諮問庁 日本年金機構
諮問日 平成30年 2月 7日(平成30年(独個)諮問第8号)
答申日 平成30年 5月14日(平成30年度(独個)答申第7号)
事件名 本人が特定年度に納付した国民年金保険料の納付書の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

「審査請求人が特定年度に納付した,国民年金保険料の納付書の原本すべて。」(以下「本件文書」という。)に記録された保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)につき,これを保有していないとして不開示とした決定は,妥当である。


第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)12条1項の規定に基づく開示請求に対し,平成29年11月8日付け年機構発第8号により日本年金機構(以下「機構」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。


2 審査請求の理由

審査請求人が主張する審査請求の理由は,審査請求書によると次のとおりである。

(1)状況整理

ア 当事者は,審査請求人と機構であること。当事者間には契約関係が存在すること。


イ 審査請求人は,機構から送付された納付書により,特定コンビニエンスストア店舗にて国民年金保険料を,機構に対して納付したこと。


ウ 納付時に,審査請求人は,機構に対して,納付領収済通知書の発行を行ったこと。


エ 「領収書及び領収書の控え」の保存期間は7年であること。保管義務者は,当事者双方であること。


オ 納付領収済通知書の保管義務は,機構にあること。


カ 納付領収済通知書,審査請求人の納付内容が明示されている個人情報に該当すること。


キ 審査請求人は,自分の納付領収済通知書の開示請求を,保管義務のある機構に対し請求を行ったこと。


(2)機構の決定通知の「開示をしないこととした理由」。

特定コンビニエンスストア店舗で納付された国民年金保険料の納付書(領収済通知書)は,特定コンビニエンスストア本部で保管し,機構へは送付されないため,文書不存在により不開示となります。


(3)上記理由の違法性について。

ア 「特定コンビニエンスストア本部で保管」について。

特定コンビニエンスストアは民間企業であり,審査請求人の個人情報を保管していることは,不法であること。保管できる法的根拠の明示がないこと。


イ 「機構へは送付されないため」について。

上記記載は,単なる処理手続きに拠るものであり,機構に保管義務が存在することは変わらないこと。


ウ 論理展開については,省略が行われていること。

「・・機構へは送付されないため,文書不存在により不開示となります」。

(ア)機構へは送付されないこと。


(イ)(同時に,機構には,特定コンビニエンスストア本部に対して,送付請求を行う権利がないこと)。


(ウ)よって,文書不存在になること。

しかしながら,「機構には,特定コンビニエンスストア本部に対して,送付請求を行う権利がないこと」は立証されていないこと。


(エ)送付請求権があるならば,行使すれば,文書不存在とはならないこと。


(オ)「送付請求権がないこと」の立証は,機構にあること。立証を求める。


エ 「文書不存在」について。

領収済通知書は,保存期間内であり,存在すること。

機構が,特定コンビニエンスストア本部に送付要求を行えば,入手できること。

仮に,「送付請求できない」ならば,法的根拠を明示して説明責任を果たすことを求める。


オ 審査請求人は,機構に対して,納付したこと。納付に対応して,機構に対して,領収済通知書が発行されたこと。

特定コンビニエンスストア本部が保管していると主張しているが,このことは審査請求人には,責任がない。

銀行で納付した領収済通知書は,機構が保管義務に沿って保管している。

特定コンビニエンスストア本部のような民間企業が,領収済通知書という個人情報を保持していて,送付を行わないということは,個人情報保護法に違反する行為である。

至急,送付要求を行うことを求めること。


(4)求める決定

ア 不開示決定を取り消すこと。


イ 特定コンビニエンスストア本部に対し,送付請求を行うこと。


ウ 290905受付の開示請求どおり,本件文書を開示し,閲覧謄写を行わせること。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 経過

平成29年9月5日に,処分庁に対して,「特定年度に納付して,納付書の原本すべて」に記録された保有個人情報の開示請求がされた。

処分庁は,コンビニエンスストアで納付された国民年金保険料の納付書(領収済通知書)(以下「納付書」という。)は,コンビニエンスストア本部で保管し,機構へは送達されないとして,平成29年11月8日に,文書不存在による不開示決定(原処分)を行った。

平成29年11月13日に,原処分を取り消すとの裁決を求める審査請求が行われた。


2 見解

納付書は,「国民年金保険料の納付受託事務に関する契約書」(以下「契約書」という。)及び「国民年金保険料の納付受託取扱要領」(以下「要領」という。)に基づき,コンビニエンスストア本部で保管することとされている。

