| 諮問庁 | : | 内閣総理大臣 |
| 諮問日 | : | 令和 2年 7月 6日(令和2年(行情)諮問第360号) |
| 答申日 | : | 令和 3年 4月19日(令和3年度(行情)答申第12号) |
| 事件名 | : | 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が行った特定職員に対するヒアリングの聴取結果書に係る録音データの不開示決定に関する件 |
| 第1 | 審査会の結論 |
別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定は,妥当である。
| 第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 審査請求の趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和2年1月24日付け府政原防第34号により内閣府政策統括官(原子力防災担当)(以下「内閣府政策統括官」又は「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)を取り消し,開示決定又は一部開示決定を出すよう求める(処分の取り消しと変更)。
2 審査請求の理由
審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書及び意見書によると,おおむね以下のとおりである(URLの内容は省略する。)。
(1)審査請求書
ア 請求人の主張
東京電力福島第一原発事故では10万人以上の人たちが避難したほか,首都圏でも局所的に放射能汚染された「ホットスポット」ができた。「原発事故がひとたび起きると,多くの人たちの生活に影響する」という実感を広めたのが福島原発事故だった。
私たち日本国民に求められるのは,深刻な影響をもたらしかねない原発事故に対し,「備え」を強めることである。そのためには「福島原発事故の際にどう対応したか」「何を学び取るべきか」を考え,具体的な備えを強めることが必要になる。
原発事故に伴う放射能汚染は,原子力災害特有の被害であり,除染や被ばく測定,安定ヨウ素剤の投与など,台風や土砂崩れ,地震といった自然災害にはない独自の医療的対応が必要になる。ただ,原子力災害は自然災害と比べて発生がまれなため,行政,専門家,国民ともども「実際の対応で何が課題になるか」「どう工夫したらよいか」を実体験として学ぶ機会が極めて乏しい。
こうした点を考えると,「原発事故対応でも特に重要な医療的対応に関する貴重な実体験」を知り,次の事故に備えるには,福島原発事故の医療的な対応を学ぶ必要があると考える。請求人自身としては,報道機関の一員として当時の経験を周知し,多くの人たちとともに「どう備えたらよいか」を考える機会をつくる責務があると考えている。
福島原発事故の医療的な対応で重要な役割を担ったのは,内閣府原子力安全委員会である。事故前には「緊急被ばく医療のあり方について」などの指針類をまとめ,事故発生後は防災基本計画に沿い,事故対応の中枢を担った政府の原子力災害対策本部に対して医療的な対応について助言した。
その原子力安全委員会の事務局で特定課特定役職だった特定職員は,事務局内で医療的な対応を担った中心人物の一人である。
福島原発事故の対応について検証した政府事故調は特定職員にヒアリングし,当時の医療的な対応について聞き取りをしている。その聴取結果書は政府事故調の事務局員がまとめた上,内閣府がホームページ上で公表している。それを読めば,特定職員が原子力安全委員会の委員と他機関の協識などが円滑に進むよう,混乱の中でも尽力していた様子がうかがえる(URL)。
こうした点を踏まえると,原発事故の対応の中でも特に重要な医療的な対応について,特定職員は重要機関で重要な役割を果たしたと言える。その意味では,特定職員の経験は非常に貴重で,政府事故調による特定職員のヒアリングの記録は「重要な医療的対応でどんな課題が生じたか」「何を学び取るべきなのか」を考える材料になると言える。
先に触れた通り,特定職員に対して政府事故調が行ったヒアリングの聴取結果書は,内閣府のホームページで公表されている。これを読む限り,ヒアリング結果の要点をまとめ,政府事故調が中間報告や最終報告を作成する上で引用しやすいようにしたのが,この聴取結果書と言える。
惜しむらくは,貴重な経験をした特定職員に1時間もヒアリングしているにもかかわらず,聴取結果書の本文は2ページのみと少ない点である。
聴取結果書は要点を抜粋しているとは推認されるものの,請求人はより詳しく,より正確に特定職員の貴重な経験を知り,広く伝えたいと考え,政府事故調のヒアリングを録音したデータの開示を求めるに至った。
法に照らせば,特定職員の録音データは以下の点から全部開示,または一部開示するのが適当と考える。
法5条は行政文書の原則開示の方針を示しているため,特定職員の録音データは開示を前提に検討すべきである。
録音データの中には公表済みの聴取結果書に掲載された情報も含まれていると考えられるため,法5条1号イ(「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」は開示)を踏まえ,特定職員の録音データの中で少なくとも公表済みの情報に関しては開示が必要になると考える。
特定職員の録音データには,原子力災害時の医療的対応について福島の教訓を学び取り,次の事故に備えることができる情報が含まれると考えられる。そのため,法5条1号ロ(「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」は開示),又は7条(不開示情報が記録されている場合であっても,公益上特に必要があると認めるときは,開示請求者に対し,当該行政文書を開示することができる)を踏まえ,相当部分を開示すべきだと考える。
イ 内閣府政策統括官の主張
内閣府政策統括官は,行政文書不開示決定通知書の「不開示とした理由」の最後で,「本件録音データは法5条5号及び6号柱書き所定の不開示情報に該当する」と記す。
つまり,5号にある「公にすることで国民の混乱を生じさせ,又は特定の者に不当に利益を与えるおそれがある」,6号の「事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがある」に該当するという趣旨と理解する。
ただ,そうした記述よりも前に書かれた20行ほどの文章は,非常に分かりづらい。5号や6号に該当する理由が書かれていると推認するが,5号の該当理由が20行のうちのどの部分なのか,6号の理由がどの部分なのか分からない。
内閣府政策統括官は審査請求を受けた後,審査庁に諮問し,理由説明書を提出することになると思うが,その際には該当理由を明確にしていただきたい。
請求人はそれに先駆け,内閣府政策統括官の主張を整理した上,それらについて不開示の理由がないことを指摘する。理由説明書の提示を受けた後,修正することもありうる。以下,まずは内閣府政策統括官の主張について整理する。
