諮問庁 | : | 厚生労働大臣 |
諮問日 | : | 平成31年 3月 7日(平成31年(行情)諮問第191号) |
答申日 | : | 令和 2年 8月31日(令和2年度(行情)答申第234号) |
事件名 | : | 特定労働基準監督署における監督復命書等(特定業に係る特定期間分)の不開示決定に関する件 |
第1 | 審査会の結論 |
別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定については,別表の5欄に掲げる部分を開示すべきである。
第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 審査請求の趣旨
本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年11月28日付け東労発総開第30-248号により東京労働局長(以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。
2 審査請求の理由
審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)審査請求書
ア 「不開示決定」ということで,「情報開示請求」対象の情報が存在することを確認しました。
イ 「不開示とした理由」にある開示できない部分は,黒塗りにすればよい。
ウ 過去の情報開示内容に照らし,原処分の「不開示決定」に反論する(「不開示理由」に反論するものではない)。
(ア)以下の決定では,監督年月日,業種,労働者数,監督官氏名印,違反法条項・指導事項等などを開示している。
添付1 東労発総開第21-20-1号(部分)
A4-66頁,A3-13頁,計79頁(うち全面黒塗り68頁)
添付2 東労発総開第21-19-1号(部分)
計27頁(うち全面黒塗り17頁)
(イ)上記の情報開示が誤って開示されたものなら,「情報漏洩事件」として公表し,関係各所に謝罪すべきである。
(ウ)上記の決定以降,法令・答申・裁判例等により事情が変化したなら,その根拠を明示していただきたい。
エ 担当官からの「情報開示請求」に関する内容確認が事前に行われていなかった。(過去には,決定等がなされる前に「情報開示請求」の内容を確認する電話があった。)
(添付1及び2 略)
(2)意見書
ア 理由説明書(下記第3。以下第2において同じ。)の結論に対する意見
諮問庁は「原処分は妥当であり,本件審査請求は棄却すべきである」とするが,原処分と異なり一部開示とされている東労発総開第30-247号(添付資料1)を妥当でないとするのか。その対応と法的根拠をお知らせいただきたい。
イ 理由説明書の矛盾点
(ア)上記アに掲げる東京労働局長の別の決定では,「大量であり事務処理に著しい支障をきたす」とし,60日以内に開示されたものは(1業種についての)4頁で,6か月間の延長状態である。業種を限定すれば,分量を軽減できると考える。
(イ)原処分と異なり,一部開示である上記アの決定は,法違反であるとするのか。その対処方を説明していただきたい。(中略)
なお,上記アの決定において開示されている「監督重点対象区分」欄について,これまでの答申では,以下のように判断されている。
平成30年度(行情)答申第319号,平成28年度(行情)答申第698号,平成28年度(行情)答申第630号等
「監督重点対象区分」欄は,監督の種類が定期監督の場合に限り,各局署で定めた監督重点対象が記載されることから,当該欄に記載がある場合には,定期監督であることが明らかになり,また,記載がない場合において,直近に災害の発生や臨検監督が行われた事実がない場合には,その臨検監督が申告監督であったことが明らかになり,監督種別が特定されるものである。したがって,当該部分は,(中略)法5条6号イに該当し,同条2号イ及び4号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
(ウ)審査請求書(上記(1))エの当方主張に対する回答が理由説明書になかったが,東労発総開第30-283号及び同第30-294号(添付資料2)では,電話及び文書にて開示文書の特定がなされている。
なお,当該2決定において開示されている「労働保険番号」及び「監督重点対象区分」欄は,これまでの答申では,不開示と判断されている(上記(イ))。
ウ 結論
原処分は,矛盾に満ちたものであり,到底納得いくものではない。さらに,原処分において不開示とされた文書及び不開示部分が開示されている現況をどのように説明するのか。
開示情報が誤って開示されたものなら「情報漏洩事件」として公表し,関係各所に謝罪すべきである。なお,法令・答申・裁判例等により事情が変化したなら,その根拠を明示していただきたい。
(添付資料1及び2 略)
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 本件審査請求の経緯
(1)審査請求人は,平成30年11月1日付け(同月2日受付)で処分庁に対し,法の規定に基づき本件対象文書の開示請求を行った。
(2)これに対し処分庁が原処分を行ったところ,審査請求人はこれを不服として,平成30年12月4日付け(同月6日受付)で本件審査請求を提起したものである。
2 諮問庁としての考え方
本件審査請求について,原処分は妥当であると考える。
3 理由
(1)本件対象文書の特定について
本件対象文書について,特定労働基準監督署(以下「労働基準監督署」は「監督署」という。)において探索を行ったところ,特定年4月1日から同年10月31日に特定の2業種に対して行った監督指導の記録が認められたことから,当該監督指導に当たって作成された文書のうち,本件開示請求書の記載に該当するものを本件対象文書として特定した。
(2)不開示情報該当性について
ア 法5条1号の不開示情報該当性について