よって,納付書は,現に機構が保有している文書ではないことから,文書不存在により不開示決定とすることは妥当である。


3 結論

以上のことから,本件については,処分庁の判断は妥当であり,本件不服申立ては棄却すべきものと考える。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 平成30年2月7日   諮問の受理

② 同日          諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年4月25日     審議

④ 同年5月10日     審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件対象保有個人情報について

本件開示請求に対し,処分庁は,本件対象保有個人情報を保有していないとして不開示とする原処分を行った。

これに対し,審査請求人は,原処分の取消しを求め,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象保有個人情報の保有の有無について検討する。


2 本件対象保有個人情報の保有の有無について

(1)諮問庁は,理由説明書(上記第3)において,本件文書を含む納付書は,契約書及び要領に基づき,特定コンビニエンスストア本部で保管しているため,機構では保有しておらず,したがって本件対象保有個人情報も保有していない旨説明するので,この点に関し,当審査会事務局職員をして諮問庁に更に確認させたところ,諮問庁は次のとおり説明する。

ア 契約書は,厚生労働省年金局と特定コンビニエンスストアとの間で締結された契約に係るものであり,要領は,当該契約に基づき納付受託事務に係る事務処理の詳細を定めたものである。


イ 要領では,特定コンビニエンスストアにおいて納付を受託した国民年金保険料について,特定コンビニエンスストアの各店舗が納付書に記載されたバーコードを読み取ることで取得する納付書の情報と,各店舗から特定コンビニエンスストア本部に送付される納付書の内容を,同本部が突合を行った上で,国民年金保険料の収納に関する情報(以下「収納情報」という。)を作成することとされている。

そして,機構では,特定コンビニエンスストア本部から,電気通信回線により収納情報の送付を受けることとなっているため,特定コンビニエンスストアにおいて納付を受託した国民年金保険料については,機構において,納付書の情報を用いて収納情報を入力する必要はないことから,機構が特定コンビニエンスストア本部から納付書の送付を受け,これを保有する必要はない。


ウ また,納付書の宛先は厚生労働省年金局であるが,要領により,納付書は,特定コンビニエンスストア本部において,3年を経過する年度末まで保存することとされている。

したがって,上記アの契約及び要領に基づき特定コンビニエンスストア本部が保存している納付書については,機構に保管義務があるものではなく,また,機構がこれを機構に送付するよう請求する権限もない。


(2)諮問庁から,契約書の提示を受けて確認したところ,特定コンビニエンスストアが行っている国民年金保険料の納付受託事務が,厚生労働省年金局との間で締結された契約により実施されていることについては,諮問庁の上記(1)アの説明のとおりであると認められる。

また,諮問庁から,要領等の提示を受けて確認したところ,①納付書が厚生労働省年金局宛てとされていること,②特定コンビニエンスストア本部は,特定コンビニエンスストアの各店舗で国民年金保険料の納付を受託した際に納付書に記載されたバーコードにより取得する国民年金保険料の納付書の情報と納付書の内容を突合した上で収納情報を作成し,機構に送付することとされていること,及び③納付書を一定期間保存することとされていることについては,諮問庁の上記(1)イ及びウの説明のとおりであると認められる。


(3)そこで検討すると,まず,特定コンビニエンスストアが納付書と突合の上,収納情報を作成するため,機構が収納情報を作成する必要がないことから,特定コンビニエンスストアから本件文書を含む納付書の送付を受けておらず,これを保有していないとする諮問庁の上記(1)イの説明に不自然,不合理な点はない。

そして,本件文書を含む納付書については,厚生労働省宛ての文書を同省との契約に基づき特定コンビニエンスストア本部が保存しているのであるから,機構に保管義務はなく,また,機構がこれを機構に送付するよう請求する権限もないとする諮問庁の上記(1)ウの説明にも不自然,不合理な点はなく,これを否定するに足りる事情も認められない。

したがって,機構において本件対象保有個人情報を保有しているとは認められない。


3 審査請求人のその他の主張について

審査請求人のその他の主張は,当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 本件不開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象保有個人情報につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,機構において本件対象保有個人情報を保有しているとは認められず,妥当であると判断した。


(第4部会)

委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子