諮問庁 農林水産大臣
諮問日 平成24年 8月 6日(平成24年(行情)諮問第312号)
答申日 平成25年12月 2日(平成25年度(行情)答申第294号)
事件名 食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会議事録等の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 別紙1に掲げる文書1ないし文書3(以下,「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,異議申立人が開示すべきとし,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,別紙3の「開示すべき部分」欄に掲げる部分を開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
 異議申立ての趣旨
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく平成24年1月23日付け(同月27日受付)開示請求に対し,同年2月27日付け23消安第5670号により農林水産大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)の取消しを求める。

 異議申立ての理由
 異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)  異議申立書
 異議申立人らは,平成24年1月23日,処分庁に対し,法に基づき「食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会第16回から第19回までの議事録,音声記録及び関係資料等の一切の文書」等の開示を請求した。

 処分庁は,平成24年2月27日,これを部分開示とする処分をした。

 本件処分の理由として,下記第3,1(1)アからエの記載があった。

 しかし,異議申立てに係る処分は,次のとおり違法である。
(ア)  下記第3,1(1)アの理由について
 持ち回りでの審議であったからといって,議事録でなくとも,担当官による聞き取り簿は存在しなければおかしい。よって録音も存在するはずである。

(イ)  下記第3,1(1)イの理由について
 会議の議事録,議事要旨を作成する上で実務上,録音しないことはありえない。文字起こしされた原稿は,農林水産省担当課により音声記録と照合されていなければおかしい。よって,当然ながら小委員会の会議の録音記録は,法2条の2に定義されている公文書以外の何物でもない。以下同法2条の2
 「この法律において「行政文書」とは,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図面及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては確認することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいう。」

(ウ)  下記第3,1(1)ウの理由について
 論難とは,「相手の不正や誤りを論じ立てて非難すること」と辞書にある。これは,正当な批判であり,情報公開の目的に沿っている。処分庁は,批判されることが,法5条5号及び6号柱書きに該当すると主張しているに他ならず,情報公開の目的と相反していることは,子供でも容易に理解できるであろう。公にされると不正や誤りを指摘されることをおそれて専門的・技術的な観点から議論できなくなるような「専門家」とは,一体何なのか。そのような人物は,公職である委員になる資質がない。
 処分庁の主張する「今後同小委員会を行う際に,率直な意見の交換ができなくなるおそれ」は,存在したらおかしい。
 また,今後同小委員会を行う際の意思決定の中立性についてであるが,審議会等の整理合理化に関する基本的計画では,審議会等の運営に関する指針が定められている。
 指針では,3.議事の項の(2)に基本的な政策の審議及び答申について「基本的な政策を審議する審議会等は,有識者等の高度かつ専門的な意見等を聴くため設置されるものであり,行政府としての最終的な政策決定は内閣又は国務大臣の責任で行うものであることを踏まえ,審議又は答申を行うに際しては,次の点に留意するものとする。」と規定されている。
 以下は,留意点の③
 「審議を尽くした上でなお委員の間において見解の分かれる事項については,全委員の一致した結論をあえて得る必要はなく,例えば複数の意見を並記するなど,審議の結果として委員の多様な意見が反映された答申とする。」
 このように審議会等の運営に関する指針から,審議会等は意思決定の場ではない。よって処分庁が主張するような「小委員会を行う際の意思決定の中立性」は,本来存在しないはずである。
 また,審議会の運営に関する指針では,「会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし,議事内容の透明性を確保する」となっている。

 以上のように本件処分は違法であり,よって,本件処分の取消しを求めるため,本異議申立てを行った。

(2)  意見書
 意見書1
 法9条1項の規定に基づき農林水産大臣が平成24年2月27日付け23消安第5670号により行った原処分に対する開示請求者である当方からの異議申立てに関し,諮問庁が,法18条の規定に基づき情報公開・個人情報保護審査会に諮問するに当たり,諮問庁が原処分を維持することについての「理由説明書」の交付(平成24年8月6日付け)があった。
 上記「理由説明書」は,諮問庁の勝手な屁理屈である「論難されるおそれ」を振りかざすのみで,当方の異議申立てに本質的部分で何ら説明していない。
 また諮問庁による原処分,原処分維持は,少なくとも以下の理由により,法に定められている国民の行政文書の開示を請求する権利の行使をあからさまに妨害する公務員職権濫用罪であることを指摘しておく。
 本件は,食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会(以下「小委員会」という。)第16回から第19回までの議事録,録音記録等に関する件であるが,当方は,小委員会議事録(第10回から第15回)についても平成22年9月14日付で開示請求と後に異議申立てを行っており,結果として平成24年3月21日付け(府情個第861号)で情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)から諮問庁へ異議申立人が開示すべきとする部分については,審査会が指摘した部分を開示すべきである旨の答申書が交付されている(結果諮問庁は以前の非開示部分を極一部開示)。
 第16回(持ち回りのため不存在とされた)を除く第17回から第19回までの小委員会議事録は,第10回から第15回に係る審査会の答申で開示すべきとされた農水省職員の職務遂行上の情報である明白な部分まで非開示となっているが,それにもかかわらず,性懲りもなく「原処分維持」とする諮問庁の処分は,法に定められている国民の行政文書の開示を請求する権利の行使を妨害する職権濫用である。

