答申本文
諮問庁国土交通大臣
諮問日平成15年 6月18日 (平成15年(行情)諮問第341号)
答申日平成16年 3月22日 (平成15年度(行情)答申第713号)
事件名東京都調布市上布田地先の土地価格算定書の不開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 東京都調布市上布田地先の土地価格算定書(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定については,諮問庁が不開示とすべきとしている部分のうち,別紙の部分以外の記載部分を開示すべきである。

第2  審査請求人の主張の要旨
 審査請求の趣旨
 本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成14年3月11日付け国関整総情第652号の2により関東地方整備局長(以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,これを取り消し,本件対象文書の開示を求めるというものである。

 審査請求の理由
 審査請求人の主張する審査請求の主たる理由は,審査請求書及び意見書によれば,おおむね以下のとおりである。
 本件不開示決定は,多摩川水系河川整備計画に基づく河川敷公有化策に反するものであり,土地評価鑑定書及び用対連に基づく諸基準により,いかなる数値で取得予定地を評価したかを確認することは当該土地の所有者の当然の権利である。
 取得予定地の1平方メートル当たり単価を示されたが,その根拠として唯一京浜工事事務所からの説明で明らかにされたのは,近傍隣接地としての公示価格を基準にし,堤外地として適正な修正を行った上で算定しているとのことであり,30倍もの著しい格差がある。憲法の保障する正当な補償に値するものかどうか,明確な数式が明示されて初めてその妥当性,正当性が理解できる。
 開示請求の対象は,請求人の所有地に関するものであり,本人が請求している限り,守秘義務には該当しない。

第3  諮問庁の説明の要旨
 本件対象文書について
 河川事業に限らず,公共事業に必要な土地の取得に当たっては,事業を行う者は,取得の対象となる土地の価格を決定する必要がある。この場合,国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準及び建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準の運用方針においては,基本的に近傍類似の取引価格を基に,取得予定地と当該近傍類似の土地とを適切に比較衡量し,その価格を求めるいわゆる取引事例比較法を主に用い,原価法や収益還元法を参考とすることとしている。その作業の過程(各取引事例の比較衡量を行った具体的なデータとその比較内容)と,作業の結果として決定された土地価格を記したものが,土地価格算定書である。
 本件対象文書は,東京都調布市上布田地先に所在する買収予定地の土地価格算定書であり,これは,当該土地の所有者が関東地方整備局京浜工事事務所(現京浜河川事務所)に対して買取り請求を行った土地について,同事務所において,適正な買取り価格を算定するために関東地方整備局長が定める様式(用地買収等上申書作成要領(平成14年3月14日関東地方整備局長))により作成された文書である。
 本件対象文書は,①起案文書,②用地買収総括表,③用地買収説明書,④比準図式,⑤土地評価に係る要点事項,⑥比準価格算出表,⑦変動率認定表,⑧比準対照表,⑨個別的要因調査表及び算定表・個別格差認定基準表(標準地価格算定に係る部分),⑩地域要因調査表及び算定表・地域格差認定基準表,⑪個別的要因調査表及び算定表・個別格差認定基準表(評価対象地の土地価格算定に係る部分)⑫同一状況類似地域区分図及び⑬不動産鑑定評価書の各部分で構成されている。

 原処分の妥当性について
 原処分は,本件対象文書について,住所・氏名など特定の個人を識別することができる情報,他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報及び法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報が記録され,また,買収予定単価等を公表すると国の機関が行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれもあることを理由として,法5条1号,2号及び6号に該当するとして全部不開示としたものであるが,原処分の妥当性について,諮問庁が検討した結果は,以下のとおりである。

(1)  開示することが妥当である部分について
 本件対象文書のうち,以下の部分については,法5条1号,2号又は6号のいずれにも該当しないことから,開示することが妥当であると考える。

 起案文書全部

 用地買収総括表のうち,価格時点,買収土地の面積及び延長

 用地買収説明書のうち,評価対象地を含む同一状況地域の用途的地域及び特徴,標準地番号,規準した公示地の地点名,不動産鑑定業者の名称

 比準図式のうち,取引及び公示番号,標準化補正の格差率

 土地評価に係る要点事項のうち,水系名及び路線名,箇所名,担当者氏名,評価上の問題点又は留意事項のうち具体的な補正率を除く部分,類似地域D(公示地が存する地域)の範囲,標準化補正の概要

