諮問庁 放送大学学園
諮問日 平成29年10月12日(平成29年(独情)諮問第60号)
答申日 平成30年 1月17日(平成29年度(独情)答申第52号)
事件名 特定科目の単位認定試験の試験問題の不開示決定に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論

「平成24年1学期及び2学期,平成25年1学期及び2学期の特定科目の単位認定試験の試験問題」(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定は,妥当である。


第2  異議申立人の主張の要旨

1 異議申立ての趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成27年12月16日付け放総第0396号により,放送大学学園(以下「放送大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。


2 異議申立ての理由

異議申立人が主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。

(1)異議申立書

法人文書不開示決定通知書に記載された不開示理由は,「本学における教育の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条4号柱書き及び同号ハに該当するため」であった。言い換えると,当該理由は,法の文言を明示しただけである。なぜその条項に該当するかについての具体的な説明がなされていない。

なお,直近1年分の単位認定試験の試験問題は,放送大学のシステム内で開示されている。しかし,単位認定試験の試験問題の開示範囲を1年間に限定する合理的意味はない。また,試験問題のみの公開であれば,学生の学習の便宜を図ることになり,教育の適正な執行に支障はないはずである。他の大学の通信教育では,過去問(解答なし)は冊子体で公開したり(特定大学A),1年ごとに過去問(解答なし)を学生に配布する(特定大学B,特定大学C及び特定大学D)などして,学生の単位取得の便宜を図っている。したがって,放送大学の方針が必ずしも唯一の正しい方式とはいえない。以上から,実施済みの単位認定試験の試験問題は,学生の単位取得の便宜を図るために,開示すべきである。


(2)意見書

ア 法人文書不開示決定についての違法について

(ア)不開示理由について,ほぼ根拠条文のみの指摘があった。つまり,理由付記がなされていなかった。


(イ)理由付記の制度趣旨は,①処分庁の判断の慎重・公正妥当の担保と恣意抑制機能,②処分の相手方の争訟便宜機能である。


(ウ)理由付記の程度として当該処分に係る根拠条文の提示では足りず,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して開示請求が拒否されたかを,申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならない(最判昭和60年1月22日民集39巻1号1頁)。


(エ)本件において,不開示とした理由である「本請求に応じて開示することにより,本学における教育の適正な執行に支障を及ぼす恐れがあり,法5条4号柱書き及び同号ハに該当するため」という文言は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して開示請求が拒否されたかを,申請者においてその記載自体から了知することはできない。


(オ)したがって,不開示処分に違法がある。


イ 「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」で示された期間を著しく徒過したことの違法について

(ア)情報公開に関する連絡会議申合せ「不服申立て事案の事務処理の迅速化について」(平成17年8月3日)における,「Ⅰ審査会への諮問」で示された諮問の迅速化では「特段の事情がない限り,遅くとも90日を越えないようにすることとする」。


(イ)しかし,異議申立てから諮問がなされるまで,約1年10か月かかった。


(ウ)遅延した理由は担当者の著しい落ち度にある。


(エ)平成27年12月21日付で異議申立てをしてから,放送大学情報公開・個人情報担当の特定職員に,約1月に一度,諮問について問い合わせていた。


(オ)その回答は,ほぼ同様であった。すなわち,「手続きを進めておりますが,審査会より諮問番号をいただく必要があり,番号の確認後,文書をご本人にお送りする流れになります」であった。


(カ)(略)


(キ)したがって,諮問が遅延したことについて,重大な違法がある。


ウ 放送大学提出の理由説明書に対する反論(以下「反論」という。)(総論)

