諮問庁 | : | 文部科学大臣 |
諮問日 | : | 平成28年 1月20日(平成28年(行情)諮問第29号) |
答申日 | : | 平成28年 4月27日(平成28年度(行情)答申第34号) |
事件名 | : | 特定法人の学校法人実態調査表(平成23年度~平成27年度)の一部開示決定に関する件 |
第1 | 審査会の結論 |
特定法人が提出した学校法人実態調査表(平成23年度~平成27年度)(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,異議申立人が開示すべきとする部分のうち,別紙の3に掲げる部分を開示すべきである。
第2 | 異議申立人の主張の要旨 |
1 異議申立ての趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成27年9月29日付け27受文科高第3号の36により文部科学大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。
2 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての理由は,異議申立書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)異議申立て項目
学校法人特定大学の学校法人実態調査表(平成23年度~平成27年度)のうち,特定の個人を識別でき,公にすることにより個人を特定ないし個人の権利を害するおそれのある情報となり得ることが,法5条1号に該当することとして不開示とされた項目,また,公にすることにより,特定大学の業務に支障を来し,経営戦略や経営状態を示すことで,特定大学の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報となり得ることが,同条2号イに該当することとして不開示とされた決定に異議を申し立てるとともに,以下の項目を含む項目について開示されるよう改めて申請する。
ア 役員等の氏名等(1-(3))のうち,「理事・監事の区別」,「職名又は担当職務」,「氏名」,「常勤・非常勤の別」,「現職」,「報酬年額(役員報酬との区分も明記)」,「就任年月日」について
イ 役員等の氏名等(1-(3))のうち,役員に対する退職金等支給状況(①-2)
ウ 管理運営の状況(2-(1)理事会,評議会の開催状況)
(2)異議申立て理由
ア 異議申立て項目(上記(1)ア及びイ)について
特定大学においては,特定年の開学以来,一度も消費収支差額がプラスになることのないまま推移している。このようなひっ迫した財務状況下にあって,役員及び一部専任教員の報酬は,異常に高いことが判明している。しかも,報酬の高い役員や教職員は,大学運営の十分な知識のないまま,稚拙な大学経営に関わってきただけでなく,規定違反や違法な行動についても目をつむっている。
特に,理事会のガバナンスとコンプライアンスに対する意識は極めて低く,本年に入って2回も理事が刷新されているにもかかわらず,本質的な経営は何ら変わっていない。
この様な特定大学の経営と大学の将来に対して危機感を抱いた特定大学の有志教職員は,大学の健全な経営を目指して,特定年月日Aに,教職員組合を結成し,雇用の安定,労働条件の改善,健全な大学経営を大学に要求していくことを決意した。しかし,当該結成に際し,結成翌日に理事長は,教職員組合職員への誹謗中傷及び妨害行為を行った。そこで,特定年月日Bに教職員組合は特定都道府県労働委員会に不当労働行為救済措置の申立てをし,これまでに2回の労働委員会にて事件が取り扱われたが,遅々として進展はない。(事件番号(略))。教職員組合はこうした学内での大学改善の行動を貴省に訴えるべく,文部科学省私学参事官室に特定年月日Dに電話相談をしたところ,団体交渉にある要求書については答えるように指導するとのお言葉をいただいた。しかしその後も団体交渉は行われても,文書による回答はなく不誠実な交渉が続いていたため,特定年月日Eに特定都道府県労働委員会に団体交渉における不誠実対応について不当労働行為救済の申立てを行った。また,大学の経営改善に向けて少しでも進展させるべく,特定年月日Fには軽微な便宜供与について労働委員会にあっせんの申請を提出している。(事件番号(略))。
ご存じのとおり,特定大学は本年に入ってから,二度に渡って大幅な理事の変更が行われている。どちらも大学経営を健全化するためのはずであったが,十分な効果が得られているとは言い切れない。なぜならば,理事会の機能不全が改善されていないからである。特定年月日Cには,文部科学省出身者が理事に就任したが,理事会から教職員に対して経営改善の道筋や方向性について十分な説明はない。
弁護士による内部調査も行われたようであるが,限られた情報による分析に基づいた調査では,特定大学の問題を明らかにすることはできない。これまでの重大な規定違反や違法な手続等は,新任の理事に伝わっていない。したがって,現時点における理事会の対応は,きわめて不十分なものとなっている。現理事長と学長は,これまでの理事であり,第三者評価,私学事業財団からの指導も受けてきた。当然,特定大学のガバナンスや財務の問題について,認識もしてきたはずである。財務について意見具申してきた理事もいたが,聞き入れることなく,自らの地位と名誉にしがみつき,私服を肥やしてきた。第三者評価についても,学内からさんざん声が上がっていたにもかかわらず,「政治家に頼めば何とかなる」などの発言を繰り返すばかりであった。中長期計画や学科再編については,教職員に対してまともな説明もなく,結果だけが報告されるような状態が続いている。残念ながら,理事会の態度と行動は,文部科学省への挑戦といわざるを得ない状況にある。