本件対象文書には,個人に関する情報であって特定の個人を識別することができる情報及び,本件開示請求は特定の事業場に係る行政文書を請求するものではないが,監督指導対象の事業場の所在地が特定監督署の管轄区域内に限定され,かつ,対象事業場の業種が限定されているため,関係事業場の労働者等が保有している他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなる情報が含まれている。これらの情報は,法5条1号本文に該当し,同号ただし書イないしハのいずれにも該当しないことから,不開示とすることが妥当である。
イ 法5条2号イの不開示情報該当性について
本件対象文書には,特定の2業種に含まれる事業場における労務管理状況等種々の内部管理情報がありのまま具体的に記述されている。本件開示請求は特定の事業場に係る文書を請求するものではないが,監督指導対象の事業場の所在地が特定監督署の管轄区域内に限定され,かつ,対象事業場の業種が限定されているため,当該情報が公にされた場合,特定の事業場を識別することができることとなる情報が含まれている。このため,これらの情報が公になると,取引関係や人材確保等の面において,同業他社との間で当該事業場の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。
したがって,これらの情報は,法5条2号イに該当し,不開示とすることが妥当である。
ウ 法5条4号及び6号イの不開示情報該当性について
本件対象文書には,特定監督署が行った監督指導の手法や詳細,また,対象事業場が特定監督署との信頼関係を前提として誠実に明らかにした事業場の実態に関する情報等が記載されている。これらが公にされた場合,事業場や労働者と特定監督署との信頼関係が失われ,関係資料の提出や特定監督署に対する情報提供に協力的でなくなり,また,事業場においては,指導に対する自主的改善意欲を低下させ,関係資料の提出等にも一切協力的でなくなり,ひいては労働関係法令違反の隠蔽を行うようになるなど,犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがある。また,労働基準行政機関が行う事務であって,検査事務という性格を持つ臨検監督指導に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法な行為の発見を困難にするおそれがある。
したがって,これらの情報は,法5条4号及び6号イに該当し,不開示とすることが妥当である。
(3)審査請求人の主張について
審査請求人は,審査請求書(上記第2の2)の中で,「過去の開示決定において開示された内容が不開示となっている」旨主張しているが,不開示情報該当性については,上記(2)で示したとおりであり,審査請求人の主張は失当である。
4 結論
以上のとおり,原処分は妥当であり,本件審査請求は棄却することが妥当であるものと考える。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成31年3月7日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年3月19日 審議
④ 同年4月9日 審査請求人から意見書及び資料を収受
⑤ 令和2年8月4日 委員の交代に伴う所要の手続の実施,本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同月27日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件対象文書について
本件対象文書は,臨検監督に係る文書であり,具体的には,別表の1欄に掲げる文書1ないし文書4の各文書である。
本件開示請求に対し,処分庁は,法5条1号,2号イ,4号及び6号イに該当するとして,本件対象文書の全部を不開示とする原処分を行ったところ,審査請求人は原処分の取消しを求めている。
これに対して,諮問庁は原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書を見分した結果を踏まえ,不開示情報該当性について検討する。
2 不開示情報該当性について
(1)開示すべき部分(別表の5欄に掲げる部分)について
ア 通番1ないし通番6,通番8ないし通番10及び通番13ないし通番16の各(1)
当該部分は,監督復命書,監督復命書(違反続き)及び監督復命書(続紙)(以下「監督復命書等」という。),是正勧告書(控),指導票(控)及び是正報告書の各様式部分であり,法5条1号に規定する個人に関する情報が記載されているとは認められない。
また,当該部分は,これを公にしても,特定事業場の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,労働基準監督機関が行う監督指導に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあるとは認められない。また,犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるとも認められない。
したがって,当該部分は,法5条1号,2号イ,4号及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきである。
イ 通番1ないし通番6及び通番8ないし通番10並びに通番13ないし通番16の各(2)並びに通番11
(ア)当該部分は,①監督復命書等,②是正勧告書(控)及び指導票(控),③是正報告書及び改善報告書の各一部である。
(イ)当該部分のうち,以下の部分にはそれぞれに掲げる情報が記載されていることが認められる。
①の監督復命書の「監督官氏名印」,「副署長」,「主任(課長)」及び「署長判決」の各欄 特定監督署の職員の氏名及び印影
②の是正勧告書(控)及び指導票(控) 発出者である特定監督署の名称及び職員の職氏名
②の是正勧告書(控)の「是正確認」欄 特定監督署の職員の印影
③の是正報告書及び改善報告書の本文中 特定監督署の職員の職氏名
③の改善報告書の左肩の決裁欄及び報告先 特定監督署の職員の職名及び印影(報告先は職名のみ)