 比準価格算出表のうち,価格時点,標準地番号,取引及び公示番号,公示地に係る公示時点及び公示価格,事情補正,標準化補正,変動率を認定した期間

 変動率認定表のうち,公示地の前年価格,当年価格,対前年変動率,計算式及び期間対応変動率

 比準対照表のうち,取引・公示番号,不動産鑑定業者名,事情補正,個別格差及び内訳

 個別的要因調査表及び算定表(標準地価格算定に係る部分)のうち,調査年月日,事務所の担当者氏名・内線番号,標準地及び取引事例地の所在のうち市名,調査方法,宅地の類型,属する地域,取引の事情及び補正率,相続税路線価,各条件の評価(優る・普通・劣る等)のうち危険施設・処理施設等の有無及び方位を除く部分,格差率,   公示地の公示番号,所在,公示時点,公示価格,街路条件の内訳・評価,交通接近条件の内訳・評価,環境条件の内訳・評価,画地条件の内訳・評価,行政的条件の内訳・評価,格差率

 地域要因調査表及び算定表のうち,取引及び公示番号

 個別的要因調査表及び算定表(評価対象地の土地価格算定に係る部分)のうち,調査年月日,事務所の担当者氏名・内線番号,標準地及び評価対象地の所在のうち市名,標準地の各条件の評価(優る・普通・劣る等)

 不動産鑑定評価書(以下「A鑑定評価書」という。)のうち,対象不動産の表示のうち市名及び現況地目,権利の種類,価格時点,価格の種類,依頼目的,鑑定評価を行った日,鑑定評価の条件,鑑定評価額決定の理由の要旨のうち一般的要因の概況,調布市の概要,行政的条件,標準的使用,公法上の規制,対象地の利用現況,最有効使用の判定,堤内地の標準的画地の標準価格の査定のうち標準的画地の所在及び所有者氏名と具体的査定額を除く部分,鑑定評価額の決定のうち具体的な価格及び補正率を除く部分,付記事項,取引事例比較法適用の明細表(別表1-1)のうち事例番号,所在地の市名,地目(類型),事情補正,建付減価補正及び標準化補正,取引事例比較法適用の明細表(別表1-2)のうち事例番号,事情補正の内訳・条件項目及び格差率,建付補正減価の内訳・条件項目及び格差率,個別的要因の条件項目及び格差率,収益価格試算資料(別表2-1)のうち所在の市名,建物の諸条件,土地の最有効使用及び賃貸条件,収益価格試算資料(別表2-2)のうち公租公課に関する金額及び収益価格を除く部分,規準価格試算資料(別表-3)のうち公示地番号,公示価格,建付減価補正,標準化補正,公示地の所在・地番,面積,地形,利用状況,周辺の利用状況,街路条件,供給処理施設,交通接近条件,行政的条件,建付減価補正の内訳及び格差率,標準化補正の内訳及び補正率

 不動産鑑定評価書(以下「B鑑定評価書」という。)のうち,対象不動産の表示のうち市名及び地目,鑑定評価の対象となった権利,鑑定評価の価格時点,鑑定評価を行った日,鑑定評価の依頼目的,評価条件,鑑定評価決定の理由の要旨のうち対象不動産の確認,周辺地域の状況,行政的条件,現利用状況,最有効使用の判定,鑑定評価方式の適用と鑑定評価額の決定のうち堤内地標準地の概要及び具体的な価格・補正率を除く部分,付記事項,取引事例比較法の適用(別表-1)のうち事例番号,所在地の市名,事情補正,標準化補正の格差率及び内訳,直接法による純収益算定内訳表(別表-2)のうち公法上の規制等,公租公課に関する金額及び収益価格を除く部分,地価公示価格(基準地価格)との規準(別表-3)のうち,標準地番号,所在地・地積,価格時点,公示価格,標準化補正,公示価格の概況

(2)  不開示とすることが妥当である部分について
 上記(1)以外の下記の部分については,それぞれに記すところにより,原処分を維持することが妥当であると考える。

 不動産鑑定業者の印影,不動産鑑定士の氏名及び印影
 不動産鑑定評価書に押印された不動産鑑定業者の印影は,記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであり,これにふさわしい形状のものであること,通常,不動産鑑定評価の依頼者等以外むやみに公にされているものではないことから,公にすることにより,当該法人等の正当な利益を害するおそれがあるものに当たり,法5条2号イに該当すると考える。
 また,不動産鑑定士の氏名及び印影は,鑑定評価を行った者の個人に関する情報であり,法5条1号の個人識別情報に該当すると考える。

 その他の開示を相当とする部分以外の部分
(ア)  法5条1号該当性について
 被補償者に係る部分の該当性について
 評価対象地(買収地)に関する情報である大字・丁目・地番,所有者の住所・氏名又は名称,交通接近条件等の諸条件の内訳,その位置等を示す図面,標準地の比準価格,規準価格,鑑定評価格及び評価格並びに評価対象地の土地価格については,所有者が個人の場合,被補償者である個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報又は市販の住宅地図や土地登記簿等と照合することにより特定の個人を識別できる情報であり,法5条1号に該当すると考える。
 また,地域格差(堤内地から堤外地の特性を考慮した補正率)は,堤内の市街地等に存する標準地と堤外の高水敷等に存する標準地の格差に係るものであり,これにより被補償者の補償金額等を特定又は推測することが可能な情報であり,法5条1号の個人識別情報に該当すると考える。
 さらに,用地買収総括表の対抗件数及び所要額は,本件用地買収が買い取り要望に係るものであることから,対抗件数がごく少数であり,所要額から被補償者の補償額等を特定又は推測することが可能な情報であり,法5条1号の個人識別情報に該当すると考える。