(ア)「2 不開示該当性について」の箇所では,「単位認定試験問題及びその解答(以下「試験問題等」という。)として,記載してある。


(イ)しかし,異議申立人が開示請求したのは,「1 異議申立てに係る行政文書等について」に記載されているとおり,試験問題のみである。


(ウ)それにもかかわらず,「試験問題等」として,異議申立人が「単位認定試験問題及びその解答」を開示請求しているかのごとく記載されている。


(エ)つまり,問題の所在,言い換えると前提が冒頭からずれている。


エ 反論(各論)1

(ア)「本学では,これまで,本学に在籍する学生への修学支援の一環として,特定の学期における履修者の復習を容易にすることを目的にして,再試験の期間を考慮した上で,試験問題等の公表を1年間に限り行ってきた」とする。


(イ)しかし,放送大学は,受験者が解答を記載した単位認定試験の試験問題を持ち帰ることを認めていない。


(ウ)したがって,受験者は,単位認定試験の試験問題に対する解答番号を記憶しておかなければならない。そうしないと,問題の正解不正解がわからない。


(エ)数多く試験を受けた場合には,解答を記憶しておくことが著しく難しい。


(オ)したがって,受講者は,どの問題を正解し,間違ったかを把握できない。


(カ)よって,上記制度の下では,履修者の復習を容易にするとはいえない。


オ 反論(各論)2

(ア)放送大学は,試験の出題に選択式の試験を採用する科目が多い,「また,一般的に言って,教科内容の重要なポイントは限られており,その理解度を問う試験問題の作成可能な範囲,数は限られている」(以下「上記指摘」という。)。


(イ)しかし,上記指摘は,記述式の試験でもはまることである。選択式でも工夫をすれば,無限の出題は可能である。


(ウ)例えば,資格試験である行政書士試験,司法書士試験(択一問題に限る),司法試験(択一問題に限る)を見ればわかる。


(エ)すなわち,上記資格試験の過去問題を参照すればわかるとおり,重要なポイントが様々な角度から何度も問われている。


(オ)したがって,上記指摘は,根拠が不十分である。


カ 反論(各論)3

(ア)「異議申立人の主張のように,この公表期間(括弧内は異議申立人による注釈である,1年間)を超えて試験問題等を公表し,過去の全ての試験問題等を入手可能にする場合には」との記載がある。


(イ)しかし,上記ウで述べたとおり,異議申立人が開示請求したのは,「1 異議申立てに係る行政文書等について」に記載されているとおり,試験問題のみである。


(ウ)つまり,解答は含まれない。


(エ)異議申立人の主張では,受講者は過去の試験問題を閲覧し,教科書及び講義を受講して,設問の各選択肢についての正解・不正解を判断する。


(オ)上記勉強により,当該講義の重要部分を把握することができ,また当該科目の全体像をより深く理解することができる。


(カ)したがって,「過去の試験問題とそれに対応する解答のみをパターン的に記憶することを中心とするものになるおそれが大きい」とはいえない。


キ 反論(各論)4

(ア)放送大学提出の理由説明書の記載の趣旨から,試験問題では教科内容の重要なポイントを問う。


(イ)放送大学の講義及びテキストでは,当該科目の様々な事項に言及する。


(ウ)しかし,受講者は,上記事項の重要度について理解できているとは限らない。言い換えると,受講者は,体系的に,当該科目の幹はどの部分で,枝にあたるのがどの部分か理解しているとは限らない。


(エ)試験の受験者は,過去の試験問題を閲覧することにより,当該科目の重要なポイントを理解することができる。上記理解により,当該科目の幹と枝を体系的に把握することができる。


(オ)したがって,受講者は,当該科目をより理解することができる。


ク 反論(各論)5

(ア)「過去の単位認定試験の出題と解答のパターンのみで単位を修得することは,教育効果を著しく損ない,本学の教育の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」(以下「上記指摘2」という。)という。


