諮問庁 防衛大臣
諮問日 令和 2年12月 4日(令和2年(行情)諮問第662号)
答申日 令和 3年12月 2日(令和3年度(行情)答申第390号)
事件名 内部部局の「ファイルサーバの共有フォルダ」につづられている文書の不開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

「防衛省内部部局の「ファイルサーバの共有フォルダ」(サブフォルダも含む)に綴られている文書の全て。」(以下「本件対象文書」という。)につき,開示請求に形式上の不備があるとして不開示とした決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成31年2月28日付け防官文第3240号により防衛大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。


2 審査請求の理由

審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書の記載によると,おおむね以下のとおりである(なお,意見書及びその添付資料の内容は省略する。)。

本件請求に対して処分庁は,形式的不備をなしている箇所について具体的なご指摘ができず,かつ審査請求人が行政手続法35条に基づく「書面の交付」を求めたにも関わらず,これを行っていないので,違法な処分である。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 経緯

  本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであるが,行政文書開示請求書の記載では行政文書の特定が困難であったことから,審査請求人に対し,行政文書を特定するに足りる事項の記載を求めたところ,審査請求人がこれに応じなかったため,法9条2項の規定に基づき,平成31年2月28日付け防官文第3240号により,形式不備による不開示決定処分(原処分)を行った。

本件審査請求は,原処分に対して提起されたものである。

なお,本件審査請求について,審査請求が提起されてから情報公開・個人情報保護審査会への諮問を行うまでに約1年8か月を要しているが,その間多数の開示請求に加え,開示請求の件数を大幅に上回る大量の審査請求が提起され,それらにも対応しており,諮問を行うまでに長期間を要したものである。


2 本件開示請求に対する補正について

   本件開示請求は,行政文書開示請求書に記載された情報だけでは対象文書の特定が困難であったことから,請求内容の「防衛省内部部局の「ファイルサーバの共有フォルダ」(サブフォルダも含む)に綴られている文書」とは具体的にどのような文書を想定しているのか,対象文書を特定するに足りる事項の提供を求めて,平成31年2月4日付けで補正を求めたところ,同月5日付けで「ア 本件お問い合わせは,行政手続法第7条に基づく補正の求めでしょうか。イ 仮に行政手続法第7条に基づく補正の求めであれば,行政手続法第35条に基づく「書面の交付」を求める次第でございます。ウ 情報公開法第4条に基づき,補正の参考となる情報の提供をお願い申し上げます。」との回答があったため,同日付けで,現状の請求内容では,行政文書を特定するに足りる事項の記載が不十分であり,参考情報を教示するに足りる事項についても記載が不十分であることから,具体的にどのような文書を想定しているのか,再度,補正を求めたところ,同月6日付けで「以下の3点につきまして貴室も同意戴けますなら,このまま手続きをお進めください。① 2月4日付け及び2月5日付けFAXの内容は,行政手続法第7条に基づく補正の求めではない。② 行政手続法第7条に基づく補正の求めを行っていないので,行政手続法第35条に基づく「書面の交付」は行わない。③ 情報公開法第4条に基づき,補正の参考となる情報として提供できるものはない。」との回答があったため,形式不備により原処分を行った。


3 審査請求人の主張について

審査請求人は,上記第2の2のとおり主張して,原処分の取消しを求めるが,上記2のとおり,対象文書を特定するに足りる事項の提供を求めたところ,審査請求人がこれに応じなかったことから,形式不備により不開示としたものである。

よって,審査請求人の主張には理由がなく,原処分を維持することが妥当である。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 令和2年12月4日  諮問の受理

   ② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同月25日      審査請求人から意見書を収受

   ④ 令和3年10月28日 審議

   ⑤ 同年11月25日   審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであるところ,処分庁は,形式上の不備(対象文書の不特定)があり,補正を求めたが,補正されなかったとして不開示の原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,原処分の取消しを求めているが,諮問庁は,原処分は妥当であるとしていることから,以下,原処分の妥当性について検討する。


2 原処分の妥当性について

(1)諮問庁は原処分の妥当性について,上記第3の2及び3のとおり説明する上,当審査会事務局職員をして諮問庁に更に確認させたところ,以下のとおり説明する。

ア 本件対象文書の文言及び開示請求書添付資料からは,行政文書の個別具体的な名称や記録されている情報の概要,年月日その他開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項が記載されているとは認められず,当該請求文言から開示請求者が求める行政文書を他の行政文書と識別することができないと考えた。