 意見書2
 諮問庁から提出された「補充理由説明書」は,原処分(平成24年2月27日付け)を覆すものとなっている。
 「補充理由説明書」は,原処分が違法であることを認めているが,それにもかかわらず原処分は,是正されておらず再開示されていない違法な状態となっている。既に原処分(平成24年2月27日付け)から一年半が経過している。このことについて説明を求める。

第3  諮問庁の説明の要旨
 理由説明書
 本説明書は,法9条1項の規定に基づき農林水産大臣が平成24年2月27日付け23消安第5670号により行った原処分に対する異議申立人からの異議申立てに関し,法18条の規定に基づき情報公開・個人情報保護審査会に諮問するに当たり,原処分を維持することについての説明である。
 原処分において,一部不開示とした理由及び原処分を維持する理由は,以下のとおりである。
(1)  原処分において一部不開示とした理由
 食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会(小委員会)第16回の議事録及び録音記録については,当該会合が持ち回りでの開催であったことから,不存在のため不開示とした。

 小委員会第17回から第19回までの録音記録については,不存在のため不開示とした。

 小委員会第17回から第19回までの議事録のうち,議論の内容(発言委員名等を除く。)については,これらを公にすることにより,委員が議論の過程における一発言まで論難され,責任を問われることをおそれるあまり,本来,専門的・技術的な観点から活発になされるべき議論が十分になされなくなり,今後,小委員会を開催する際に,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあることから,法5条5号及び6号に掲げる情報に該当するので,不開示とした。

 小委員会の臨時委員及び専門委員の選任に関する起案文書のうち,臨時委員及び専門委員の年齢及び生年月日については,法5条1号本文に掲げる情報に該当するので,不開示とした。

(2)  小委員会第16回から第19回までの会合について
 小委員会は農林水産省に設置されている食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会の下に置かれているものであり,小委員会の所掌事務は食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会運営内規(平成19年8月24日食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会決定)により,
 牛豚等の疾病に係る専門的・技術的な事項を調査審議すること
 牛豚等の疾病に係る専門的・技術的な助言を行うこと
       とされている。
 小委員会第16回から第19回までの4回の会合は,平成23年1月から7月までの間に,
(ア)  家畜伝染病予防法施行規則(昭和26年農林省令第35号)の一部改正
(イ)  家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「家伝法」という。)12条の3第1項に規定する飼養衛生管理基準の改正
(ウ)  家伝法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状についての検討
(エ)  家伝法3条の2第1項に規定する特定家畜伝染病防疫指針の作成及び変更
       等を議題として開催された(うち,第16回は持ち回りで開催)。
 これら4回の会合については,その内容が,国が行う防疫対策等について議論がなされたものであり,「公開することにより,公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合又は特定の個人若しくは団体に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれがある場合」と考えられ,食料・農業・農村政策審議会議事規則(平成13年3月21日食料・農業・農村政策審議会決定)3条2項ただし書の理由に基づき,会長が非公開としたものである。

(3)  原処分を維持する理由
 小委員会第16回の録音記録及び議事録について
 開示請求のあった録音記録及び議事録が存在しないため,不開示とした。なお,小委員会第16回は持ち回りで開催されたため,録音対象自体が存在せず,また,議事録も作成されていない。

 小委員会第17回から第19回までの録音記録について
 開示請求のあった録音記録が存在しないため,不開示とした。
 なお,小委員会第17回から第19回までにおいては,民間業者に速記業務を発注しているが,録音テープ又は録音音声を記録したCD-Rの納入は発注内容には含まれていない。また,本件異議申立てを受け,再度担当者への聞き取り等を行ったが,録音記録の存在は確認できなかった。