 買収価格を算定するための土地等の所有者に係る部分の該当性について
 標準地及び取引事例地に関する情報である大字・丁目・地番,(前・現)所有者の住所・氏名又は名称,取引の目的,取引時点,交通接近条件等の諸条件及びその位置等を示す図面については,当該土地の所有者が個人の場合は,買収価格を算定するための土地等の所有者に係る個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報又は市販の住宅地図や土地登記簿等と照合することにより特定の個人を識別できる情報であり法5条1号に該当すると考える。
 また,時点修正(率)は取引価格を価格時点における価格に修正するための率が記載されており,当該修正率の認定のために参考とされる地価公示地の地価変動率は既に公になっている地価公示価格から容易に計算することができ,これを取引事例の時点修正率に当てはめることにより,取引時点が推測又は確定できるものである。地域格差(堤内地から堤外地の特性を考慮した補正率を除く。)は取引事例地が存する地域と標準地の存する地域の地域的差異を示すものであり,都市計画上の用途地域の違いによる行政条件や,駅や商店街,小中学校等との交通接近条件等の差異がそれぞれ率として示されていることから,これらの条件を組み合わせることにより,取引事例の存する地域の範囲を推測又は確定することができるものである。これらのいずれも,他の公になっている情報である不動産登記簿における所有権移転登記の登記原因の日付から,特定の個人の土地を容易に特定できることから,法5条1号の個人識別情報に該当すると考える。
 さらに,不動産鑑定評価書(2社とも)中,収益価格算定内訳の公租公課欄に記載されている標準地の固定資産評価額は,標準地の所有者である個人の資産に関する情報であり,その額は,納税義務者となるべき者のみが知り得る情報であることから,法5条1号に規定する個人識別情報に該当すると考える。
 なお,取引の事情及び事情補正についても,その内容によっては法5条1号又は同条2号イに該当すると考えられるが,本件対象文書に記録されている取引事例に関しては,補正すべき事情は存しないことから,開示することが妥当と考える。

(イ)  法5条2号該当性について
 取引事例地に関する情報(時点修正,地域格差を含む。)については,当該土地の所有者が法人の場合は,当該法人の資産に係る情報であって,これを公にすると,当該法人の資産内容の変動の状況が明らかとなり,秘匿されるべき資産に係る情報や収益構造等の法人の競争上に係る情報の一端がうかがい知られることとなり,法人の競争上の地位その他法人の正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当すると考える。

(ウ)  法5条6号該当性について
 評価対象地に関する情報のうち,(ア)①に述べた項目及び用地買収総括表の対抗件数(契約件数)及び所要額については,これらの情報が開示されることとなれば,被補償者の補償金額等が明らかとなるか又は推定することが可能となり,被補償者は自己の補償金額等が将来公になることを嫌って,補償交渉自体を拒む者が出てくることが考えられ,また,通常は補償金額等は公にしないことを了解した上で交渉を進めていることから,起業者が被補償者との間で築き上げてきた信頼関係が損なわれるおそれが生じることが考えられ,事業の適正な遂行に支障が生じるおそれがあるものと認められ,法5条6号に該当すると考える。なお,本件においては,近隣地域Ⅰ(買収地を含む同一状況地域)の標準地は買収地にもなっていることから,当該標準地に関する情報のうち(ア)②に述べた項目についても,同様に法5条6号に該当すると考える。
 また,取引事例地に関する情報(時点修正,地域格差を含む。)のうち(ア)②で述べた項目は,これを鑑定評価を含む土地価格の算定事務のみに使用するとの当該土地の所有者との間の約束を前提に取引当事者等の任意の協力を得て不動産鑑定士又は事務所職員により,収集されるものである。当該情報は,個人又は法人の資産の状況に関するものであり,通常,他者には知られたくないものであって,仮に被調査者が特定されるような情報(土地所有者の住所・氏名はもとより時点修正や地域格差についても前述のとおり特定の個人を容易に識別できる情報である。)が公にされると,被調査者との信頼を著しく損ね,以後の協力を得ることが困難となり,土地価格算定の根幹をなす取引事例の収集に重大な支障を及ぼすこととなり,土地価格の算定事務に重大な支障を来すおそれがあるものと認められ,法5条6号に該当すると考える。
 さらに,地域格差(堤内地から堤外地の特性を考慮した補正率)は,本件のような堤外地の土地価格算定では,参考とすべき堤外地の取引事例が極めて少ないことから,近接する堤内地の土地の利用状況や価格水準,堤防の設置状況等冠水の危険性等を考慮して,不動産鑑定士の意見を参考として堤内に存する標準地と堤外に存する標準地の格差を認定し,堤外地の土地価格を算定する際のものである。したがって,当該格差は上記のような条件により様々な格差率が算出され,個別性が強いものであることから,これが公にされるとなると,今後行われる堤外地の取得を要する他の河川事業において,協議の整っていない個人又は法人が本件の地域格差と自己の土地に係る地域格差の違いを正しく認識しないまま,自己所有地の補償提示額に対する疑問,不満を抱くことは大いにあり得ると考えられ,当該公共事業の用地取得に係る用地交渉に多大な影響があると考える。これに対し,国としては,交渉の打開策として補償提示額を上積みすることはできず,なお補償提示額により説得を続ける以外にないことから,交渉が大幅に長引いたり,個別的な事情,地価動向等を勘案して価格を設定することが難しくなるなど,行政事務の支障を生じさせるおそれがあるものと言わざるを得ず,法5条6号の「当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」情報に該当すると考える。