(イ)上述のとおり,異議申立人は,解答まで要求していない。


(ウ)したがって,上記指摘2は妥当しない。


(エ)また,放送大学の学生の入学動機は,以下のとおりである。

放送大学による在学意識調査の結果における入学動機は,「全体の傾向として,最も多いのは,「自分の関心ある分野を深めたかった」で,90.5%の学生がこの点で肯定的に考えている。第二は,「教養を身につけたかった」で,86.3%,第三は,「専門的な知識を身につけたかった」で,70.8%である。第四は,「勉強すること自体が好きだった」で,67.9%。第五は,「自分の新たな可能性を試したかった」で,60.2%。第六は,「大卒資格を取得したかった」で,58.0%。第七は,「自分の仕事に役立てたかった」で53.5%。第八は,「それまでの勉強を取り戻したかった」で47.7%。そして第九は,「余暇を有効に利用したかった」で,45.9%,と続いている。これらは複数選択できる回答方式の中での結果であるので,それぞれ二重あるいは三重に動機が重なっている。したがって,これらの重なりを適切に整理し,妥当な括りを行うことが必要である。ここでは最も一般的な回答である「自分の関心ある分野を深めたかった」に集中しているが,しかし前述のように,「自分の関心ある分野」の,さらにその内容が何かという点が問題である。もう少し具体的な入学動機を考えるために,この回答を排除して考える必要がある。これ以外で放送大学への入学動機で常に上位を占めてきているのは,従来から明らかにされている「教養志向」と「専門志向」である。これらがこれまでの調査の中でも,圧倒的に多くの学生が持っている入学動機になっていることは間違いない。「教養志向」と「専門志向」は時系列比較のもとでも,放送大学の学生には強く支持されてきており,安定して肯定的な回答を得ている。」とした。


(オ)上記動機をもって入学した学生が,自ら不利益なことをするはずがない。


(カ)したがって,上記指摘は根拠を欠く。


ケ 反論(各論)6

(ア)「学生が知り得た特定科目の過去のすべての単位認定試験問題の内容を学生がインターネットを利用して広く一般国民に情報提供する自体の発生することも危倶される」とする。


(イ)しかし,現在の試験問題等の1年間に限定した公表によっても,当該問題を年毎に蓄積すれば,インターネットで公表可能である。


(ウ)また,放送大学が主張する,①単位認定試験問題の公表,②無料で試験を疑似体験,③学生数の減少,④事業の遂行に大きな支障を来す,の因果関係は,単なる観念上の想定にすぎず,確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたい。


(エ)したがって,上記主張に根拠はない。


第3  諮問庁の説明の要旨

1 異議申立てに係る法人文書等について

本件異議申立てに係る法人文書は,「平成24年1学期及び2学期,平成25年1学期及び2学期の特定科目の単位認定試験の試験問題」(本件対象文書)である。

本件対象文書につき,法5条4号柱書き及び同号ハの不開示情報に該当することから不開示(原処分)としたところ,異議申立人から,当該文書の開示を求める旨の異議申立てがされたところである。


2 不開示情報該当性について

単位認定試験問題及びその解答(「試験問題等」)の公表を含む試験の実施方法は,教育の内容・手法の根幹をなす要素である。教育の自由は,学問の自由や高等教育機関としての大学の自治に密接に関連するものであり,本件対象文書を含む放送大学の単位認定試験の公開に関する問題の具体的決定は,教育の自由の重要な構成要素として,その内容の決定は広く大学の裁量に委ねられている。

放送大学では,これまで,放送大学に在学する学生への修学支援の一環として,特定の学期における履修者の復習を容易にすることを目的にして,再試験の期間を考慮した上で,試験問題等の公表を1年間に限り行ってきた。この方針は,放送大学の教授会において,放送大学の教育の特質を前提に,学生の学習効果を高くするための様々な検討を経て,決定し採用しているものである。