 小委員会第17回から第19回までの議事録について
 開示請求のあった文書は,小委員会第17回から第19回までにおける,上記(2)の(イ)から(エ)までの事項等に関する農林水産省職員からの説明や,委員の率直かつ忌憚(きたん)のない発言等が記載された文書である。
(ア)  小委員会第17回及び第19回の議事録のうち,小委員会の小委員長の互選に関する記載部分について
 当該部分には,小委員長の互選に当たって,候補となる委員に関する他の委員の発言等が記載されており,これを公にすることにより,各委員の他の委員個人に対する評価内容が知られることとなるため,今後,率直な意見交換ができなくなるなど,小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。したがって,当該部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(イ)  小委員会第17回から第19回までの議事録のうち,飼養衛生管理基準の改正についての検討に関する記載部分について
 当該部分には,家畜の飼養に係る衛生管理の方法に関し家畜の所有者が遵守すべき基準である飼養衛生管理基準の改正についての検討過程が記載されている。
 飼養衛生管理基準は,少なくとも5年ごとに再検討を加えるものとされており(家伝法12条の3第3項),また,これを改正し,又は廃止しようとするときは,食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない(同条4項)こととされている。このため,小委員会第17回から第19回までの議論の結果,改正された飼養衛生管理基準について,今後,再検討が行われることとなる。再検討の結果,これを改正する際には,当然,当該議論の内容を前提として小委員会において審議が行われることとなるため,意思決定が行われた後とはいえ,当該議論の内容を公にすることとなると,各委員が当時の発言について論難される可能性があり,外部からの圧力や干渉等の影響を受ける可能性があることから,今後,小委員会における同種の審議の際に,率直な意見の交換又は意思決定の中立性に不当な影響を与えるおそれが極めて高いと考えられる。したがって,当該記載部分は,法5条5号に掲げる情報に該当する。
 また,飼養衛生管理基準については,家畜の飼養に係る衛生管理の方法に関し家畜の所有者が遵守すべき基準として家畜飼養者全般を対象とし,かつ,罰則を伴うものである。このことから,小委員会における個々の委員の詳細な発言内容を開示することとした場合,こうした家畜の所有者への影響が大きい事項について,どの委員がどのような発言をしたかが知られることとなるため,今後,委員が一発言にまで論難されることをおそれるがあまり,専門的・技術的な観点から活発な議論が十分になされなくなる可能性があることに加え,学識経験者の協力を得られにくくなる可能性があるなど,小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。したがって,当該記載部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(ウ)  小委員会第17回から第19回までの議事録のうち,家伝法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の検討に関する記載部分について
 当該部分には,家伝法13の2第1項において規定されている,農林水産大臣が家畜の種類ごとに指定する症状(以下「特定症状」という。)の内容についての検討過程が記載されている。
 家畜が特定症状を呈していることを発見した所有者及び獣医師は,都道府県知事にその旨を届け出る義務を負う(家伝法13条の2第1項)。当該届出が遅れた場合,殺処分等をした家畜の所有者には,当該家畜の評価額を基準として支払われる手当金の全部又は一部が交付されず,又はこれを返還させられることとなる(家伝法58条)。このことから,小委員会における個々の委員の詳細な発言内容を開示することとした場合,こうした家畜の所有者への影響が大きい事項について,どの委員がどのような発言をしたかが知られることとなるため,今後,委員が一発言にまで論難されることをおそれるがあまり,専門的・技術的な観点から活発な議論が十分になされなくなる可能性があることに加え,学識経験者の協力を得られにくくなる可能性があるなど,委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。したがって,当該記載部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(エ)  小委員会第17回から第19回までの議事録のうち,口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(平成23年10月1日農林水産大臣公表。以下「口蹄疫防疫指針」という。)の変更についての検討に関する記載部分について
 当該部分には,口蹄疫防疫指針の変更についての検討過程が記載されている。
 口蹄疫防疫指針は,少なくとも3年ごとに再検討を行うこととされており(家伝法3条の2第6項),また,これを改正し,又は廃止しようとするときは,食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない(同条7項)こととされている。このため,小委員会第17回から第19回までの議論の結果,改正された口蹄疫防疫指針について,今後,再検討が行われることとなる。再検討の結果,これを改正する際には,当然,当該議論の内容を前提として小委員会において審議が行われることとなるため,意思決定が行われた後とはいえ,当該議論の内容を公にすることとなると,各委員が当時の発言について論難される可能性があり,外部からの圧力や干渉等の影響を受ける可能性があることから,今後,小委員会における同種の審議の際に,率直な意見の交換又は意思決定の中立性に不当な影響を与えるおそれが極めて高いと考えられる。したがって,当該記載部分は,法5条5号に掲げる情報に該当する。
 また,特定家畜伝染病防疫指針については,疾病発生時の防疫措置等を定めたものであり,当該内容を巡り,生産者団体等の利害関係者から多様な意見が寄せられた経緯があるなど,極めて注目度の高い事項である。したがって,小委員会における個々の委員の詳細な発言内容を開示することとした場合,こうした極めて注目度の高い事項について,どの委員がどのような発言をしたかが知られることとなるため,今後,委員が一発言にまで論難されることをおそれるがあまり,専門的・技術的な観点から活発な議論が十分になされなくなる可能性があることに加え,学識経験者の協力を得られにくくなる可能性があるなど,小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。このため,当該記載部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(オ)  小委員会第18回及び第19回の議事録のうち,牛疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(平成23年10月7日農林水産大臣公表),牛肺疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(平成23年10月7日農林水産大臣公表)及びアフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針(平成23年10月7日農林水産大臣公表)(以下「牛疫防疫指針等」という。)の変更についての検討に関する記載部分について
 当該部分には,牛疫防疫指針等の変更についての検討過程が記載されている。
 牛疫防疫指針等は,口蹄疫防疫指針と同じく,少なくとも3年ごとに再検討を行うこととされており(家伝法3条の2第6項),また,これを改正し,又は廃止しようとするときは,食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない(同条7項)こととされている。このため,小委員会第18回及び第19回の議論の結果,改正された牛疫防疫指針等について,今後,再検討が行われることとなる。再検討の結果,これを改正する際には,当然,当該議論の内容を前提として小委員会において審議が行われることとなるため,意思決定が行われた後とはいえ,当該議論の内容を公にすることとなると,各委員が当時の発言について論難される可能性があり,外部からの圧力や干渉等の影響を受ける可能性があることから,今後,小委員会における同種の審議の際に,率直な意見の交換又は意思決定の中立性に不当な影響を与えるおそれが極めて高いと考えられる。したがって,当該記載部分は,法5条5号に掲げる情報に該当する。
 また,口蹄疫防疫指針と同じく,牛疫防疫指針等については,疾病発生時の防疫措置等を定めたものであり,当該内容を巡り,生産者団体等の利害関係者から多様な意見が寄せられた経緯があるなど,極めて注目度の高い事項である。したがって,小委員会における個々の委員の詳細な発言内容を開示することとした場合,こうした極めて注目度の高い事項について,どの委員がどのような発言をしたかが知られることとなるため,今後,委員が一発言にまで論難されることをおそれるがあまり,専門的・技術的な観点から活発な議論が十分になされなくなる可能性があることに加え,学識経験者の協力を得られにくくなる可能性があるなど,小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。このため,当該記載部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(カ)  小委員会第17回の議事録のうち,サンマリノ共和国の口蹄疫等清浄国認定に関する記載部分について
 当該部分には,サンマリノ共和国の口蹄疫等清浄国としての認定に係る報告等が記載されている。
 一般に,口蹄疫等清浄国として認定された場合,当該清浄国から偶蹄類の動物の肉等の輸入が開始されるなど,当該認定により影響を受ける者は非常に多数に上り,委員会に対する外部からの干渉等の影響も想定される。当該部分には,サンマリノ共和国の口蹄疫等清浄国認定に当たって,認定の可否の基礎となる情報や判断の過程が記載されているが,今後の他の国の清浄国認定に当たっても,同様の検討が行われることから,当該情報等を公にすることにより,清浄国認定の検討に係る今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが極めて高い。したがって,当該記載部分は,法5条6号に掲げる情報に該当する。