 審査請求人のその他の主張について
 用地交渉において,十分な説明を行うことが求められるのは審査請求人の指摘のとおりであるが,審査請求人の土地所有者であることを根拠にそれ以外の者と区別してでも開示すべきという主張は,そもそも法による開示請求制度は,開示請求者に対し,開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問わず開示請求を認める制度であることから,行政文書の開示決定等に当たって,開示請求者がだれであるか,又は開示請求者が開示請求に係る行政文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的事情は考慮されないものである。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

 平成15年6月18日  諮問の受理
 同日  諮問庁から理由説明書を収受
 同年7月16日  審査請求人から意見書を収受
 同月24日  本件対象文書の見分及び審議
 同年8月21日  参考人(不動産鑑定士)から意見陳述の聴取
 同年11月26日  諮問庁の職員(国土交通省総合政策局国土環境・調整課長ほか)から口頭説明の聴取
 同年12月17日  審議
 平成16年3月17日  審議

第5  審査会の判断の理由
 土地の取得等に係る補償金額の算定について
 公共事業の施行に伴う土地の取得等に係る補償金額を算定しようとするときには,「国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準」等に定めるところに従い,当該土地の存する地域の地域的特性に着目して,同一の状況にある近隣地域を設定し,その中の標準的な画地(以下「標準地」という。)を選定し,これを評価した上で,当該標準地の評価格から比準して,取得することとしている土地の評価格を求めることとされている。このうち,標準地の評価格は,取引事例比較法により求めた価格を基準として,収益還元法又は原価法により求めた価格を参考として求めることとされているが,取引事例比較法については,近隣地域と近隣地域を含む同一需給圏内にある類似地域における取引事例を用いて,その価格にいくつかの補正等を行うことにより算定することとされている。また,標準地の評価に当たっては,上記の方法による国が行う評価に加え,別に不動産鑑定業者に当該標準地の鑑定評価を求めることとされている。

 本件対象文書について
 本件対象文書は,本件開示請求に係る土地である河川区域内に存する民有地を関東地方整備局京浜工事事務所(現京浜河川事務所)(以下「工事事務所」という。)が取得するに当たって,関東地方整備局用地事務取扱細則47条1項2号により,工事事務所が上記1に述べた方法により評価した内容,結果等が記載されたものであって,上記細則に基づく局長承認事項に関する様式に準じて工事事務所が作成したものと,標準地の鑑定評価を行った不動産鑑定業者2社が作成した不動産鑑定評価書から構成されており,具体的には,以下の文書である。

 起案文書
 用地買収総括表
 用地買収説明書
 比準図式
 土地評価に係る要点事項
 比準価格算出表
 変動率認定表
 比準対照表
 個別的要因調査表及び算定表並びに個別格差認定基準表(標準地価格算定に係る部分)
 地域要因調査表及び算定表並びに地域格差認定基準表
 個別的要因調査表及び算定表並びに個別格差認定基準表(評価対象地の土地価格算定に係る部分)
 不動産鑑定評価書(A鑑定評価書及びB鑑定評価書)
 同一状況類似地域区分図

 なお,諮問庁によれば,本件開示請求に係る土地のような河川区域内の土地のうち,いわゆる高水敷(河川敷)に係る民有地を国が取得する場合には,当該土地が河川改修事業等のために直接必要となる土地ではないことから,当該土地の所有者から買取りの請求が国に対してなされ,それに対する予算が手当てされた段階で,順次取得に向けた協議が開始されることとなるが,その位置等はもとより,そのような協議が行われているという事実についても,河川改修事業等のために取得される場合とは異なり,一般には公にされることはないとのことである。

