諮問庁 | : | 内閣法制局長官 |
諮問日 | : | 平成28年 8月31日(平成28年(行情)諮問第520号) |
答申日 | : | 平成29年 1月17日(平成28年度(行情)答申第650号) |
事件名 | : | 特定事件番号の諮問に係る理由説明書参考5に記載の「不採用(没)となった」事実を記録した文書の開示決定に関する件(文書の特定) |
第1 | 審査会の結論 |
「「不採用(没)となった」(平成28年(行情)諮問第427号理由説明書参考5)事実を記録した文書の全て。」(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき,別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)を特定し,開示した決定については,本件対象文書を特定したことは,妥当である。
第2 | 審査請求人の主張の要旨 |
1 審査請求の趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成28年8月1日付け内閣法制局一第26号により内閣法制局長官(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。
2 審査請求の理由
本件開示決定では平成28年の文書が特定されているが,「不採用(没)となった」時期から相当程度経過している。
「不採用(没)となった」時期の直近にその事実を記録した文書が存在するはずである。
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
審査請求人は,処分庁(以下,第3において「長官」という。)が平成28年8月1日付け内閣法制局一第26号により行った原処分(以下,第3において「本件開示決定」という。)について,同月4日付けで審査請求(以下,第3において「本件審査請求」という。)を行い,他にも文書が存在するはずであるとして,さらなる行政文書の開示を求めているところ,以下に述べるとおり,当局は,同年7月13日付けの審査請求人による開示請求(以下「本件開示請求」という。)に係る行政文書を,本件開示決定した行政文書以外に保有していないことから,本件審査請求には理由がない。
(1)本件審査請求に係る経緯
ア 平成28年6月21日
内閣法制局が,審査請求人が平成28年3月23日付けで行った長官に対する異議申立てに対し,情報公開・個人情報保護審査会への諮問を行った。【参考1】(略)
イ 平成28年7月13日
審査請求人が,上記諮問に係る平成28年内閣法制局一第14号理由説明書参考5に記載された「不採用(没)となった」事実を記録した文書の全ての開示を求める本件開示請求を行った。
ウ 平成28年8月1日
長官が,本件開示請求に対して本件開示決定を行った。
エ 平成28年8月4日
審査請求人が,本件開示決定に対して,他にも文書が存在するはずであるとして,本件審査請求を行った。
(2)原処分を維持する理由
ア 審査請求人は,審査請求書において,「他にも文書が存在するはずである」旨主張するが,審査請求人から開示請求のあった行政文書については既に全て開示したところであり,そのほかに該当する行政文書は存在しない。
イ 審査請求人は,審査請求書において,「本件開示決定では平成28年の文書が特定されているが,「不採用(没)となった」時期から相当程度経過している。「不採用(没)となった」時期の直近にその事実を記録した文書が存在するはずである」と主張しているが,以下のとおり,内閣法制局に該当する行政文書は存在しない。
すなわち,平成28年内閣法制局一第14号理由説明書参考5に記載されているように,「不採用(没)となった」のは平成26年7月1日であるが,この指示は内閣法制局第一部の担当者が作成した答弁資料案について,内閣法制局長官から担当者に対して口頭でなされ不採用(没)となったものであり,担当者は当該指示の事実等について記録した行政文書を作成することはなかった。その上で,本件開示決定で開示した行政文書については,国会からの平成26年7月当時の経緯等に関する質問に関し,国会提出資料等の中で当時の経緯等を明らかにしたものであり,これ以外には,「不採用(没)となった」時期の直近も含め,指示の事実等を記録した行政文書は存在しない。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成28年8月31日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年11月29日 審議
④ 同年12月19日 審議
⑤ 平成29年1月13日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件開示請求について