イ 防衛省内部部局の各部署において所掌する業務は広範多岐にわたり,省外から取得する文書を含めて多種多様な行政文書を保有しており,本件開示請求書の記載内容では,具体的に省内のどの部署が対象文書を保有している可能性があるのかを正確に判断することはできず,仮に,文書を探索するとしても,開示請求時点に防衛省内部部局の全ての部署の使用しているファイルサーバの共有フォルダに含まれる全ての行政文書の内容を逐一確認しなければならないなど,防衛省の行政事務の遂行に著しい支障が生じることから,開示請求に係る行政文書を具体的に特定することができない形式上の不備があると判断した。


ウ そこで,処分庁は,開示請求者は,防衛省内部部局の所掌する何らかの業務に関する情報の公開を求めているものと解し,具体的にどのような業務に関する文書を想定しているのか確認するため,問合せを行った。


エ 開示請求者からの返答は上記第3の2のとおりであったところ,処分庁は,防衛省内部部局の所掌する業務は広範多岐にわたるため,参考情報を提供するに当たっても,開示請求時点で防衛省内部部局の全ての部署の使用しているファイルサーバの共有フォルダに含まれる全ての行政文書の内容を逐一確認して参考情報を開示請求者に提供する必要が生じるなど,防衛省の行政事務の遂行に著しい支障が生じることから,開示請求書及び開示請求書添付資料並びに開示請求者からの返答をもってしても,上記イと同様の開示請求に係る文書を具体的に特定することができない形式上の不備が続いていると判断した。

そのため,参考情報を提供するに足りる事項を含め,具体的にどのような文書を想定しているのか,再度教示を求めた。


オ 上記エに対する開示請求者からの返答は上記第3の2のとおりであったところ,処分庁は,開示請求者からの返答が質問に対する答えとはなっておらず,具体的にどのような文書を想定しているのか回答を得られる見込みがなかったことから,原処分を行った。


(2)形式上の不備の有無について

ア 開示請求書に記載を求められる「行政文書を特定するに足りる事項」(法4条1項2号)は,行政機関の職員が,当該記載から開示請求者が求める行政文書を他の行政文書と識別できる程度の記載を要するものと解される。


イ 本件対象文書は,「防衛省内部部局の「ファイルサーバの共有フォルダ」(サブフォルダも含む)」内の文書の全てをその対象としているが,防衛省内部部局の取り扱う業務には多種多様な内容があり,「防衛省内部部局の「ファイルサーバの共有フォルダ」(サブフォルダも含む)」には多様な行政文書が含まれているものと認められる。

そうすると,本件対象文書のように,文書の具体的な分野,作成時期等が特定されていない記載では,開示請求者が求める行政文書を他の行政文書と識別することができず,開示請求時点で防衛省内部部局の全ての部署の使用しているファイルサーバの共有フォルダに含まれる全ての行政文書の内容を逐一確認しなければならないなど,防衛省の行政事務の遂行に著しい支障が生じるとする諮問庁の上記(1)ア,イ及びエの説明は否定し難い。


ウ したがって,上記「行政文書を特定するに足りる事項」の記載としては,開示請求者は,少なくとも,請求する行政文書のより具体的な分野を特定する等により,開示を求める文書自体を識別し得る事項を明らかにする必要があると解すべきであり,本件開示請求は,いかなる文書の開示を求めるのかを識別し得る事項が示されていないから,請求の対象となる文書の特定が不十分という形式上の不備があると認められる。


(3)求補正の経緯等について

    当審査会において,諮問書に添付された補正に係る各文書を確認したところ,その内容は上記第3の2の諮問庁の説明のとおりと認められ,その手続は,本件においては,法4条2項の規定の趣旨に照らして特段不適切な点があるとは認められない。


(4)したがって,本件開示請求には形式上の不備があると認められ,処分庁による求補正によっても当該不備は補正されず,開示請求の対象となる文書を特定することができなかったことから,処分庁が本件開示請求に形式上の不備があることを理由に原処分を行ったことは妥当である。


3 審査請求人のその他の主張について

審査請求人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 本件不開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,開示請求に形式上の不備があるとして不開示とした決定については,開示請求に行政文書の不特定という形式上の不備があると認められるので,不開示としたことは妥当であると判断した。


(第4部会)

委員 小林昭彦,委員 塩入みほも,委員 常岡孝好