 諮問庁が不開示としている部分の不開示情報該当性について
 諮問庁は,本件諮問に当たって,本件対象文書のうち,上記第3の2(1)に記述した部分は開示することとしていることから,以下その余の部分の不開示情報該当性について検討する。

(1)  本件対象文書の性格について
 本件対象文書は,上記2で述べたように,工事事務所が本件開示請求に係る土地の取得に当たって,その取得価格を決定するために作成又は取得したものであって,そこに記載されている情報は,価格算定の根拠,過程及び結果等が記載されているものであることから,法5条6号の国の機関が行う事務又は事業に関する情報であると認められる。
 また,本件対象文書に記載されている情報は,本件開示請求に係る土地の所有者に関する情報であることから,法5条1号の個人に関する情報であると認められる。
 さらに,本件対象文書の記載部分のうち,本件開示請求に係る土地の取得価格を算定するための近隣地域や類似地域における標準地や取引事例地に係る情報が記述されている部分については,それが個人に係るものは法5条1号の個人に関する情報であり,また,それが法人に係るものは法5条2号の法人に関する情報であると認められる。また,不動産鑑定評価書の部分については,当該鑑定評価書を作成した不動産鑑定業者に係る情報として法5条2号の法人に関する情報であると認められる。
 そこで,上に述べた点に従って,その不開示情報該当性について,それぞれ検討していくこととする。

(2)  本件開示請求に係る土地についての法5条1号該当性について
 諮問庁は,本件開示請求に係る土地(以下「取得予定地」という。)の大字・丁目・地番,所有者の住所・氏名,交通接近条件等の諸条件の内訳,その位置等を示す図面,評価対象地の土地価格,地域格差並びに用地買収総括表の対抗件数及び所要額は,直接又は市販の住宅地図や登記簿等と照合することにより特定の個人を識別できる情報であり,法5条1号に該当し,不開示とすべき旨説明する。また,諮問庁は,近隣地域Ⅰの標準地が本件開示請求に係る土地の一部と重複するものであることから,当該標準地の比準価格,規準価格,鑑定評価格及び評価格についても,本件開示請求に係る土地の所有者である個人を識別することができる情報として,法5条1号により不開示とすべきとする。
 本件対象文書は,工事事務所が,本件開示請求に係る土地の取得に当たって作成又は取得したものであり,本件対象文書を見分したところ,工事事務所が作成した個別的要因調査表及び算定表の評価対象地に係る部分には,取得予定地の所在(大字・丁目・地番)及び当該土地の所有者の住所・氏名が記載されていることが認められる。したがって,本件対象文書は,全体として本件取得予定地の所有者の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報である。本件の土地の取得は,上記2で述べたように,当該土地の所有者からの買取りの請求があった場合にだけ,これに応じる形で工事事務所が当該土地の所有者との間で取得のための協議に入ることとしているもので,諮問庁によれば,このような情報は,他の公共事業の場合とは異なり,その位置等はもとより,事実関係さえも公にはしていないとのことであることから,法5条1号ただし書イには該当せず,同号の不開示情報に該当すると認められる。
 そこで,本件対象文書について,その法6条2項による部分開示の適否を検討する。本件対象文書のうち,上に述べた取得予定地の所在(大字・丁目・地番)及び当該土地の所有者の住所・氏名が記載されている部分は,取得予定地の所有者である特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分であると認められる。また,個別的要因調査表及び算定表に添付された当該土地の位置等を示す図面には取得予定地及び隣接する土地の地番及び所有者の氏名が記載され,当該図面についても,その記載内容から,特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分であると認められる。
 しかしながら,諮問庁が取得予定地の所有者個人を識別することができる情報として,法5条1号により不開示とすべきとしているその他の部分については,特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分とは認められず,また,上に述べた特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分に該当すると認められる部分を除けば,これを公にしたとしても,個人の権利利益を害するおそれはないものと認められる。
 以上により,本件対象文書のうち,取得予定地の所在(大字・丁目・地番)及びその所有者の住所・氏名が記載されている部分並びに個別的要因調査表及び算定表に添付された図面は,不開示が妥当であるが,その余の部分は,法5条1号及び法6条2項により不開示が妥当であるとされる情報には該当しないものと認められる。

(3)  標準地及び取引事例地についての法5条1号該当性について
 諮問庁は,本件対象文書のうち,工事事務所が作成した文書及び不動産鑑定業者から提出された不動産鑑定評価書に記載されている標準地及び取引事例地に係る土地の大字・丁目・地番,前所有者及び現所有者の住所・氏名,取引の目的,取引時点,交通接近条件等の諸条件の内訳,その位置等を示す図面,時点修正(率)及び地域格差並びに不動産鑑定評価書に記載されている標準地の固定資産評価額は,当該土地の所有者が個人である場合は,当該土地の所有者の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報又は市販の住宅地図や登記簿等と照合することにより特定の個人を識別できる情報であり,法5条1号に該当し,不開示とすべき旨説明する。