学内の賃金格差が著しい状況にある中で,弱者の立場にある教職員が,異議申立人を通じて「公にすることにより個人の権利を害するおそれのない」項目,すなわち役員等の氏名等(1-(3))のうち,「理事,監事の区別」,「職名又は担当職務」,「氏名」「常勤・非常勤の別」,「現職」,「報酬年額(役員報酬との区分も明記)」,「就任年月日」について開示要請することは,異議申立人としては,法5条1号に該当しないものと認識している。さらに,大学経営の健全化と適正化につながるとともに,日本私立学校振興・共済事業団が行う経常費補助金の配分の適正化の趣旨にも反するものと判断する次第である。
(3)異議申立て項目(上記(1)ウ)について
私立学校法41条では,大学経営において,評議員会を置くことが義務付けられ,理事長は,同法42条に基づき予算,借入金及び重要資産の処分に関する事項等について,あらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないとされている。
しかし,特定大学においては,関係者の証言から,理事会においては,理事長の一存で大学の重要事項が決せられ,かつ評議会も開催されないまま,理事長の専横がまかり通ってしまう状況にあるという疑念が持たれている。
さらに,貴省による再三の資料開示要請に対しても,本学経営者からの誠意ある回答がないままに現在に至っている。このような状況に鑑みても,本学経営者においては,健全な大学経営を遂行する意思をもはや保持していないとみなさざるを得ない。
教職員組合は,大学を私物化する現理事長を中心とした同族経営による本害を廃し,大学経営の適正化を図ることで,自らの労働環境と教育環境の改善を設立の主目的としております。添付の要求書にもあるように,これまで教職員組合の要求書には,現時点での賃金アップなどの要求はない。
したがって,現時点において,管理運営の状況(2-(1)理事会,評議会の開催状況)についての開示要請をすることで,「特定大学の業務に支障を来し,また経営戦略や経営状態を示すこととなり,本学の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」は,少なくとも特定大学の極めて問題のある経営行動を前提するのであれば,最早ないものと判断され,逆に,大学運営の適正化のためには,必要不可欠かつ喫緊の手続の一環であると思料する次第である。
なお,本年に結成された教職員組合と大学とのやりとりを示す資料を添付し,私立学校法に抵触していると思われる状況について提示する。
(添付資料省略)
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 不服申立てに係る行政文書等について
本件不服申立てに係る行政文書は,平成23年度から平成27年度までに特定法人から文部科学省に提出された「学校法人実態調査表」である。
本件対象文書につき,法5条1号,2号イに該当する情報が記載されている部分については不開示とし,一部開示決定としたところ,異議申立人から,当該不開示部分の開示を求める旨の異議申立てがされたところである。
2 不開示情報該当性について
(1)「個人の住所」,「年齢」,「性別」,「氏名」,「報酬年額」,「履歴」,「役員に対する退職金等支給状況」,「自署及び印影」については,特定の個人を識別できる情報又は他の情報と照合することにより特定の個人を識別できることとなる情報であって,公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報であり,法5条1号に該当するために不開示とした。また,法人の理事会等の詳細な議事内容,「ファックス番号」及び「メールアドレス」については法人に関する情報であって,公にすることにより,業務に支障をきたすとともに当該法人の経営戦略や経営状態を示すこととなり,法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,同条2号イに該当するため不開示とした。
なお,「氏名」は,原則,特定個人を識別できる情報であり,法5条1号に該当する情報であるため開示する義務はない。しかしながら,学校法人の役員の氏名は,慣例として公にされていること及び当該学校法人が設置する大学のホームページにおいても役員の氏名を公表していることから,当該学校法人の役員の氏名は同号ただし書イに該当する情報であるため,原処分において開示とした。
原処分後,異議申立人から開示を求められている項目は,以下のとおり。
A 役員等の氏名等(1-(3))のうち,「理事・監事の区別」,「職名又は担当職務」,「氏名」,「常勤・非常勤の別」,「現職」,「報酬年額(役員報酬との区別も明記)」,「就任年月日」について
B 役員等の氏名等(1-(3))のうち,役員に対する退職金等支給状況(①-2)