内閣府政策統括官が請求人に交付した行政文書不開示決定通知書を読む限り,特定職員の録音データが法5条5号(「公にすることで国民の混乱を生じさせ,又は特定の者に不当に利益を与えるおそれがある」),6号(「事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがある」)に該当する理由として主張するのは,次の5点と言える。
(ア)政府事故調によるヒアリングの結果は,政府事故調の報告書に要点を引用する場合を除き,公にしない前提
(イ)ヒアリングは,責任追及のために使用しないことを前提に行われた
(ウ)録音データは性格や身体状態などのプライバシーに影響を及ぼす情報も記録されている
(エ)録音データを被聴取者の意思に反して公にした場合,国の調査手法に対する信頼が失われ,同様のヒアリングを将来行う際に支障を来す恐れがある
(オ)録音データは委員会内部における検討又は協議に関する情報であることから,公にした場合,不当に国民の間に混乱を生じさせる恐れがあるほか,被聴取者が嫌がらせや過度な取材を受けるなど,特定の者に不利益を及ぼす恐れがある
ウ 請求人による反論
(ア)ヒアリング結果の公表について
内閣府政策統括官は上記イ(ア)で触れたように,法に基づいて不開示にした理由として「政府事故調によるヒアリングの結果は,政府事故調の報告書に要点を引用する場合を除き,公にしない前提」と主張する。しかしこれは事実と異なっているため,不開示の理由として挙げることはできず,この理由から録音データを全面的に不開示にすることはできないと考える。
政府事故調は,2011年7月8日付で「ヒアリングの方法等について」という申合せ文書を出しており,「5 ヒアリング結果の使用等について」という項目を設けている(URL)。
この項目では,非公開で行った個々人のヒアリングの結果のうち,紙ベースの聴取結果書に関しては「必要な範囲で開示」と開示に前向きな姿勢を示しつつ,「供述者(※請求人註:ヒアリングの被聴取者)の特定につながる部分」「供述者が不開示を希望する部分」は不開示にすると記す。音声データに関しては「供述者の特定につながる」とした上,「供述者が不開示を希望する限り不開示」と記す。
政府はその後,より積極的に情報開示する姿勢を取るようになった。具体的には,供述者が開示に同意した聴取結果書に関しては,供述者の実名を記した分をホームページで公表した(URL)。その結果,前出の特定職員の聴取結果書がホームページで閲覧できるようになった。
つまり政府の現状の方針を整理すると,聴取結果書や録音データは「必要な範囲で開示」という基本方針を守りつつ,「供述者が不開示を希望する場合(部分)は不開示」という形になっている。現在の所管者である内閣府政策統括官が事実を歪め,「知る権利」を侵害する事態は厳に慎んでいただきたい。
(イ)「責任追及で使わず」について
内閣府政策統括官は上記イ(イ)で触れたように,法に基づいて不開示にした理由として「ヒアリングは,責任追及のために使用しないことを前提に行われた」と記す。「録音データを開示すれば責任追及に使われる」「そうなれば被聴取者との約束を反故にすることになる」「だから開示しない」という趣旨の主張と読み解くことができるが,こうした論理展開には飛躍があり,「責任追及には使わない」を理由に録音データを不開示にすることはできないと考える。
政府事故調の中間報告の3~4ページ目では,「当委員会は,責任追及を目的とした調査・検証は行わない」と記す。確かにここからは,政府事故調によるヒアリングや資料収集は,責任追及のために使用しないことを前提に行われたと読み取ることができる。
ただし,請求人が開示請求したのは,特定職員の貴重な経験を学ぶためであり,それは次の事故に備えるためである。
そもそも内閣府のホームページでは,特定職員の聴取結果書を公表している。特定職員に対するヒアリングの結果の中でも,特に重要な要点をまとめたのがこの聴取結果書と言える。しかしこの聴取結果書を見ても,何の責任がどの組織に生じるのか分からないため,責任追及にはつながらない。特に重要な要点をまとめた聴取結果書を見てもそうした状況なので,要点以外の部分を含む録音データを聞いても,責任追及につながることはない。
内閣府政策統括官は「録音データを開示すれば責任追及につながる」と主張するなら,責任追及につながる情報としてどんな情報が含まれているのか,具体的に例示しなければならないと考える。
(ウ)プライバシーに関する情報について
内閣府政策統括官は上記イ(ウ)で触れたように,法に基づいて不開示にした理由として「録音データは性格や身体状態などのプライバシーに影響を及ぼす情報も記録されている」と主張する。しかしプライバシーの視点から不開示にするのは妥当ではないと考える。
内閣府は自らのホームページで特定職員の実名入り聴取結果書を公表している。実名は「個人を特定できる究極のプライバシー情報の一つ」と言えるが,それでも開示している。つまり,内閣府自身が「プライバシーに影響を及ぼす情報だからと言って,全面的に不開示にすべきではない」という運用をしていることが分かる。
内閣府の運用に照らせば「プライバシーに影響を及ぼす情報も記録されている」「公にした場合,国の調査手法に対する信頼が失われる」「だから不開示にする」と短絡的に判断するのではなく,開示する部分と不開示にする部分を丁寧に判断することが必要と言える。
「録音データの開示がプライバシーに影響を及ぼすことがあるかもしれない」という視点で開示・判断する場合,具体的に検討することが必要なのが「開示することでどんな影響が生じるか」という点になる。
請求人は,声を開示してもそれほど大きな影響を及ぼさないと考える。
少なくとも究極の個人情報である実名を開示した時ほどの影響はないと言える。実名を開示できるなら,声も開示できると考える。
そもそも特定職員が事故後に勤務してきた原子力規制庁に電話し,特定職員につないでもらえば,特定職員の音声情報は簡単に入手できる。
また特定職員は,原子力規制委員会が公開の場で開く定例会合や臨時会合に事務方の説明者の一人として出席しており,公の場で自らの声を発しなければいけない立場にある(例えばURL)。原子力規制委員会の定例会合は動画で中継,録画配信されているため,特定職員が声を発すれば広く公開される形になっている。
以上の点を踏まえると,プライバシーの観点から特定職員の録音データの開示をためらう理由はないと考える。
内閣府政策統括官は「録音データ(声)は・・・声質から読み取れる性格や身体状態も記録」とし,それを開示した場合の影響の大きさを主張するが,そう訴えたいならまず,本当に声質から性格や身体状態まで読み取れるのか,その論拠を諮問時の理由説明書で明示すべきである。具体的には,特定職員の録音データから特定職員の性格や当時の身体状態を書き出し,本人や周囲に聞き取りをして,聞き取り内容と書き出した内容が一致するか確かめる必要がある。その上で,原子力規制委員会という公の場で声を発することもあり得るのに,それは不開示にしなくてよく,録音データは不開示にしなければならない理由を合理的に示さなければならないと考える。