これらは,いずれも法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であると認められる。
次に,法5条1号ただし書該当性について検討すると,これらのうち,職員の氏名及び印影は,監督署による臨検監督に係る事務等に関連する職務の遂行に係る情報であることから,「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて」(平成17年8月3日付け情報公開に関する連絡会議申合せ)により,特段の支障の生ずるおそれがある場合を除き,公にするものと考えられるところ,これを公にしても特段の支障の生ずるおそれがあるとは認められないことから,同号ただし書イに該当すると認められる。また,職名は,同号ただし書ハに該当すると認められる。
その余の部分には,個人に関する情報が記載されているとは認められない。
(ウ)当該部分には,上記(イ)に掲げるものに加え,以下の部分にそれぞれに掲げる情報が記載されていることが認められる。
①の監督復命書等 「完結区分」,「監督年月日」,「署長判決」の判決区分,「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄の全て並びに「参考事項・意見」欄の一部
②の是正勧告書(控)及び指導票(控) 発出の日付,是正・改善を求める趣旨の前文,特定事業場職員の受領年月日,「是正勧告書(控)」における「法条項等」,「是正期日」及び「是正確認」の各欄の全て
③の是正報告書及び改善報告書 報告先監督署名(是正報告書のみ),報告年月日,是正報告又は改善報告の契機となった臨検監督又は指導の年月日の記載が含まれた本文,是正報告書における「別紙のとおり」の記載のみの「違反等指摘された事項」欄,空欄である「是正年月日」及び「是正状況(未是正の場合はその理由及び是正計画書)」の各欄並びに労働基準監督機関側が印字した欄外の脚注,並びに特定監督署の受付印(改善報告書のみ)
(エ)当該部分については,原処分において,臨検監督,是正勧告又は指導の対象となった事業場の名称等及び是正報告又は改善報告をした事業場の名称等,事業場を特定できる情報が不開示となっていることから,当該部分を公にしても,特定の事業場の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず,労働基準監督機関が行う監督指導に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあるとは認められない。また,犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるとも認められない。
したがって,当該部分は,法5条1号,2号イ,4号及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきである。
ウ 通番1ないし通番3,通番8,通番9及び通番13ないし通番16の各(3)
当該部分は,監督復命書等における①「整理番号」,「事業場キー」及び「業種」,②「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「企業名公表関係」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」,「労働組合」及び「最も賃金の低い者の額」,③「別添」の各欄であるが,個人に関する情報が記載されているとは認められない。
上記①のうち,「業種」については,本件対象文書を見分したところ,特定監督署の管轄内には,監督対象となった特定の2業種について,それぞれ,複数の異なる経営体の事業場が存在することが認められることから,「業種」により事業場を特定することはできず,また,「整理番号」及び「事業場キー」は,いずれも労働基準監督機関において事業場をシステムに登録した際に機械的に付与される番号であるにすぎないと認められる。
上記②の「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「企業名公表関係」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」,「労働組合」及び「最も賃金の低い者の額」の各欄は,いずれも空欄であり,当該事業場について,有意の情報の記載があるとは認められない。また,上記③の「別添」欄は,監督復命書の別添の文書名を示しているにすぎないと認められる。
したがって,当該部分は,上記アと同様の理由により,法5条1号,2号イ,4号及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきである。
(2)その余の部分(別表の6欄に掲げる部分)について
ア 通番1,通番3,通番8,通番9及び通番13ないし通番16の各(1)並びに通番2
当該部分は,監督復命書等の「監督種別」,「監督重点対象区分」及び「特別監督対象区分」の各欄である。
(ア)「監督種別」欄
「監督種別」欄は,定期監督,災害時監督,災害調査,申告監督及び再監督の5種類の臨検監督のうち,いずれかを記載するものである。これらのうち,「申告監督」の記載は,労働者からの申告に基づいて臨検監督を行うこととされたことを表すものである。本件対象文書については,上記(1)イ及びウにおいて「監督年月日」及び「業種」を開示すべきとしていることを勘案すると,監督種別が公にされた場合,自らが受けた監督がいずれの監督種別に該当するかが事業者において推認し得るところとなり,申告監督の場合,当該臨検監督を受けた事業場において,誰が申告をしたのか探索が行われ,それにより,労働者は,違反等について申告を行ったことによって自らに不利益な取扱いが及ぶことを恐れて申告をちゅうちょすることとなるおそれがあり,これにより,労働者からの申告という労働基準監督機関の重要な情報源が損なわれ,監督指導に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれがあると認められる。