本件開示請求は,「「不採用(没)となった」(平成28年(行情)諮問第427号理由説明書参考5)事実を記録した文書の全て。」の開示を求めるものである。
処分庁は,別紙に掲げる文書1ないし文書4を特定し,その全部を開示する原処分を行ったところ,審査請求人は,「不採用(没)となった」時期の直近にその事実を記録した文書が存在するはずであるとしているが,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,文書の特定の妥当性について検討する。
2 文書の特定の妥当性について
(1)当審査会において,諮問書に添付された文書1ないし文書4を確認したところ,文書1には「このAの答弁資料案は,平成26年7月1日の閣議決定の後の国会における閉会中審査に備えて第一部の担当者(参事官及び参事官補)が作成し,同日,次長の了承を得て,長官に上げたが,国会では新三要件を中心とする法理の説明を丁寧に行うべきであるとの答弁方針が指示され,不採用(没)となったものである・・・」,文書2には「このAの答弁資料案は,平成26年7月1日の閣議決定の後の国会における閉会中審査に備えて第一部の担当者(参事官及び参事官補)が作成し,同日,次長の了承を得て,長官に上げたが,国会では新三要件を中心とする法理の説明を丁寧に行うべきであるとの答弁方針が指示され,不採用(没)となったものである・・・」,文書3には「平成26年7月1日,上記12問は次長の了承を得て長官に上げられたが,長官により,国会では新三要件を中心とする法理の説明を丁寧に行うべきであるとの答弁方針が示され,同日,不採用,すなわち没となった。」,並びに,文書4には「次長了の国会答弁資料案は,平成26年7月1日に,次長の了承を得て,長官に上げたが,国会では新三要件を中心とする法理の説明を丁寧に行うべきであるとの答弁方針が指示され,不採用(没)となったものであり・・・」及び「このAの答弁資料案は,平成26年7月1日の閣議決定の後の国会における閉会中審査に備えて第一部の担当者(参事官及び参事官補)が作成し,同日,次長の了承を得て,長官に上げたが,国会では新三要件を中心とする法理の説明を丁寧に行うべきであるとの答弁方針が指示され,不採用(没)となったものである・・・」と記載されていることが認められることから,これらは,上記1の「不採用(没)となった」事実を記録した文書(本件請求文書)に該当すると認められる。
(2)審査請求人は,文書1ないし文書4の外に,「不採用(没)となった」時期の直近にその事実を記録した文書が存在するはずである旨主張するところ,諮問庁は,当該不採用の指示は内閣法制局第一部の担当者が作成した答弁資料案について,内閣法制局長官から担当者に対して口頭でなされたものであり,担当者は当該指示の事実等について記録した行政文書を作成することはなく,文書1ないし文書4以外に,「不採用(没)となった」時期の直近も含め,指示の事実等を記録した行政文書は存在しない旨説明する。
(3)上記(2)の諮問庁の説明については,国の行政機関における国会答弁資料作成の一般的な手続として,不自然,不合理な点があるとは認められず,審査請求人の主張にも,「不採用(没)となった」時期の直近にその事実を記録した文書が存在することをうかがわせるような具体的な根拠が示されているわけではない。
(4)また,念のため,当審査会事務局職員をして,本件対象文書の探索の方法及び範囲について諮問庁に確認させたところ,内閣法制局担当部局の書庫,事務室及びパソコンの共用フォルダー内を探索した結果,本件対象文書の外に本件請求文書に該当する紙文書及び電子データはなかったとのことであり,探索の方法及び範囲に特段の問題はないと認められる。
(5)その外,本件請求文書に該当するものとして本件対象文書の外に特定すべき文書の存在をうかがわせる事情も認められないことから,本件開示請求の対象として本件対象文書を特定したことは,妥当である。
3 本件開示決定の妥当性について
以上のことから,本件請求文書の開示請求につき,本件対象文書を特定し,開示した決定については,内閣法制局において,本件対象文書の外に開示請求の対象として特定すべき文書を保有しているとは認められないので,本件対象文書を特定したことは,妥当であると判断した。
(第1部会) |
委員 岡田雄一,委員 池田陽子,委員 下井康史
別紙
本件対象文書
文書1 「平成28年提出資料等」のうち,「平成28年4月4日に開催された参議院決算委員会理事会に提出した資料」
文書2 「平成28年国会用資料(実問)」のうち,「平成28年4月4日 衆・決算委 磯崎哲哉(注:「哲史」の誤記)君対長官 問1」
文書3 平成28年3月1日付け 調査結果について
文書4 「異議申立書・決定書(平成28年度)」のうち,「諮問書(平成28年内閣法制局一第14号)の理由説明書」,「諮問書(平成28年内閣法制局一第17号)の理由説明書」及び「諮問書(平成28年内閣法制局一第21号)の理由説明書」