(キ)  小括
 以上の理由により,開示請求のあった小委員会第17回から第19回までの議事録(発言委員名等を除く。)については,法5条5号及び6号に掲げる情報に該当することから,不開示とした。
 なお,小委員会における大まかな議論の概要については,毎回,議事概要として取りまとめ,速やかに公表しているところである。

 小委員会の臨時委員及び専門委員の選任に関する起案文書について
 開示請求のあった文書は,小委員会の臨時委員及び専門委員の選任に当たっての農林水産省内での検討に用いた資料,発出する公文の案,食料・農業・農村政策審議会の臨時委員及び専門委員の任免予定者名簿等である。当該文書のうち,臨時委員及び専門委員の年齢及び生年月日については,法5条1号本文に掲げる情報に該当することから,不開示とした。
 以上のことから,本開示請求に係る対象文書が存在している文書の一部開示,存在していないため不開示とした原処分は妥当であり,原処分を維持することが適当である。

(4)  その他の主張について
 異議申立人のその他の主張は,いずれも上記(3)の判断を左右するものではない。

 補充理由説明書
 本件対象文書については,当初,冒頭の挨拶部分等を除き不開示と判断したところであるが,再度検討した結果,以下に掲げる部分については,それぞれ以下に掲げる理由により,法5条に該当する情報ではないと判断したことから,開示することとしたい。
(1)  議事進行上の発言及び挨拶等の部分(原処分において公表した部分を除く。)について
 当該部分に記載されている内容については,法5条6号に掲げる情報に該当すると判断したところであるが,この部分は,議事進行又は挨拶等に係るものにすぎず,これを公にしても,各委員が自己の発言した内容により論難され,責任を問われるおそれはなく,また,これにより,率直かつ活発な意見交換ができなくなるなど,今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 (小委員会第17回から第19回までの議事録中「議事進行上の発言及び挨拶等の部分」が該当)

(2)  自己紹介部分について
 当該部分に記載されている内容については,法5条6号に掲げる情報に該当すると判断したところであるが,この部分は,出席者の自己紹介に係るものにすぎず,これを公にしても,各委員が自己の発言した内容により論難され,責任を問われるおそれはなく,また,これにより,率直かつ活発な意見交換ができなくなるなど,今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 (小委員会第17回から第19回までの議事録中「自己紹介部分」が該当)

(3)  資料の特定等の説明部分について
 当該部分に記載されている内容については,法5条6号に掲げる情報に該当すると判断したところであるが,この部分は,説明者がこれからどの資料について説明を行うのか,当該資料には概略どのような内容が記載されているのかを言及するものにすぎず,これを公にしても,各委員が自己の発言した内容により論難され,責任を問われるおそれはなく,また,これにより,率直かつ活発な意見交換ができなくなるなど,今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 (小委員会第17回から第19回までの議事録中「資料の特定等の説明部分」が該当)