以下,放送大学の教育の特性について説明する。

放送大学においては,同一内容の授業を学期ごとに年2回,標準的には4年ないし6年間,繰り返し放送し,その都度試験を行う教育方法を採用しており,受講者数が他の通信制大学に比較して圧倒的に多いために,記述式ではなく,出題に対して一定の選択肢から解答を選択する選択式の試験を採用する科目が圧倒的に多い。また,一般的に言って,教科内容の重要なポイントは限られており,その理解度を問う試験問題の作成可能な範囲,数は限られている。加えて,放送大学ではテストバンクに,あらかじめ担当教員が試験問題を一定数登録しておき,試験ごとにその中から組み合わせを変えて出題をする試験方法を採用している。

このような方式の下で,異議申立人の主張のように,この公表期間を超えて試験問題等を公表し,過去の全ての試験問題等を入手可能にする場合には,単位認定試験に際して,学生の学習方法が教科そのものの理解を深めるのではなく,過去の試験問題とそれに対応する解答のみをパターン的に記憶することを中心とするものになるおそれが大きい。そのような学習に依存した単位の修得が可能となりうることを回避するというのが,教授会の現行の公表方式を決定した中心的な理由である。

本来の教科の学習は,印刷教材及び放送教材の全体を理解し,その重要なポイントについて理解を深めることによって成り立つものであり,過去の単位認定試験の出題と解答のパターンの記憶のみで単位を修得することは,教育効果を著しく損ない,放送大学の教育の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

これに今一つ別の観点からの理由を付け加えれば,本件講義を含めた放送大学の講義は,放送授業として広く一般国民に公開されており,放送を視聴できる環境にあれば誰でもその内容を知ることができる。今日,インターネットが一般化したことにより,学生が知り得た特定科目の過去の全ての単位認定試験問題の内容を,学生がインターネットを利用して広く一般国民に情報提供する事態の発生することも危惧される。このような環境の下で,これまでの,放送大学への入学料・授業料の納付など所定の手続を経て放送大学の学生となった者でなければ単位認定試験を受験できないという放送大学の教育事業の大前提がくずれ,放送大学の学生とならずに,一般の放送視聴者が単位を得るまでの過程を,無料で疑似体験できる可能性が増大することとなる。

放送大学では,単位修得の積み重ねにより学士号等の取得を目指す全科生(学部・大学での在籍合計数約5万8千人)のみではなく,学位取得を目的とせずに特定科目のみの科目履修を行っている選科生(1年間在籍し,学部・大学での合計数約1万8千人)や科目生(半年間在籍し,学部・大学での合計数約8千人)の割合が高く,その数が減少する場合には,放送大学の事業の遂行に極めて大きな支障を来すこととなる。

以上に述べたことから明らかなように,本件対象文書は,本請求に応じて開示することにより,放送大学における教育の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条4号柱書き及び同号ハに該当する。


3 原処分に当たっての考え方について

本件対象文書は,本請求に応じて開示することにより,放送大学における教育の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

こうした現状を踏まえ放送大学においては,原処分どおりの決定を行ったところである。


第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 平成29年10月12日 諮問の受理

② 同日          諮問庁から理由説明書を収受

③ 同年11月1日     審議

④ 同月10日       異議申立人から意見書を収受

⑤ 同年12月15日    本件対象文書の見分及び審議

⑥ 平成30年1月15日  審議


第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,法5条4号柱書き及びハに該当するとして,その全部を不開示とする決定(原処分)を行った。

これに対して,異議申立人は,原処分の取消しを求めているが,諮問庁は,原処分は妥当であるとしていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,不開示情報該当性について検討する。


2 不開示情報該当性について

(1)当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,不開示理由等について,改めて確認させたところ,諮問庁は,おおむね以下のとおり説明する。

ア 放送大学では,放送による授業を行うという特性上,一度開設された科目は,4年間あるいは6年間,同一内容の教材を放送しており,また,2学期制(「4月から9月」及び「10月から3月」)を採用していることから,単位認定試験は年2回の実施となるため,1科目当たり最低でも8回単位認定試験を行うこととなる。


