諮問庁 法務大臣
諮問日 平成26年 2月 6日(平成26年(行個)諮問第10号)
答申日 平成26年 8月 6日(平成26年度(行個)答申第33号)
事件名 平成24年度及び同25年度土地家屋調査士試験成績通知書の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

   別紙に掲げる文書1及び文書2(以下,併せて「本件文書」という。)に記録された保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)につき,これを保有していないとして不開示とした決定は,妥当である。


第2  異議申立人の主張の要旨

 1    異議申立ての趣旨

   行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)12条1項の規定に基づく本件開示請求に対し,平成25年12月25日付け法務省民二第850号により,法務大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。


 2 異議申立ての理由

   異議申立人が主張する異議申立ての理由は,異議申立書の記載によると,おおむね以下のとおりである。

   原処分の取消しと本件対象保有個人情報の作成と異議申立人への通知を請求する。

   平成25年度土地家屋調査士試験の最終合格発表が12月13日であり,僅か12日しか経過していない同月25日の開示をしない決定の理由が「開示請求に係る行政文書を保有していないため。」とされているが,法務省の国家試験の受験者の個人の成績を証明する行政文書を作成するための個人データが法務省のデータベース(委託して実施したのなら委託先)にも保存,保管されていないとは,数十年試験を管轄し,分析し毎年1回以上の土地家屋調査士試験を実施しなければならない民事二課の回答とは常識的にも考えられず,納得しかねるのでそれらのデータベースから個人成績を証明する文書の作成を請求する。

   個人の成績を本人に開示しても国には何の不利益もなく,拒否される理由もないと思われるので早急に回答願う。

   また試験終了後,全ての個人成績に関するデータを廃棄したと言うならば,先に開示(法務省民二第801号)していただいた土地と建物の解答用紙のコピーを同封するので,土地家屋調査士試験を管轄する法務省民二課の責任として,試験委員の方々に再採点していただき,土地と建物の成績を証明する文書の作成をお願いする。


第3  諮問庁の説明の要旨

 1 本件開示請求の対象となった行政文書は,「平成24年度土地家屋調査士試験の成績通知書」及び「平成25年度土地家屋調査士試験の成績通知書」である。


 2 異議申立人が主張する本件異議申立ての理由は,おおむね,次のとおりである。

 (1)法務省の国家試験である土地家屋調査士試験について,個人の成績を証明する行政文書を作成するためのデータが法務省のデータベース又は業務委託先に保存・保管されてないのは常識的に考えられないため,当該データベースから個人成績を証明する文書の作成を請求する。


 (2)試験終了後,全ての個人成績に関するデータを廃棄したのであれば,土地家屋調査士試験を管轄する民事第二課の責任として,試験委員に再採点をさせ,成績を証明する文書の作成を請求する。


 3 異議申立人が主張する上記2の理由について,以下検討する。

 (1)土地家屋調査士試験の成績通知書については,試験当日に処分庁が配布する封筒に自らの住所及び氏名を記載することにより成績通知書の送付を希望した受験者に対し処分庁が業務を委託した業者(以下「試験業務受託者」という。)において作成及び封筒への封入・封かん作業を行い,処分庁から発送している。

    したがって成績通知書は試験業務受託者において作成され,処分庁において受験者に対し発送されるものであることから,当該発送がされた後には,処分庁は,当該通知書を保有していない。

    そして,異議申立人に係る成績通知書については,当該試験日において同人が成績通知書の発送を希望していたため,平成25年11月13日,処分庁から発送している。

    なお,成績通知書の作成に当たって,試験業務受託者において作成したデータ等については,合格者の決定後,秘密保持のため,速やかに廃棄している。

    以上のとおりであるから,処分庁は,平成24年度土地家屋調査土試験験の成績通知書及び平成25年度土地家屋調査士試験の成績通知書について,作成し,又は保有していない。


 (2)開示請求の対象となる保有個人情報については,法2条3項に規定するとおり,開示請求時点において,行政機関が保有しているものをいう。

    したがって,開示請求時点において保有していない行政文書を開示請求に応ずるために作成する必要はなく,異議申立人の主張は,理由がない。


 4 以上のことから,原処分は,妥当である。


第4  調査審議の経過

   当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

   ① 平成26年2月6日  諮問の受理

   ② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

   ③ 同年7月14日    審議

   ④ 同年8月4日     審議


第5  審査会の判断の理由

 1 本件対象保有個人情報について

   本件開示請求は,文書1及び文書2に記録された保有個人情報(本件対象保有個人情報)の開示を求めるものであり,処分庁は,これを保有していないとして不開示とする原処分を行った。

   異議申立人は,本件対象保有個人情報は存在しているはずであると主張するが,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象保有個人情報の保有の有無について検討する。


 2 本件対象保有個人情報の保有の有無について

 (1)当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,本件対象保有個人情報の保有の有無について確認させたところ,諮問庁は,以下のとおり説明する。

   ア 本件開示請求書に明記された「成績通知書」とは,各受験者の試験の得点及び順位等が記載されたもので,理由説明書でも述べたように,当該通知書の送付を希望する受験者に送付しているが,処分庁は,発送作業を行うのみで,成績通知書の作成から封かんまでは,試験業務受託者が行っている。

     したがって,処分庁においては,その現物はもとより,内容の控えや印刷用のデータといったものも保有していない。


   イ 土地家屋調査士試験については,採点処理及び成績通知書作成業務等を試験業務受託者に委託し,処分庁は,試験業務受託者に対し一定の基準点に達した受験者の抽出を指示することにより合格者を決定している。

     処分庁は,合格者名簿及び合格者の受験申請書を保有している(いずれも保存期間30年)が,個別受験者の成績データについては,合格者決定後に組織として利用する必要はないものであって,現に保有もしていない。

     そのため,開示請求の対象となる本件文書を当該成績通知書に記載された異議申立人の成績の元データを指すものと広く解するとしても,開示請求時点で処分庁においてそれに対応する情報は保有しておらず,また,試験業務受託者についても,受験者の個人情報は受託業務の終了後直ちに廃棄することが契約上義務付けられていることから,開示請求時点では既に情報自体が存在していなかったものである。


 (2)処分庁において開示請求書の記載どおりの本件対象保有個人情報は保有していないとする上記諮問庁の説明に特段不自然,不合理な点はなく,これを覆すに足る事情も認められない。

    また,異議申立人の成績に係る情報自体保有していないという,その余の説明についても同様である。

    したがって,法務省において本件対象保有個人情報を保有しているとは認められず,これを保有していないとして不開示としたことは,妥当である。


 3 異議申立人のその他の主張について

   異議申立人はその他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。


 4 本件不開示決定の妥当性について

   以上のことから,本件対象保有個人情報につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,法務省において本件対象保有個人情報を保有しているとは認められず,妥当であると判断した。


(第5部会)

  委員 南野 聡,委員 椿 愼美,委員 山田 洋





別紙

 

 文書1 平成24年度土地家屋調査士試験成績通知書(受験地 特定市,特定受験番号A)

 文書2 平成25年度土地家屋調査士試験成績通知書(受験地 特定市,特定受験番号B)