(4)  配付された資料等の内容等の説明部分について
 当該部分に記載されている内容については,法5条5号に掲げる情報又は同条6号に掲げる情報に該当すると判断したところであるが,これらの部分は,そのほとんどが,既に公表されている内容と同一又は同旨であるため,これを公にしても,
 各委員が自己の発言した内容により論難され,外部からの圧力や干渉等の影響を受けるおそれはなく,今後,小委員会における同種の審議の際に,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとは認められない。
 各委員が自己の発言した内容により論難され,責任を問われるおそれはなく,また,これにより,率直かつ活発な意見交換ができなくなるなど,今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
以下の部分が該当
<小委員会第17回の議事録中>
 小委員会の委員長の互選の実施についての説明部分
 飼養衛生管理基準の改正案の内容についての説明部分
 改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
 口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(以下「口蹄疫指針」という。)の変更案の内容についての説明部分
 防疫作業マニュアル案の内容についての説明部分
 牛疫に関する特定家畜伝染病防疫指針,牛肺疫に関する特定家畜伝染病防疫指針及びアフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針(以下「牛疫指針等」という。)の変更案の内容についての説明部分
 改正家畜伝染病予防法における病原体の所持規制に関する検討状況についての説明部分
 サンマリノ共和国の口蹄疫等清浄国認定についての報告部分
<小委員会第18回の議事録中>
 飼養衛生管理基準案の改正案の内容についての説明部分
 改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
 口蹄疫指針の変更案の内容についての説明部分
 牛疫指針等の変更案の内容についての説明部分
<小委員会第19回の議事録中>
 小委員会の委員長の互選の実施についての説明部分
 飼養衛生管理基準案の改正案の内容についての説明部分
 改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
 口蹄疫指針の変更案の内容についての説明部分
 FAO総会等での議論の状況についての報告部分
 牛疫指針等の変更案の内容についての説明部分

(5)  審議概要の説明部分について
 上記部分に記載されている内容については,法5条6号に掲げる情報に該当すると判断したところであるが,この部分は,そのほとんどが,既に公表されている概要と同一又は同旨であるため,これを公にしても,各委員が自己の発言した内容により論難され,責任を問われるおそれはなく,また,これにより,率直かつ活発な意見交換ができなくなるなど,今後の小委員会の審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 (小委員会第17回から第19回までの議事録中「審議概要についての説明部分」が該当)
 なお,新たに開示することとしたい部分をまとめると,以下のとおりとなる。
 小委員会第17回の議事録
(1)  議事進行上の発言及び挨拶等の部分
(2)  自己紹介部分
(3)  資料の特定等の説明部分
(4)  小委員会の委員長の互選の実施についての説明部分
(5)  飼養衛生管理基準の改正案の内容についての説明部分
(6)  改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
(7)  口蹄疫指針の変更案の内容についての説明部分
(8)  防疫作業マニュアル案の内容についての説明部分
(9)  牛疫指針等の変更案の内容についての説明部分
(10)  改正家畜伝染病予防法における病原体の所持規制に関する検討状況についての説明部分
(11)  サンマリノ共和国の口蹄疫等清浄国認定についての報告部分
(12)  審議概要についての説明部分

 小委員会第18回の議事録
(1)  議事進行上の発言及び挨拶等の部分
(2)  自己紹介部分
(3)  資料の特定等の説明部分
(4)  飼養衛生管理基準案の改正案の内容についての説明部分
(5)  改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
(6)  口蹄疫指針の変更案の内容についての説明部分
(7)  牛疫指針等の変更案の内容についての説明部分
(8)  審議概要についての説明部分

 小委員会第19回の議事録
(1)  議事進行上の発言及び挨拶等の部分
(2)  自己紹介部分
(3)  資料の特定等の説明部分
(4)  小委員会の委員長の互選の実施についての説明部分
(5)  飼養衛生管理基準案の改正案の内容についての説明部分
(6)  改正家畜伝染病予防法13条の2第1項の規定による届出の対象となる症状の内容についての説明部分
(7)  口蹄疫指針の変更案の内容についての説明部分
(8)  FAO総会等での議論の状況についての報告部分
(9)  牛疫指針等の変更案の内容についての説明部分
(10)  審議概要についての説明部分

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
平成24年8月6日 諮問の受理
同日 諮問庁から理由説明書を収受
同年9月6日 審議
同月19日 異議申立人から意見書1を収受
平成25年8月28日 諮問庁から補充理由説明書を収受
同年10月1日 異議申立人から意見書2を収受
同月30日 本件対象文書の見分及び審議
同年11月28日 審議

第5  審査会の判断の理由
 本件対象文書について
(1)  本件開示請求は,別紙1に掲げる文書1ないし文書3(本件対象文書)の開示を求めるものであり,処分庁は,別紙1に掲げる文書1のうち,小委員会第16回に係る議事録及び録音記録並びに第17回ないし第19回に係る録音記録(以下「本件対象文書1」という。)については,不存在のため不開示とし,第17回ないし第19回に係る議事録(以下「本件対象文書2」という。)については,その一部を法5条5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とする原処分を行った。また,文書2については,全部開示し,文書3については,その一部を法5条1号に該当するとして不開示とする原処分を行った。
 これに対し,異議申立人は,原処分の取消しを求めているが,異議申立書及び意見書の記載によれば,異議申立人が開示を求めているものは,文書1に係る不開示部分であると認められる。

(2)  諮問庁は,本件対象文書1については,原処分を維持するのが妥当であるとしているが,本件対象文書2については,補充理由説明書において,原処分で不開示とした部分の一部を新たに開示するとしている。また,文書2については,全部開示しており,文書3については,前記(1)のとおり,異議申立人が不開示部分の不開示情報該当性を争っていないものと解されるので,以下,本件対象文書の見分結果に基づき,本件対象文書1の保有の有無及び本件対象文書2について諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分,すなわち別紙2に掲げる部分(以下「本件不開示部分」という。)の不開示情報該当性について検討する。