(エ)「被聴取者の意思に反して」について
内閣府政策統括官は上記イ(エ)で触れたように,法に基づいて不開示にする理由として「録音データを被聴取者の意思に反して公にした場合~信頼が失われる」「将来支障を来す」と主張する。しかし内閣府政策統括官は,特定職員が不開示を希望していると記していない。内閣府政策統括官が「特定職員は不開示を希望している」と立証できない限り,「開示は特定職員の意思に反する行為」「そうしたら信頼が失われる」と言えず,この主張に基づいて不開示にすることはできないと考える。
内閣府のホームページで公表されている特定職員の聴取結果書を見ると,「第3 特記事項」の項目を含め,ヒアリングの結果(音声データを含む)の不開示を希望する旨は記されていない。この点から考えると,「特定職員が不開示を希望している」とは推察できない。むしろ,「開示を拒んでいる」という論拠が見当たらず,「開示は特定職員の意思に反する行為」「そうしたら信頼が失われる」と主張することは困難を極めることが推察される。
内閣府政策統括官が「請求人の開示請求を受けて開示すると,被聴取者の意思に反して公にすることになる」「そうなると信頼が損なわれる」「だから不開示にする」などと訴えるなら,不開示決定を出した時点で「ヒアリング記録の開示を被聴取者が望んでいない」と確認していた証拠を諮問時の理由説明書で明示する必要がある。
(オ)「被聴取者の意思に反して」でも「公にすべきではないか」について
内閣府政策統括官は上記イ(エ)で触れたように,法に基づいて不開示にする理由として,「録音データを被聴取者の意思に反して開示できない」と主張するが,法の開示規定を踏まえると,「被聴取者の意思」だけで開示・非開示が決まるものではないと考える。
法には「開示請求の対象文書に登場する人物が開示を望まない場合,不開示にする」という趣旨の文言は盛り込まれていない。開示請求を受けた行政機関は5条に基づいて判断し,場合によっては7条(公益情報の開示)も適用する形になっている。
そのため,被聴取者が開示を希望していない場合でも,すぐさま全面的に不開示になるわけではなく,5条や7条にどう該当するか,慎重に検討する必要がある。
確かに5条の5号や6号については勘案する必要があるが,請求人が上記アで言及した点についても十分考慮し,開示・不開示の判断をする必要があると考える。
(カ)「委員会内部における検討又は協識に関する情報」について
内閣府政策統括官は上記イ(オ)で触れたように,法に基づいて不開示にする理由として「委員会内部における検討又は協議に関する情報であることから,公にした場合,不当に国民の間に混乱を生じさせる恐れがあるほか,被聴取者が嫌がらせや過度な取材を受けるなど,特定の者に不利益を及ぼす恐れがある」として不開示決定を出したが,この主張から不開示にするのは妥当ではないと考える。
そもそも「内部における検討又は協議に関する情報」という理由だけで「混乱を生じさせる」「特定の者に不利益を及ぼす」と結びつけるのは具体性を欠き,論理の飛躍がある。この主張で「法5条5号や6号に該当する」「全面的に不開示にする」と判断することはできないと考える。
さらに言えば,録音データから要点を引用した特定職員の聴取結果書は公表済みであって,この公表によって国民間に混乱は生じていないし,特定職員が嫌がらせを受けたこともないと言える。
内閣府は本件の行政文書不開示決定通知書で記した内容からも明らかなように,「開示すれば混乱や嫌がらせの恐れ」があれば,不開示にする方針を採っている。特定職員の聴取結果書を公表した後,混乱や嫌がらせが起きていれば,「恐れ」どころでは済まず,即座に非公表に切り替えなければならないところ,特定職員の聴取結果書は公表され続けているため,公表されても混乱や嫌がらせは生じていないと言える。
録音データから要点を引用した聴取結果書を開示しても問題が生じていないことを考えると,要点以外が付随した録音データを開示しても,これまで知られている事実関係などを大きく揺るがす状況にはなるとは思われないため,録音データを開示しても,内閣府政策統括官が懸念するような「混乱」「嫌がらせ」などは生じないと言える。
内閣府政策統括官は従来の主張を維持するのなら,その論拠を諮問時の理由説明書で具体的に明示すべきである。
(2)意見書
内閣府が提出した理由説明書(下記第3を指す。以下同じ。)の「3 原処分の妥当性について」では,内閣府が不開示決定を出した理由が改めて書かれている。
具体的には,法の5条5号(「公にすると国民の混乱を生じさせ,又は特定の者に不利益を与える恐れがある」),5条6号(「事業の適正な執行に支障を及ぼす恐れがある」)に該当するため,内閣府は不開示決定を出したと記されている。
以下,これらに対して請求人の意見を示す。
ア 必ずしも法5条5号に該当しない理由
内閣府は,理由説明書の「3 原処分の妥当性について」のうち,「(2)不開示情報該当性について」の「イ 法5条5号該当性について」で,特定職員が政府事故調のヒアリングを受けた際の音声データ(以下,第2の2(2)において「特定職員の音声データ」という。)が「主観を交えて述べた内容や,供述者の記憶違い等の客親的な事実とは異なる内容なども一体となってそのまま記録されている」とし,さらに音声データの場合は「声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンスなど,そこから読み取れるヒアリング対象者の性格や個人的特徴,身体的状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されている」と判断した。
その上で,音声データを公開した場合,「不当に国民の間に混乱を生じさせる」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす恐れがある」とし,5条5号(「公にすると国民の混乱を生じさせ,又は特定の者に不利益を与える恐れがある」)に該当すると主張する。
これに対し,請求人は次のように考える。
内閣府が主張するように「主観を交えて述べた内容や,供述者の記憶違い等の客観的な事実とは異なる内容なども一体となってそのまま記録されている」ため,「不当に国民の間に混乱を生じさせる」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす恐れがある」のならば,「不当に国民の間に混乱を生じさせる」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす恐れがある」部分だけを不開示にすればよいと考える。