C 管理運営の状況(2-(1))理事会,評議員会の開催状況
当該箇所が記載されているページは,以下のとおり。
・ 平成23年度「3-1,3-2,6-1及び6-2」ページ
・ 平成24年度「3-1,3-2,6-1(1),6-1(2)及び6-2」ページ
・ 平成25年度「3-1,3-2,6-1及び6-2」ページ
・ 平成26年度「3-1,3-2,6-1及び6-2」ページ
・ 平成27年度「3-1,3-2,6-1及び6-2」ページ
なお,異議申立人が開示を求めている箇所Aのうち,「理事・監事の区別」,「職名又は担当職務」,「氏名」,「常勤・非常勤の別」,常勤理事の「現職」,「就任年月日」及びCについては原処分において不開示とはしておらず,非常勤理事の「現職」,「報酬年額」を不開示とした。また,Bについては,本来不開示情報にあたるものと考えるが,本件対象文書においては該当がなかったため不開示としていない。
(2)法5条1号該当性について
まず,本件対象文書の「3-1,3-2」ページにある「報酬年額(役員報酬額を含む。)」の該当性についてであるが,報酬とは,各個人の労働の対価として個人に支払われるものである。これは,報酬を受ける立場から見れば労働の対価として得た個人の収入である。さらに,原処分において,役員の氏名及び常勤理事の現職を開示しており,「報酬年額(役員報酬額を含む。)」は法5条1号本文の「特定の個人を識別することができる情報」として不開示情報に該当するものと認められる。
なお,「報酬年額(役員報酬額を含む。)」は法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報ではないため,法5条1号ただし書イに該当せず,また,同ただし書ロ,ハに該当するとすべき事情も存在しない。
付言すれば,異議申立人は,開示を求める理由として,賃金格差が著しい状況にある中で,弱者の立場にある教職員が,教職員組合を通じて開示要請することは法5条1号に該当しないと主張し,大学経営の健全化と適正化を理由に挙げているが,特定個人の給与・報酬支払金額の公開を求める論理として不適当である。
また,非常勤理事の「現職」については,所属先を公にすることにより,種々の不利益や圧力を受けることも考えられること等から,個人の権利利益を害するおそれがないとまでは認められず,これを不開示とすることにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとは認められない。
加えて,情報開示の該当性の判断は,開示請求者が誰であるか,開示請求に係る行政文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的事情に影響されるものではなく,本件対象文書に記載された個人に関する情報が法5条各号に該当するかどうかにより行われるものである。
上記理由により,「報酬年額」,「履歴(現職)」が法5条1号に規定する不開示情報に該当する情報として不開示とした原処分は妥当であると判断する。
(3)法5条2号イ該当性について
まず,異議申立人が求めている本件対象文書の「6-1,6-2」ページにある「理事会,評議員会の開催状況」については,既に開示をしている。
なお,参考として,「法人の理事会等の詳細な議事内容」について不開示としているが,本件対象文書の「7」ページ(平成26年度のみ)には「借入金の有無」の概要の他,法5条1号及び法5条2号イに該当しない情報が記載されていることから,ページ全てを不開示とせず,当該ページの不開示部分を黒塗りして開示決定を行ったものである。このことにより既に「借入金の有無」が存在することを示しており,更に詳細な内容等を開示してしまうと,特定大学の具体的な取引や内部管理状況等の一端を示してしまい,これらが公にされた場合には,当該法人が同業他社との競争関係において不利となるなど,当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められる。
上記理由により,「法人の理事会の詳細な議事内容」が法5条2号イに規定する不開示情報に該当する情報として不開示とした原処分は妥当であると判断する。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成28年1月20日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年2月8日 審議
④ 同年3月29日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年4月25日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件開示請求について
本件開示請求は,平成23年度ないし平成27年度に特定法人が提出した学校法人実態調査表(本件対象文書)の開示を求めるものであり,処分庁は,本件対象文書を特定し,その一部を法5条1号及び2号イに該当するとして不開示とする原処分を行った。
異議申立人は,不開示とされた部分のうち別紙の1に掲げる①ないし⑨(以下,順に「不開示部分①」ないし「不開示部分⑨」という。)を開示すべきとして原処分の取消しを求めている。
