諮問庁 | : | 独立行政法人国際協力機構 |
諮問日 | : | 平成27年 3月20日(平成27年(独情)諮問第17号) |
答申日 | : | 平成27年 9月 9日(平成27年度(独情)答申第39号) |
事件名 | : | 「Nacala Corridor Fund」等の開示決定に関する件(文書の特定) |
第1 | 審査会の結論 |
ナカラ・ファンド関連資料(モザンビーク,ブラジル,日本)(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき,次の3文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)を特定し,開示した決定については,平成25年4月より前に収集したナカラ・ファンドに関する資料を対象として,改めて開示決定等をすべきである。
文書1 Nacala Corridor Fund
文書2 特定参議院議員提出モザンビークでの三角協力プロサバンナ事業に関する質問に対する答弁書要旨
文書3 Joint Statement on Private Investment within ProSAVANA
第2 | 異議申立人の主張の要旨 |
1 異議申立ての趣旨
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件請求文書の開示請求に対し,平成26年10月24日付けJICA(6R)第10-24001号により独立行政法人国際協力機構(以下「機構」,「JICA」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った開示決定(以下「原処分」という。)について,他にも文書が存在するものと思われる。
2 異議申立ての理由
平成24年8月24日に東京のJICA研究所で開催されたJICA主催「第6回モザンビーク北部農業開発に関する意見交換会」にてナカラ・ファンドに関する発表が行われており,同意見交換会で同ファンドの詳細発表を受けるに当たって,JICA内部には当該ファンドについての資料があるものと考えられる。また,同年11月15日に特定大学で開催された講演会にて,JICA特定職員より「(ナカラ)ファンドが良いものであれば(JICAも)参加する」という回答が得られているように,この時点では同ファンドへの関与が言及されていた。他方,今回開示されたのは同25年度の既に公開された資料(FGV Projetos作成「Nacala Fund」)であり,それ以前に収集していたナカラ・ファンドに関する資料の全ての開示を要請する。
第3 | 諮問庁の説明の要旨 |
1 経緯
処分庁は,異議申立人が行った開示請求「ナカラ・ファンド関連資料(モザンビーク,ブラジル,日本)」に対し,3文書を特定し,開示とする原処分を行った。
2 異議申立人の主張について
本件開示請求は「ナカラ・ファンド関連資料」であり,原処分を検討するに当たり,ナカラ・ファンドに関して機構内部又は外部向けの説明等に用いる資料として保有している3件の文書を特定し,原処分において全部開示した。
しかし,異議申立書において,開示請求者は平成25年度のFGV Projetos作成の資料「Nacala Fund」公開以前に収集していたナカラ・ファンドに関する資料の全ての開示を要請している旨が明らかになった。この趣旨を踏まえて改めて検討した結果,機構が収集していた資料として,ナカラ・ファンドの事業構想に関する資料,計7件が対象文書として該当すると考えられる。
ただし,これら全ての文書は,公にすることにより,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため,法5条2号イ及びロの規定に基づき,全部を不開示とすることが妥当であると考える。
第4 | 調査審議の経過 |
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成27年3月20日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年7月21日 審議
④ 同年9月7日 審議
第5 | 審査会の判断の理由 |
1 本件対象文書について
本件対象文書は,文書1ないし文書3の3文書である。
異議申立人は,本件対象文書以外に文書が存在する旨主張していることから,以下,本件対象文書の特定の妥当性について検討する。
2 本件対象文書の特定の妥当性について
(1)本件対象文書の特定について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,次のとおりであった。
ア 本件開示請求は,「ナカラ・ファンド関連資料(モザンビーク,ブラジル,日本)」の開示を求めるものである。
イ ナカラ・ファンドとは,ブラジルの主要な調査機関の一つであるジェトゥリオ・ヴァルガス財団がナカラ回廊地域において大規模農業を展開するための投資ファンドである。
ウ 本件開示請求を受け,ナカラ・ファンドが公表されたのは平成25年であるので,同年4月以降に収集した同ファンドに関する資料の開示を求めているものと解し,本件対象文書を特定し開示した。
なお,原処分前に,異議申立人に対し本件開示請求の趣旨について確認したり開示請求文言の補正を求めたりはしていない。
エ 機構は,ナカラ・ファンドに関する資料として,本件対象文書以外に平成25年4月より前に収集した資料を保有しているが,本件開示請求の趣旨を上記ウのとおり解したので,当該資料を原処分では特定しなかった。
(2)諮問庁から本件対象文書の提示を受けて確認したところ,本件対象文書は本件請求文書に該当すると認められるが,本件請求文書には作成及び取得時期の限定がなく,諮問庁の上記(1)の説明によると,本件対象文書は平成25年4月以降に収集したものであり,それより前に収集したナカラ・ファンドに関する資料を保有しているとのことであるので,当該資料も本件請求文書に該当すると認められ,当該資料を対象として改めて開示決定等をすべきである。
3 付言
(1)文書の特定について
諮問庁の理由説明書における説明や当審査会に対する説明から,処分庁は,本件開示請求に対し,その趣旨を平成25年4月以降に収集したナカラ・ファンドに関する資料と限定的に解釈して対応したことがうかがわれるが,かかる対応は,本件請求文書に作成及び取得時期の限定がないことから,法1条及び3条の趣旨に照らし,不適切と言わざるを得ない。
開示請求内容に合致する文書が複数存在する場合には,その全てを対象文書として特定した上で開示決定等を行う必要があり,仮に開示請求の趣旨に疑義がある場合には,開示請求者にその趣旨を確認するか請求文言の補正を求めるべきであり,今後,処分庁においては,開示請求に対する文書の特定に当たり,開示請求の趣旨を的確に把握した上で,適切な対応をすることが望まれる。
(2)法人文書開示決定通知書及び諮問の在り方について
処分庁は,本件開示請求を含む5件の開示請求に対し,同一日付及び同一文書番号の6件の法人文書開示決定通知書により原処分を含む6件の開示決定等を行っている上,これに対する本件異議申立てを含む6件の異議申立てに対し,当初1件の諮問事件として当審査会に諮問したものである。
しかしながら,本件開示請求等の5件の開示請求はそれぞれ異なる文書の開示を求めるものであり,これに対する原処分等の6件の開示決定等もそれぞれ別個の行政処分であるから,法人文書開示決定通知書によって各行政処分を特定できるように,異なる文書番号を付した法人文書開示決定通知書を作成するべきである。
また,本件異議申立て等は,6件の異議申立てが1通の異議申立書によってなされているが,別個の行政処分に対するそれぞれ別個の異議申立てであるから,諮問に当たってもそれぞれ別個の諮問事件とすべきである。
なお,上記6件の異議申立て中の2件については,1件の開示請求に対し2件の開示決定等がなされ,これに対する異議申立てであるので,併合して諮問することは可能である。
処分庁及び諮問庁においては,今後,法の趣旨を正しく認識し,開示請求及び不服申立てに係る手続の適正化を図るとともに,的確な対応が強く望まれる。
4 本件開示決定の妥当性について
以上のことから,本件請求文書の開示請求につき,本件対象文書を特定し,開示した決定については,機構において,本件対象文書の外に開示請求の対象として特定すべき文書として,平成25年4月より前に収集したナカラ・ファンドに関する資料を保有していると認められるので,これを対象として,改めて開示決定等をすべきであると判断した。
(第2部会) |
委員 遠藤みどり,委員 池田綾子,委員 中川丈久