特定職員の音声データのうち,主要部分はヒアリング記録(聴取結果書)として書き起こされ,内閣府のホームページで公表されている。この点からは,ヒアリング記録として公表されている部分に関しては,内閣府も「不当に国民の間に混乱を生じさせない」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす恐れがない」と考えていると言える。つまり,音声データのうち,少なくともヒアリング記録として公表されている部分に関しては,公表しても差し支えがないと考えられる。
また内閣府は,「声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンスなど,そこから読み取れるヒアリング対象者の性格や個人的特徴,身体的状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されている」ため,「不当に国民の間に混乱を生じさせる」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす恐れがある」と論理展開させるが,必ずしもそうとは言えないと考える。
特定職員は現在,原子力規制委員会の事務局に相当する原子力規制庁で働いている。そのことは電話で本人に確認した。
特定職員は公開で開かれる原子力規制委員会の会合に事務方の説明人として出席しており,時には発言もしている。具体例を示せば,2017年8月31日に開かれた「放射性同位元素使用施設等の規制に関する検討チーム」で自らの名前や担当名を述べている。その旨は議事録に記載されているほか(URL),原子力規制委員会が特定動画サイトでアップした会議当日の動画でも特定職員の顔と音声を公開している(URL)。
つまり特定職員の声質や話し方,そこから読み取れる性格や個人的特徴,身体的状態等は既に公にされていると言える。そのため,特定職員の音声データを開示したとしても,改めて特定職員の声質や話し方,そこから読み取れる性格や個人的特徴,身体的状態が明らかにされる訳ではなく,これを開示した場合,新たに「不当に国民の間に混乱を生じさせる」「被聴取者らが非難や中傷を受けるなど,関係者に不当に不利益を及ぼす」ことはないと考える。
イ 必ずしも法5条6号に該当しない理由
内閣府は,理由説明書の「3 原処分の妥当性について」のうち,「(2)不開示情報該当性について」の「ア 法5条6号柱書き該当性について」の「(ア)政府事故調のヒアリングは,その結果を責任追及に使わないことを前提に,関係者の任意の協力の下,非公開で行われた」で,委員長メッセージを引用して「非公開で行ったヒアリング結果の記録は原則として外部に開示しない」と記した。
そして,「(イ)本件対象文書が法5条6号柱書きに該当すること」では,音声データが「声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンスなど,そこから読み取れるヒアリング対象者の性格や個人的特徴,身体的状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されており,既に公開されている聴取結果書とは異なる」とつづった。
その上で,この音声データを公表した場合には「ヒアリングした際の前提条件を欠く」「データの一部が断定的に取り上げられる」「ひぼう中傷を恐れて率直な口述をしなくなる」と論理展開し,「行政機関による事故等の原因調査という公益上重要な業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼす恐れがある」と結論づけている。
これに対し,請求人は次のように考える。
内閣府は「音声データを開示すれば,ヒアリングした際の前提条件を欠く」と主張する。理由説明書の文脈を考えると,委員長が「非公開で行ったヒアリング結果の記録は外部に開示しない」という部分が,「ヒアリングした際の前提条件」になると考えられる。
この前提条件は既に崩れている。守る必要がないものとして内閣府が判断している。ヒアリング記録(聴取結果書)が既に内閣府のホームページで公表されている点からしても明らかと言える。
その点を考えれば,「音声データを開示すればヒアリングした際の前提条件を欠く」と言えないことも明らかと言える。
また内閣府は「データの一部が断定的に取り上げられる」「ひぼう中傷を恐れて率直な口述をしなくなる」と論理展開し,「行政機関による事故等の原因調査という公益上重要な業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼす恐れがある」と論理展開する。
これに関しては上記アでも触れた通り,こうした懸念を生じさせる部分を不開示にすれば済む話であり,全面的に不開示にする理由にはならない。
繰り返しになるが,特定職員の音声データのうち,主要部分はヒアリング記録(聰取結果書)として書き起こされ,内閣府のホームページで公表されている。少なくともヒアリング記録として公表されている部分に関しては,公表しても差し支えがないと考えられる。
| 第3 | 諮問庁の説明の要旨(添付資料は省略する。) |
1 本件審査請求の趣旨及び理由について
(1)審査請求の趣旨
本件は,審査請求人が行った開示請求に対して,処分庁において,法5条5号及び6号柱書きに該当することを理由に原処分を行ったところ,審査請求人から,不開示決定(原処分)を取り消し,開示決定又は一部開示決定を出すよう求める(処分の取消しと変更)として審査請求が提起されたものである。
(2)審査請求の理由
上記第2の2(1)のとおり。
2 本件開示請求及び原処分について
(1)東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会について
本件審査請求に係る「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(以下,第3において「委員会」という。)は,東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(以下「本件事故」という。)の原因及び本件事故による被害の原因を究明するための調査・検証を,国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行い,もって本件事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行うことを目的として,平成23年5月24日付け閣議決定に基づき開催されたものである。委員会は,委員長の畑村洋太郎(東京大学名誉教授,工学院大学教授)以下,内閣総理大臣により指名された10名のメンバーで構成され,さらに,専門的,技術的事項について助言を得るため,委員長の指名により2名の技術顧問を置いていた。また,調査・検証を補佐する事務局には,事務局長以下の各府省庁出身者のほか,社会技術論,原子炉過酷事故解析,避難行動等の分野の専門家8名を配置し,専門家をチーム長として,三つの調査・検証チームが設置されていた。