 工事事務所が作成した文書に記載されている部分について
 工事事務所が作成した文書を見分したところ,個別的要因調査表及び算定表の標準地又は取引事例地に係る部分には,当該土地の所在(大字・丁目・地番)及び当該土地の現所有者又は取引に係る前後の所有者の住所・氏名が記載されており,その各記載部分については,それが個人に係るものについては,当該土地の所有者の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であり,このような情報を公にする法令の規定又は慣行はないものと認められることから,法5条1号ただし書イには該当せず,同号の不開示情報に該当すると認められる。
 そこで,事務所が作成した文書について,その法6条2項による部分開示の適否について検討すると,諮問庁が不開示とすべきとしている部分のうち,上に述べた標準地又は取引事例地に係る土地の所在(大字・枚目・地番)及び当該土地の現所有者又は前後の所有者の住所・氏名が記載されている部分については,特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分であるが,これを除けば,諮問庁が不開示とすべきとしているその他の部分を公にしたとしても,個人の権利利益を害するおそれはないものと認められる。
 以上により,事務所が作成した文書のうち,標準地及び取引事例地の所在(大字・丁目・地番)並びに標準地の所有者及び取引事例地の前後の所有者の住所・氏名が記載されている部分は,不開示が妥当であるが,その余の部分は,法5条1号及び法6条2項により不開示が妥当であるとされる情報には該当しないものと認められる。

 不動産鑑定評価書に記載されている部分について
 不動産鑑定業者から工事事務所に提出された2つの不動産鑑定評価書には,鑑定評価の対象となった対象不動産について,A鑑定評価書にはその所在,地番及び所有者の氏名が,B鑑定評価書にはその所在,地番及び所有者の住所・氏名が記載されていることが認められる。これらの部分については,いずれも鑑定評価の対象となった土地の所有者の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であり,また,鑑定評価の対象とした土地を公にする法令の規定又は慣行はないことから,法5条1号ただし書イに該当せず,鑑定評価書は,同号の不開示情報に該当すると認められる。
 そこで,不動産鑑定評価書について,その法6条2項による部分開示の適否について検討する。
 上に述べた鑑定評価対象地の所在及び当該土地の所有者の住所・氏名が記載されている部分は,特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分であると認められる。また,それぞれの鑑定評価書に添付された図面のうち,事務所が公図に基づき作成した図面及び用地実測図,A鑑定評価書の鑑定評価の対象とした土地を評価するために設定した標準地の所在・地番及びその所有者の氏名並びに上記の標準地の位置を示す図面,B鑑定評価書の取引事例地の所在を表す地番は,特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分であると認められる。
 しかしながら,上に述べた特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除けば,諮問庁が法5条1号により不開示とすべきとしているその余の部分については,これを公にしたとしても,個人の権利利益を害するおそれはないものと認められる。
 以上により,不動産鑑定評価書の鑑定評価対象地,標準地及び取引事例地に係る部分のうち,当該土地の所在・地番及びその所有者の住所・氏名が記載されている部分,事務所が公図に基づき作成した図面,用地実測図及び標準地の位置を示す図面は,不開示が妥当であるが,その余の部分は,法5条1号及び法6条2項により不開示が妥当であるとされる情報には該当しないものと認められる。

(4)  取引事例地についての法5条2号イ該当性について
 諮問庁は,取引事例地に係る上記(3)の情報は,当該土地の所有者が法人の場合は,これを公にすると,当該法人の資産内容の変動の状況が明らかとなり,秘匿されるべき資産に係る情報や収益構造等の法人の競争上に係る情報の一端がうかがい知られることとなり,法人の競争上の地位その他法人の正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当すると説明する。
 本件対象文書を見分したところ,工事事務所が作成した文書の個別的要因調査表及び算定表の取引事例地に係る土地の部分には,その所有者の法人の名称が記載されていることが認められる。
 通常,法人の個別の土地取引の内容については,法人の経営に係る情報として秘匿されるべきものと認められることから,諮問庁が不開示とすべきとしている部分のうち,当該取引事例地の取引を行った法人の名称及び当該土地の地番が記載された部分は,法5条2号イに該当するものと認められるが,当該部分を不開示とすれば,取引事例地とされた土地を取引した法人が特定されることはないのであるから,その余の部分は同号イの不開示情報には該当しないものと認められる。

(5)  法5条6号該当性について
 諮問庁が法5条6号に該当するとしている部分のうち,上記(2)から(4)までで不開示が妥当であるとした部分以外の部分についての同号該当性について,以下検討する。