(3)  なお,諮問庁は,理由説明書において,食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会(小委員会)第16回ないし第19回については,その内容が,国が行う防疫対策等について議論がなされたものであり,「公開することにより,公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合又は特定の個人若しくは団体に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれがある場合」と考えられ,食料・農業・農村政策審議会議事規則3条2項ただし書の理由に基づき,会長が非公開としたものであると説明する。

 小委員会第16回に係る議事録及び録音記録並びに第17回ないし第19回に係る録音記録(本件対象文書1)の保有の有無について
(1)  小委員会第16回について
 諮問庁は,小委員会第16回については持ち回りで開催したと説明するので,当審査会事務局職員をして,「持ち回り」について確認させたところ,以下のとおり説明する。
 通常,小委員会の審議は委員を招集して開催するが,①緊急的に審議を行う必要がある場合,②審議事項が軽微である又は少数である場合等には,「持ち回り」で開催することとしている。「持ち回り」とは,具体的には,委員を招集せず,議事資料を配付(郵送)し,書面により意見を伺うことである。小委員会第16回については,家畜伝染病予防法施行規則の一部改正についての審議を行うため開催したが,審議事項がこの一つしかなかったことから,「持ち回り」での開催とした。

 次に,小委員会第16回の議事録作成について,当審査会事務局職員をして,諮問庁に確認させたところ,以下のとおり説明する。
 小委員会第16回は,委員を招集せずに開催したため,議論のやり取りを記載した議事録は作成していないが,それぞれの委員から出された意見の内容は,結果概要として,農林水産省のホームページに掲載している。なお,小委員会第16回においては,前記審議事項について,全ての委員から賛成との回答を得たところである。

 そこで,当審査会事務局職員をして,農林水産省ホームページに掲載されている「食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会第16回牛豚等疾病小委員会概要」を確認させたところ,諮問庁が説明するとおり,小委員会第16回については,委員を招集しない持ち回りで開催されていることが認められ,このような事情に照らせば,小委員会第16回に係る録音記録が存在せず,議事録も作成されていないとする諮問庁の説明が,特に不自然,不合理とは言えない。

 したがって,農林水産省において,小委員会第16回に係る議事録及び録音記録を保有しているとは認められない。

(2)  小委員会第17回ないし第19回の録音記録について
 諮問庁は,小委員会第17回ないし第19回の録音記録について,民間業者に速記業務を発注しているが,録音テープ又は録音音声を記録したCD-Rの納入は発注内容に含まれていないと説明する。

 当審査会事務局職員をして,諮問庁から,小委員会第17回ないし第19回に係る「各種審議会等に係る速記業務発注書」(以下「速記業務発注書」という。)の提示を受け確認したところ,当該速記業務発注書には,請負者が議事録を作成し,発注者に提出することとされている上,発注者への「納入形態」は,「議事録,電子媒体(議事録の文書ファイル等を記録したもの)」と記載されている。そして,録音音声を記録した媒体の納品を求める場合には,当該速記業務発注書の下部に記載されているとおり,「納入形態」欄に記載されている「録音テープ」や「録音音声を記録したCD-R」を○印で囲むことになっているところ,小委員会第17回ないし第19回に係る速記業務発注書には,そのような記載が認められないことから,仮に請負者が議事録作成のために録音していたとしても,録音音声が処分庁に納品されることにはならないと解される。

 次に,当審査会事務局職員をして,事務局が議事録の内容確認のため又は予備の記録として音声を録音しているか,諮問庁に確認させたところ,納品後に一度委員及び担当職員が専門用語の使い方に誤りがないか確認するが,文書になったものの確認である。また,小委員会は,通常,2時間以上に及ぶことが多く,審議内容が非常に多いため,納品された議事録の内容を確認するために録音した音声を聴くことは多大な労力と時間を要し,事務の効率化の観点からも納品された議事録の内容を確認するために音声を録音することはないとのことであった。

 諮問庁は,本件異議申立てを受け,再度担当者への聞き取り等を行ったが,録音記録は不存在であることが改めて確認されたと説明するところ,速記業務発注書においても録音記録が納品の対象とされていないこと等の事情に照らせば,録音記録が存在するとは認められない。

 したがって,農林水産省において,小委員会第17回ないし第19回の録音音声を保有しているとは認められない。

 本件不開示情報該当性について
(1)  小委員会は,上記1(3)のとおり議事規則に基づき,非公開とされており,議事録についても同様に非公開とされているところ,第17回及び第18回小委員会の議事録の最後において,会議が非公開である旨記載されており,さらに,第17回ないし第19回小委員会の議事録では,議事内容が議事概要としてまとめられて農林水産省のホームページで公表されることも記載されている。

(2)  本件対象文書のうち,第17回ないし第19回に係る議事録(本件対象文書2)を見分するに,本件不開示部分は,小委員会における事務局担当者による資料の説明部分の一部(都道県名や法人名)及び各委員による意見等が記載された部分が不開示とされていることが認められる。