委員会は,平成23年6月7日に第1回委員会を開催して調査・検証に着手し,同年12月26日の第6回委員会において中間報告を,平成24年7月23日の第13回委員会において最終報告を取りまとめた後,同年9月28日に廃止され,これに伴い,同日,事務局も廃止された。
(2)本件対象文書について
本件審査請求に係る文書は,委員会が特定職員に対して行ったヒアリング結果のうち,内閣府ホームページで一部箇所を除いて公開されている特定職員の聴取結果書に係る録音データ(本件対象文書)である。
本件対象文書に係るヒアリングは,真実の供述を得て本件事故及び被害の原因を究明するため,委員会が調査結果を取りまとめた報告書にその内容等を慎重に吟味した上で要点を引用するような場合を除き,公にしないこと,また,その結果を責任追及のために使用しないことを前提として,特定職員の任意の協力を得て非公開で行われたものである。
(3)原処分について
処分庁においては,本件開示請求に対し,対象文書として本件対象文書を特定し,以下の理由により,法5条5号及び6号柱書き所定の不開示情報に該当するとして,その全てを不開示とする原処分を行った。
ア 委員会によるヒアリングは,本件事故の調査結果を取りまとめた報告書にその内容等を慎重に吟味した上で要点を引用するような場合を除き,当該ヒアリングの結果を公にしないこと,ヒアリングの結果を責任追及のために使用しないことを前提に,関係者の任意の協力を得て非公開で行われたものである。本件対象文書は,内閣府ホームページにおいて公開されている聴取結果書に係る録音データであるところ,既に公にされている文字情報に加えて,声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンス等,そしてそこから読み取れる被聴取者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されているものであり,このような追加的情報を被聴取者の意思に反して公にした場合,本件事故の関係者はもとより,国民一般との関係においても,外部への非公開等を前提とする国の調査手法に対する信頼が失われ,将来,国の機関が重大事故の調査において外部への非公開等を前提とするヒアリング方針を採ったとしても,ヒアリングの結果が自己の意思に反して外部に開示され,責任追及等に利用されることをおそれて,関係者がありのままの事実を供述することをちゅうちょすることはもとより,ヒアリングに応じること自体を拒否することも十分に考えられる。そのような場合,将来,国の機関が行う重大事故の調査に支障を来し,ひいては,その原因究明及び再発防止策の策定等という事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
イ また,本件対象文書は,委員会内部における検討又は協議に関する情報であることから,これを公にした場合,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあり,被聴取者が,その居住地域等における嫌がらせや報道関係者等による過度な取材等を受けるなど,特定の者に不当に不利益を及ぼすおそれがある。
3 原処分の妥当性について
(1)本件対象文書の特定の妥当性について
本件対象文書については,開示請求書の記載から明らかであり,上記2(2)及び(3)のとおり同請求書の記載から適切に対象文書を特定している。
なお,審査請求人も本件対象文書の特定については,特段の異議を述べていない。
(2)不開示情報該当性について
本件対象文書の不開示情報該当性について検証した結果は,以下のとおりである。
ア 法5条6号柱書き該当性について
(ア)政府事故調のヒアリングは,その結果を責任追及に使用しないことを前提に,関係者の任意の協力の下,非公開で行われたものであること
本件対象文書に係るヒアリングについて方針を定めた「ヒアリングの方法等について」(平成23年7月8日委員会決定)(参考資料①)及び当時の事務局職員からの聴取結果によれば,委員会のヒアリングは,事故等関係者から真実の供述を得て本件事故及び被害の原因を究明するため,委員会が,調査結果を取りまとめた報告書に,その内容等を慎重に吟味した上で要点を引用するような場合を除き公にしないこと,ヒアリングの結果を責任追及のために使用しないこと及び被聴取者名も原則不開示とすることを前提に,事故等関係者の任意の協力を得て非公開で行われたものであった。
また,本件対象文書には,被聴取者が,非公開の場であることを前提に自己の主観も交えて述べた内容や,被聴取者の記憶違い等の客観的な事実とは異なる内容なども一体となってそのまま記録されており,被聴取者の記憶力,内心の揺れ動き及び組織や社会に対する個人的心情・見解など,被聴取者の人格や人間性と密接に関わる内容まで踏み込んで聴取した内容も含まれている。また,被聴取者だけでなく,その他の関係者の名誉・プライバシー等に関わる事柄も記録されている。
そして,平成24年5月31日付の委員長メッセージ(参考資料②。以下,第3において「委員長メッセージ」という。)においては,委員会は,「責任追及を目的とした調査・検証は行わないこと」,「非公開で行ったヒアリングの記録を外部に開示した場合,ヒアリングの相手方との信頼関係が破壊され,新たなヒアリングの相手方からの協力も期待できなくなり,今後の調査活動に著しい支障を生じるほか,ヒアリングの記録には,ヒアリング対象者その他の関係者の名誉・プライバシー等に関わる事柄も記録されており,これらの権利・利益を侵害するおそれがあるなど,重大な問題が生じ」ることから,「非公開で行ったヒアリング結果の記録は原則として外部に開示しないこととしてい」たことが説明されている。
本件のように,事故等関係者本人から直接,非公開の場において,その結果を不開示とすることを前提に,自ら認識していた事故等の状況を包み隠さず口述してもらうという調査方法は,運輸安全委員会や消費者安全調査委員会等による事故等調査においても用いられており,その方法は有効かつ合理的なものと認められる。
例えば,運輸安全委員会が行う鉄道事故等調査は,運輸安全委員会設置法(参考資料③)の規定に基づき,「国際民間航空条約の規定並びに同条約の付属書として採択された標準,方式及び手続に準拠して」(同法18条)行われており,同条約の第13附属書(参考資料④)では,調査当局が調査の過程で入手したすべての口述等は,「司法当局が,記録の開示が当該調査又は将来の調査に及ぼす国内的及び国際的悪影響よりも重要であると決定した場合でなければ,調査実施国は,・・・事故又は重大インシデント調査以外の目的に利用してはならない。」(同附属書5.12)とされている。この趣旨は,「事故又はインシデント調査の間に面接した者から自発的に提供されたものを含む上記(注:同附属書5.12)の記録に含まれる情報は,その後の懲戒,民事,行政及び刑事上の処分に不適切に利用される可能性がある。もしこのような情報が流布されると,それは将来,調査官に対し包み隠さず明らかにされるということがなくなるかもしれない。このような情報を入手できなくなると,調査の過程に支障を来し,航空の安全に著しく影響を及ぼすことになる」(同附属書5.12注)ことであり,事故調査の実効性及び安全への影響を考慮したものである。