また,「申告監督」の場合のみ不開示とすると,不開示の場合は「申告監督」であることが明らかになることに鑑みれば,「申告監督」以外の場合も含め,「監督種別」欄に記載された情報は不開示とすることが妥当である。
したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同条1号,2号イ及び4号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
(イ)「監督重点対象区分」欄
「監督重点対象区分」欄は,監督の種類が定期監督の場合に限り,各労働基準監督機関で定めた監督重点対象が記載されることから,当該欄に記載がある場合には,定期監督であることが明らかになり,また,記載がない場合において,直近に災害の発生等の事実がないときには,その臨検監督が申告監督であったことが明らかになり,監督種別が特定されるものである。
したがって,当該部分は,上記(ア)と同様の理由により,法5条6号イに該当し,同条1号,2号イ及び4号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
(ウ)「特別監督対象区分」欄
「特別監督対象区分」欄は,監督が特別監督の場合に限り,各労働基準監督機関で定めた特別監督対象区分が記載されることから,当該欄に記載がある場合には,特別監督であることが明らかになり,また,記載がない場合のみ開示すると,不開示となった場合には,特別監督であったことが明らかになる。
このため,これを公にすると,特定監督署の調査手法・内容が明らかとなり,労働基準監督機関が行う検査等に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあると認められる。
したがって,当該部分は,法5条6号イに該当し,同条1号,2号イ及び4号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
イ 通番1,通番3,通番8,通番9及び通番13ないし通番16の各(2),通番4,通番5及び通番10の各(1),通番6並びに通番11
当該部分は,監督復命書等,是正勧告書(控)又は指導票(控)に記載された,臨検監督,是正勧告又は指導の対象となった事業場の名称,所在地等当該事業場を特定することができる情報及び臨検監督結果,是正勧告又は指導の具体的な内容並びに「是正報告書」又は「改善報告書」に記載された報告事業場の名称,所在地等当該事業場を特定できる情報及び報告の具体的な内容である。これらを公にすると,特定事業場に対する信用を低下させ,取引関係や人材確保等の面において当該事業場の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
したがって,当該部分は,法5条2号イに該当し,同条1号,4号及び6号イについて判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
ウ 通番1,通番8,通番13及び通番15の各(3)並びに通番7,通番12及び通番17
当該部分のうち,監督復命書の「企業名公表関係」,「労働者数」,「労働組合」,「週所定労働時間」及び「最も賃金の低い者の額」の各欄には,監督官が臨検監督を行ったことにより判明した当該法人の内部情報が記載されている。その余の部分は,監督復命書の添付書類であり,監督対象となった事業場に対する具体的詳細な調査内容等が記載されている。このため,これらを公にすると,特定監督署の調査手法・内容が明らかとなると認められる。
したがって,当該部分は,上記ア(ウ)と同様の理由により,法5条6号イに該当し,同条1号,2号イ及び4号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
エ 通番1の(4),通番4の(2),通番5の(2),通番8の(4),通番10の(2),通番13の(4),通番15の(4)
当該部分は,監督復命書の「面接者職氏名」欄並びに是正勧告書(控)及び指導票(控)の「受領年月日 受領者職氏名」欄に記載された特定事業場の職員の職氏名である。これらは,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものに該当し,同号ただし書イないしハのいずれにも該当する事情は認められない。また,当該部分は,個人識別部分であることから,法6条2項に基づく部分開示の余地もない。
したがって,当該部分は,法5条1号に該当し,同条2号イ,4号及び6号イについて判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
3 審査請求人のその他の主張について
審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
4 付言
法6条1号は,開示請求に係る文書の一部に法5条各号に定める不開示情報が記録されている場合において,当該部分を容易に区分して除くことができるときは,当該部分を除いた部分につき開示しなければならないと定めている。
原処分は,不開示部分に係る法の適用条項として,法5条1号,2号イ,4号及び6号イを挙げ,本件対象文書を全部不開示としているが,その際,処分庁は,様式部分を始め上記各号のいずれにも該当しない部分を区分して部分開示を行うための検討を行っていない。処分庁においては,今後,法の規定を踏まえ,不開示部分についての判断を適切に行う必要がある。
5 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条1号,2号イ,4号及び6号イに該当するとして不開示とした決定については,別表の6欄に掲げる部分は,同条1号,2号イ及び6号イに該当すると認められるので,同条4号について判断するまでもなく,不開示としたことは妥当であるが,別表の5欄に掲げる部分は,同条1号,2号イ,4号及び6号イのいずれにも該当せず,開示すべきであると判断した。