 取得予定地に関する情報について
 諮問庁は,取得予定地に関する情報のうち,上記(2)に述べた項目及び用地買収総括表の対抗件数及び所要額並びに上記(3)で述べた項目のうち,標準地が取得予定地に係るものについて,これらが開示されると,被補償者の補償金額等が明らかとなるか又は推定することが可能となり,被補償者は自己の補償金額等が将来公になることを嫌って,補償交渉自体を拒む者が出てくることが考えられ,また,通常は補償金額等は公にしないことを了解した上で交渉を進めていることから,事業を施行する国が被補償者との間で築き上げてきた信頼関係が損なわれるおそれが生じることが考えられ,事業の適正な遂行に支障が生じるおそれがあるものと認められ,法5条6号に該当する旨説明する。
 このうち,それぞれの鑑定評価書には,鑑定評価の対象となった不動産の状況を撮影した写真がその撮影位置を示す住宅地図又は撮影方向を示す記載部分とともに添付されているが,これが公にされることとなると,これらの写真,図面及び記載部分における記載内容から,取得予定地のおおむねの位置を特定又は推測することが可能となり,そこから当該土地の補償金額等が明らかとなることにより,諮問庁が説明するような事態が生じるおそれがあることは否定できないことから,上記部分は,法5条6号柱書きの不開示情報に該当するものと認められ,不開示が妥当である。
 しかしながら,諮問庁が法5条6号により不開示とすべきとしているその他の部分については,上記(2)で述べたように,取得予定地の所在(大字・丁目・地番)及び当該土地の所有者の住所・氏名が不開示とされ,また,それ以外の部分の情報からも,取得予定地を特定又は推測することは困難であるか,又はそのためには特別な情報や専門的な知識に基づかなければならないものであると考えられるので,これらの部分を公にしたとしても,諮問庁が説明するような事態が生じるものとは認められない。また,地域格差に係る部分についても,用地取得等のための補償金額算定に係る事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとは認められない。よって,同号柱書きには該当せず,開示すべきである。

 取引事例地に関する情報について
 諮問庁は,取引事例地に関する情報のうち,上記(3)で述べた項目は,これを鑑定評価を含む土地価格の算定事務のみに使用するとの当該土地の所有者との間の約束を前提に取引当事者等の任意の協力を得て不動産鑑定士により収集されるものであり,通常他者には知られたくないものであって,仮にその所有者の住所・氏名はもとより時点修正や地域格差等の被調査者が特定されるような情報が公にされると,被調査者との信頼を著しく損ね,以後の協力を得ることが困難となり,土地価格算定の根幹をなす取引事例の収集に重大な支障を及ぼすこととなり,土地価格の算定事務に重大な支障を来すおそれがあるものとして,法5条6号に該当する旨説明する。
 工事事務所及び不動産鑑定業者が行った標準地の鑑定評価のための取引事例地の調査は,工事事務所の職員や不動産鑑定士が取引の当事者に個別に聞き取りをしたり,アンケートを行う等により収集されるものであり,そこで収集される情報は,取引当事者にとっては通常他人に知られたくない土地取引という私的な契約に関するものを任意で提供してもらうものであるため,当該取引事例地の関係者等に推測されるような情報が公にされることとなれば,今後聞き取り等に協力する者が得られなくなるなどして取引事例の収集に支障を来すおそれがあるものと認められる。そうなれば,公共用地の取得に当たって,取得予定地の取得価格を算定する前提となる標準地の鑑定評価について,不動産鑑定士の鑑定評価又は工事事務所の調査の際の重要な情報を入手することが困難となる等の事態が生じることが考えられ,これにより,公共用地の取得に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものと認められる。しかしながら,取引事例地が推測されないような形で開示されるのであれば,そのような支障が生じるものとは認められないことから,以下において,取引事例地が推測されるような部分の有無について検討する。
 本件対象文書を見分したところ,諮問庁が不開示とすべきとしている上記部分のうち,個別的要因調査表及び算定表に記載されている取引事例地に係る交通接近条件の欄の記載部分,A鑑定評価書の取引事例比較法適用の明細表の取引事例地の交通接近条件の欄の記載部分及びB鑑定評価書の取引事例比較法の適用の取引事例の概況の欄の駅名・方角・距離の各記載部分には,取引事例地の特定のきっかけとなるような極めて詳細かつ具体的な当該取引事例地に関連する情報が記述されていることが認められる。そして,これが明らかにされることとなると,そこにおける記載内容から,当該取引事例地が推測されるおそれがあることは否定できないところであり,これにより,上に述べたような支障が生じるおそれがあると認められることから,法5条6号柱書きの不開示情報に該当し,不開示が妥当である。
 また,それぞれの鑑定評価書には,取引事例地の位置を示した地図が添付されていることが認められ,当該図面についても,その記載内容から,取引事例地の特定のきっかけとなるような情報であると認められることから,上記と同様の理由により,法5条6号柱書きの不開示情報に該当し,不開示が妥当である。
 さらに,工事事務所が収集した取引事例地の位置を都市計画図に記載した同一状況類似地域区分図についても,上記と同様,取引事例地の特定のきっかけとなるような情報であると認められることから,法5条6号柱書きにより不開示が妥当である。
 しかしながら,諮問庁が法5条6号により不開示とすべきとしているそれ以外の部分については,取引当事者本人には自己の取引した土地であることが分かる可能性はあるものの,それ以外の第三者にとっては,取引事例地を特定又は推測することは困難であるか,又はそのためには特別な情報や専門的な知識に基づかなければならないものであると考えられ,諮問庁が説明するように,以後において,取引事例地の当事者等からの協力を得ることが困難になるものとは認められないことから,いずれも用地取得等のための補償金額算定に係る事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとは認められない。よって,法5条6号には該当せず,開示すべきである。