これを受け,「これらの条約等に基づく事故調査に関する手続は,原因究明及び再発防止のために極めて合理的な措置であることから,運輸安全委員会では,鉄道事故等調査においても事故調査手法,委員会の審議・運営,原因関係者からの意見聴取,事故調査報告書の作成要領等の手続を航空・船舶事故等と同一の通達をもって運用しているところである」。事故調査における口述聴取に当たっては,「事故等関係者には「事故等の原因究明と再発防止をするため」としている委員会の目的をご理解の上,任意の協力を得て事故等の状況を包み隠さず口述してもらっている」。「また,外部の指示や干渉を受けないで自由な口述を聞くためにも,第三者の立会い等を排除し,事故等関係者本人のみから直接,かつ,非公開で行っている」。このようにして得た「口述聴取記録は,事故等関係者がその主観に基づき広範,多岐にわたって詳細に述べた内容が不正確な記憶に基づくあいまいなものも含めて,そのまま記録されており,事故等関係者の記憶力,内心の揺れ動きなど,当人の人格や人間性と密接にかかわるものである。これが開示され,一般に流布されるおそれがある状況に置かれることは,当人にとっては耐え難いものであると考えられる。また,本事故の関係者からは,口述者を特定できる状況となるため,口述内容に関して口述者は非難や中傷を受けることとなるおそれがある。さらに,鉄道事故等調査は,航空・船舶のような条約等に基づく国際標準はないが,事故の原因究明及び再発防止を目的とする点は同じであり,今後の事故等調査において,事故等関係者から,「刑事,民事及び行政上の処分に利用される可能性がある」という心理的なプレッシャーなどによって包み隠しのない自由な口述を得られなくなることが考えられ,その結果,事実関係の把握及び適正な調査が困難となるおそれがある。」これらの理由により,運輸安全委員会として口述聴取記録は非公開としている。(以上,情報公開・個人情報保護審査会答申(平成23年3月2日付け答申(平成22年度(行情)答申第569号)より抜粋。)
その上,本件事故の如き複雑な要因が作用し,多数の関係者が関わる事故の調査においては,事故原因の検証にはより多くの情報を突合する必要性が高いことから,このような調査方法の必要性はより強く認められるべきである。
(イ)本件対象文書が法5条6号柱書きに該当すること
平成26年9月以降,聴取結果書について,開示の同意をヒアリング対象者本人から得たものは,準備が整ったものから順次公開する方針としており,本件対象文書のヒアリングに係る特定職員の聴取結果書については,一部箇所を除いて内閣府ホームページで公開している(参考資料⑤)。
一方で,本件対象文書によって表現・伝達される情報には,聴取結果書の公表によって既に公にされている文字情報に加えて,声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンス等,そしてそこから読み取れるヒアリング対象者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されており,既に公開されている聴取結果書とは異なるものである。
仮にこのような追加的な情報を開示した場合,特定職員からヒアリングした際の前提条件を欠くことになるのみならず,今後の同種の調査において,事故等関係者が,情報公開請求により開示されたヒアリングの録音データの一部が断片的に取り上げられて評価され,自己に対するひぼう中傷が行われることや名誉が棄損されること等を恐れて率直な口述をせず,あるいは,事実を明らかにしないことなどの弊害が高い蓋然性で予想される。加えて,事故等関係者が,ヒアリングにおいて他の事故等関係者に言及する際には,言及する事故等関係者に将来的に迷惑がかかることを恐れて率直な口述をせず,あるいは,事実を明らかにしないことなどの弊害が高い蓋然性で予想される。ヒアリング実施者である行政機関が責任追及を行わず,ヒアリングの録音データの記録の不開示を方針として定めても,そのヒアリングの録音データが行政文書として開示されるのであれば,被聴取者のこれらの恐れがなくなることはないからである。
このように,ヒアリングの録音データは,その性格上,公にした場合,行政機関による事故等の原因調査という公益上重要な業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼす具体的なおそれがあると認められる。
したがって,本件対象文書は法5条6号柱書きに定める不開示情報に該当する。
イ 法5条5号該当性について
本件対象文書には,ヒアリングの相手方が,非公開の場であることを前提に自己の主観も交えて述べた内容や,供述者の記憶違い等の客観的な事実とは異なる内容なども一体となってそのまま記録されている。そして,本件対象文書によって表現・伝達される情報には,聴取結果書の公表によって既に公にされている文字情報に加えて,声質や話し方,発言内容に対する感情・ニュアンス等,そしてそこから読み取れるヒアリング対象者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されており,既に公開されている聴取結果書とは異なるものであることは,既に述べたとおりである。
したがって,仮に本件対象文書を開示した場合,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。加えて,被聴取者その他の事故等関係者が所属する組織の内部等において口述内容に関する非難や中傷を受けたり,刑事,民事及び行政上の処分の事実認定等の一部に利用されるなど,原則として外部に開示しないことを条件にヒアリングに任意で協力してもらった被聴取者やその相続人,その他の事故等関係者に不当に不利益を及ぼすおそれがある。このため,聴取結果書に記録された具体のヒアリング記録には,法5条5号の不開示情報が記録されていると認められる。
ウ 小括
したがって,本件対象文書について,法5条5号及び6号柱書きの不開示情報に該当するとした原処分は妥当であると考える。
なお,情報公開・個人情報保護審査会の過去の答申(平成27年12月22日(平成27年度(行情)答申第602号),平成28年7月7日(平成28年度(行情)答申第184号)及び平成28年7月7日(平成28年度(行情)答申第185号))においても,同様の判断が示されていることを念のため申し添える。
(3)審査請求人の主張について
審査請求人の主張に対する見解としては,基本的に上記(2)の主張に含まれているが,特に加えて反論すべき内容は以下のとおりである。