(第3部会) |
委員 髙野修一,委員 久末弥生,委員 葭葉裕子
別紙 本件対象文書
特定労働基準監督署において,復命書の監督年月日が,特定年4月1日~同年10月31日までの期間を含む記載になっている監督復命書(指導票等が求めている事業者の報告「是正報告書」等,添付書類を含む)で鉄道業およびバス業について開示を求める。【但し,不開示部分が100%(全面黒塗り)となる頁を除く】【情報公開・個人情報保護審査会の答申や裁判等の趣旨を充分ふまえ,開示できる部分は全て開示願う】
別表 |
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1 文書番号 |
2 文書名 |
3 法5条各号該当性 |
4 通番 |
原処分における不開示部分(全部不開示) |
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5 開示すべき部分 |
6 その余の部分 |
||||
文書1 |
監督復命書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
1 |
(1)様式部分 (2)「完結区分」,「監督年月日」,「監督官氏名印」,「副署長」,「主任(課長)」,「署長判決」,「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄 (3)「整理番号」,「事業場キー」,「業種」,「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」及び「別添」の各欄 |
(1)「監督種別」,「監督重点対象区分」及び「特別監督対象区分」の各欄 (2)「労働保険番号」,「事業の名称」,「事業場の名称」,「事業場の所在地」,「代表者職氏名」及び「参考事項・意見」の各欄 (3)「企業名公表関係」,「労働者数」,「労働組合」,「週所定労働時間」及び「最も賃金の低い者の額」の各欄 (4)「面接者職氏名」欄 |
監督復命書(違反続き) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
2 |
(1)様式部分 (2)「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄 (3)「整理番号」,「確認までの間」,「備考1」及び「備考2」の各欄 |
「監督種別」欄 |
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監督復命書(続紙) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
3 |
(1)様式部分 (2)「参考事項・意見」欄の30行目 (3)「整理番号」欄 |
(1)「監督種別」欄 (2)「参考事項・意見」欄1行目ないし29行目 |
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是正勧告書(控) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
4 |
(1)様式部分 (2)右上の「年月日」,特定労働基準監督署名及び職員の職氏名,本文,「法条項等」,「是正期日」,「是正確認」の各欄の記載及び印影,「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領年月日 |
(1)「事業の名称」,「代表者職氏名」,「事業場の名称」及び「違反事項」の各欄 (2)「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領者職氏名 |
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指導票(控) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
5 |
(1)様式部分 (2)右上の「年月日」,特定労働基準監督署名及び職員の職氏名,本文(報告期限を含む。),「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領年月日 |
(1)宛先の記載部分及び「指導事項」欄 (2)「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領者職氏名 |
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是正報告書1頁目 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
6 |
(1)様式部分(1頁目の手書き部分を除く部分) (2)1頁目の報告先,右肩の年月日,「是正報告書」の標題,本文(年月日,職員の職氏名を含む。),「違反等指摘された事項」,「是正年月日」及び「是正状況(未是正の場合はその理由及び是正計画)」の各欄の記載,欄外の脚注 |
1頁目の「事業場所在地」,「事業場名」及び「代表者職氏名」の各欄及び2頁以降 |
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その余の文書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
7 |
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全て |
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文書2 |
監督復命書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
8 |