(6)  不動産鑑定評価書の法5条2号該当性について
 本件対象文書の二つの不動産鑑定評価書は,いずれも当該鑑定評価書を作成した不動産鑑定業者の法人に関する情報であると認められる。
 A鑑定評価書には,当該鑑定評価書を作成した不動産鑑定業者の印影が押印されているのが認められる。当審査会でこれを見分したところ,当該印影は,当該鑑定評価書を作成した不動産鑑定業者が不動産の鑑定評価に関する法律の規定に基づく不動産鑑定業に係る業務として責任をもって事務所からの依頼を受けて作成したことを証するために押印されたもので,本件鑑定評価書に記載された内容が真正なものであることを示す認証的機能を有するものであって,これにふさわしい形状を有するものであることが認められ,これが公にされることとなると,当該不動産鑑定業者の正当な利益を害するおそれがあるものと認められることから,法5条2号イの不開示情報に該当し,不開示が妥当である。
 また,諮問庁は,本件対象文書の不動産鑑定評価書に記載されている不動産鑑定士の氏名及び印影は,法5条1号により不開示とすべきである旨説明しているが,いずれの鑑定評価書も,そこに記載された不動産鑑定士が,その資格に基づき,これを作成したものであることが認められることから,法5条2号の「事業を営む個人の当該事業に関する情報」であると認められる。このうち,不動産鑑定士の氏名が記載されている部分は,これが公にされたからといって,当該鑑定士が工事事務所の取得する用地の補償額を算定するための資料とすべく,標準地に係る鑑定評価を行ったことが明らかとなるだけであり,これにより,当該鑑定士の競争上の地位その他正当な利益を害することとなるものとは認められず,同号イには該当しないことから,開示すべきである。しかし,不動産鑑定士の印影の部分については,これを見分したところ,単なる認印ではなく,当該不動産鑑定士が鑑定評価書の作成等の業務に使用している形状を有していることから,上に述べた不動産鑑定業者の印影と同様,これが開示されることとなると,事業を営む当該不動産鑑定士の正当な利益を害するおそれがあると認められ,同号イの不開示情報に該当し,不開示が妥当である。

 審査請求人のその他の主張について
 審査請求人は,本件開示請求の対象は,審査請求人の所有地に関するものであり,本人が請求している限り,守秘義務には該当しない旨主張するが,法の定めた開示請求制度は,何人に対しても,請求の目的のいかんを問わず,開示請求を認める制度であることから,開示・不開示の判断に当たっては,本人からの自己情報に係る開示請求である場合も含め,開示請求者がだれであるかは考慮されないものであることから,審査請求人の主張は,上記の審査会の判断を左右するものではない。

 本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条1号,2号又は6号に該当することを理由に不開示とした決定については,諮問庁が不開示とすべきとしている部分のうち,別紙の各記載部分は法5条1号,2号イ又は6号柱書きに該当し,不開示としたことは妥当であると認められるが,その余の部分は法5条1号,2号又は6号に該当しないことから,開示すべきであると認め,上記第1記載の審査会の結論のとおり判断した。

第6  答申に関与した委員
 藤井龍子,秋山幹男,松井茂記


 別 紙

 1  10,13,16,19,22,25,33,37枚目の所在地及び現所有者又は前後の所有者の欄の記載部分
 2  16,19,22枚目の取引事例地に係る部分の交通接近条件の欄の記載部分
 3  36,40枚目の図面に係る記載部分
 4  43,52枚目の印影
 5  44枚目の所在,地番及び所有者の欄の記載部分
 6  50枚目の地番及び所有者の氏名の記載部分
 7  54枚目の交通接近条件の欄の記載部分
 8  55枚目の所在の欄の記載部分
 9  58枚目から60枚目まで
10  62枚目から68枚目まで
11  71枚目の大字,地番並びに所有者の住所及び氏名の欄の記載部分
12  78枚目の所在地並びに取引事例の概況の欄のうちの駅名,方角及び距離の記載部分
13  81枚目及び82枚目
14  84枚目から86枚目まで