イ 放送大学は,上記アの事情に加え,あらかじめ担当教員が試験問題を一定数登録したものから組み合わせて出題を行っていること,記述式ではなく択一式の試験が多いことにより,学内専用サイトによる1年間の掲載期間を超えて試験問題を公開した場合,出題のパターンを容易に分析することが可能となり,過去の試験問題とそれに対応する解答のみを記憶して単位を修得することが可能となり,放送大学の教育効果を著しく損なうおそれがある。

また,試験問題を開示した場合,開示請求者がインターネット上に試験問題を投稿するといったことも想定できるので,そうなった場合,放送大学の学生に試験問題の内容が広まり,上記のような大学の教育効果を著しく損なうおそれがさらに高まることとなる。

なお,異議申立人は,意見書(上記第2の2(2)ケ)により,「現在の試験問題等の1年間に限定した公表によっても,当該問題を年毎に蓄積すれば,インターネットで公表可能である。」と主張しているが,放送大学における試験問題等の公表は,放送大学に在籍中の学生に限り閲覧可能な学内サイトで行われており,同サイトの試験問題等の掲載ページの注意事項にネットワーク上に掲載することを禁止する旨を明記している。放送大学としては,情報開示請求によって,放送大学に在籍していなくても試験問題を入手できるようになることで生じる影響を危惧するものである。


ウ 一般の放送視聴者が当該試験問題を閲覧した場合については,授業料等の納付など所定の手続を経て学生になった者でなければ単位認定試験を受験できないにもかかわらず,一般の放送視聴者は,無料で単位を得るまでの疑似体験ができてしまうおそれがあるため,授業料等の納付など所定の手続を経た学生が減少するおそれがあり,放送大学の事業の遂行に大きな支障を来すこととなる。


エ したがって,本件対象文書を公にした場合,放送大学における教育の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるだけでなく,放送大学の事業遂行にも支障を及ぼすおそれがあるため,法5条4号柱書き及びハに該当する。


(2)以下,上記諮問庁の説明を踏まえ検討する。

ア 本件対象文書は,平成24年の1学期及び2学期並びに平成25年の1学期及び2学期に係る特定科目の択一式の試験問題であることが認められる。


イ 諮問庁は,①一度開設された科目は,4年間あるいは6年間,同一内容の教材を放送する,②上記①の事情を踏まえ,あらかじめ担当教員が試験問題を一定数登録したものから組み合わせて出題している及び③記述式ではなく択一式の試験が多いなどの放送大学特有の事情について説明する。

このような上記に掲げる放送大学特有の事情を踏まえると,履修者の復習のために1年間に限り学内専用サイトに試験問題を掲載しているものの,本件対象文書を開示すると,受講生が試験問題を随時確認することが可能となり,今後の単位認定試験に際して,受講生が出題のパターンを容易に分析し,過去の問題を記憶して単位修得することが可能となるため,放送大学の教育効果を著しく損なうおそれがあり,また,一般の放送視聴者が,無料で単位を得るまでの疑似体験を行うことが可能になり,放送大学の授業料等の納付など所定の手続を経た学生が減少することにより,放送大学の事業遂行に大きな支障を来すおそれがあるとする諮問庁の説明は否定し難い。


ウ したがって,本件対象文書は,法5条4号柱書きに該当し,同号ハについて判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。


3 異議申立人のその他の主張について

異議申立人はその他種々主張するが,当審査会の上記判断を左右するものではない。


4 付言

本件は,異議申立てから諮問までに1年9か月以上が経過しており,「簡易迅速な手続」による処理とはいい難く,異議申立ての趣旨及び理由に照らしても,諮問を行うまでに長期間を要するものとは考え難い。

諮問庁においては,今後,開示決定等に対する不服申立事件における諮問に当たって,迅速かつ的確な対応が望まれる。


5 本件不開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条4号柱書き及びハに該当するとして不開示とした決定については,同号柱書きに該当すると認められるので,同号ハについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当であると判断した。


(第5部会)

委員 南野 聡,委員 泉本小夜子,委員 山本隆司