【裁判所】 |
東京地方裁判所 |
【裁判年月日】 |
平成24年9月27日 |
【見出し】 |
損害賠償請求事件 |
【要旨】
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情報公開法10条は,1項において,開示決定等は開示請求があった日から30日以内にしなければならない旨を定めるとともに,2項において,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,1項に規定する期間を30日以内に限り延長することができる旨を定めている。そして,上記にいう「事務処理上の困難」とは,当該開示請求に対し同条1項に規定する期間内に開示決定等を行うことが行政機関側の事情により困難であることを意味し,開示請求に係る行政文書の量の多少,開示請求に係る行政文書の開示・不開示の審査の難易,当該時期における他に処理すべき開示請求事案の量のほか,行政機関の他の事務の繁忙,勤務日等の状況なども考慮して,当該開示請求の事務処理が困難となるか否かにより判断される。
また,情報公開法11条は,開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,開示請求があった日から60日以内にその全てについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,前条の規定にかかわらず,開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし,残りの行政文書については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる旨定めている。そして,上記にいう「開示請求に係る行政文書が著しく大量」かどうかは,1件の開示請求に係る行政文書の物理的な量とその審査等に要する業務量だけによるわけではなく,行政機関の事務体制,他の開示請求事案の処理に要する事務量,その他事務の繁忙,勤務日等の状況なども考慮した上で判断される。
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本件各開示請求の対象文書は,本件開示請求1につきA4判用紙3枚,本件開示請求2につき同1枚,本件開示請求3につき同27枚,本件開示請求4につき同1枚,本件開示請求5につき同3枚であったが,いずれも対象文書の特定につき補正の手続を要したこと,特定された対象文書には情報公開法5条所定の不開示情報が含まれている可能性があったため,開示・不開示の判断につき慎重な検討を要し,関係部署との調整などの事務処理を行う必要があったこと,防衛大臣は,本件各延長決定等を行った平成23年10月27日前後の期間において,原告からだけでも本件各開示請求を含めて124件の開示請求を受けており(対象文書の総数は,A4判用紙6万枚),他に処理すべき開示請求事案と合わせれば合計約260件(対象文書の総数は,A4判用紙約11万4000枚)に達する開示請求に対応しなければならなかったこと,加えて,防衛大臣は,同時期に,原告からの開示決定等に対する異議申立てを154件受理しており,他の異議申立て事件を合わせて約190件の異議申立ても処理しなければならない状況にあったこと,以上の事実が認められる。
上記の事実関係の下では,本件各延長決定は,情報公開法10条2項に基づいて適法にされたものと認められ,また,本件特例延長決定は,情報公開法11条に基づいて適法にされたものと認められる。
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原告は,延長後の開示決定等期限が到来する前に,防衛大臣に対し,本件異議申立てを行ったものである。そうすると,本件異議申立ては,本件各開示請求について防衛大臣に「不作為」があるとはいえないことから,不適法であると解される。以上のとおり,本件異議申立てが不適法である以上,異議申立てがあった日の翌日から起算して20日以内に,防衛大臣に応答すべき義務があるとはいえないことになるから(行政不服審査法50条1項,2項参照),防衛大臣が上記期間内に本件異議申立てに応答しなかったことに職務上の法的義務違反があるとはいえない。したがって,防衛大臣の上記対応に国家賠償法1条1項所定の違法はない。
【概要】
本件は,原告が,行政機関情報公開法に基づく行政文書の開示請求(請求する行政文書の名称等を「統合幕僚監部において,『警察との共同に関する研究』に関して『行政文書ファイル等』(防衛省行政文書管理規則(平成23年防衛省訓令第15号))として管理されている行政文書の全て。(計画の実施に関わるものであり,ロジ関連のものは除く)。*ただし同種研究が平成22年度も行われていれば,平成22年度のものを希望。更に『行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令』別表でいう『七 電磁的記録』があれば,それを希望。」とする請求等)開示請求に対する防衛大臣の不作為について行政不服審査法7条に基づき異議申立てをしたのに対し,同大臣がこれに応答しなかったことは同法50条に違反するところ,かかる違法行為により10万円に相当する精神的損害を被ったとして,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償を求める事案である。請求棄却。
【上下級審判決】
【同一事案の答申】
【参考となる判決】
【添付文書】