諮問庁は,不開示部分①ないし不開示部分④及び不開示部分⑦は不開示としておらず,不開示部分⑧は本来不開示情報に当たるものと考えるが,本件対象文書においては該当がなかったため不開示としていないとし,不開示部分⑤,不開示部分⑥及び不開示部分⑨を不開示とした原処分を妥当としている。
したがって,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,異議申立人が開示を求める不開示部分のうち,不開示部分⑤,不開示部分⑥及び不開示部分⑨(以下,併せて「本件不開示部分」という。)の不開示情報該当性について検討する。
2 本件不開示部分の不開示情報該当性について
(1)本件対象文書について
当審査会において本件対象文書を確認したところ,平成23年度ないし平成27年度それぞれにおいて別紙の2に掲げる(1)ないし(7)の構成に基づく記載が認められる。
(2)本件不開示部分について
異議申立人が開示を求める不開示部分⑤,不開示部分⑥及び不開示部分⑨は,具体的には以下のとおりである。
ア 不開示部分⑤は,別紙の2の(1)に掲げる「1-(3)役員等の氏名等」(以下「書式1-(3)」という。)の「現職」欄の記載のうち,特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者を除く役員及び評議員の現職であると認められる。
イ 書式1-(3)の「報酬年額,役員報酬額,(全報酬額)(平成24年度ないし平成27年度にあっては「報酬年額,全報酬額,うち役員報酬額」と書式が変更されている。)」欄(以下,併せて「報酬年額欄」という。)がいずれも不開示とされており,本件対象文書には報酬年額欄の外に報酬年額に係る記載が認められないことから,不開示部分⑥は,役員の報酬年額欄であると解される。
ウ 別紙の2の(2)に掲げる「2-(1)理事会,評議員会の開催状況」(以下「書式2-(1)」という。)は原処分で全て開示されているものの,平成26年度に係る書式2-(1)の参考となる「2-(1)-参考」の「2 平成25年度当初予算又は補正予算に計上されていない,期中における借入金,重要な資産の処分の有無,(1)借入金(当該会計年度内の収入をもって償還する一時の借入金を除く)の有無」の回答欄(以下「回答欄」という。)に不開示部分があり,書式2-(1)及び2-(1)-参考には外に不開示部分が認められないことから,不開示部分⑨は回答欄であると解される。
(3)不開示情報該当性について
ア 不開示部分⑤について
(ア)不開示部分⑤は,上記(2)アのとおり「現職」欄の記載のうち,特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者を除く役員及び評議員の現職であるところ,そもそも,当該欄は,「氏名」欄,「住所」欄,「最終学歴」欄といったその他の欄と一体となって特定の個人に関する情報を示すものである。
したがって,「現職」欄は,「氏名」欄,「住所」欄,「最終学歴」欄等と一体となって,各々の個人に係る法5条1号本文前段の個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものに該当すると認められる。
(イ)当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,当該不開示部分を不開示とすべき理由について改めて確認させたところ,諮問庁は,以下のとおり説明する。
a 役員及び評議員のうち特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者の現職は,特定法人において公表されていることから原処分において開示することとしたが,特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者を除く者の現職は,これを公にしている事実及び公表の予定がないことから法5条1号の不開示情報に該当すると考え原処分において不開示とした。
b 本件諮問後に改めて役員及び評議員の現職の公表慣行を確認したところ,特定法人の役員の現職は非常勤も含め全て,少なくとも平成22年以降毎年特定法人のホームページにおいて公表しているが,評議員の現職は特定法人及び文部科学省のいずれにおいても公にしている事実はなかった。
(ウ)上記諮問庁の説明によれば,不開示部分⑤のうち特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者を除く役員の現職は,特定法人のホームページにおいて公表しているというのであるから,公表慣行があるものと認められる。
一方,不開示部分⑤のうち評議員の現職は,特定法人及び文部科学省のいずれにおいても公にしておらず,法5条1号ただし書イに該当するとは認められず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も存しない。また,原処分において既に個人識別部分である「氏名」欄を開示していることから,法6条2項の部分開示の余地もない。
したがって,不開示部分⑤のうち,別紙の3の(1)に掲げる部分は,法5条1号ただし書イに該当し,開示すべきであるが,その余の部分は,同号の不開示情報に該当し,不開示としたことは妥当である。
イ 不開示部分⑥について
