示する事は「容易」である。

  更に「文書3」及び「文書4」についても,法6条2項により,部分開示すべきである。

  仮に,「全面開示」が認められなくとも,請求者が「部分開示」を求めているにも拘わらず何らの理由も示さずにこれを全面不開示とする事は,法6条の存在意義を失わせ,情報公開制度の趣旨に反する「違法な不開示」に他ならない。

(7)法7条

  本件文書開示の理由は上記のとおりであり,その「必要性」については,上記(2)のとおりである。

この点から,私は裁量的開示を求めている。

「財産を保護する事」,「刑法犯に該当すると認められる場合は刑事告訴をする事」は,「公益上」の理由に該当するからである。

(8)令和2年12月24日付「開示請求書」及び同月31日付「補正書」にて,以上を主張,開示を求めているにも拘わらず,「原本」どころか「複写」すら認めず。「全面開示」どころか「部分開示」もしない。以上の点を検討する事も無く,とりわけ,法6条及び7条については,理由の説明も無い。

本意見書にて,以上まで各条文について具体的に検討してきたとおり,処分庁の全面不開示処分は,不当かつ違法である。

仮に,本件のごとき全面不開示が認められるのであれば,法は「骨抜き」となり,ひいては,情報公開制度の存在意義を否定する事につながる。

以上から請求人は,原処分の取消しを求める。