(3)  法5条5号及び6号柱書き該当性について
 別紙2に掲げる本件不開示部分のうち,区分6,15,29,33,37,40,45,48,52及び56については,委員の発言部分であるが,発言委員を特定できない記載となっている上,諮問庁が新たに開示するとしている部分から容易に推察し得る内容であることから,当該不開示部分を公にしても,委員がその一発言まで論難されることはなく,小委員会における率直な意見の交換又は意思決定の中立性に不当な影響を与えるおそれや審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないので,法5条5号及び6号柱書きに該当せず,開示すべきである。
 なお,別件答申(小委員会第10回ないし第15回の議事録)(平成23年度(行情)答申第561号)において,同様な情報が不開示とされているが,本件とは各小委員会における審議内容が異なること,処分庁及び諮問庁が開示すべきとする部分の範囲が異なることから,本件においては,開示すべきと判断した。

 別紙2に掲げる本件不開示部分のうち,区分16及び17について
 当該不開示部分は,小委員会において事務局担当者が防疫作業マニュアルについて説明している部分である。
 当該不開示部分を不開示とする理由について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,標準的な防疫作業マニュアルを作成し,防疫指針の参考として各都道府県に配付したいと考えていると説明しているところ,国が特定の都道府県を「かなり力のある」,「経験が豊富」と認め,名前の挙がらなかった都道府県がそうではないという誤解を与えるおそれがあるとのことである。
 上記諮問庁の説明を踏まえて検討するに,名前を挙げられた都道府県にマニュアル作成の実績があることは,公知の事実であると認められ,これを踏まえて,「かなり力のある,もしくは経験が豊富な県」として挙げているにとどまるのであるから,当該不開示部分を公にすることにより,名前の挙がらなかった都道府県が劣っているとの誤解を招くおそれがあるとは認められない。したがって,これを公にしても,小委員会における率直な意見の交換又は意思決定の中立性に不当な影響を与えるおそれや審議の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないので,法5条5号及び6号柱書きに該当せず,開示すべきである。

 別紙2に掲げる本件不開示部分のうち,区分30については,小委員会において事務局担当者が早期通報の対象となる症状の報告の特定について説明している部分である。
 当該不開示部分を不開示とする理由について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,アフリカ水牛の飼養実態は,非公表を前提に任意で提供された情報であり,これらを公にすると,今後,防疫対策を検討する上で必要となる情報を提供すべき企業等の協力を得られなくなるおそれが高く,そうすると,今後,我が国で家畜伝染病が発生した際に,小委員会において必要な情報が入手できず,防疫対策の在り方等専門的,技術的な事項に係る調査審議を行うことが不可能となるおそれがあり,小委員会の事務の遂行に支障が出る蓋然性が高いとのことである。
 上記諮問庁の説明を踏まえて検討するに,当該不開示部分が公になることによって,諮問庁の説明するとおり,防疫対策を検討する上で必要となる情報を提供すべき企業等の協力を得られなくなるおそれがあり,今後,我が国で家畜伝染病が発生した際に,小委員会において必要な情報が入手できず,防疫対策の在り方等専門的,技術的な事項に係る調査審議を行うことが不可能となり,小委員会における審議の遂行に支障を及ぼすおそれがあるので,当該不開示部分は,法5条6号柱書きに該当すると認められる。

 その余の部分については,小委員会の議事に参加する各委員の意見等が記載されている部分である。
 各委員は,会議が非公開であるとの認識の下で忌憚(きたん)のない発言をしているものと推察できる。
 そうすると,個々の委員の詳細な発言内容を公とした場合,どの委員がどのような発言をしたかが知られることとなるため,今後,委員がその一発言についてまで論難され,責任を問われることをおそれるがあまり,専門的・技術的な観点から活発な議論が十分になされなくなる可能性があることに加え,学識経験者の協力を得られなくなる可能性があるなど,小委員会における審議の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるので,本件不開示部分は,法5条6号柱書きに該当すると認められる。

(4)  したがって,別紙2に掲げる本件不開示部分のうち,区分6,15,16,17,29,33,37,40,45,48,52及び56の不開示部分,すなわち,別紙3に掲げる「開示すべき部分」欄に記載された部分については,法5条5号及び6号柱書きに該当せず開示すべきであるが,その余の部分については,法5条6号柱書きに該当し,同条5号について判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。

 異議申立人のその他の主張について
 異議申立人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。

 付言
(1)  本件では,上記2に述べた事情を踏まえて,録音記録は不存在と判断した。しかし,議事録の内容確認や修正をする上で録音記録の必要性は否定できず,処分庁が録音記録を全く作成・保有することなく外部への委託により議事録を作成してきたことは事務処理の方法としては不自然であり,その妥当性は疑問と言わざるを得ない(平成16年度(行情)答申第179号参照)。

(2)  また,原処分では,委員の発言について,委員名は開示し,委員の発言の大部分は不開示とされている。この点については,類似事案についての先例答申(平成24年度(行情)答申第369号)で指摘したように,一般的には,発言者名を不開示とすることで発言内容を開示することが説明責任を果たす上で有益と考えられる。
 しかしこれは,発言者名と発言内容を併せて開示することができない場合のやむを得ざる対応として,どちらを開示すべきかを論じたものである。今後も同種の議事録の委員の発言部分については,発言者名と発言内容の全てを開示することが原則であることを前提に,できる限り広く説明責任を尽くすという観点の下に不開示情報該当性を個別具体的に検討する必要がある。