ア 「ヒアリング結果の公表について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(ア))
審査請求人は,ヒアリング結果の公表について,「政府の現状の方針を整理すると,聴取結果書や録音データは「必要な範囲で開示」という基本方針を守りつつ,「供述者が不開示を希望する場合(部分)は不開示」という形になっている。」と整理できるから,「政府事故調によるヒアリングの結果は,政府事故調の報告書に要点を引用する場合を除き,公にしない前提」との処分庁の主張は事実と異なっており,不開示の理由として挙げることはできないと主張する。
しかしながら,ヒアリング結果の公表については,上記(2)ア(ア)でも指摘したとおり,本件ヒアリングが,その内容について公にしないことを前提に事故等関係者の任意の協力を得て非公開で行われたものであることなどから,原則非公開としているものであり,審査請求人の主張は当たらない。
イ 「「責任追及で使わず」について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(イ))
審査請求人は,「内閣府のホームページでは,特定職員の聴取結果書を公表している」ことなどを理由として,「録音データを聞いても,責任追及につながることはない。」から,「「責任追及には使わない」を理由に録音データを不開示にすることはできない」と主張する。
しかしながら,録音データである本件対象文書については,上記(2)ア(イ)でも指摘したとおり,既に公開されている聴取結果書とは異なるものであり,録音データの一部が断片的に取り上げられて評価され,自己に対するひぼう中傷が行われることや名誉が棄損されること等のおそれがあることから,審査請求人の主張は当たらない。
ウ 「プライバシーに関する情報について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(ウ))
審査請求人は,「特定職員の音声情報は簡単に入手できる」ことなどを理由として,「プライバシーの観点から不開示にするのは妥当でない」と主張する。
しかしながら,本件対象文書について不開示としたのは,上記(2)ア(イ)でも指摘したとおり,本件対象文書の性格上,これを公にした場合,行政機関による事故等の原因調査という公益上重要な業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼす具体的なおそれが認められるためであり,審査請求人の主張は当たらない。
エ 「「被聴取者の意思に反して」について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(エ))
審査請求人は,「内閣府のホームページで公表されている特定職員の聴取結果書を見ると,・・・ヒアリングの結果(音声データを含む)の不開示を希望する旨は記されていない」ことなどを理由として,処分庁が「「特定職員は不開示を希望している」と立証できない限り,「開示は特定職員の意思に反する行為」「そうしたら信頼が失われる」と言え」ないと主張する。
しかしながら,特定職員の聴取結果書については,内閣府のホームページで公開されているものの,録音データである本件対象文書は,上記(2)ア(イ)でも指摘したとおり,本件ヒアリングにおける被聴取者にとって機微な情報であると認められる当該被聴取者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されていると認められ,また,内閣官房の被聴取者本人への意向確認が聴取結果書の公開を念頭においたものであることを踏まえると,既に公開されている聴取結果書の被聴取者がそのような情報(聴取結果書に係る録音データ)の公開をも含め同意しているとまではいえないことから,審査請求人の主張は当たらない。
なお,情報公開・個人情報保護審査会の過去の答申(平成27年12月22日(平成27年度(行情)答申第602号))においても,同様の判断が示されていることを念のため申し添える。
オ 「「被聴取者の意思に反して」でも「公にすべきではないか」について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(オ))
審査請求人は,「法の開示規定を踏まえると,「被聴取者の意思」だけで開示・不開示が決まるものではない」として,法7条に基づく公益上の理由に基づく裁量的開示を検討するよう主張する。
法7条に基づく裁量的開示は,行政機関の長の判断により,当該情報を公にすることに,当該情報の不開示により保護する利益を上回る公益上の必要性があると認められた場合に行われるものである。
しかしながら,本件対象文書はヒアリングに関する記録内容であって,本人が開示に同意しない部分について,これを公にした場合,上記(2)で述べたとおり,今後の同様の事故等調査業務という公益上極めて重要な業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼす具体的なおそれがあると認められる点や被聴取者に不当な不利益を及ぼすおそれがある点を軽視することはできない。さらに,委員会による本件事故の原因及び本件事故による被害の原因を究明するための調査・検証結果については,既に委員会の中間報告及び最終報告が公開されており,委員会の調査結果については,既に社会に対して広く情報提供がなされていると考えられる。
したがって,本件対象文書の具体のヒアリングの記録等を不開示とすることにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとは認められず,審査請求人の主張は当たらない。
カ 「「委員会内部における検討又は協議に関する情報」について」との主張について(上記第2の2(1)ウ(カ))
審査請求人は,「録音データから要点を引用した聴取結果書を開示しても問題が生じていない」ことを理由として,「「内部における検討又は協議に関する情報」という理由だけで「混乱を生じさせる」「特定の者に不利益を及ぼす」と結びつけるのは具体性を欠き,論理の飛躍がある。」と主張する。
しかしながら,本件対象文書が,既に公開されている特定職員の聴取結果書とは異なるものであることは,既に述べたとおりであり,さらに,仮に本件対象文書を開示した場合,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあることに加えて,被聴取者その他の事故等関係者が所属する組織の内部等において口述内容に関する非難や中傷を受けたり,刑事,民事及び行政上の処分の事実認定等の一部に利用されるなど,原則として外部に開示しないことを条件にヒアリングに任意で協力してもらった被聴取者やその相続人,その他の事故等関係者に不当に不利益を及ぼすおそれがあることから,審査請求人の主張は当たらない。
4 結論