(1)様式部分 (2)「完結区分」,「監督年月日」,「監督官氏名印」,「副署長」,「主任(課長)」,「署長判決」,「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄 (3)「整理番号」,「事業場キー」,「業種」,「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「企業名公表関係」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」,「労働組合」及び「別添」の各欄 |
(1)「監督種別」,「監督重点対象区分」及び「特別監督対象区分」の各欄 (2)「労働保険番号」,「事業の名称」,「事業場の名称」,「事業場の所在地」,「代表者職氏名」及び「参考事項・意見」の各欄 (3)「労働者数」,「週所定労働時間」及び「最も賃金の低い者の額」の各欄 (4)「面接者職氏名」欄 |
監督復命書(続紙) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
9 |
(1)様式部分 (2)「参考事項・意見」欄の29行目 (3)「整理番号」欄 |
(1)「監督種別」欄 (2)「参考事項・意見」欄1行目ないし28行目 |
|
指導票(控) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
10 |
(1)様式部分 (2)右上の「年月日」,特定労働基準監督署名及び職員の職氏名,本文(報告期限を含む。),「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領年月日 |
(1)宛先の記載部分及び「指導事項」欄 (2)「受領年月日 受領者職氏名」欄のうち受領者職氏名 |
|
改善報告書1頁目 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
11 |
左肩の決裁欄,右肩の「年月日」,「改善報告書」の標題,報告先,本文(年月日,職員の職氏名を含む。),「指導事項,改善事項,改善年月日」と記載された表頭部分,右下の受付印 |
1頁目の右肩の文書番号,報告者の記載部分及び1頁目の表の記載内容並びに2頁以降 |
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その余の文書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
12 |
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全て |
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文書3 |
監督復命書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
13 |
(1)様式部分 (2)「完結区分」,「監督年月日」,「監督官氏名印」,「副署長」,「主任(課長)」,「署長判決」,「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄 (3)「整理番号」,「事業場キー」,「業種」,「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「企業名公表関係」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」,「労働組合」,「最も賃金の低い者の額」及び「別添」の各欄 |
(1)「監督種別」,「監督重点対象区分」及び「特別監督対象区分」の各欄 (2)「労働保険番号」,「事業の名称」,「事業場の名称」,「事業場の所在地」,「代表者職氏名」及び「参考事項・意見」の各欄 (3)「労働者数」,「週所定労働時間」の各欄 (4)「面接者職氏名」欄 |
監督復命書(続紙) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
14 |
(1)様式部分 (2)「参考事項・意見」欄の19行目 (3)「整理番号」欄 |
(1)「監督種別」欄 (2)「参考事項・意見」欄1行目ないし18行目 |
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文書4 |
監督復命書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
15 |
(1)様式部分 (2)「完結区分」,「監督年月日」,「監督官氏名印」,「副署長」,「主任(課長)」,「署長判決」,「No.」,「違反法条項・指導事項・違反態様等」及び「是正期日・改善期日(命令の期日を含む)」の各欄 (3)「整理番号」,「事業場キー」,「業種」,「家内労働委託業務」,「外国人労働者区分」,「企業名公表関係」,「店社」,「確認までの間」,「備考1」,「備考2」及び「別添」の各欄 |
(1)「監督種別」,「監督重点対象区分」及び「特別監督対象区分」の各欄 (2)「労働保険番号」,「事業の名称」,「事業場の名称」,「事業場の所在地」,「代表者職氏名」及び「参考事項・意見」の各欄 (3)「労働者数」,「労働組合」,「週所定労働時間」及び「最も賃金の低い者の額」の各欄 (4)「面接者職氏名」欄 |
監督復命書(続紙) |
1号,2号イ,4号,6号イ |
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(1)様式部分 (2)「参考事項・意見」欄の29行目 (3)「整理番号」欄 |
(1)「監督種別」欄 (2)「参考事項・意見」欄1行目ないし28行目 |
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その余の文書 |
1号,2号イ,4号,6号イ |
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全て |
(注)文書番号は,本件対象文書における掲載順に付した。