(3)  なお,議事録作成に当たり,発言者名を匿名化し発言内容を要点のみとするなど議事録自体を簡略化することは,行き過ぎると情報公開制度を形骸化させるおそれがある(平成19年度(行情)答申第27号参照)ので,慎重にすべきである。

 本件一部開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その一部を保有していない,または法5条1号,5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とした決定について,異議申立人が開示すべきとし,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,農林水産省において,本件対象文書1を保有しているとは認められず,また,本件対象文書2のうち,別紙3の「開示すべき部分」欄に掲げる部分以外の部分は,同条6号柱書きに該当すると認められるので,同条5号について判断するまでもなく,不開示としたことは妥当であるが,別紙3の「開示すべき部分」欄に掲げる部分は,同条5号及び6号柱書きのいずれにも該当しないと認められるので,開示すべきであると判断した。

(第4部会)
委員 森田明,委員 大橋洋一,委員 中曽根玲子




別紙1(本件対象文書)

文書1  食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会第16回~第19回 議事録及び録音記録
 このうち,第16回に係る議事録及び録音記録並びに第17回ないし第19回に係る録音記録を本件対象文書1という。
 また,第17回ないし第19回に係る議事録を本件対象文書2という。

文書2  食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会第16回~第19回 関係資料等の一切の文書

文書3  食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会第16回~第19回 臨時委員及び専門委員の選任に関する起案と意思決定に関する文書




別紙2(本件不開示部分)

1 第17回議事録
区分 不開示部分
35行目5文字目から36行目行末まで
1行目6文字目から行末まで
19行目ないし36行目の不開示部分全部
10ないし17 頁内の不開示部分全部
18 1行目ないし30行目の不開示部分全部
35行目全部
21 30行目6行目から36行目行末まで
22ないし23 頁内の不開示部分全部
24 1行目ないし19行目の不開示部分全部
10 28 34行目ないし36行目の全部
11 29 1行目ないし3行目の全部
12 16行目6文字目ないし36行目行末まで
13 30ないし36 頁内全行の不開示部分全部
14 37 1行目ないし24行目の不開示部分全部
15 29行目全部
16 38 17行目13文字目ないし20文字目
17 19行目17文字目ないし22文字目
18 39 9行目ないし36行目の不開示部分全部
19 40 1行目ないし20行目の不開示部分全部
20 41 12行目ないし23行目の不開示部分全部
21 42 8行目ないし36行目の不開示部分全部
22 43 1行目ないし33行目の不開示部分全部
23 45 11行目ないし17行目の不開示部分全部
24 46 1行目ないし18行目の不開示部分全部
25 47 10行目ないし15行目の不開示部分全部
注:頁数は表紙及び議事次第を除く議事録に付された頁数である。


2 第18回議事録
区分 不開示部分
26 25行目ないし35行目の不開示部分全部
27 6ないし15 頁内の不開示部分全部
28 16 1行目ないし16行目の不開示部分全部
29 19行目全部
30 17 10行目17文字目ないし32文字目
31 21行目ないし36行目の不開示部分全部
32 18 1行目ないし23行目の不開示部分全部
33 28行目全部
34 23 16行目ないし35行目の不開示部分全部
35 24ないし25 頁内の不開示部分全部
36 26 1行目ないし33行目の不開示部分全部
37 27 4行目全部
38 29 7行目ないし36行目の不開示部分全部
39 30 1行目ないし31行目の不開示部分全部
40 36行目全部
41 31 34行目16文字目及び17文字目
注:頁数は表紙及び議事次第を除く議事録に付された頁数である。


3 第19回議事録
区分 不開示部分
42 33行目ないし36行目の不開示部分全部
43 6ないし14 頁内の不開示部分全部
44 15 1行目ないし24行目の不開示部分全部
45 26行目全部
46 17 14行目ないし36行目の不開示部分全部
47 18 1行目ないし11行目の不開示部分全部
48 15行目全部
49 21 14行目ないし36行目の不開示部分全部
50 22ないし23 頁内全行の不開示部分全部
51 24 1行目ないし10行目の不開示部分全部
52 14行目全部
53 32 32行目ないし36行目の不開示部分全部
54 33ないし40 頁内の不開示部分全部
55 41 1行目ないし7行目の不開示部分全部
56 11行目全部
57 15行目ないし17行目の不開示部分全部
58 26行目ないし31行目の不開示部分全部
59 42 20行目ないし26行目の不開示部分全部
注:頁数は表紙及び議事次第を除く議事録に付された頁数である。




別紙3(開示すべき部分)

  区分 開示すべき部分
第17回議事録 18 35行目全部
15 37 29行目全部
16 38 17行目13文字目ないし20文字目
17 19行目17文字目ないし22文字目
第18回議事録 29 16 19行目全部
33 18 28行目全部
37 27 4行目全部
40 30 36行目全部
第19回議事録 45 15 26行目全部
48 18 15行目全部
52 24 14行目全部
56 41 11行目全部
注:頁数は表紙及び議事次第を除く議事録に付された頁数である。