以上のとおり,原処分は妥当であり,審査請求人の主張には理由がないことから,本件審査請求は,これを棄却することが妥当であると考える。
| 第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 令和2年7月6日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月21日 審議
④ 同年8月3日 審査請求人から意見書を収受
⑤ 令和3年3月8日 本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同年4月12日 審議
| 第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件開示請求について
本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,その全部を法5条5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とする原処分を行った。
これに対し,審査請求人は,原処分を取り消し,開示決定又は一部開示決定を求めているが,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,本件対象文書の不開示情報該当性について検討する。
2 本件対象文書の不開示情報該当性について
(1)諮問庁の説明
上記第3の3(2)及び(3)のとおり。
(2)検討
ア 本件対象文書は,諮問書に添付された資料等によれば,東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(本件事故)の原因及び本件事故による被害の原因を究明するための調査・検証を行い,本件事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行うことを目的として,平成23年5月24日付け閣議決定に基づき発足した東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(以下「本件委員会」という。)が,特定職員に対して行ったヒアリング(以下「本件ヒアリング」という。)において作成された録音データ全てであると認められる。
イ 本件対象文書を見分したところ,本件対象文書は,本件ヒアリングに係る聴取結果書に記載された聴取者と被聴取者のやり取り等のもとになった録音データであり,本件ヒアリングにおける声質や話し方,発言内容に対する感情,ニュアンス等,そしてそこから読み取れる被聴取者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって記録されていると認められる。
ウ また,本件ヒアリングに係る聴取結果書は,内閣官房が公開を判断し,内閣府がそれを維持して,現時点では内閣府のウェブサイトに掲載されており,一部箇所を除いてその内容は公開されているところ,当審査会において,本件委員会のウェブサイトにおいて公開されている第2回委員会(平成23年7月8日開催)の議事録及び資料並びに平成24年5月31日付けの委員長メッセージを確認したところによれば,本件委員会において,ヒアリングの方法等について,真実の供述を得る等のため,原則非公開で行うこととするなどを申し合わせていることが確認でき,本件ヒアリングは,本件事故等関係者の任意の協力を得て非公開で行われたものであったとする諮問庁の説明を覆すに足りる事情は見当たらない。
エ 本件ヒアリングが,甚大な被害等をもたらした本件事故について,様々な意見や議論がある原因等を究明するための調査・検証の一環として,上記ウのとおり本件事故等関係者に対して非公開で行われたものであることに鑑みると,上記イのとおり,本件ヒアリングにおける被聴取者の性格や個人的特徴,身体状態等のプライバシーに影響を及ぼす情報も一体となって本件対象文書に記録されていると認められる情報は,特定職員にとって通常他人に知られたくない機微な情報に当たると認められる。
オ そうすると,本件ヒアリングに係る聴取結果書が,上記第3の3(2)ア(イ)及び上記ウのとおり,内閣府のウェブサイトにおいて一部を除き既に公開されていることを考慮しても,本件対象文書の一部でも公にした場合,特定職員からヒアリングした際の前提条件を欠くことになるのみならず,今後の同種の調査において,事故等関係者が,情報公開請求により開示されたヒアリングの録音データの一部が断片的に取り上げられて評価され,自己に対するひぼう中傷が行われることや名誉が棄損されること等を恐れて率直な口述をせず,あるいは,事実を明らかにしないことなどの弊害が予想される旨の上記第3の3(2)ア(イ)の諮問庁の説明は,これを否定することまではできない。
カ したがって,本件対象文書を公にすると,行政機関による事故等の原因調査業務の性質上,当該業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められることから,本件対象文書は,法5条6号柱書きに該当し,同条5号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
3 審査請求人のその他の主張について
(1)審査請求人は,審査請求書(上記第2の2(1)ウ(オ))において,法の開示規定を踏まえると,「被聴取者の意思」だけで開示・不開示が決まるものではなく,場合によっては法7条(公益情報の開示)も適用する形になっているなどと主張する。
しかしながら,本件事故の重大性に鑑みると,その原因及び被害の原因を究明するための調査・検証の重要性はいうまでもないところ,上記2において判断したとおり,本件対象文書には,行政機関による事故等の原因調査業務に支障を及ぼすおそれがある情報等が記録されていることからすると,これを開示することに,これを開示しないことにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとまでは認められないことから,法7条による裁量的開示を行わなかった処分庁の判断に裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない。
(2)審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
4 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とした決定については,同号柱書きに該当すると認められるので,同条5号について判断するまでもなく,妥当であると判断した。
| (第1部会) |
委員 小泉博嗣,委員 池田陽子,委員 木村琢麿
別紙(本件対象文書)
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が特定年月日特定時刻A頃から同日特定時刻B頃まで行った特定職員に対するヒアリングの聴取結果書に係る録音データ