(ア)当該不開示部分(報酬年額欄)は,役員それぞれに係る報酬年額であり,上記アと同様に,「氏名」欄,「住所」欄,「最終学歴」欄等と一体となって,各々の個人に係る法5条1号本文前段の個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものに該当すると認められる。
(イ)当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,当該不開示部分を不開示とすべき理由について改めて確認させたところ,諮問庁は,特定法人の役員の報酬年額は,特定法人及び文部科学省のいずれにおいてもこれを公にしている事実及び公表の予定がないことから法5条1号の不開示情報に該当すると考え原処分において不開示とした旨説明する。
(ウ)報酬年額欄は,特定法人及び文部科学省のいずれにおいても公にしておらず,法5条1号ただし書イに該当するとは認められず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も存しない。また,原処分において既に個人識別部分である「氏名」欄を開示していることから,法6条2項の部分開示の余地もない。
したがって,不開示部分⑥は,法5条1号の不開示情報に該当し,不開示としたことは妥当である。
ウ 不開示部分⑨について
(ア)当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,当該不開示部分を不開示とすべき理由について改めて確認させたところ,諮問庁は,「回答欄に記載されている情報は年度当初予算又は補正予算に計上されていない期中における借入金の有無であり,特定法人及び文部科学省のいずれにおいても公にしておらず,特定法人の経営上の機微な情報であり,これを公にした場合,特定法人が同業他社との競争関係において不利となり,特定法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イに定める不開示情報に該当する」旨説明する。
(イ)当審査会において当該不開示部分を見分したところ,回答欄の書式は,「有」又は「無」のいずれかを選択するものであり,「有」を選択する場合にあっては,理事会審議年月日及び評議員会審議年月日を記載することになっていることが認められ,また,平成23年度ないし同25年度及び同27年度の学校法人実態調査表の回答欄と同様の部分の各記載は,原処分で開示されており,いずれも「無」が選択されていることが認められた。
そうすると,当該不開示部分(平成26年度の学校法人実態調査表)で「有」又は「無」のどちらが選択されているのかはおのずと明らかであり,さらに,理事会及び評議員会の開催年月日は原処分で全て開示されていることから,当該不開示部分のうち理事会審議年月日及び評議員会審議年月日として記載されている情報は,既に開示されている理事会及び評議員会の開催年月日のいずれかであることも明らかである。
(ウ)以上のことから,不開示部分⑨について,公にしても特定法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められないことから,法5条2号に該当せず,開示すべきである。
3 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
4 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号及び2号イに該当するとして不開示とした決定については,異議申立人が開示すべきとする部分のうち,別紙の3に掲げる部分は同条1号及び2号イのいずれにも該当しないと認められるので,開示すべきであるが,その余の部分は同条1号に該当すると認められるので,不開示としたことは妥当であると判断した。
(第5部会) |
委員 南野 聡,委員 椿 愼美,委員 山田 洋
別紙
1 異議申立人が開示を求める部分
役員等の氏名等(1-(3))のうち
① 理事・監事の区別
② 職名又は担当職務
③ 氏名
④ 常勤・非常勤の別
⑤ 現職
⑥ 報酬年額(役員報酬との区分も明記)
⑦ 就任年月日
⑧ 役員に対する退職金等支給状況(①-2)
管理運営の状況の
⑨ 2-(1)理事会,評議員会の開催状況
2 学校法人実態調査表の構成について
(1)学校法人の概要
1-(1)設置する学校の内容
1-(2)学校法人の沿革(概要)
1-(3)役員等の氏名等
1-(3)-参考
(2)管理運営の状況
2-(1)理事会,評議員会の開催状況
2-(1)-参考
2-(2)監事の職務執行状況
2-(3)顧問,参与等の設置状況
(3)収益事業の状況
(略)
(4)関係する会社の設立等の状況
(5)諸規定の整備状況
(6)学校法人の組織機構等
(略)
(7)その他
(略)
3 本件不開示部分のうち開示すべき部分
(1)別紙の2に掲げる「1の1-(3)役員等の氏名等」の特定法人又は特定大学に常勤として勤務している者を除く役員の現職
(2)平成26年度に係る別紙の2に掲げる「2の2-(1)-参考」の「2 平成25年度当初予算又は補正予算に計上されていない,期中における借入金,重要な資産の処分の有無,(1)借入金(当該会計年度内の収入をもって償還する一時の借入金を除く)の有無」の回答欄